抗不安薬の効果と副作用。医師が教える抗不安薬一覧と選び方

抗不安薬とは、主に不安を和らげる作用を持つお薬で、精神科・心療内科領域で用いられています。「安定剤」「精神安定剤」などと呼ばれることもあります。

抗不安薬はたくさんの種類があります。どれも不安を和らげる作用を持つ事は同じですが、それぞれ特徴は異なります。

「今の自分の症状に一番合っている抗不安薬はどれなのだろう」
「今飲んでいる抗不安薬はどのような特徴を持っているのだろう」

抗不安薬にはたくさんの種類があるため、このような疑問を持っている患者さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

抗不安薬は不安で苦しんでいる方にとって役立つお薬です。しかし一方で乱用や過量服薬・依存性なども問題となっており、正しい知識を持って適切に使用することが求められています。

自分が使っている抗不安薬の特徴やメリット・デメリットを知り、抗不安薬の正しい選び方を考えてみましょう。

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1.抗不安薬とは?

まずは抗不安薬とはどのようなお薬なのかを紹介します。

抗不安薬とは、不安を和らげる作用を持つお薬のことです。

具体的には現在「抗不安薬」に分類されるのは、

  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬
  • セロトニン1A部分作動薬

の2つがあります。

臨床で使われているのは圧倒的にベンゾジアゼピン系抗不安薬の方です。その理由はベンゾジアゼピン系の方が効果がしっかりしているためです。一方でセロトニン1A部分作動薬は副作用は少なく安全性に優れるのですが、効果が非常に弱いため今一つ普及していません。

Ⅰ.ベンゾジアゼピン系抗不安薬

ベンゾジアゼピン系抗不安薬のお薬の中で代表的なものを挙げると、

  • デパス(一般名:エチゾラム)
  • ソラナックス(一般名:アルプラゾラム)
  • ワイパックス(一般名:ロラゼパム)
  • レキソタン(一般名:ブロマゼパム)

などがあります。

ベンゾジアゼピン系は不安を抑える作用がしっかりしており頼れるお薬です。また即効性に優れるものも多く、いざという時にすぐに効果を得る事も出来ます。

ベンゾジアゼピン系は不安を抑える作用以外にも、

  • 筋弛緩作用(筋肉の緊張を和らげる作用)
  • 催眠作用(眠くする作用)
  • 抗けいれん作用(けいれんを抑える作用)

といった心身をリラックスさせる様々な作用を持ち、これらの作用も症状改善に役立つことがあります。

ベンゾジアゼピン系の問題点としては、長期間あるいは多量の使用を続けていると耐性や依存性が生じる可能性がある事です。

【耐性】
そのお薬に身体が慣れてきてしまい、効きが段々悪くなってくること。耐性が生じるとお薬の量を増やさないと同じ効果が得られなくなり、服用量がどんどん増えてしまう危険がある。

【依存性】
そのお薬がないと心身が落ち着かなくなってしまうこと。依存が生じると、お薬の効果がなくなるとイライラ・ソワソワして落ち着かなくなったり、震え・発汗・めまい・しびれ・頭痛などの身体症状が現れてしまう。依存になってしまうとお薬をやめることが難しくなってしまう。

また筋弛緩作用や催眠作用によって眠気やふらつき、物忘れといった副作用が生じる可能性があり、特に高齢者では転倒や骨折の原因になる事もあるため注意が必要です。

Ⅱ.セロトニン1A部分作動薬

セロトニン1A部分作動薬は、

  • セディール(一般名:タンドスピロン)

という1剤のみ発売されています。副作用が少なく、またベンゾジアゼピン系で問題となる耐性や依存性は生じないのですが、一方で効果が弱いところが欠点です。

安全性に優れるという点では良いお薬なのですが、効果がとても弱いためあまり処方されていないのが現状です。

2.抗不安薬で得られる効果と作用機序

抗不安薬はそれぞれどのような機序によって不安を和らげてくれるのでしょうか。

抗不安薬には、

  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬
  • セロトニン1A部分作動薬

の2つがあり、ともに不安を抑える作用があります。

不安を抑える作用(抗不安作用)の強さは、ベンゾジアゼピン系の方が強く、またベンゾジアゼピン系には抗不安作用以外にもいくつか心身をリラックスさせる作用があります。

一方でセロトニン1A部分作動薬は不安を抑える作用を有するものの効果は非常に弱いのが特徴です。その代わり副作用も少なく安全性には優れます。

それぞれの作用機序について見ていきましょう。

Ⅰ.ベンゾジアゼピン系抗不安薬の効果と作用機序

脳には興奮性の神経と抑制性の神経があります。

興奮性の神経は脳を覚醒させる神経で、主に集中している時や日中などに活性化します。一方で抑制性の神経は脳を鎮静させる神経で、リラックス時や夜間に活性化します。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、脳の抑制性神経に存在するGABA受容体を刺激する作用を持ちます。これにより抑制性神経のはたらきが増強され、

  • 抗不安作用(不安を和らげる作用)
  • 催眠作用(眠くする作用)
  • 筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす作用)
  • 抗けいれん作用(けいれんを抑える作用)

