双極性障害Ⅰ型と双極性障害Ⅱ型のそれぞれの特徴と違いについて

双極性障害Ⅰ型、双極性障害Ⅱ型

双極性障害(いわゆる躁うつ病)は、

  • 気分が高揚する躁状態
  • 気分が落ち込むうつ状態
  • 何の症状のない寛解期

の3つの病相を繰り返す疾患です。双極性障害はこの「気分の波の幅」が正常と比べて明らかに大きいため、生活において様々な支障が生じやすく、治療が必要になります。

実は双極性障害は、気分の波の程度に応じて「双極性障害Ⅰ型」と「双極性障害Ⅱ型」に分けられます。双極性障害の診断を受けている方も、自分が双極性障害Ⅰ型なのか、あるいはⅡ型なのかを理解しておくことは経過を良くするためにも大切なことです。

双極性障害は、なぜこのように分類されているのでしょうか。また分類することにどんな意味があるのでしょうか。

今日は双極性障害の2つのタイプである、「双極性障害Ⅰ型」と「双極性障害Ⅱ型」についてお話させて頂きます。

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1.双極性障害Ⅰ型とⅡ型

双極性障害は、Ⅰ型とⅡ型に分けられます。

頻度としてはⅡ型の方が多く、Ⅰ型の生涯有病率は1~2%程度、Ⅱ型の生涯有病率は3~8%程度です。

Ⅰ型もⅡ型もどちらも双極性障害なのですが、躁状態の程度に違いがあります。

  • Ⅰ型は、躁状態とうつ状態を繰り返す
  • Ⅱ型は、軽躁状態とうつ状態を繰り返す

と躁状態の程度が異なるのです。反対にうつ状態の程度はどちらも変わりません。

気分は数値化できるものではないため、どこからが躁状態でどこまでが軽躁状態なのかを厳密に区切ることは困難です。しかし、おおよその感覚で言うと「日常生活に著しい支障を来たしている躁」が躁状態、「躁状態ではあるけども日常生活は著しい支障までは来たしていない」のが軽躁状態だと考えられています。

躁状態も軽躁状態も、気分の高揚という症状の性質は同じです。気分が晴れ晴れとし、自分は万能で何でも出来るような感覚を覚えます。自分は優秀で他者が自分よりも劣っているように見えるため、しばしば攻撃的になったり易怒的になったりもします。

その程度が「生活に著しい支障を来たす程度かどうか」によって躁状態なのか軽躁状態なのかは区別されます。

双極性障害Ⅰ型は、躁状態が認められれば、明らかに「おかしい」と他者が感じるほど気分が高揚するため、診断は比較的容易です。

  • 別人のように気分が顕著に高揚する
  • マシンガンのように一方的にしゃべり続け、話の内容もコロコロ変わって一貫しない
  • 「すごいビジネスを思い付いた!絶対成功する!」と言い、明らかに再現性の低そうなビジネスを始めようとする
  • 気が大きくなって巨額の借金をしようとする

などが認められれば、いつものその人を知っている人であれば、すぐに「おかしい」と気付きます。しかし一方でうつ状態のみしか出ていない状況ではうつ病と鑑別することは困難です。

対して双極性障害Ⅱ型は、軽躁状態が出たとしても「ちょっと気分が良いだけ」ともとれる気分の高揚に留まるため、それが軽躁状態なのかどうかを判断するのは難しいことがあります。更にうつ状態の時はⅠ型と同じくうつ病との鑑別は困難であり、ここから双極性障害Ⅱ型は診断は難渋することが少なくありません。

2.双極性障害Ⅰ型とⅡ型に分類されるのはなぜ?

躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害についての記録は、はるか昔から記されており、その歴史は紀元前にまでさかのぼります。しかし、本格的に「病気」として認識されるようになったのは1800年代に入ってからで、この頃から双極性障害の研究が盛んになってきました。

次第に双極性障害というのは、皆同じように「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す疾患ではなく、その程度は患者さんによって大きく異なることが分かってきました。特に躁状態の程度が顕著なものと、そこまで顕著でないものがあり、近年ではこれらを「双極性障害Ⅰ型」「双極性障害Ⅱ型」を分けるようになりました。

同じ疾患でも、患者さんによって症状の程度に差があるのは、当たり前のことです。

例えば一口にうつ病といっても「軽症うつ病」もあれば「重症うつ病」もあります。

気分が正常以上に落ち込んでいるけども、生活に大きな支障が生じるまでには至っていない軽症うつ病、気分が非常に落ち込んでおり、生活に大きな支障が生じてしまっている重症うつ病、同じうつ病であっても症状の程度には違いがあるのです。

