「休む事」を大切にし双極性障害と向き合っているY様の体験談

この記事では、サイト来訪者様から頂いたこころの疾患の治療体験談を紹介しています。

闘病中は辛い時期がたくさんあります。「もう治らないのではないか」と諦めかけてしまう事もあるかもしれません。

そんな時は同じく辛い時期を乗り越えた方々のお話を聞いてみてください。実際に病気を克服した本人だから言える言葉は、治療中の方に大きな勇気を与えてくれます。

今回は、「休むこと」「自分に出来ることをする」「」朝日を浴びる」といった基本的な心がけを1つ1つ確実に続けることで、徐々に双極性障害と上手に向き合えるようになっているY様の体験談を紹介します。

Ⅰ.発症・病院受診までの簡単な経過

【年齢・性別】
45歳男性

【職業】
現在無職

【病名】
双極性障害Ⅱ型(最初はうつ病の診断であった)

【経過】
平成元年より不必要な浪費により多額の負債を抱えはじめる。

平成18年頃から不眠の症状が顕著となり業務に支障がではじめる。

平成20年8月より現在のクリニックを受診。以降、様々な抗うつ剤による治療を行う。

双極性障害の診断が出るまでは、抗うつ剤による躁転がしばしば見られ、躁状態が落ち着くと、急激に落ち込んだ。双極性障害の診断が出た後は、緊急時のみアナフラニール点滴を実施。

途中カウンセリングによる精神治療を受けるも、効果が実感できずカウンセリングを行わなくなった。

過去の負債を悔やむ生活が続き、抑うつ状態が更に悪化。

平成26年10月頃、軽そう状態を認められ、診断が「双極性障害2型」に変更となった。

発覚したのは、高額の買い物(20万)を行ってしまったこと。

平成27年7月より休職し入院。入院の前日、自己破産を申し入れ。平成27年9月退院。カウンセリングを受けつつ現在に至る。

Ⅱ.行われた治療(お薬、カウンセリング、認知行動療法など)

抑うつ状態がずっとひどかった為、複数の抗うつ剤を服用。

また入眠障害であった為、マイスリーを長年にわたって服用。

双極性障害と診断されてからは、以下の薬物治療を継続して受けた(抗うつ剤については、躁転のリスクがあるので、基本無しです)。

【食後】
炭酸リチウム:(100mg)

【就寝前】
ラミクタール(250mg)
トリアゾラム(0.25mg)
フルニトラゼパム(2mg)
ジプレキサ(2.5mg)

Ⅲ.治療に対する個人的な感想

双極性障害の診断がつくまでは、「うん。調子がいい。治ったに違いない」との思い込みがあり、激務(70時間から120時間程度の残業)をこなしていたが、軽躁態から抑うつ状態へ変化した途端、起き上がれない程の倦怠感、慢性的な疲労から解放される事はなかった。

これらのサイクルの中でも仕事を継続し、時にはアナフラニール点滴を受けながら仕事をしていた。例えば、午前中点滴を受け、午後から夜中まで仕事をするような生活が2年以上続いていた。