という4つの作用を発揮します。

ベンゾジアゼピン系のお薬には、基本的には4つの作用が全てあります。しかしそれぞれの強さはお薬によって違いがあり、例えば抗不安作用は強いけど抗けいれん作用は弱いベンゾジアゼピン系もあれば、抗不安作用は弱いけど催眠作用が強いベンゾジアゼピン系もあります。

そしてベンゾジアゼピン系のうち、抗不安作用が特に強いものは「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」と呼ばれます。

Ⅱ.セロトニン1A部分作動薬の効果と作用機序

セロトニン1A部分作動薬はセディール(一般名:タンドスピロン)のみがあります。

このお薬は脳神経に存在するセロトニン1A受容体(5‐HT1A受容体)に部分的に作用することで、抗不安作用を発揮します。

セロトニンは不安に関係している物質であるため、その受容体を適度に刺激する事で不安を改善させる作用を発揮してくれるのです。

ちなみにベンゾジアゼピン系と違ってGABA-A受容体には作用しないため、催眠作用や筋弛緩作用、抗けいれん作用などはありません。

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3.抗不安薬の副作用

抗不安薬にはそれぞれどのような副作用があるのでしょうか。

抗不安薬には、

  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬
  • セロトニン1A部分作動薬

の2つがあり、それぞれ作用機序が異なるため副作用も異なります。

それぞれの副作用についても見ていきましょう。また一般的な対処法についても簡単に説明します。

Ⅰ.ベンゾジアゼピン系抗不安薬の副作用と対処法

ベンゾジアゼピン系は不安を抑える作用に優れ、他にも催眠作用・筋弛緩作用・抗けいれん作用など心身をリラックスさせる様々な作用を有しています。

頼れるお薬ですが、一方で副作用にも注意が必要になります。

ベンゾジアゼピン系では次のような副作用に特に注意する必要があります。

耐性・依存性

長期的に見ればベンゾジアゼピン系で一番問題となりうる副作用は「耐性」「依存性」になります。

ベンゾジアゼピン系は、長期間・大量の服用を続けていると耐性・依存性が生じやすくなります。特に主治医が決めた用法・用量を守らずに自己調整してしまう方や、無茶な使い方を続けているような方では高い頻度で耐性・依存性が生じてしまいます。

耐性というのは、心身が徐々にお薬に慣れてきてしまう事です。耐性が生じると、最初は1錠飲めば十分効いていたのに、次第に1錠では全然効かなくなってしまい、2錠、3錠・・・、と服用する量が増えていきます。

そして依存性というのは、お薬に心身が頼り切ってしまい、お薬なしではいられなくなってしまう事です。依存性が生じると、お薬が切れると落ち着かなくなったり、動悸や震え・発汗といった症状が認められるようになります。

耐性も依存性もアルコールを例に考えると理解しやすいと思います。「アルコール依存症」という言葉からも分かるように、アルコールにも耐性と依存性があります。

アルコールを毎日毎日たくさん飲んでいると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなってきます。これは耐性が形成されているという事です。耐性が形成されると、酔える量を求めて飲酒量がどんどん増えていきます。

また過度の飲酒を続けていると、次第にお酒を手放せなくなり、常にアルコールを求めるようになります。これは依存性が形成されているという事です。依存性が形成されるとアルコールがないと落ち着かずにイライラ・ソワソワするようになったり、お酒が飲めない時間が長くなると震えや発汗などの離脱症状が生じるようになります。

これと同じような状態がベンゾジアゼピン系でも生じうるという事です。

しかしベンゾジアゼピン系には耐性と依存性がありますが、アルコールと比べて特段強いわけではなく、アルコールと同程度の強さだと考えられています。

アルコールには耐性・依存性がありますが、節度を持った飲酒をしていれば耐性・依存性が形成される事はまずありません。そして実際にほとんどの大人は節度を持った飲酒ができており、そのためアルコールと服用する機会はありながらもアルコール依存にはなっていません。

ベンゾジアゼピン系もこれと同じです。医師の指示通りに、節度のある服用法を守っていれば、問題となるほどの耐性や依存性が形成される事はほとんどないのです。

そのため、耐性・依存性を形成させないためにまず気を付ける事は「必ず医師の指示通りに服用する」ことです。

主治医は、耐性・依存性がなるべく生じないように考えて、お薬を処方しています。

アルコールも抗不安薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。それなのに主治医が想定している量よりも多い量を自己判断で服用してしまうと、当然耐性・依存性は形成されやすくなります。

またベンゾジアゼピン系をアルコールと併用することもよくありません。

アルコールとベンゾジアゼピン系を一緒に使うと、お互いの血中濃度を高め合ってしまうようで、耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。

また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。

基本的にベンゾジアゼピン系というのは「一時的に用いるお薬」になります。ずっと飲み続けるものではなく、不安の原因が解消されるまでの「一時的しのぎのお薬」だという認識を持つようにして下さい。

もし長期的に不安をお薬で抑えたい場合は抗不安薬は不向きで、そのようなケースでは途中で抗不安薬からSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)という抗うつ剤に切り替えていく必要があります。

