どんなお薬も、使い方によっては有益である一方で、あやまった使い方をすれば害となります。そのため、お薬は原則として専門家である医師の指示に従って服用すべきです。
しかしあまりに症状がつらい時、つい自己判断で勝手に量を増やしてしまうケースがあります。
精神に作用するお薬(向精神薬)は、「眠れなくて辛い」「気持ちが不安定で苦しい」といった苦しみを一時的にでも改善させたいという切望から、つい多く使ってしまいやすいお薬なのです。
自己判断でお薬の量を増やすと、確かに一時的には楽になれるかもしれません。しかしこれは長期的にみれば、患者さんが思っている以上に大きな危険を代償としている事を知っておかなければいけません。
近年の精神科医療の流れとして、向精神薬(特に睡眠薬や抗不安薬)に対する規制が強まっています。
例えば、
- バルビツール酸系と呼ばれる強力な睡眠薬が販売中止となったり、
- ほとんどの睡眠薬・抗不安薬に処方制限がかかったり(1回の診察で最大30日分しか処方できない)
- 向精神薬をたくさん処方する場合は診療報酬が減点されたり
と、「なるべく強いお薬は使わないように」「なるべく患者さんが自己判断でお薬を飲まないように」「なるべくお薬の量が少なくなるように」という方向で、規制されるようになってきているのです。
これは向精神薬の特性と現状を考えれば当然の流れではあるのですが、
「なんで眠れずにこんなに苦しんでいるのにバルビツール酸系を処方してくれないのか」
「なぜ1カ月以上お薬を出してくれないのか」
「自分はこのお薬の量でちょうどいいと思っているのに、なぜ減薬しないといけないのか」
と時に患者さんから不満を頂く事もあります。
患者さんはつらい気持ちと日々闘っているのですから、なるべくお薬を使って気持ちが穏やかになるよう援助していくのは医師として当然の務めです。
しかしその援助が、患者さんを一時的に楽にしているだけで長期的に見ればかえって苦しめてしまうものであれば、それは本当に患者さんの事を考えているとは言えません。
長期的な患者さんへのメリット・デメリットを考えると、このような規制をやや強制的にでもしていかないといけない現状があります。患者さんにもぜひその背景を知っていただきたく、今日は睡眠薬を服用している患者さんが知っておくべき睡眠薬のリスクについてお話しさせていただきます。
1.睡眠薬はなぜ規制されるのか
日本の睡眠薬(抗不安薬やその他の向精神薬も含む)の処方を規制すべきという意見は前々からありましたが、近年この流れは特に高まっています。
その理由としては次のような事が挙げられます。
- 睡眠薬の過量服薬(オーバードーズ)の問題
- 睡眠薬による依存性の問題
- 睡眠薬の副作用リスクの分かりにくさ
- お薬に偏りすぎており、お薬以外の治療法が軽視されがちとなっているため
- 日本の睡眠薬の処方量が、他国と比べて明らかに多いため
1つずつ見ていきましょう。
Ⅰ.睡眠薬の副作用の問題
睡眠薬が規制される一番の理由は、副作用の問題からです。
睡眠薬の短期的な副作用としては、
- 眠気
- ふらつき
- 健忘(物忘れ)
などが挙げられます。これらも注意すべき副作用ではありますが、もっとも問題となるのは長期的に形成される副作用です。
それは「耐性」と「依存性」です。
耐性とは、お薬の服薬を続けていくと徐々に身体がお薬に慣れていき、お薬の効きが悪くなってくることです。ほとんどの睡眠薬には耐性があり、耐性が形成されてしまうと同じ効果を得るためにはより多い量が必要となるため、大量処方につながりやすくなります。
依存性とは、お薬の服薬を続けていくうちにそのお薬を手放せなくなってしまうことです。ほとんどの睡眠薬には依存性があり、依存性が形成されてしまうと、お薬を飲まないと精神的に不安定になったり、発汗やふるえといった離脱症状が出現してしまうようになります。こうなってしまうと睡眠薬を辞める事が出来なくなってしまいます。
お薬を自己判断で大量に服用してしまったり、強い睡眠薬を長期間使っていると、このような耐性や依存性が生じやすくなる事が分かっています。
この耐性や依存性が生じるとどうなるのでしょうか。
耐性が形成されれば服用するお薬の量がどんどんと増えていく事になります。また量がどんどん増えて危険な量になっても、その頃には依存性が形成されているため、お薬をやめる事が出来なくなっています。
その結果、危険な量のお薬を毎日服用するようになってしまうのです。
現在の睡眠薬はある程度の量を服用しても命にまでは関わらないものが多いのですが、古い睡眠薬の中には大量に服用すると命の危険が生じるものもあります。
また現在の睡眠薬であっても、何種類ものお薬を併用して服用していれば、命に関わる副作用が認められる可能性もゼロではありません。
睡眠薬の耐性と依存性は少しずつ形成されていくため、一見すると分かりにくいのですが、徐々にこのようなリスクを形成していってしまうのです。
Ⅱ.オーバードーズの問題