しかし平成27年頃より急激に状態が悪化し(考える事が出来なくなる等)な品質の低下を感じ、更に自身を責め、死ぬことばかりを考えるようになってしまった。

今思えば、もっと早くにギブアップするべきであった。

Ⅳ.治療に当たり自分で気を付けたこと

休職生活に入ってからは、とにかく生き抜くことを実践した。

度々電車へ飛び込もうとしたが、死後家人が一人残されることを考え、電車に飛び込んでしまったり、自宅で死んでしまうことだけはやめようと心がけた。

朝決まった時間に起床し、夜決まった時間に就寝出来るように薬を服用する事を実施した。

また、動ける日には、出来るだけそのと空気を吸うようにした。

Ⅴ.現在闘病中の方へメッセージ

1にも2にも心を休めること。

疲労感が酷い時は寝てしまうなど、自分が楽になれるなら何でも試してみること。

ただし、朝の光を浴びることをお勧めします。

たとえ雨が降っていても、室内の蛍光灯やLED電灯を当たるよりも良いです。午前中の光をなるべき浴びるようにするだけで、徐々に回復できます。

本日現在、私もまだ休職中ですが、以前に比べて落ち着いた気分になり疲労感も以前に比べるとずっと改善されたように思います。

ただ、やはりダメな日も多く、午前中の日光を浴びるため居間のカーテンを開けて外の光を入れた部屋で横になるようにしています。

正直なところ、この病気は一生付き合うことになるかもしれません。でも、私がそうだったように「ゆっくりと」戻れるように思えます。

現在、辛い闘病生活を送られている皆さん。

お約束は出来ませんが、根気よく治療を継続することで現状を変えることは不可能ではなく、可能です。

私自身、徐々によくなってきたと手応えを持てるところまできました。

信頼できるカウンセラーを探すのも一つの手だと思います。

諦めずに、這ってでも歩んでいきましょう。

道は開かれています。

<せせらぎメンタルクリニックより>

双極性障害は、躁病相(気分が高揚している状態)とうつ病相(気分が落ち込んでいる状態)を繰り返す疾患です。とはいっても、うつ病相の方が圧倒的に長いため、一見するとうつ病と見分けがつきにくい疾患になります。

うつ病の方は、このY様のような経過をぜひ知って頂きたいと思います。このようにうつ病相がメインであり、最初は「うつ病」として治療されていたけど、実は双極性障害であったというケースは少なくありません。

うつ病と双極性障害では治療に使うお薬も異なるため、両者を出来るだけ早い段階で見分ける事が重要です。そして両者を見分けるための一番重要なてがかりは「躁病相があったかどうか」であり、それを知っているのは患者さん本人なのです。

患者さんが主治医に躁病相があったというエピソードを話さなければ、双極性障害は見つかりません。もちろん精神科医はうつ病の患者さんを診る時「双極性障害の可能性はないのか?」という事を必ず念頭に置きながら診察はしますが、患者さんもこのような事を知っておいていただけると診断の精度は更に上がります。

今になって見返してみれば、Y様の最初の症状(平成元年の浪費)は躁状態であったのかもしれません。もしY様や主治医が最初からこの浪費エピソードに気付いていれば、適切な治療はもっと早くに導入できたでしょう(もっともこれは後から見返している今だから言えることですが)。

うつ病であった場合、治療薬は抗うつ剤が中心となります。一方双極性障害であった場合、中心となる治療薬は「気分安定薬」や「抗精神病薬」といった気分の波を抑えるお薬になります。

双極性障害の方に抗うつ剤を使うこともありますが、抗うつ剤による躁転(躁状態を誘発してしまう)のリスクがあるため、その適応は慎重に判断しなくてはいけません。少なくとも双極性障害の方に抗うつ剤を使う場合は、必ず抗精神病薬や気分安定薬と併用すべきであり、抗うつ剤のみを単独で使う事は推奨されていません。

抗うつ剤による躁転は、どのような抗うつ剤でも可能性がありますが、特に三環系抗うつ剤で多いと言われています。

【三環系抗うつ剤】
1950年頃から使われるようになった一番古い抗うつ剤。抗うつ作用は強力だが、副作用も多いため現在ではあまり用いられない。トフラニール(一般名イミプラミン)、アナフラニール(一般名クロミプラミン)、トリプタノール(一般名アミトリプチリン)、アモキサン(一般名アモキサピン)、ノリトレン(一般名ノルトリプチリン)などがある。

そこを踏まえると、抑うつ状態がひどかった際にアナフラニール点滴を行っていたというのは、仕事を休めないなどの理由があってやむを得ない処置だったのかもしれませんが、躁転のリスクが高くあまり推奨される方法ではありません。

三環系抗うつ剤であるアナフラニールは躁転のリスクが高く、更に点滴となると躁転リスクは更に高くなります。

Y様がご自身で心がけた習慣は非常に素晴らしいと思います。

  • まずは休むこと
  • 無理をせず、出来る範囲で動いていくこと
  • 死ぬことだけはしないと決めること
  • 朝日を浴びる事
  • 病気と敵対するのではなく、病気と向き合っていくこと

