心臓神経症とはどのような病気なのか

心臓神経症とは

心臓神経症は、心臓に分布する自律神経系が不調を来たす事により様々な心臓症状が現れる疾患です。

心臓は身体の中でも特に重要な臓器です。そのため心臓に症状が出現すると「死んでしまうのではないか」と強い恐怖を感じてしまいます。

しかし心臓の検査をしても何も異常はないため、周囲からは「何も問題がないのに大袈裟だ」と思われてしまい、これがまた患者さんをより苦しませます。

心臓神経症を克服するためには心臓神経症について正しく知り、正しい対処法を取る事が大切です。やみくもに不安になっているだけでは症状はどんどんと悪化してしまうでしょう。

ここでは心臓神経症を改善させるための手順についてお話ししたいと思います。

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1.心臓神経症とは

心臓神経症というのはどのような病気なのでしょうか。

簡単に言ってしまうと心臓神経症というのは、「心臓」に生じている「神経症」です。

【神経症(ノイローゼ)】
ストレスによって自律神経のバランスが乱れ、心身に様々な症状が現れる疾患。

心臓神経症は神経症の一型という事です。

しかし神経症という用語は昔に使われていた名称であり、現在はあまり使われる事はありません。現在では、

  • 神経症のうち、精神症状が主体のものは不安障害
  • 神経症のうち。身体症状が主体のものは心身症

と呼ばれています。

また心身症の中で器質的異常(実際に検査で認められる異常)がないものは「自律神経失調症」と呼ばれることもあります。

心臓神経症は、ストレスなどの精神的ダメージによって自律神経のバランスが崩れ、心臓に身体症状が現れる疾患です。しかし検査をしても心臓には器質的異常は認められません。ここから心臓神経症は、心身症あるいは自律神経失調症の一型だという事が出来ます。

心臓神経症では、

  • 動悸
  • 呼吸苦
  • 胸痛
  • めまい

など、まるで「心臓に病気が生じたのではないか」と思うような症状が出現します。しかし心臓自体には何も異常はなく、異常があるのは心臓に分布している自律神経で、この自律神経の失調により上記の症状が出現するのです。

特に、

  • 不安が強かったり心配性の方
  • 自分の心臓に病気があるのではないかと感じている方

などでは生じやすくなります。

不安が強かったり心配性の方というのはストレスを強く受け止め、また溜め込みやすい傾向があります。そのため心臓神経症に限らず自律神経失調症を発症しやすくなります。

また自律神経失調症の中でも特に心臓に限局して症状が出るというのは、自分の心臓について強く意識しているような場合が多く、例えば、

  • 心臓疾患が多い家系であり、自分もそうなるのではないかと不安

というケースでは日ごろから自分の心臓に意識を向けやすいため、心臓神経症を発症しやすくなります。

自律神経失調症では「精神相互作用」という症状の特徴があります。これは、ある感覚に意識を集中させてしまうと、その感覚がより一層強くなってしまう現象です。自分の心臓に問題があるのではないか、と普段から考えている方は、動悸などのちょっとした心臓の症状があっただけでも、心臓に強く意識を向けてしまいます。

するとその症状はより強く感じられてしまうため、どんどんと心臓の症状が強まっていってしまうのです。

2.心臓に症状を感じたらどうしたらいいのか

胸痛や動悸、呼吸苦、めまいといった心臓の問題を疑うような症状を感じたらどうすればいいのでしょうか。

「心臓に問題があったら大変だ」と考え、まずは心臓の専門である循環器科を受診する方が多いと思います。

これは正しい行動です。

いきなり最初から「これは心臓神経症だ」と決めつけてはいけません。

本当に心臓の病気である可能性もありますので、まずは循環器科を受診し、心臓の検査をすべきでしょう。若い方などであれば、よほど不摂生な食生活をしているとかがない限りは、心臓に問題があるという可能性は低いのですが、絶対にないとは言い切れません。

まずは循環器科を受診し、心臓の専門医の診察や検査を受けて、心臓に異常がないかを確認してもらいましょう。もし心臓に重篤な異常があれば、しっかりと精査を行えば発見される可能性は高いでしょう。

検査としては、

  • 心電図(負荷心電図)
  • 心臓超音波検査
  • 血液検査

などがあり、必要に応じて医師が適切な検査を選択してくれます。

循環器を受診して心臓に大きな異常がない事が分かり、心臓神経症だと診断されたのであれば、次は心臓神経症に対する正しい理解が必要になります。

心臓神経症は心臓の異常ではなく、自律神経の異常です。

心臓自体が悪いわけではないという事をしっかりと理解しましょう。自律神経の異常は決して軽視して良いものではありませんが、それ自体が直接命を落とす原因となるものではありません。

「動悸や胸痛があるけども、これによって死んでしまう事はないのだ」という事をまずはしっかりと理解して下さい。

心臓神経症について正しく理解する事は、その症状によって生じる恐怖を和らげる効果が期待できます。同じ胸痛という症状でも、「この症状で自分は死んでしまうかもしれない」と認識するのと、「この症状は心臓が悪くて生じているわけではないんだ」と認識するのとでは、症状によって生じる精神的ストレスは異なってきます。