ベンゾジアゼピン系を服用中は、定期的に「服用量を減らせないか」と検討する必要があり、本当はもう必要ない状態なのに漫然と長期間内服を続けてはいけません。

服用期間が長くなればなるほど、耐性・依存性のリスクは高まります。

眠気、倦怠感、ふらつき

ベンゾジアゼピン系には催眠作用・筋弛緩作用があるため、これが強く出すぎると、眠気やだるさが生じる事があります。またふらつきやそれに伴う転倒などが生じてしまう事もあります。

ではベンゾジアゼピン系を服用していてこれらの症状が生じてしまったら、どのような対処法を取ればよいのでしょうか。

もし服用を始めてまだ間もないのであれば、少し様子をみてみるのも手です。なぜならば、服用を続けていくと次第に身体がお薬に「慣れてくる」ことがあるためです。

もし眠気やだるさが何とか様子を見れる程度であるならば、1~2週間ほど様子をみてみましょう。少しずつ身体が慣れてきて眠気やだるさが軽減していく事があります。

しばらく様子をみても副作用が改善しない場合、次の対処法は「服薬量を減らすこと」になります。

一般的に服用量を減らせば作用も副作用も弱まります。抗不安作用も弱まってしまうというデメリットはありますが、副作用がつらすぎる場合は仕方ありません。

また「ベンゾジアゼピン系の種類を変えてみる」という方法もあります。筋弛緩作用や催眠作用が少ない他のベンゾジアゼピン系に変更すると、改善を得られる可能性があります。

ただしどのベンゾジアゼピン系にも多少なりとも筋弛緩作用や催眠作用があります。余計悪化してしまう可能性もありますので、どのベンゾジアゼピン系に変更するかは主治医とよく相談して決めていく必要があります。

物忘れ(健忘)

ベンゾジアゼピン系のお薬は心身をリラックスさせるはたらきがあるため、頭がボーッとしてしまい物忘れが出現することがあります。

実際、ベンゾジアゼピン系を長く使っている高齢者は認知症を発症しやすくなる、という報告もあります(詳しくは「高齢者にベンゾジアゼピン系を長期投与すると認知症になりやすくなる【研究報告】」をご覧ください)。

適度に心身がリラックスし、緊張がほぐれるのは良いことですが、日常生活に支障が出るほどの物忘れが出現している場合は、お薬を減薬あるいは変薬する必要があるでしょう。

Ⅱ.セロトニン1A部分作動薬の副作用と対処法

ベンゾジアゼピン系と比べるとセロトニン1A部分作動薬は、効果が弱い分副作用も少ないお薬になります。

ベンゾジアゼピン系と異なり、耐性・依存性がないのはもちろんのこと、催眠作用や筋弛緩作用もないため、眠気やふらつき・集中力低下といった副作用も少なくなります。

セロトニンに作用するセロトニン1A部分作動薬は、消化管に存在するセロトニン受容体にも多少作用してしまう事で、軽度の胃腸症状の副作用を引き起こす事があります。しかしこちらも軽度である事が多く、困るほど重度となる事はほとんどありません。

セロトニン1A部分作動薬で一応報告されている副作用としては、

  • 眠気、ふらつき
  • 倦怠感
  • 悪心、食欲不振

などがあります。

いずれも軽度であることがほとんどであり、問題になるほどの重い症状になることは稀です。

4.抗不安薬の種類と分類

抗不安薬はたくさんの種類があるため、患者さんも自分が飲んでいる抗不安薬がどのような位置づけなのかよく分かっていない事も多いと思います。

ここでは実際の臨床で用いられている代表的な抗不安薬のそれぞれの位置づけを紹介します。

それぞれの抗不安薬の特徴を把握するためには、

  • 抗不安作用(不安を和らげる作用)の強さ
  • 作用時間

の2つの軸で抗不安薬を考えると理解しやすくなります。

なお、実際の臨床で用いられている抗不安薬はほとんどがベンゾジアゼピン系のため、ここでは主にベンゾジアゼピン系抗不安薬の種類と分類について紹介します。

セロトニン1A部分作動薬は「セディール(一般名:タンドスピロン)」というお薬のみあり、これは効果も非常に弱く副作用も非常に少ないというイメージを持っておけば問題ありません。

Ⅰ.抗不安薬を強さで分類する

代表的な抗不安薬を、

  • 抗不安作用が強い
  • 抗不安作用が中くらい
  • 抗不安作用が弱い

という3つに分類すると次のようになります。

抗不安作用 商品名(一般名)
強い ・デパス(一般名:エチゾラム)
・レキソタン・セニラン(一般名:ブロマゼパム)
・ワイパックス(一般名:ロラゼパム)
・リボトリール・ランドセン(一般名:クロナゼパム)
・レスタス(一般名:フルトプラゼパム)
中等度 ・ソラナックス・コンスタン(一般名:アルプラゾラム)
・セパゾン(一般名:クロキサゾラム)
・セルシン・ホリゾン(一般名:ジアゼパム)
・メイラックス(一般名:ロフラゼプ酸エチル)
弱い ・グランダキシン(一般名:トフィソパム)
・リーゼ(一般名:クロチアゼパム)
・セレナール(一般名:オキサゾラム)
・バランス・コントール(一般名:クロルジアゼポキシド)