これらは基本的な事ではありますが、こころの治療において非常に大切な心構えです。

こころが疲弊している時は、まずは休まないといけません。疲れている状態を、休む以外の方法で治す事は不可能です。お薬で無理矢理身体を元気にさせたとしても、それは単に身体をだましているだけで、いつかしっぺ返しを食らいます。

「疲れている時は、休むしかないんだ」とあきらめる事です。これは非常に大切です。

こころを疲弊させてしまう多くの方は、真面目で熱心な方であるため、「休むしかないんだ」と自分を許してあげる事ができません。そうして無理を続けているうちにこころが完全に壊れてしまうのです。

疲れてしまったら「休むしかない」と諦めて下さい。そしてしっかり休みましょう。

またある程度休んだからといって、すぐにまた無理して動き出せばあっという間にこころの病気が再発してしまいます。休んだあとは、無理のない程度に出来る事を少しずつやっていくリハビリが必要なのです。リハビリで少しずつ負荷をあげるという段階を経ることが必須の過程であり、これをすっ飛ばしていきなり負荷の高い活動を行うことはしてはいけません。

こころの疲弊によって仕事を休職した方が、復職後にまた再発するケースというのは多いのですが、ほとんどの場合、復職後にいきなり負荷を上げて無理をし過ぎている事が原因です。

双極性障害は現時点では根本を治すようなお薬は開発されていません。お薬はあくまでも症状を抑えているだけで、病気の根本を治しているわけではありません。今後医療が発達すれば根本を治せるお薬が生まれるかもしれませんが、現時点ではまだないのです。

そのため双極性障害という疾患とは「付き合っていく」必要があります。病気の特徴や傾向をしっかりと理解するといった「病気と向き合う姿勢」がとても大切です。病気と敵対してしまえば、再発した時にそれが再発だと気付きません。しかし病気についてしっかり学び、周囲にもそのことを伝えておけば万が一再発した時も早期に発見できる可能性が高まります。

早期に発見できれば早期に治療を開始でき、病状の悪化を防げます。これは患者さんの人生に不利益を生じにくくさせる効果が期待できます。

こころの病気の治療を行う時、魔法のように全てが解決するような方法というのは残念ながらほとんどありません。誰でも思いつくような基本的な方法を地道に続ける事が結果的には一番安定した精神状態を手に入れる事ができるのです。

<あなたの治療体験談を教えてくれませんか?>

こころの疾患は私たち医療者が中心となって治療をしています。しかし私たち「医療者」以外にも、こころの病気で苦しんでいる方に大きな力を与えられる人がいます。

それは同じくこころの病気を患い、乗り越えてきた経験のある方です。

「苦しかった時は、このような事をして乗り切った」
「こんな苦しかったけど、いつか治ると信じてたから今がある」

実際にこころの病気と闘ってきた元・患者さんの言葉は、他の誰の言葉よりも説得力があり、他の誰の言葉よりも今苦しんでいる患者さんに勇気と希望を与えてくれます。

私はこのサイトを通してメンタルヘルス情報を配信していますが、医療者目線の情報だけでは不十分であることを強く感じています。実際にこころの病気を克服してきた元・患者さんの経験は、私がメンタルヘルス情報を配信する事以上に、患者さんの励みになるでしょう。

こころの病気を克服した方、あるいは克服中であるが最初よりは大分良くなったという方、このサイトを通じてあなたの治療体験談を教えて頂けませんか。

それはいま、苦しんでいる多くの方の大きな希望の光になるはずです。

お名前 (必須、仮名可)

メールアドレス (必須)

タイトル(闘病生活を端的に表したタイトルがあればお願いします)

本文(次の項目に沿って記載頂ければ幸いです)
Ⅰ.簡単なプロフィール(年齢や性別、職種など)
Ⅱ.発症・病院受診までの簡単な経経過
Ⅲ.行われた治療(お薬、カウンセリング、認知行動療法など)
Ⅳ.治療に対する個人的な感想
Ⅴ.治療に当たり自分で気を付けたこと
Ⅵ.現在闘病中の方へメッセージ