言葉のサラダってどんな症状?【医師が教える統合失調症のすべて】

言葉のサラダ

言葉のサラダ(word sarad)は、主に統合失調症で認められる症状の1つです。

統合失調症は、自分の思考や行動などを適切に「統合する事(まとめあげる事)」が出来なくなってしまう疾患です。そのため、周囲から見ると理解できないような言動を取る事が多くなります。

統合する力が失調してしまう事で様々な症状が生じますが、その中の1つに「言葉のサラダ」があります。

ちょっとわかりにくい症状名ですが、これは一体どのような症状なのでしょうか。

各疾患に特徴的な症状を深く理解できるようになると、疾患と正しく向き合う事が出来るようになります。またその疾患と接する方も、患者さんがどのような原因でこのような症状を発症しているのかが理解できるようになるため、適切な接し方が出来るようになります。

ここでは「言葉のサラダ」という症状について、このような症状が生じる背景とその対処法について紹介していきます。

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1.言葉のサラダとはどのような症状なのか

言葉のサラダ(Word Salad)とは、どのような症状なのでしょうか。

言葉のサラダは主に統合失調症で認められる症状の1つです。

統合失調症の患者さんは普通の人には理解できないような不気味な言動を取る事が多いため、昔は「気が狂ってしまったのだ」「悪霊にとりつかれてしまったのだ」などと判断されてしまい、患者さんは適切な理解を受ける事が出来ず、大きな不利益をこうむっていました。

現在では昔と比べれば統合失調症に対する世間の理解も深まってきましたが、それでも理解困難な言動をする統合失調症の方に対して、適切な対応を取れる方はまだまだ少数だと感じます。

同じ精神疾患でもうつ病や不安障害などと比べると、統合失調症は一般の方々にまだまだ正しく理解されていない疾患なのです。

その理由はやはり、統合失調症によって生じる患者さんの言動は、一見すると周囲の人には全く理解できないものであるため、「不気味だ」「怖い」「近寄らないでおこう」と避けられてしまいがちだからです。

言葉のサラダも同様に、周囲の人からすると「理解できない」「意味が分からない」と感じる症状の1つです。

しかし言葉のサラダが生じる背景を正しく理解できるようになると、統合失調症を正しく理解し、統合失調症の方と正しく向き合う事が出来るようになります。

病気の症状を正しく知る事は、医療者のみならず患者様や患者様と接する周囲の方々にとっても大切な事になります。

難しい専門用語で説明されるととっつきにくくなってしまうため、ここでは一般の方でもなるべく分かりやすいように言葉のサラダについて説明してきます。

言葉のサラダは、統合失調症の方が自分の思考を統合する事(まとめあげる事)ができないために生じる症状です。思考をまとめられないため、会話がただ単語を混ぜ合わせただけの意味不明な文章になってしまい、これを「言葉のサラダ」と言います。

「言葉のサラダ」という用語の意味は、「まるで言葉をサラダのように、ただたくさん詰め合わせただけの文章」という例えなのです。

サラダにはたくさんの野菜が混ぜられています。そして、それぞれの野菜には特に関連性があるわけではありません。これと同じで「言葉のサラダ」は無関係な単語が混ざった文章であり、文法上は一応文章の形をしているものの、その内容が支離滅裂・意味不明な文章の事です。