抗不安薬作用が強いものほどしっかりと不安を抑えてくれますが、強ければ強いほど良いというわけではありません。

一般的に作用が強ければ強いほど、副作用も多くなる傾向があります。またベンゾジアゼピン系抗不安薬には耐性・依存性がある事が知られており、作用が強いほど耐性や依存性も生じやすくなります。

そのため自分の不安の強さに応じて、適切な強さの抗不安薬を選ぶことが大切です。

Ⅱ.抗不安薬を作用時間で分類する

抗不安薬を、

  • 作用時間が短い(6時間前後)
  • 作用時間が中くらい(12時間前後)
  • 作用時間が長い(24時間以上)

で分類すると次のようになります。

作用時間 商品名(一般名)
短い ・グランダキシン(一般名:トフィソパム)
・リーゼ(一般名:クロチアゼパム)
・デパス(一般名:エチゾラム)
中等度 ・レキソタン・セニラン(一般名:ブロマゼパム)
・ワイパックス(一般名:ロラセパム)
・ソラナックス・コンスタン(一般名:アルプラゾラム)
・セパゾン(一般名:クロキサゾラム)
長い ・セレナール(一般名:オキサゾラム)
・バランス・コントール(一般名:クロルジアゼポキシド)
・セルシン・ホリゾン(一般名:ジアゼパム)
・リボトリール・ランドセン(一般名:クロナゼパム)
・メイラックス(一般名:ロフラゼプ酸エチル)
・レスタス(一般名:フルトプラゼパム)

Ⅲ.抗不安薬の強さ・作用時間一覧

以上の2つの軸である

  • 抗不安作用の強さ
  • お薬の作用時間

から代表的な抗不安薬を比較すると次のようになります。

抗不安薬作用時間(半減期)抗不安作用
グランダキシン短い(1時間未満)
リーゼ短い(約6時間)
デパス短い(約6時間)+++
ソラナックス/コンスタン普通(約14時間)++
ワイパックス普通(約12時間)+++
レキソタン/セニラン普通(約20時間)+++
セパゾン普通(11-21時間)++
セレナール長い(約56時間)
バランス/コントール長い(10-24時間)
セルシン/ホリゾン長い(約50時間)++
リボトリール/ランドセン長い(約27時間)+++
メイラックス非常に長い(60-200時間)++
レスタス非常に長い(約190時間)+++

「半減期」という言葉がありますが、半減期というのはそのお薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、作用時間を知る1つの目安になる値です。実際は半減期だけで作用時間を特定することはできませんが、目安の1つとしては有用です。

抗不安薬を選択するとき、基本的な考えとしては

  • どれくらいの強さのものを選ぶべきか
  • どのくらいの作用時間のものを選ぶべきか

という2つの観点から考えます。

強さは、強ければ強いほど良いというものではなく、自分の不安の強さに応じて選ぶべきです。仮に不安を数値化できるとして、あなたの不安が「5」だったら、「5」に近い強さを持つ抗不安薬を選択することが大切です。

不安が「5」なのに「10」の強さを持つ抗不安薬を選んでしまうと、短期的には不安は抑えられるかもしれませんが、長期的には副作用で困ることになります。眠気やふらつき、物忘れなどの副作用が出現しやすくなったり、耐性や依存が生じやすくなってしまいお薬をなかなかやめられなくなってしまう可能性が高くなるでしょう。

反対に不安が「5」なのに「2」の強さしかない抗不安薬を選んでしまうと、不安が十分に抑えられないため、症状がいつまでも改善せず病気も長引いてしまいます。

自分の不安を抑えるのにちょうど良い強さの抗不安薬を選択することが大切です。

また作用時間は、手間や微調整の必要性、安全性などを考えて選びます。

作用時間の短いものはすぐに効果がなくなってしまうため、1日に何回も服薬しなければいけず手間になりますが効果の微調整をしやすいという利点もあります。作用時間が短いものであれば、例えば「日中にだけ普段が強いから日中だけ薬効を発揮させたい」という使い方も可能になります。

また作用時間の短いものの方がサッと効いてサッと消えるため、効果を実感しやすいという面もあります。しかし作用時間の短いものはどちらかというと耐性・依存性が生じやすい傾向もあるため注意も必要です。

一方で作用時間の長いものは、ゆっくり効果が出てくるため、効果を感じにくいのが欠点です。また微調整が出来ないため、副作用が出てしまったらお薬が抜けるまで長時間我慢しないといけません。しかし1日1回の服用などで良いため、手間的には楽になります。また作用時間の長いものの方が耐性・依存性も生じにくいと考えられています。