後者の認識が出来るようになれば、いたずらに恐怖を増悪させ、更に自律神経系を乱してしまうという悪循環を断ち切る事が出来ます。

その後同じような心臓症状を認めた場合は、心臓神経症の可能性が高いと考えられますから、毎回循環器科を受診する必要はありません。心臓神経症として適切な対処を行うようにしましょう。正しい対処法が分からない場合は、心療内科や精神科を受診し、心臓神経症の相談をしても良いでしょう。もちろん、いつもと違う心臓症状が出現した場合は、再度循環器科を受診する必要があります。

ちなみに心臓の重篤な疾患としては、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患と呼ばれる疾患があります。心臓神経症の方は、この虚血性心疾患と心臓神経症の症状の特徴の違いを理解しておくと良いでしょう。

【症状】 【虚血性心疾患】 【心臓神経症】
痛みの性状 締め付けられるような痛み チクチク・ズキズキといった痛み
持続時間 狭心症であれば数分。
心筋梗塞であれば20分以上だが、20分以上持続した場合は極めて重篤な状態になるはず(*)。
様々。一日中続く事も多い
生じやすい時 労作時や夜中などの寒冷時 ストレスがかかった時
部位 胸の真ん中 様々。胸の左側が痛む事が多い

(*)酸素濃度が下がったり、意識レベルが低下したり、血圧や脈拍が異常値になったり、血液検査で異常所見が認められる(トロポニンT、白血球、CK、AST、LDHなどの上昇)。

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3.心臓神経症を克服するためには

動悸や胸痛・呼吸苦などが生じ、「心臓に問題があるのでは」と考えて循環器科を受診したけども、心臓には何も異常がない。このような場合、それは「心臓神経症」である可能性が高いでしょう。

心臓神経症は心臓に問題があるわけではなく、心臓に分布する自律神経系のバランスが崩れる事で生じます。

そのため心臓神経症の克服法というのは、心臓疾患の治療法とは異なります。

では心臓神経症を克服するためにはどのような方法があるのでしょうか。

Ⅰ.心臓神経症の正しい理解を

心臓神経症を克服するための第一歩は、この疾患について正しく理解する事から始まります。

心臓神経症では、心臓には異常所見は認められません。しかし認められている症状は決して気のせいではありません。

「何も異常がないのに大袈裟だ」
「気の持ちようだろう」

と心無い事を言う方もいるかもしれませんが、苦しい症状が現れているのは事実です。ですから決して放置せず、適切な対処法を行っていきましょう。

心臓神経症の方に正しく理解しておいて欲しい事として、次のような事があります。

  • 心臓に問題があるわけではないので、命に関わるような事にはならない
  • しかし決して症状を大袈裟に感じていたり、気持ちが弱いというわけではない
  • 原因である精神的ストレスを除去すれば症状は必ず改善する

Ⅱ.自律神経を整える生活を

心臓神経症で、動悸や胸痛・呼吸苦などが出現するのは、心臓に問題があるからではありません。

その原因は自律神経系の乱れにあります。

心臓神経症とは「心臓に分布する自律神経の失調症」であり、自律神経失調症の一型だと考えられます。

という事は心臓神経症の治療法というのは、自律神経失調症に準じます。

自律神経失調症の治療というのは、自律神経のバランスを整える方法になります。

具体的には、

  • ストレスを軽減させる
  • 生活習慣を整える

の2つが自律神経失調症の治療の2本柱となります。

ストレスは現実問題としてすべて取り除くのは難しいかもしれません。しかしすべては取り除けなかったとしても、少しでも軽減できる方法はないのかを考えてみたり、ストレスを溜め込んでしまった分、意識して発散する時間を作るなどの工夫をしてみましょう。

ストレスを軽減できた分だけ、症状も和らいでいきます。

また生活習慣は自分の努力次第で整える事が出来ますので、必ず行うようにしましょう。自律神経症状が出現している方の生活習慣を見てみると、乱れている事が少なくありません。

不規則な睡眠リズムや食生活があるのでしたら正さないといけません。タバコやアルコールなどは出来る限り控えましょう。

日中は日の光を浴び、適度に身体を動かしましょう。

このような生活習慣の改善を心がけるだけでも自律神経は整っていきます。

Ⅲ.安心を多く得られるようにする

心臓神経症は心身症や自律神経失調症に分類できます。これらの疾患は「不安」が根本にあり、これが自律神経系のバランスを乱す一因となります。

不安が問題なのですから、その解決策は不安をなるべく取り除くことになります。

不安の反対は「安心」です。

つまり、生活の中で安心を多く得られるような工夫を増やしていけば、不安は軽減していき、心臓神経症の症状も良くなっていくという事です。

安心を得られるような工夫として、お薬を常に手元に持っておくのも有用でしょう。

不安を抑える作用を持つ「抗不安薬」は服用すれば不安を軽減させて症状を和らげてくれるだけでなく、持っておくだけで「いざとなればこれがあるから大丈夫」という安心を与えてくれます。

また、信頼できる人に自分のつらい気持ちを共有するという事も安心を得るためには有用です。「自分を理解してくれる人がいる」「自分を支えてくれる人がいる」という安心感は、それだけで症状を良い方向に向かわせてくれます。

Ⅳ.精神療法

認知行動療法森田療法といった精神療法も心臓神経症の改善には有用です。

精神療法は即効性のある治療法ではありませんが、腰を据えてしっかりと取り組めば安定した精神状態を保ちやすくすることができます。

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