ロナセン錠(ブロナンセリン)の効果と特徴

ロナセンの効果と特徴

ロナセン錠(一般名:ブロナンセリン)は2008年に発売された抗精神病薬(統合失調症の治療薬)です。副作用の少ない第2世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)に属します。

リスペリドン(商品名:リスパダール)と同じSDAという種類に属し、主にドーパミンとセロトニンをブロックするはたらきに優れます。

ここではロナセン錠の効果や特徴、どんな作用機序を持っているおくすりでどんな人に向いているおくすりなのかを紹介していきます。

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1.ロナセン錠の効果の特徴

まずはロナセンの特徴について挙げてみます。

ロナセンは、中枢神経のドーパミン受容体を強力に遮断(ブロック)することで、統合失調症の「陽性症状」と呼ばれる幻覚や妄想を改善させます。ロナセンに限らず、抗精神病薬の多くはドーパミン受容体をブロックする働きを持ちます。その中でロナセンは次のような特徴を持っています。

【良い特徴】

  • 強力な抗幻覚・妄想作用
  • 第一世代(定型)と比べると陰性症状にも効果がある
  • 眠気や体重増加がほとんど起きない
  • 認知機能の改善にも効果がある

【悪い特徴】

  • 錐体外路症状がやや多め
  • 鎮静がかからず、興奮状態の方には不適
  • 薬価が高い

*錐体外路症状(EPS)・・・薬物によってドーパミン受容体が過剰にブロックされることで生じる副作用。主に抗精神病薬で認められる。パーキンソン病のようなふるえ、筋緊張、小刻み歩行、仮面様顔貌、眼球上転などの神経症状が生じる。

*陰性症状・・・感情が平板化したり、無為自閉など気力なく過ごすようになる統合失調症の代表的な症状。本来あるべきもの(感情や意欲など)がなくなってしまう症状を陰性症状と呼ぶ。

ロナセンの最大の特徴は、強力なドーパミン2受容体遮断作用です。統合失調症は、脳のドーパミンが過剰に分泌されることが一因だと考えられているため、出過ぎたドーパミンを抑えてあげることが治療になります。ドーパミンが過剰になると、幻覚妄想状態を引き起こすため、ドーパミン遮断作用が強力なロナセンは、幻覚妄想を改善する作用に非常に優れています。

同系統のリスペリドン(商品名:リスパダール)もドーパミンをブロックするはたらきは強いのですが、ロナセンの方が理論上は強力です。リスパダールは比率的にはドーパミンよりもセロトニンをブロックする力が強いお薬ですが、ロナセンはセロトニンよりもドーパミンをブロックするはたらきが強く、ここが両者の違いです。ロナセンのドーパミン2受容体遮断の力は、抗精神病薬の中で最強だとも言われています。

しかし、ドーパミンをブロックする力が強いということは、ドーパミンを抑えすぎてしまう可能性もあるということです。必要以上にドーパミンを遮断してしまうと、錐体外路症状(EPS)と呼ばれる神経症状の副作用や高プロラクチン血症といったホルモンバランスの崩れが起こってしまうことがあります。

ロナセンは、良い意味でも悪い意味でも「ドーパミンを強力に遮断する」おくすりであるため、幻覚妄想を改善する効果に優れる一方で、錐体外路症状はやや多めなっています。高プロラクチン血症に関しては、ロナセンの「脂溶性」という特徴のため、そこまで多くは見られません(詳しくは下記で説明します)。

抗精神病薬は眠くなったり太ったりするものが多く、これは患者さんにとってつらい副作用になります。しかしロナセンは抗精神病薬でありながら、眠気や体重増加をほとんど起こさず、これはこのお薬の大きな利点になります。しかし反面で、鎮静をかける力が弱いため易怒的であったり興奮している患者さんにはあまり向いていません。

強力なドーパミン2遮断作用を持ち、幻覚妄想の改善には頼れるおくすりである一方で、錐体外路症状などのドーパミンをブロックしすぎることで出現する副作用がやや多いのがロナセンなのです。

2.ロナセン錠の作用機序

抗精神病薬は、ドーパミンを遮断するのが主なはたらきです。統合失調症は脳のドーパミンが過剰に放出されて起こるという説(ドーパミン仮説)に基づき、ほとんどの抗精神病薬はドーパミンの放出量をおさえる作用を持ちます。

ロナセンは、抗精神病薬の中でSDA(Serotonin Dopamine Antagonist:セロトニン-ドーパミン拮抗薬) という種類に属します。SDAはセロトニン2A受容体と、ドーパミン2受容体をブロックする作用に優れるおくすりのことです。