どちらも一長一短あるため、自分が困っている不安の状態に応じて適切なお薬を選択することが大切です。

5.頓服薬としての抗不安薬の選び方

抗不安薬は、すぐに効果が得られるというのが利点の1つです。

そのため抗不安薬の中でも特に即効性に優れるものは「頓服」として使われることもあります。

頓服というのは、不安が急に強まってきた時に、その場の不安を取りあえず抑えるために服用するという「その場しのぎ」の飲み方です。

頓服は、大きな不安を感じる出来事が生じる直前、あるいは生じてすぐに服用します。例えば、人前で発表する前に頓服として服用したり、電車の中で急にパニック発作が生じそうになったため服用したり、という飲み方にになります。

このため頓服薬は、

  • すぐに効く
  • しっかり効く

の2つを満たしている必要があります。

頓服はいざという時にすぐ効いてくれないといけません。効くまでに長時間かかるものや効いているんだかよく分からないものは頓服としての役割を果たしません。つまり即効性があり、効果も強いお薬が頓服として適しています。

各抗不安薬の即効性と作用時間は次のようになります。

抗不安薬作用時間(半減期)最高血中濃度到達時間
グランダキシン短い(1時間未満)約1時間
リーゼ短い(約6時間)約1時間
デパス短い(約6時間)約3時間
ソラナックス/コンスタン普通(約14時間)約2時間
ワイパックス普通(約12時間)約2時間
レキソタン/セニラン普通(約20時間)約1時間
セパゾン普通(11-21時間)2~4時間
セレナール長い(約56時間)約8時間
バランス/コントール長い(10-24時間)約3時間
セルシン/ホリゾン長い(約50時間)約1時間
リボトリール/ランドセン長い(約27時間)約2時間
メイラックス非常に長い(60-200時間)約1時間
レスタス非常に長い(約190時間)4~8時間

最高血中濃度到達時間というのは、そのお薬の血中濃度が最大となるのにどれくらい時間がかかるのかという値で、短いほど即効性があると考えられます。これに先ほど紹介した抗不安作用の強さも加味して考えると、

  • レキソタン(一般名:ブロマゼパム)
  • ソラナックス・コンスタン(一般名:アルプラゾラム)
  • ワイパックス(一般名:ロラゼパム)
  • デパス(一般名:エチゾラム)

などが頓服として向いていることが分かります。実際このようなお薬を頓服として使用している方も多いのではないでしょうか。

デパスは頓服としてよく用いられていますが、実は即効性にはそこまで優れるお薬ではありません。しかし効果が強いため頓服としても使用が出来るのです。

また、いくら即効性に優れるからといっても、

  • メイラックス(一般名:ロフラゼプ酸エチル)

などあまりに作用時間の長いものを使ってしまうと、その後も効果が長く続いてしまいます。頓服は通常一時的に効いてくれれば十分ですので、あまり作用時間が長いものは向いていません。

6.抗不安薬を強めたい時に知っておいて欲しい事

不安の強い患者さんの診察をしていると、

「もらった抗不安薬が全然効かない。もっと強めてほしい」

とお願いされることがあります。

お薬を増やすのはかんたんです。しかし安易に増やしてしまうと後々面倒なことになることも多いため、増薬は慎重に考えるようにしましょう。

印象としては、ある1つの抗不安薬を上限量まで増やしても不安の改善が不十分な場合、2剤目の抗不安薬を追加したとしても劇的に症状が改善することはまずありません。

というのも、ベンゾジアゼピン系抗抗不安薬はどれも「ベンゾジアゼピン系」という共通の種類であるため、作用点はどれも同じだからです。セロトニン1A受容体作動薬(セディール)を除けば抗不安薬はすべてがベンゾジアゼピン系です。そしてベンゾジアゼピン系はどれも、脳にあるGABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合することで不安を和らげたりという効果を発揮します。

GABA-A受容体にはベンゾジアゼピン系結合部位が無数にあるわけではなく、その数は決まっています。つまり、ある一定量以上のベンゾジアゼピン系を投与しても、結合部位の数が決まっている以上、それ以上強くは効かないのです。

体感的な印象になりますが、1剤目の抗不安薬を上限量まで使ったときの効果が10だったとすると、そこに2剤目を上限量まで上乗せした場合、2剤目の効果は4程度まで下がります。3剤目にいたっては1~2、場合によってはほぼ効かないような事も珍しくありません。

このようにベンゾジアゼピン系をたくさん使ってもあまり効果はなく、どんどん効きが感じにくくなっていきます。一方でベンゾジアゼピン系は大量に使えば使うほど耐性・依存性などの副作用のリスクが上がっていきます。

ここから考えるとベンゾジアゼピン系をどんどん増量するという行為は、増量すればするほどメリットが小さくなっていき、デメリットが大きくなるということです。

抗不安薬は正しく使えば非常に有用なお薬であるのは間違いありません。しかし個人的な見解としては、1剤の抗不安薬を上限量まで使っても効果が不十分であった場合は、「もっと抗不安薬を増やそう」と考えるのではなく、「抗不安薬で不安を取るのはここまでが限界」だと考えた方が良いと思います。

それ以上不安を取りたい場合は、お薬以外の方法を検討すべきでしょう。どうしてもお薬を使うという場合も、抗うつ剤や不安に効く漢方薬など、抗不安薬以外の選択肢を選ぶことをお勧めいたします。

7.抗不安薬を使っても不安が十分にとれない時は?