実際に言葉のサラダの一例を挙げてみましょう。

「あの家の犬は緑色だからフランスだ」
「私のメガネは口紅を塗りながらとてもおいしいです」

これらの文章は一応文章の形はしています。しかし、何を言っているのかは全く理解できませんね。

このように、単語がめちゃくちゃに詰め込まれていて、意味がまったく成立していない文章が「言葉のサラダ」です。

言葉のサラダの特徴は、文章としては支離滅裂・意味不明なのですが、文法的には一応成立しているという点です。

先ほどの例も、

「〇〇は〇〇だから〇〇だ」
「〇〇は〇〇です」

と文法的には崩れていません。

このようになるのは統合失調症は、全体を「統合する能力(まとめあげる能力)」が障害されるものの、個々の能力は大きくは障害されないためです。

思考を単語レベルで出力する事は出来るのですが、単語と単語を適切に「統合する事」が出来ないため、このような「言葉のサラダ」になってしまうのです。

言葉のサラダの背景にあるのは、統合失調症によって自分の頭の中にある考えを統合する事が出来なくなってしまっている事です。

言葉のサラダが続くという事は、患者さん本人が自分の考えを統合できない状態が続くという事ですから、これは生活に大きな支障を来たす事は明らかです。

そのため言葉のサラダが認められたら出来るだけ早急に病院を受診し、適切な治療を受ける必要があります。

2.言葉のサラダが生じる統合失調症とは?

言葉のサラダは「統合失調症」という疾患で生じます。ではこの統合失調症とはどのような疾患なのでしょうか。

統合失調症は、おおよそ100人に1人の割合で発症する精神疾患です。

統合失調症の原因は明確には解明されていません。しかし現時点では遺伝やストレスなどといった因子が重なり、脳内の神経伝達物質(神経から神経に情報を伝える物質)に異常が生じて発症するのではないかと考えられています。

特に「ドーパミン」と呼ばれる神経伝達物質の異常が推測されていますが、近年ではそれだけでなくグルタミン酸などの異常も指摘されています。

代表的な症状としては、「本来であればないはずのものがあるように感じる」症状である陽性症状、「本来であればあるはずの能力がなくなってしまう」陰性症状、「状況を正しく判断できなくなってしまう」認知機能障害などがあります。

陽性症状として代表的なものが「幻聴(本来であれば聞こえないはずの音が聞こえる)」や「妄想(本来ありえないような事をあると信じ込む)」です。

幻聴では自分に対する悪口が聞こえたり、誰かに命令されるような声が聞こえたりします。

また妄想では「被害妄想(自分は嫌がらせをされているなどといった妄想)」「誇大妄想(自分は偉大な人間だ、などと自分を過剰に高く評価する妄想)」なとが認められます。

陰性症状として代表的なものは「無為自閉(活動性が低下しこもりがちになる)」「感情鈍麻(感情表出が乏しくなる)」などがあります。

認知機能障害とは自分の置かれている状況を認知する事(適切にとらえる事)ができなくなってしまう症状です。

統合失調症における認知機能障害は、自分の状況を統合して判断する事が難しくなるのが特徴です。個々の認知は出来るものの、複数の情報を統合して全体的な視野を認知する事が難しくなり、情報処理能力、注意力・記憶力・集中力・理解力や計画能力・問題解決能力といった高次機能が障害されます。

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3.なぜ言葉のサラダが生じるのか

言葉のサラダはどうして生じるのでしょうか。

言葉のサラダは統合失調症で生じる症状だとお話ししました。

前項でお話しした通り、統合失調症では全体的な認知(物事を正しくとらえる事)ができなくなってしまいます。

自分の個々の考えは認知出来る事もありますが、それを全体的にまとめあげる(統合する)力が障害されてしまうため、単語をめちゃくちゃにつなぎ合わせたような文章を発するようになってしまいます。

これが「単語を詰め込んでいるだけで、まるでサラダのようだ」と「言葉のサラダ」と呼ばれるようになったのです。

統合失調症によって自分の思考を適切に統合できなくなってしまった結果、何とか認知できているものを個々の単語で発し、それが統合されずにぐちゃぐちゃに混ざって発されてしまうのが「言葉のサラダ」です。

4.言葉のサラダの対処法・治療法

言葉のサラダを認めたら、どのように対処すればいいのでしょうか。またこの症状を改善させるためにはどのような治療法があるのでしょうか。

まず対処法、とりわけ周囲の方が言葉のサラダが出現している患者さんと接する時にどのように対応すればいいのかを紹介します。

言葉のサラダが生じている患者さんの話は支離滅裂ですので、何を言いたいのか周囲の方には全く理解できません。

しかしだからといってそれを無視してしまったり、冷たくあしらってしまうのはよくありません。

言葉のサラダを認めるようなエネルギーの高い時、統合失調症の患者さんはドーパミン過剰によって脳が過活動となっており、陽性症状も認められている事が多いため、邪見に扱えば陽性症状を増悪させてしまう事につながります。