同系統のお薬で有名なものにリスペリドン(商品名リスパダール)がありますが、前述のようにリスパダールはセロトニンをより強くブロックするのに対し、ロナセンはドーパミンをより強くブロックするという違いがあります。ドーパミンのブロックだけを取ればロナセンの方が強く、ロナセンのドーパミンへのブロックの強さは非定型抗精神病薬の中で最強だとも言われています。

データ上は、セロトニン2A受容体よりもドーパミン2受容体に対して6倍も強く作用すると報告されており、そのためSDAではなくDSA(Dopamine Serotonin Antagonist)と呼ばれることもあります。

ドーパミン2受容体をブロックと幻覚妄想などの陽性症状を改善させるため、ロナセンは幻覚妄想に対する効果が非常に強いということができます。

一方で過剰にドーパミンをブロックすると、錐体外路症状や高プロラクチン血症といった副作用の原因にもなるため、これらの副作用が多くなることが懸念されます。ロナセンはドーパミン2受容体を強くブロックするため、錐体外路症状や高プロラクチン血症が強く出てしまうように見えます。その問題に関してロナセンは、ドーパミン3受容体を遮断作用、脂溶性という特徴を持つことで解決しています。

ロナセンは他の抗精神病薬に比べてドーパミン3受容体の遮断作用が強力なのも特徴です。ドーパミン3受容体を遮断すると、陰性症状や認知機能、抑うつの改善が見られたり、副作用(錐体外路症状や高プロラクチン血症)が軽減することも報告されています。

ロナセンはドーパミン3受容体遮断作用を持つことで、錐体外路症状を多少軽減しています。しかしそうはいっても、ドーパミンを遮断する力は強いため、錐体外路症状を起こす頻度はやや多めではあります。

またロナセンは脂溶性であり、脳内移行性が良好なのも特徴です。脂溶性(脂に溶けやすい)お薬は、血液脳関門(BBB)というところを通過しやすく、脳に届きやすいと言われています。抗精神病薬は脳に作用するおくすりなので、脳に届いてくれないといけません。しかし、おくすりの種類によっては脳になかなか届かないものもあります。

脳内になかなか届かないということは、脳に届けるために量をたくさん入れないといけなくなり、結果として全身に様々な副作用が発現してしまいます。ロナセンのように脳内移行の良いおくすりは少量で脳内に薬物を届けることができるため、副作用が少なくなる傾向にあります。このため、脂溶性であるロナセンは高プロラクチン血症が少なめになっています。

ロナセンはドーパミン2受容体の他にもセロトニン2A受容体をブロックする作用がありますが、これは陰性症状(無為、自閉、感情平板化など)を改善する作用を持ちます。また、錐体外路症状の発現を抑えるはたらきもあることが報告されています。

また、ロナセンはセロトニン6受容体に対して親和性が高い事も特徴です。セロトニン6受容体は、認知機能障害の改善に関係していると考えられており、そのためロナセンは統合失調症の認知機能の改善に良い効果を発揮する可能性があります。

その他にロナセンには、α1受容体遮断作用があり、これは主に副作用としてふらつきや性機能障害(射精障害、勃起障害など)を起こしてしまいます。

また、多くの抗精神病薬にはヒスタミン1受容体遮断作用があり、これは主に眠気や体重増加に関係してくるのですが、ロナセンはこのヒスタミン1受容体遮断作用がほとんどないことが報告されています。

これは、体重増加をほとんど起こさないということで、体重増加で困っている患者さんにとっては非常に助かるものです。しかし一方で眠気も起こさないため鎮静力に乏しく、興奮が強い患者さんにはあまり有効でないということにもなります。

(ロナセンの副作用については、別記事で詳しく紹介します)

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3.ロナセン錠の適応疾患

添付文書にはロナセンの適応疾患として、

統合失調症

が挙げられています。

臨床現場でも主な用途は添付文書の通り、統合失調症です。ドーパミンを強くブロックするロナセンは、統合失調症の中でも特に幻覚妄想が著明なタイプによく使われます。

また、うつ病治療に使われることもあります。抗うつ剤のみでは改善が不十分なうつ病患者さんに対して、非定型抗精神病薬を少量加える治療法を増強療法(Augmentation)と呼びます。増強療法には、リスパダールやジプレキサ、エビリファイなど様々な非定型抗精神病薬が用いられます。

統合失調症ではない患者さんが、医師から十分な説明のないままロナセンを処方されてしまい、自分でロナセンの適応疾患を調べると「統合失調症」と書かれているため、「私って統合失調症なの??」と不安になってしまうケースが時々あります。処方されたおくすりがどんなおくすりなのか、今はネットで簡単に調べられますからね。