抗不安薬を処方してもらい、上限量まで試したけど不安が抑えられない、という時はどうしたらいいでしょうか?

先ほどもお話したように、安易に「もう1剤、抗不安薬を追加しましょう」 を考えてはいけません。

抗不安薬の安易な増薬は、リスク・ベネフィット比が不良であると強く指摘されています。

リスク(=副作用などの危険)が増える割に、ベネフィット(=「不安が改善した」などの効果)が得られにくいのです。

リスクで代表的なものは「耐性」「依存性」です。

耐性というのは、摂取を続けるとだんだん効かなくなってくる、という現象です。依存性とは、次第にその物質がないと落ち着かなくなり手放せなくなってしまうことです。依存になってしまってから無理に断薬すると精神的に不安定になったり、ふるえや発汗などの症状が起きてしまうことがあります。

抗不安薬の量が多いほど耐性・依存性は早く形成されますので、どんどん増薬することはオススメしません。

抗不安薬を1剤、上限量まで飲んでも効かない場合は、他の治療法も併用して不安を改善させることを考えてください。抗不安薬以外に不安を改善させる方法をいくつか紹介します。

Ⅰ.異なる作用機序のお薬を使う

抗不安薬以外に不安改善に効果があるお薬としては、

  • 抗うつ剤
  • 漢方薬

などが挙げられます。

抗うつ剤は特にセロトニンを増やす作用が優れるものが良いでしょう。その理由は、不安はセロトニンの影響が大きいと考えられているからです。具体的にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が良く用いられます。抗うつ剤は抗不安薬のような即効性はないものの、ゆっくり少しずつ不安を改善させてくれるお薬になります。また抗不安薬と異なり耐性・依存性も生じません。

漢方薬は種類によっては不安を和らげる作用があるものがあり、患者さんによっては使用することもあります。全体的な印象としてはとゆっくり穏やかに効くような感じで、不安を強力に改善させてくれるものではありません。

Ⅱ.生活習慣の改善

不安改善のために忘れてはいけないのが生活習慣の改善です。気付かずに不安が高まってしまうような生活習慣を送っている方は少なくありません。

多くの方が日常的に行っている行動の中には、実は不安を増悪させる行動も多くあります。

一例を挙げれば

  • 夜更かし、睡眠不足
  • 喫煙
  • 過剰なアルコール
  • 過剰なカフェイン
  • 食生活の乱れ
  • 運動不足
  • ストレスを発散させる行動がない

などがあります。

睡眠が不足すれば、いつもよりイライラしたり落ち着かなくなったりと不安が高まりやすくなります。また喫煙・アルコールも短期的には気持ちを落ち着かせる作用がありますが、長期的にみればメンタルヘルス上は良い影響はなく、イライラしやすくなったり、気分の波が高まってしまいます。

食事が不規則だったり栄養バランスが悪かったりすると、脳に十分な栄養が届かなくなるため、イライラしやすくなったり不安を感じやすくなってしまいます。また適度な運動はストレス発散のためにも重要です。

生活習慣に問題がないかと見直し、問題のある行動を修正するだけでも不安は和らぎ、不安障害も治りやすくなります。

Ⅲ.精神療法(カウンセリング)

長期的に見ると不安の改善には、お薬だけではなく精神療法も併用することが理想的です。

一般的にお薬は効果がすぐに出ます。抗不安薬であれば服薬後数十分で効果が出てくるものもあります。また抗うつ剤も2週間~1カ月ほどで効果は表れ始めます。そのため「とりあえず症状を落ち着かせたい」という急性期(治療初期)においてはお薬を利用するのは意味のあることです。しかしお薬は中止してしまうと再発しやすいという欠点もあります。

精神療法はお薬と違って、効果が出るまでに時間がかかります。早くても数カ月はかかるでしょう。しかし精神療法の利点は、しっかりとその考え方を身につければ再発予防効果に優れているという点です。

この両者の特徴を考えると、最初はお薬で治療をはじめて精神状態が落ち着いて来たら精神療法も併用していく、という治療法が理想的でしょう。もちろん実際の治療法は患者さんの症状・状態によって異なりますが、精神療法は多くの患者さんにとって有効な治療法の1つになります。

精神療法もいくつかの方法がありますが、ここでは認知行動療法と森田療法を紹介させていただきます。

認知行動療法(CBT)

不安が強い方は、ある事象に対して「過剰に不安にとらえてしまう」という思考になっています。これは一般的な思考と比べると、「物事を独自の歪んだ視点でとらえてしまっている」とも言えます。

認知行動療法は、歪んでしまった認知(物事のとらえ方)を修正していくことを目的とします。

まずは不安や心配が生じるメカニズムを学び、これらが生じやすい状況を客観的に見ていきます。その中で自分の不安・心配に対するクセ(自動思考)を把握し、不安・心配を過剰に生じさせなくするにはどうしたらいいのか、あるいは不安・心配が起こりそうな時・起こった時にはどのように考えればいいのかを見直していきます。

認知行動療法については、詳しくはこちらの記事でも紹介していますのでご覧下さい。

認知行動療法はどのような特徴を持つ治療法なのか
精神療法は、精神疾患の治療において薬物療法(お薬による治療)と並んで重要な治療法の1つになります。 精神療法は、お薬という「異物」を体...