例えば冷たくあしらった結果、「この人は私に嫌がらせをしている」「この人は悪の組織の一員で私を傷付けようとしているのだ」などといった被害妄想を引き起こされてしまい、症状を更に悪化させてしまう可能性もあります。

そのため、言葉のサラダを認めたら、とりあえず話をある程度聞いてあげる事が大切です。これにより患者さんに安心感を与える事が出来ます。

しかし言葉のサラダとなっている患者さんの話をずっと聞き続けてはいけません。患者さんは思考を統合できない状態ですので、発している文章は健常な方には理解できない事がほとんどです。

理解不能な話が延々と続くため、これをただ聞いているだけでは何の解決にもならないのです。

切りの良いタイミングでこちらに会話の主導権を移していき、なるべく自然な形で病院受診を勧めたり、お薬を飲み忘れているようであれば服用を促してあげるようにしましょう。

思考の統合が障害されている状態の患者さんに病院受診を促しても意味のある言葉としての返答は返ってこない事があります。そのため、明確に受診の意志を確認できなくても、明らかに拒否していなければ、病院に連れていってしまっても良いでしょう。

このような時に、普段から信頼している人や尊敬している人であれば、素直に従ってくれる確率は高くなります。そのため普段から信頼関係をしっかりと作っておく事も大切です。

次に治療ですが、言葉のサラダは「統合失調症」という疾患が原因ですので、統合失調症の治療を行う事が症状の改善につながります。

使われるお薬としては、主に「抗精神病薬」になります。

具体的には、

などの第2世代抗精神病薬をまずは使います。

抗精神病薬は統合失調症の一因である、脳で過剰になってしまっているドーパミンをブロックするはたらきがあります。これによってドーパミン量を適正に抑え、症状を改善させます。

ドーパミン量を適正にすると、思考を統合する力も戻ってきますので、言葉のサラダも改善します。

ちなみに上記の第2世代抗精神病薬が効果不十分な場合は、

といった古い第1世代抗精神病薬を用いる事もあります。ただし第1世代は第2世代と比べると副作用が多いため注意が必要です。

また第1世代は統合失調症の認知機能障害を悪化させてしまう可能性もあるため、安易に使用すると言葉のサラダを更に悪化させてしまうリスクもあるため、慎重に使用する必要があります。

4.言葉のサラダと似ている症状

精神疾患の症状の中には区別がつきにくい、似たような症状があります。

しかし一見同じような症状であっても、その背景の心理状態は全く異なる事があります。

言葉のサラダとよく似た用語に「連合弛緩」という症状があります。連合弛緩も主に統合失調症で認められる症状ですが、これはどのような症状なのでしょうか。また言葉のサラダとはどう違うのでしょうか。

症状の表面的な部分しか見るのではなく、その症状の本質を理解できるようになると、それぞれの症状の違いが分かるようになり、病気についてもより正しく知る事ができます。

最後に連合弛緩という症状について、言葉のサラダとの違いも含めて紹介していきます。

Ⅰ.連合弛緩

連合弛緩(れんごうしかん:loosening of association)も主に統合失調症で認められる症状です。

連合弛緩というのは、思考の統合(適切にまとめあげる事)が緩くなってしまい、会話の文章にまとまりがなくなる事です。

言葉のサラダと連合弛緩はどのように違うのでしょうか。

実はこの2つは基本的には同じ症状になります。

考えを統合する力が「緩む」のが連合弛緩で、考えを統合する力が「ほぼ消失する」のが言葉のサラダです。

つまり統合失調症で生じた連合弛緩が、更に悪化すると「言葉のサラダ」と呼ばれるようになるという事で、両者は程度が異なるだけです。基本的にはどちらも同じ原因で生じている症状になります。

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