「死にたい」「楽になりたい」という思いからお薬を過量服薬(オーバードーズ)してしまう方は後を絶ちません。
このような時、もっとも用いられやすいお薬が睡眠薬です。
過量服薬の問題は根深く、睡眠薬を規制すればそれで解決という問題ではありません。しかし、あまりに安易に睡眠薬が処方されすぎていれば、患者さんが過量服薬を思い立ってしまいやすくなる事もまた事実です。
現在発売されている多くの睡眠薬は過量服薬しても命まで落とす事はありません。しかし睡眠薬の中でも強力な作用を持つものは、最悪のケースでは命を落とす可能性がありえます。
また直接的には命に関わらなくても、睡眠薬が効いている時に喉に何かを詰まらせて窒息してしまったり、ふらふらしたまま歩いてしまい事故に遭ったりと副次的に命に関わる問題を引き起こしてしまう事もあります。
このような事の睡眠薬のリスクの1つと言えます。
Ⅲ.睡眠薬の副作用の分かりにくさ
睡眠薬は耐性・依存性を持つため、長期的に見れば大量服薬に至り身体に害を与える可能性が高くなります。
しかしそういった危険性をしっかりと認識して服用している方はほとんどいないのが現状です。
これは何故でしょうか。
この理由は、みなさん睡眠薬の目先の効果にばかり目が行ってしまい、遠い先にある副作用の問題に目が向かないからです。
睡眠薬には即効性があり、短期的には症状をすぐに改善させてくれます。これは良い事ではあるのですが、とても悪い言い方をすれば睡眠薬は「すぐに楽にしてあげる代わりに、長期的にはジワジワと身体に害を与えていく」という性質を持ちます。
服用すればその日から眠りを得られるようになります。そのため、目の前にある「眠れない」という苦しみから逃れたいために、ついつい「今夜だけ」「落ち着くまでの間」と指示された量以上に服用してしまうという事態が起きやすいのです。
しかしそういった習慣を軽い気持ちで続けてしまうと、着実に耐性や依存性が形成されていくのです。
Ⅳ.薬物療法に偏りすぎてしまう
睡眠薬は不眠症の治療法の1つであり、有効な治療法です。しかし、睡眠薬を服用する他にも不眠症を改善する方法はいくつもあります。
例えば、
- 日中に適度に身体を動かす
- 寝る前の睡眠への悪習慣(飲酒や喫煙など)をやめる
- 寝室の環境を整える
- 適度な入浴をする
- 日中に横にならない
などといった生活習慣の改善はとても有効です。
また不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)という治療法もあり、こちらもしっかりと行えば睡眠薬と遜色ない効果が得られる事が報告されています。
【参照記事】
睡眠薬による治療法は飲むだけで完了しますので楽ではありますが、副作用というリスクが伴います。対して、非薬物療法は効果が出るまでに努力を要しますが、副作用はほとんどありません。
本来であれば、これらの非薬物療法をまず行い、それでも効果不十分の場合のみ睡眠薬を用いるのが理想です。
睡眠薬を制限しないと、これら非薬物療法が更に軽視されてしまうリスクがあります。
Ⅴ.日本の睡眠薬の処方量は他国と比べて多い
実は日本の睡眠薬の処方量というのは、世界的にみても明らかに多く、他国の精神科医からもよく批判されています。
【参照記事】
日本はその国民性や今までの精神科医療の歴史の中で、安易に睡眠薬に頼る習慣が出来てしまっている面があるのでしょう。
上記記事のデータから見れば、同じような環境の先進国他国はもっと少ない睡眠薬の量で、日本に劣らない精神科治療が行えています。もちろん人種も異なるため一概には比較はできないという意見もあるでしょうが、日本の睡眠薬が使い過ぎである可能性は高いでしょう。
この悪い習慣を断ち切るためには、ある程度強制的に規制していく必要があるのです。
2.特に注意すべき睡眠薬とは
睡眠薬は不眠で悩む方にとって役立つ治療法の1つです。そのため睡眠薬の存在の全てが悪いという事はありません。
適切な量の睡眠薬を適切な期間用いる事は、総合的に見ればメリットの方が大きく、これは問題はないでしょう。
大切な事は得られるメリットと生じうるデメリットをしっかりと理解し、その両者を天秤にかけて、「睡眠薬を本当に使うべきなのか」をしっかりと判断してから使う事なのです。
とはいえ現在においては極力使うべきでない睡眠薬や、そこまではいかないもののなるべく使用は控えたい睡眠薬もあります。
特に注意すべき睡眠薬についてここではいくつか紹介させていただきます。
Ⅰ.バルビツール酸系睡眠薬
バルビツール酸系は、「もっとも危険な睡眠薬」と言ってもいい睡眠薬です。バルビツール酸系は原則、使うべきではない睡眠薬になります。
バルビツール酸系睡眠薬は1950年代から使われ始めた最古の睡眠薬です。
眠らせる力は非常に強い事が特徴で、麻酔として使われていたこともあるくらいです。しかし作用と同様に副作用も強力なのが欠点です。