しかしうつ病の場合は、軽症も重症もどちらも「うつ病」です。

一方で双極性障害は、Ⅰ型とⅡ型、どちらも「双極性障害」ではあるのですが、うつ病の「軽症」「重症」よりも明確に分けられています。なぜ、双極性障害だけこのように分ける必要があるのでしょうか。

その理由は、単に症状が重いのがⅠ型、軽いのがⅡ型という違いだけではないからです。

うつ病の軽症と重症のように、ただ単に症状が重いか軽いかだけであれば、このように2つに分類する必要はないでしょう。「軽症双極性障害」「重症双極性障害」で良いはずです。

しかしⅠ型、Ⅱ型とわざわざ分けているのは、両者にはそれ以外の違いがあるからなのです。

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3.双極性障害Ⅰ型と双極性障害Ⅱ型の違いは?

では、双極性障害Ⅰ型と双極性障害Ⅱ型は、何が異なるのでしょうか。

「躁状態の程度が異なる」という以外にも次のような違いが指摘されています。

Ⅰ.遺伝的に異なる疾患である可能性がある

表面上の症状だけを見れば、躁状態が強いのがⅠ型、躁状態が軽いのがⅡ型という違いになります。

しかし遺伝的にみると、両者には違いがあるのではないかという考えがあります。

もし、双極性障害のⅠ型もⅡ型も共通の遺伝子にて発症するのであれば、Ⅰ型であれⅡ型であれ、その子供もⅠ型あるいはⅡ型に一定の確率でなるはずです。

しかし実際は双極性障害Ⅱ型を持つ親から生まれた子は、Ⅰ型よりも明らかにⅡ型を発症する率が高いという報告があります。ここから両者は異なる原因からなる疾患かもしれないとも考えられています。

Ⅱ.経過・症状が異なる

Ⅰ型とⅡ型は、一見するとⅠ型が重くてⅡ型は軽いような印象を受けます。

しかし実際はどちらも異なったリスクがあるのです。

Ⅰ型は顕著な躁状態からトラブルに巻き込まれたり、自分の将来に大きな不利益を生じさせてしまうリスクがあります。躁状態で興奮・易怒的になれば対人関係も悪化するのでしょう。大きな借金をしてしまったり、「起業する!」となって今の仕事を退職してしまうと、その方の人生への不利益はかなり大きくなると予測されます。

一方でⅡ型は、軽躁状態ではそこまで逸脱した行動は少ないのですが「衝動性」が高いことが指摘されています。衝動的に行動をしてしまう事が多く、特に「自殺企図」「自殺行動」などがⅠ型よりも多い事が知られています。

Ⅰ型のリスクも大きいものですが、Ⅱ型のリスクも大きいものだという事が分かると思います。軽躁状態だからといって、「軽い症状」だと安易に考えてはいけないのです。

Ⅲ.有効な治療薬も異なってくる

双極性障害Ⅰ型でもⅡ型でも、基本的に用いるお薬は同じになります。しかしお薬の特徴を考えた場合、両者の治療法を全く同一に考えることは出来ません。

典型的なⅠ型に関しては、気分安定薬が比較的良く効きますし、実際気分安定薬を中心に治療を行うことが多いです。

しかし双極性障害Ⅱ型に関しては、Ⅰ型ほどは気分安定薬が効果を示さないように感じられます。またⅡ型は「衝動性が強い」という特徴があるため、処方薬には注意をする必要があります。

例えば双極性障害の治療薬の代表選手であるリーマス(炭酸リチウム)は、多量に服薬するとリチウム中毒になり、最悪の場合は命の危険もあります。衝動性が強く、自殺企図なども生じる可能性があるⅡ型の方であれば、これらのお薬を投与するのは慎重に考えなくてはいけません。患者さんが衝動的にリーマスを過量服薬したら非常に危険だからです。

また同様に気分安定薬であるラミクタールも急激に増薬すると危険なお薬ですし、テグレトールも多量服薬で重篤な副作用が生じる可能性があります。これらのお薬をⅡ型の方に投与することもありますが、衝動性の問題をしっかりと検討してからになります。

衝動性の強いⅡ型はむしろ、鎮静力のある抗精神病薬の方が適していることもあります。抗精神病薬の気分安定効果だけでなく、鎮静がⅡ型の方の衝動性を適度に抑えてくれることがあるのです。

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