レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)は1988年に発売された睡眠薬です。睡眠薬の中でも「ベンゾジアゼピン系」という種類に属します。
ベンゾジアゼピン系はしっかりとした効果がある割に危険な副作用も少なく、効果と安全性のバランスが良いお薬です。そのため不眠症を中心に現在でも幅広く処方されています。
ベンゾジアゼピン系の中でもレンドルミンは使い勝手の良い睡眠薬として人気です。作用の強さも中くらいで作用時間も中くらいであることも理由でしょう。
しかしベンゾジアゼピン系の安全性が高い事は確かですが、副作用を全く気にしなくて良いわけではありません。ベンゾジアゼピン系にも問題となりうる副作用はあり、効果と副作用をしっかりと理解して使うべきです。
ここではレンドルミンという睡眠薬について、その効果や特徴、作業機序や副作用などを詳しく紹介していきたいと思います。
1.レンドルミンの効果と特徴
まずはレンドルミンという睡眠薬の特徴について紹介します。
レンドルミンは、バランスに非常に優れた睡眠薬です。
効果がまずまずしっかりしている割に、副作用も少なく、また作用時間も6~8時間程度とちょうど良い時間であるため、多くの方に適している可能性の高い睡眠薬になります。
危険な副作用が生じうる可能性も高くないため、不眠に対してお薬を用いる際に、まず最初に検討される事も多いお薬になります。
レンドルミンは「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」に属します。ベンゾジアゼピン系はGABA受容体という脳のはたらきを抑制させる受容体のはたらきを強める事で、眠りを導くお薬になります。
レンドルミンの効果やその強さ・作用機序についてはこちらの記事をご覧ください。
2.レンドルミンの作用時間
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は作用時間によっていくつかの種類に分類する事ができます。
レンドルミン以外にもベンゾジアゼピン系睡眠薬はたくさんありますが、作用時間で分けると次の4種類に分ける事が出来ます。
名称 | 作用時間 | 薬名 |
超短時間型 | 2~4時間 | ハルシオン、マイスリー、アモバン、ルネスタなど |
短時間型 | 6~10時間 | レンドルミン、リスミー、デパス、エバミール/ロラメットなど |
中時間型 | 12~24時間 | サイレース/ロヒプノール、ユーロジン、ネルボン/ベンザリンなど |
長時間型 | 24時間以上 | ドラール、ダルメート/ベジノールなど |
このうち、レンドルミンは「短時間型」に属します。
短時間型は作用発現が速く、作用時間が短めの睡眠薬になりますので、入眠障害という寝つきが悪いタイプの不眠症に用いられる事の多い睡眠薬です。
レンドルミンは服用してから1.5時間ほどで血中濃度が最大となり、7時間ほどで血中濃度が半分にまで落ちると報告されています。
臨床的な感覚としては、服用してから20~30分ほどで眠気をもよおし、その効果は6~8時間程度続きます。
レンドルミンの作用時間についてはこちらの記事をご覧ください。
またお薬の作用時間を知るためには「半減期」という概念を知っているとより詳しく理解する事が出来ます。
半減期とは服用したお薬の血中濃度が半分に落ちるまでにかかる時間の事で、お薬の作用時間とある程度相関する事が知られています。
半減期についての詳しい説明や、レンドルミンの半減期についてはこちらをご覧ください。
3.レンドルミンの副作用
どんなお薬にも副作用はあります。レンドルミンも同様です。
レンドルミンは安全性の高い睡眠薬ではありますが、だからといって副作用がゼロなわけではありません。
服用する際は、得られる効果(メリット)と副作用(デメリット)をしっかりと理解する事が大切です。
レンドルミンで注意すべき副作用にはいくつかありますが、みなさんに知っておいて欲しいのが、「耐性」と「依存性」です。
これはレンドルミンに限らずすべてのベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に認められる副作用になります。
耐性というのは、身体がお薬に慣れてきてしまい、徐々に効きが悪くなっていくことです。最初は1錠飲めばぐっすり眠れていたのに、連用していたら次第に2錠飲まないと眠れなくなってきた。このような場合、「レンドルミンに耐性が生じている」と考えられます。
依存性とは、身体がお薬に慣れてしまい、そのお薬なしだと身体が落ち着かなくなってしまう事です。毎日お薬が体内に入ってくるのが当たり前になると、ある日突然お薬が入ってこなくなると、ソワソワ・イライラといった精神症状や、ふるえ・発汗・動悸などの身体症状が出現してしまうようになります。このような場合「レンドルミンに依存性が形成されている」と考えられます。
耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいと思います。アルコールにも耐性と依存性があります。アルコールを毎日飲んでいると、次第に同じ量では酔えなくなり飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されていると言えます。またアルコールを毎日大量に飲むという生活を続けていれば、アルコールが飲めない状況になった時に落ち着かなくなったり、震えが生じたりします。これは依存性が形成されていると言えます。
レンドルミンもこれと同じ副作用が生じるリスクがあります。耐性が形成されるとお薬を飲んでも眠れなくなってしまうため、不眠を治す事が難しくなってしまいます。また多量服薬などの危険な行為にもつながりやすくなります。
