睡眠薬の強さはランキング付けできる?医師が教える睡眠薬の強さの考え方

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5.睡眠薬を使っても眠れない時は?

睡眠薬を処方してもらい上限量まで増やしたけどそれでも眠れない。

このような時はどうしたらいいでしょうか?

ここで安易に「もう1剤、睡眠薬を飲めばいい」と考えてはいけません。まず、眠れない原因が他にないかを考えてみることが大切です。

睡眠薬の安易な増薬は、リスク・ベネフィット比が不良であると強く指摘されています。

リスク(=副作用などの危険)が増える割に、ベネフィット(=「よく眠れた」などの効果)が得られにくいのです。

リスクで代表的なものは「耐性」「依存性」です。メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬以外の睡眠薬は耐性・依存性があります。

耐性というのは、摂取を続けるとだんだん効かなくなってくる、という現象です。依存性とは、次第にその物質がないと落ち着かなくなり手放せなくなってしまうことです。依存になってしまってから無理に断薬すると精神的に不安定になったり、ふるえや発汗などの症状が起きてしまうことがあります。

睡眠薬の量が多いほど耐性・依存性は早く形成されますので、安易にどんどんと増薬することはオススメしません。

ある睡眠薬を上限量まで飲んでも効かない場合は、まずは「環境に問題がないか」を再確認しましょう。日本睡眠学会が発表しているガイドラインの「睡眠衛生のための指導」が役立ちますので記載します。

<睡眠衛生のための指導内容>

指導項目

指導内容

定期的な運動

なるべく定期的に運動しましょう。適度な有酸素運動をすれば寝つきやすくなり、睡眠が深くなるでしょう。

寝室環境

快適な就床環境のもとでは、夜中の目が覚めは減るでしょう。音対策のためにじゅうたんを敷く、ドアをきっちり閉める、遮光カーテンを用いるなどの対策も⼿助けとなります。寝室を快適な温度に保ちましょう。暑すぎたり寒すぎたりすれば、睡眠の妨げとなります。

規則正しい⾷生活

規則正しい⾷生活をして、空腹のまま寝ないようにしましょう。空腹で寝ると睡眠は妨げられます。睡眠前に軽⾷(特に炭水化物)をとると睡眠の助けになることがあります。脂っこいものや胃もたれする⾷べ物を就寝前に摂るのは避けましょう。

就寝前の水分

就寝前に水分を取りすぎないようにしましょう。夜中のトイレ回数が減ります。脳梗塞や狭⼼症など血液循環に問題のある⽅は主治医の指示に従ってください。

就寝前のカフェイン

就寝の4時間前からはカフェインの入ったものは摂らないようにしましょう。カフェインの入った飲料や⾷べ物(例:⽇本茶、コーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートなど)をとると、寝つきにくくなったり、夜中に目が覚めやすくなったり、睡眠が浅くなったりします。

就寝前のお酒

眠るための飲酒は逆効果です。アルコールを飲むと⼀時的に寝つきが良くなりますが、徐々に効果は弱まり、夜中に目が覚めやすくなります。深い眠りも減ってしまいます。

就寝前の喫煙

夜は喫煙を避けましょう。ニコチンには精神刺激作用があります。

寝床での考え事

昼間の悩みを寝床に持っていかないようにしましょう。自分の問題に取り組んだり、翌日の行動について計画したりするのは、翌日にしましょう。心配した状態では、寝つくのが難しくなるし、寝ても浅い眠りになってしまいます。

いかがでしょうか。

書いてあることは当たり前のことばかりかもしれませんが、「全部できています」という方は意外と少ないものです。一つずつ確認し、改善できるところがあれば改善を試みてください。

それでもダメなのであれば、やむを得ず2剤目の増薬を検討します。

1剤目がある程度効いていて、もう一歩強めれば何とかなりそうという状態なら、2剤目は同じ作用機序のものでも良いでしょう。しかし、1剤目がほとんど効いていない場合は2剤目は作用機序が異なるものを選ぶ方が良いでしょう。

例えば、1剤目がベンゾジアゼピン系なら2剤目はメラトニン受容体作動薬とかオレキシン受容体拮抗薬とかです。

それでもダメな場合は3剤目、となりがちですがここは慎重に判断してください。3剤目まで使ってしまうと非常に高い確率で耐性・依存性が形成されます。また2剤目でダメだったけど3剤目でよく眠れるようになったというケースはほとんど経験しません。副作用が強くなっただけ、というケースが非常に多いのです。

このパターンでは薬漬けになってしまいますし、過量服薬してしまうリスクも高まります。

臨床経験から言っても2剤使ってもダメな場合、3剤使ってもダメな事がほとんどです。2剤飲んでもダメな場合は、睡眠薬以外のお薬を試してみる方がまだ良いと思われます。作用機序が異なるため、まだ効く可能性があります。

お薬の中には睡眠薬以外にも、眠りに効果があるお薬があります。そのようなものを補助的に用いることは臨床ではしばしば行われていることです。

例えば、

<抗うつ剤>
リフレックスレメロン(一般名ミルタザピン)
テトラミド(一般名ミアンセリン)
デジレルレスリン(一般名トラゾドン)

<抗精神病薬>
ジプレキサ(一般名オランザピン)
セロクエル(一般名クエチアピン)
ヒルナミンレボトミン(一般名レボメプロマジン)

<抗ヒスタミン薬>
・アタラックス(一般名ヒドロキシジン)

<漢方薬>
酸棗仁湯

などは眠りに導く作用があります。またこれらのお薬の中には眠りを深くしたり、眠りの質を改善させる作用が報告されているものもあり、しばしば不眠症治療の補助薬として用いられています。

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6.自己判断はしないで、主治医とよく相談しましょう

最後に、大切なことをお話させて下さい。

それは、睡眠薬は自分で勝手に調整してはいけませんという事です。

患者さんの中には、自分の判断で睡眠薬の量をどんどんと増やしてしまう方がいらっしゃいます。また、まだ疾患が十分に改善していないのに、自分の判断で睡眠薬を突然中止してしまう方もいらっしゃいます。

睡眠薬は依存性があり、勝手にどんどん増やしてしまうと依存から抜けられなくなります。また急にやめてしまうと、離脱症状や反兆性不眠という副作用が生じる事もあります。

精神的につらい時は、つい「お薬を増やしたい」と考えてしまうものです。また治療中の患者さんであれば誰もが「早くお薬をやめたい」と思っていると思います。

しかし専門家の指導なしに増薬・減薬をしてしまうと、かえって症状が悪化して治療期間が長引いてしまう事も多いのです。

増やしたい、減らしたいという希望がある際は、まずは医師に相談し、その上で医師と一緒に考えていくようにしましょう。

<まとめ>

・睡眠薬には6種類あり、それぞれの種類で強さが異なる

・現在もっともよく用いられているベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系はどれも強さは同程度で、作用時間が異なる

・睡眠薬を使っても眠れない時は、睡眠環境に問題がないか、ガイドライン等を参考に見直してみる

・睡眠薬を増薬する際は、なるべく作用機序の異なるものを選ぶ

・睡眠薬は副作用に苦しまないためにも、医師と相談して調整することが大切

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