森田療法

森田療法は不安が強い方にはぜひ取り入れて頂きたい精神療法になります。

森田療法では、不安を無理に抑えようとはしません。不安というのは、そもそも生理的で自然な反応だからです。そのため「不安が生じる」ことは問題とせず、「不安症状にとらわれてしまうこと」を問題と考えます。

森田療法では「不安にならないようにしなければ」と考えるのではなく、「これは正常な反応なのだから仕方がないんだ」と考えるように訓練していきます。というのも、「不安を抑えたい」と意識すればするほど、不安は強くなってしまうからです。

また森田療法では不安を過剰に感じてしまうのは、「人から良く思われたい」「より良く生きたい」という欲望があるからだと考えます。不安が強い方というのは、その思いが強くなりすぎてしまい「人から悪く思われはしないか」という恐怖になってしまっています。そうではなく、これは「よりよく生きたい」からきているものなのだということに気付くことが大切になります。

まとめると、

・不安は生理反応なのだから、無理して抑えようとしない
・不安は本来、「より良く生きたい」という前向きな気持ちからきていることに気付こう

ということです。

森田療法は、神経質、心配性、完璧主義などの神経質的な性格傾向を持つ方に、特に有効であると考えられています。

森田療法については、詳しくはこちらの記事でも紹介していますのでご覧下さい。

森田療法とはどのような治療法で、どんな人に向いている治療法なのか
森田療法は神経症に対する治療法の1つで、主に不安を和らげるための治療法になります。 神経症というのは昔に使われていた病名ですが、これは...

8.抗不安薬を減薬する際は離脱症状に注意

抗不安薬の中でも「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」は、長期・大量服用によって耐性・依存性が生じるリスクがあります。

そのため、その服用は一時的に限るべきで長期間服用し続けるものではありません。不安が改善しはじめたら適切な時期に減薬していく必要があります。

しかしベンゾジアゼピン系は減薬の際に注意が必要である事は、あまり知られていません。

ある程度の期間ベンゾジアゼピン系を服用していると身体がある程度お薬に慣れてしまっているため、急にお薬を中止しようとすると身体は驚き様々な症状が生じてしまいます。

このようにお薬の血中濃度の急激な低下によって生じる症状は「離脱症状」と呼ばれます。

離脱症状は、

  • イライラ・ソワソワといった精神症状
  • 手足のしびれ・ふるえ、発汗、動悸、呼吸苦といった身体症状

など様々な心身の不調が引き起こされます。

このような離脱症状を起こさないためには、ベンゾジアゼピン系はゆっくりと減らしていく事が大切です。

またベンゾジアゼピン系の離脱症状は、

  • 半減期が短いほど起こりやすい
  • 作用が強いほど起こりやすい
  • 服用量が多いほど起こりやすい
  • 服用期間が長いほど起こりやすい

事が知られています。

そのため、離脱症状をなるべく起こさないためにはこれと反対の状態を目指して減薬していく事が大切です。

つまり、

  • なるべく半減期が長いベンゾジアゼピン系にする
  • なるべく作用が弱いベンゾジアゼピン系にする
  • 服用量がなるべく最小限の量になるようにする
  • 服用期間がなるべく短くなるようにする

といったことを意識すれば、離脱症状のリスクを下げることが可能になります。

ひとつずつ、詳しくみていきましょう。

Ⅰ.出来るだけ半減期を長くする

ベンゾジアゼピン系の服用によって不安が落ち着いてきたら、作用の強さは同程度で作用時間が長いものに少しずつ切り替えていくと、後々の減薬時に離脱症状が生じにくくなります。

一般的に半減期の短いお薬は即効性があります。即効性があると、「効いている!」という感覚が得られやすいため、患者さんに好まれます。また不安が襲ってきた時にすぐに対処できる「頓服」としても役立ちます。

しかし効果を実感しやすいという事は「そのお薬に頼ってしまいやすい」という事であり、依存しやすいという事になります。そして依存性が形成されやすいという事は、離脱症状が生じやすくなるということは覚えておく必要があります。

反対に半減期の長いお薬は徐々に効いてくるので「効いている感覚があまり分からない」となる事が多く、また頓服としても使いずらいのですが、ゆるやかに効いていく分だけ依存形成は起こしにくく、離脱症状も起こしにくいのです。

半減期の短い抗不安薬が一概に悪いという事ではありませんが、依存形成や離脱症状の起こしやすさという点から見れば、半減期の長い抗不安薬の方が良いのは確かです。

Ⅱ.出来るだけ作用を弱くする

一般的に作用の弱いお薬の方が離脱症状が生じにくい傾向があります。

これは当たり前の事で、作用が弱いと身体に及ぼす変化も少ないため、減薬・断薬時も反動が生じにくくなるからです。

そのため不安が落ち着いてきたら徐々に作用の弱いベンゾジアゼピン系に切り替えていくことも、後々の離脱症状の予防のためには有用です。

もちろん病気の症状が重い時は必要に応じて作用の強い抗不安薬を使うこともありますし、それは悪いことではありません。不安がものすごく強いのに弱いベンゾジアゼピン系を使っていたら、症状はいつまでも改善しないままになってしまいます。