依存性が形成されると常にそのお薬を手放せなくなり、本人の人生に大きな不利益を与えます。
またレンドルミンは耐性・依存性以外にも気を付けるべき副作用があります。
- 眠気
- ふらつき・転倒
- 健忘
などが挙げられます。
レンドルミンの副作用と、その対処法についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
▽ レンドルミンの副作用と対処法【医師が教える睡眠薬の全て】
4.レンドルミンとアルコール
睡眠薬とアルコール(酒)は相性が良くありません。
にも関わらず、睡眠薬とアルコールを併用する方は多いようです。
夜にアルコールを飲んでから睡眠薬を服用するという事を、特に「まずい事」だと意識せずに行っている方も多いようです。
成人であれば、社会人としてのお付き合いなどもありますから、飲酒をせざるを得ない事もあるでしょう。しかし睡眠薬とアルコールは相性が良くないという事は覚えておく必要があります。
睡眠薬とアルコールを併用するとどのような問題が起こるのでしょうか。
実は睡眠薬とアルコールというのは似た性質を持つところがあり、作用点も共通しているところがあります。そのため両者を一緒に服用してしまうと、
- お互いの作用を増強してしまう
- お互いの効きを不安定にしてしまう
可能性があるのです。
問題は、アルコールにもレンドルミンにもどちらにも「耐性」と「依存性」がある事です。これらがお互いの作用を不安定にさせ、時に増強させてしまえば、耐性や依存性がより早く形成される可能性が出てくるという事になります。
アルコール依存症や睡眠薬の依存は社会問題にもなっており、一度なってしまうとそこから抜け出す事は非常に大変です。できる限り依存形成は避けるべきであり、依存形成を自ら早めてしまうようなアルコールと睡眠薬の併用はできる限り避けるべきなのです。
アルコールと睡眠薬を併用してしまうと実際にどのような害が出るのか、そしてアルコールと睡眠薬の併用を避けるためにはどのような工夫があるのかはこちらの記事で詳しく紹介しています。
▽ レンドルミンと酒・アルコール【医師が教える睡眠薬の全て】
5.レンドルミンDとは?
レンドルミンには「レンドルミンD」という剤型もあります。レンドルミンDはレンドルミンと何が違うのでしょうか。
実はレンドルミンもレンドルミンDもお薬に含まれている主成分は同じです。どちらも「ブロチゾラム」という成分が含まれており、お薬の効き方も全く同じになります。
両者の何が違うかというと、レンドルミンDは口の中で溶ける剤型になります。レンドルミンDの「D」は「Disintegrating(崩壊する)」の略で、口の中に入れると唾液で自然と溶けるように工夫された剤型だという事です。
レンドルミンD錠は、口の中で溶けてそのまま飲み込めるため、外出先など水が手元にないような状況でも服用できる剤型になります。
レンドルミンもレンドルミンDも薬効的には全く変わりませんので、自分のライフスタイルや好みに合わせて使い分けて問題ありません。
レンドルミンDについてはこちらの記事で詳しく説明していますので、ご覧ください。
6.レンドルミンのジェネリック
レンドルミンは1988年に発売されており、今となっては古いお薬になります。
しかし古いお薬ではありますが、今でも多く処方されているためジェネリック医薬品が多く発売されています。
ジェネリック医薬品は先発品であるレンドルミンと同じ主成分を用いて、他の製薬会社より発売されているお薬で、お薬の開発・研究費がかからない分だけ薬価が安く設定されています。
お薬の価格は安いに越したことはありませんので、安くて同じ効果の得られるジェネリック医薬品はとてもありがたいお薬になります。
レンドルミンのジェネリック医薬品はいくつかの名称があります。近年のジェネリック医薬品はほとんどがそのお薬の一般名がお薬の名前になっています。レンドルミンは一般名が「ブロチゾラム」ですので、ブロチゾラムという名前のお薬はすべてレンドルミンのジェネリック医薬品だと考えて頂いて問題ありません。
またそれ以外にもレンドルミンのジェネリック医薬品があります。
レンドルミンのジェネリック医薬品について紹介します。
7.レンドルミンの致死量
睡眠薬は時に自殺の方法として使われる事があります。
「睡眠薬を大量に飲んで自殺を図った」などドラマなどで見る事があり、それを真似て睡眠薬を大量に飲んで自殺を図ろうとされる方がいらっしゃいます。
ではレンドルミンは一体、どのくらい飲めば致死量になるのでしょうか。
実はレンドルミンは安全性が高く、一般的に考えられる一度に飲める量を目いっぱい飲んだとしても死ぬことはできません。
中途半端にお薬が効きすぎてしまい、より辛い思いをする事になるだけです。
「死にたい」という気持ちがある際は、睡眠薬を過量服薬するのではなく、周囲に助けを求めて下さい。それは自分の親や親友といった本当に身の回りの方でも構いません。
近くに相談できる人がいない場合は、精神科や「命の電話」、保健センターなどに相談しても良いでしょう。睡眠薬を大量に飲むよりもはるかにいいはずです。
レンドルミンの致死量について、詳しくはこちらをご覧ください。
また「死にたい」という気持ちがどうしても抑えられないという方は、ぜひこちらの記事をお読みください。
▽ もう死にたい・・・、と考えてしまう時に思い出して欲しい事
8.レンドルミン以外の睡眠薬について
睡眠薬にはレンドルミン以外にもたくさんの種類があります。
では現在処方できる睡眠薬ってどのようなものがあるのでしょうか。またその中でレンドルミンはどのような位置づけなのでしょうか。
現在処方できる睡眠薬とその特徴については、こちらの記事で詳しくまとめていますのでご覧ください。