ロナセンは、添付文書上の適応疾患としては統合失調症しか書かれていません。そして実際にも統合失調症での使用がほとんどですが、時に統合失調症以外にも用いられることがあります。そのため、ロナセンを処方されたからといって「自分は統合失調症なんだ」ということにはなりません。

4.抗精神病薬の中でのロナセンの位置づけ

抗精神病薬には多くの種類があります。その中でロナセンはどのような位置づけになっているのでしょうか。

まず、抗精神病薬は大きく「定型」と「非定型」に分けることができます。定型というのは第一世代とも呼ばれており、昔の抗精神病薬を指します。非定型というのは第二世代とも呼ばれており、最近の抗精神病薬を指します。

定型として代表的なものは、ハロペリドール(商品名:セレネース)やクロルプロマジン(商品名:コントミン)などです。これらは1950年代頃から使われている古いおくすりで、強力な効果を持ちますが、副作用も強力だという難点があります。

特に錐体外路症状と呼ばれる神経症状の出現頻度が多く、これは当時問題となっていました。また、悪性症候群や重篤な不整脈など命に関わる副作用が起こってしまうこともありました。

そこで、副作用の改善を目的に開発されたのが非定型です。非定型は定型と同程度の効果を保ちながら、標的部位への精度を高めることで副作用が少なくなっているという利点があります。

非定型として代表的なものが、SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)であるリスペリドン(商品名:リスパダール)やMARTA(多元受容体作用抗精神病薬)と呼ばれるオランザピン(諸品名:ジプレキサ)、DSS(ドーパミン部分作動薬)と呼ばれるアリピプラゾール(商品名:エビリファイ)などになります。

現在では、まずは副作用の少ない非定型から使用することがほとんどであり、定型を使う頻度は少なくなっています。定型が使われるのは、非定型がどうしても効かないなど、やむをえないケースに限られます。

非定型の中の位置づけですが、SDA、MARTA、DSSそれぞれの特徴として、

SDA
【該当薬物】リスパダール、ロナセン、ルーラン
【メリット】幻覚・妄想を抑える力に優れる
【デメリット】錐体外路症状、高プロラクチン血症が多め(定型よりは少ない)

MARTA
【該当薬物】ジプレキサ、セロクエル、クロザピン
【メリット】幻覚妄想を抑える力はやや落ちるが、鎮静効果、催眠効果、抗うつ効果などがある
【デメリット】太りやすい、眠気が出やすい、血糖が上がるため糖尿病の人には使えない

DSS
【該当薬物】エビリファイ
【メリット】上記2つに比べると穏やかな効きだが、副作用も全体的に少ない
【デメリット】アカシジアが多め

といったことが挙げられます。

5.ロナセンが向いている人は?

ロナセンの特徴をもう一度みてみましょう

  • 幻覚・妄想を抑える作用が強い
  • 錐体外路症状は非定型の中では多め
  • 眠気や体重増加がほとんど起きない

というメリットがあります。

そのため、ロナセンは、

  • 幻覚・妄想が主体の統合失調症の方
  • おくすりによる体重増加が心配な方
  • おくすりによる眠気や鎮静を起こしたくない方(日中仕事をしている方など)

に向いているおくすりではないでしょうか。

6.ロナセンの用法・用量

ロナセンは成人において、8mg(1日2回各4mgずつ)から開始し、徐々に増やしていきます。最大投与量は24mgまでとなっています。

ロナセンをはじめとする抗精神病薬は、ドーパミンのはたらきをブロックするはたらきを持ちますが、統合失調症においてはドーパミン2受容体を70~80%ほどブロックすることが理論上は一番バランスが良いと言われています。このブロック率だと、理論上は効果も得られて副作用も少なり、理想的な状態となるのです。

これを至適用量(Therapeutic Window)と言います。

ロナセンが至適用量(ドーパミン2受容体ブロック率が70~80%ブロック)になるには、ロナセン量として12mg~22mg程度だと報告されています。

(Journal Of Clinical Psychopharmacology 33:162-169,2013)

ただしこれはあくまでも理論上の話のため、実際は個々の症例によって適切な用量は異なってきます。

また、ロナセンは半減期(お薬の作用時間のひとつの目安)が10~16時間ほどであるため、1日2回投与とされていますが、服薬を継続していくと半減期が60~70時間まで延長すると報告されています。そのため、ロナセンをある程度継続した段階で1日1回投与に変更する先生もいらっしゃるようです。

1日1回の投与で済めば、面倒さも少なくなり、飲み忘れも減りますからありがたいですね。ある程度服薬を継続した段階で1日2回投与から1回投与に変えることは、添付文書では認められていませんが、理にはかなっています。主治医先生が許可するのであれば、施行してもよい服薬方法でしょう。

(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際のロナセン錠とは異なることをご了承下さい)

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