必要な時に強いベンゾジアゼピン系を用いる事は問題ありません。

しかし、定期的に病気の経過を見直し、お薬を弱めることができそうであれば、より抗不安作用の弱いお薬への切り替えを検討することが大切です。

症状が良くなってきているのに、漫然と効果の強いものを使い続けるのは良い治療とは言えないでしょう。

Ⅲ.出来るだけ服用量を少なくする、服用期間を短くする

服用量が多く服用期間が長いほど、依存を形成しやすくなります。

依存が形成されやすくなれば、離脱症状も生じやすくなってしまいますので、そうならないために定期的に「お薬の量を減らせないか?」と検討することも必要です。

「最短1ヶ月でベンゾジアゼピン系の依存は形成されうる」と指摘する専門家もいますので、少なくとも2週間に1回くらいは、減薬ができないかを検討すべきです。

ただし、調子がまだ不十分なのに無理して減薬する必要はありません。あくまでも、漫然と飲み続けないように気をつけるべきということです。

Ⅳ.減薬は可能な限りゆっくりと

ベンゾジアゼピン系を減薬する際、減らしていく量を細かく刻めば刻むほど、反動が少なくなり、離脱症状も起こしにくくなります。

専門書によっては「1~2週間間隔で、10%ずつ減らしていきましょう」と書いてあるものもあります。完全にお薬が中止できるまでの時間を考えると気が遠くなるかもしれませんが、ここまで細かく刻めば離脱症状を起こす確率はかなり減るでしょう。

ちなみに錠剤では細かい調整がしにくいため、細かく刻んで減薬するならば粉薬を使う事もあります。粉薬がないベンゾジアゼピン系の場合は、薬局で粉砕してもらえますので相談してみると良いでしょう。

9.抗不安薬は妊娠中に使っても大丈夫?

妊娠中に抗不安薬を使っても問題ないのでしょうか。

抗不安薬は若い女性が服用する事も少なくありませんので、しばしばこの問題に遭遇する事があります。

この答えは一概に答える事は出来ません。そのため主治医とよく相談して判断する必要があります。

基本的にどんなお薬であっても妊娠中は使わない方が良いのは確かです。多少とはいえ胎盤を通じて赤ちゃんにそのお薬の成分は流れていってしまうからです。

しかし、もしお薬を使わない事で精神的に極めて不安定な状態になる事が予測されるのであれば、やむを得ず使い続けないといけない事もあります。もちろん使わない方がいいのだけど、使わない事で精神的に不安定になって、それはそれで赤ちゃんに悪影響をきたすからです。

過度な精神的不調やストレスは流産や死産の原因にもなります。また精神不安定により飲酒・喫煙・自傷・過量服薬などが行われればこれも赤ちゃんに悪影響があるでしょう。

妊娠中に抗不安薬を使うべきかどうかは、

  • その抗不安薬の赤ちゃんに対する危険性
  • その抗不安薬を中止する事で生じうる症状の危険性

の2つから総合的に判断していく必要があります。

ちなみに妊娠中の方がお薬を服用した際に、胎児へどのくらい危険があるのかを評価した基準としてよく用いられるものに、米国FDAが出している「薬剤胎児危険度分類基準」があります。

この基準では、お薬の胎児(赤ちゃん)への危険度をA,B,C,D,×の5段階で分類しています。

A:ヒト対照試験で、危険性がみいだされない
B:人での危険性の証拠はない
C:危険性を否定することができない
D:危険性を示す確かな証拠がある
×:妊娠中は禁忌

基本的に精神科のお薬で「A」「B」に分類されているお薬はなく、「C」「D」「×」の3つのどれかに分類されています。

ほとんどのベンゾジアゼピン系抗不安薬は、このうち「D」に位置付けられています。これはベンゾジアゼピン系の服用によって赤ちゃんに奇形が生じる可能性が高くなると報告されていたためです。またベンゾジアゼピン系の鎮静作用によって赤ちゃんが鎮静状態になってしまったり、筋弛緩状態になってしまうリスクもあるためです。

ただ奇形発生リスクについては、その真偽についてはまだはっきりと答えが出ていません。服用によって奇形が増えるという事はないのではないかという意見もあります。

しかし服用しなくても良いならば出来る限り服用しない方がいいのは間違いありません。

妊娠中も服用を継続するのは、中止する事で服用中止のメリットを上回るデメリットが生じる可能性が高い場合のみにとどめるべきです。また服用を継続する際も、出来る限り最小の量にするように工夫する必要があります。

精神的に不安定な場合は、無理に減薬すると流産したり、ストレスから早産・死産が生じる事もあります。そうならないよう、服薬のメリットとデメリットを天秤にかけながら医師と相談して、慎重に判断していきましょう。

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