呼吸抑制(呼吸が止まってしまう)、重篤な不整脈などといった命にかかわるような重篤な副作用を起こす可能性があります。 また耐性・依存性も非常に強い事が知られています。
他の睡眠薬がまだなかった1950年代に、バルビツール酸系が使用されていたのは仕方がなかったのかもしれませんが、現在においては原則使うべきではありません。
バルビツール酸系睡眠薬には、
- ベゲタミン
- ラボナ(一般名:ペントバルビタール)
- イソミタール(一般名:アモバルビタール)
- バルビタール
などがあります。
Ⅱ.サイレース・ロヒプノール
サイレース・ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)は1984年に発売されたお薬でベンゾジアゼピン系睡眠薬に属します。
ベンゾジアゼピン系は現在でも使われている睡眠薬であり、基本的には安全性は高いお薬です。
しかしサイレース・ロヒプノールはベンゾジアゼピン系の中でも効果・副作用が最強の部類に入ります。
もちろん前述のバルビツール酸系と比べればはるかに安全なのですが、ベンゾジアゼピン系の中ではリスクが高いため、その使用は他の睡眠薬では効果不十分な場合など、やむを得ないケースに限るべきです。
Ⅲ.レボトミン・ヒルナミン
レボトミン・ヒルナミン(一般名:レボメプロマジン)は1960年に発売されたお薬で第1世代抗精神病薬に属します。
抗精神病薬というのは主に統合失調症の治療に使われるお薬の事で、第1世代というのは抗精神病薬の中でも古いタイプに属します。
睡眠薬ではないのですが、レボトミン・ヒルナミンは眠りに導く作用が強いため、不眠傾向のある統合失調症患者さんや睡眠薬の効かない不眠症の方に用いられる事がありました。
現在では第2世代抗精神病薬という、より安全性の高い抗精神病薬が使われるようになったため、レボトミン・ヒルナミンのような第1世代はあまり使われなくなっていますが、不眠改善のために処方される事が時々あります。
レボトミン・ヒルナミンも古いお薬であり、副作用は多めのお薬ですので、安易に使っていいものではありません。
やはりその使用は、他の睡眠薬では効果不十分である場合など、やむを得ないケースに限るべきです。
3.睡眠薬の危険性を見た調査
睡眠薬の危険性を認識するための参考となる、1つ調査報告を紹介させていただきます。
この調査では、医薬品による過量服薬(オーバードーズ)によって死亡してしまった症例を集め、それぞれにどのようなお薬が処方されていたのかを調べ、またそれぞれのお薬の致死率(危険性)を調べました。
その結果が下記の表になります。
順位 | 商品名(一般名) | 処方割合 | オッズ比 |
---|---|---|---|
1 | サイレース・ロヒプノール(フルニトラゼパム) | 46% | 5.1 |
2 | ベゲタミン配合錠 | 30.1% | 43.4 |
3 | マイスリー(ゾルピデム) | 24.5% | 1.9 |
4 | レボトミン・ヒルナミン(レボメプロマジン) | 21.5% | 5.1 |
5 | デパス(エチゾラム) | 21.5% | 1.6 |
6 | リスパダール(リスペリドン) | 18.8% | 2.0 |
7 | ベンザリン・ネルボン(ニトラゼパム) | 18.5% | 3.8 |
8 | ハルシオン(トリアゾラム) | 15.5% | 3.3 |
9 | レキソタン(ブロマゼパム) | 15.2% | 1.9 |
10 | レンドルミン(ブロチゾラム) | 15.2% | 1.0 |
11 | ラボナ(ペントバルビタール) | 14% | 104.0 |
12 | デパケン(バルプロ酸ナトリウム) | 13.1% | 1.3 |
13 | アモバン(ゾピクロン) | 11.9% | 3.1 |
14 | パキシル(パロキセチン) | 11% | 1.4 |
15 | コントミン(クロルプロマジン) | 10.7 | 2.4 |
この表の簡単な見方を説明します。
まずこの表は2009年1月から2010年12月までの2年間の間、医薬品のオーバードーズによって命を落としてしまった335名が対象となっています。
対象者が服用していた率が高い順にお薬が並んでおり、服用していた割合は「処方割合」で表されています。
オッズ比というのは、対象群(普通にお薬を服用していた群)と比較したオーバードーズによる致死性の高さを表しています。オッズ比が1より高ければ高いほど致死性が高いと言う事が出来ます。
表を見ると、群を抜いて致死性の高い睡眠薬が2つあるのが明白に分かります。
の2つです。
これらがバルビツール酸系睡眠薬です。最古の睡眠薬であるバルビツール酸系は、まるで麻酔のように強力に脳の覚醒レベルを落とすため、その作用は強力であり一部の難治性の不眠症の方には人気の高いお薬です。
しかしこの表を見れば、バルビツール酸系がいかに怖いお薬であるかが明白です。眠らせる力が強いからといって安易に使って良いものではないのです。
バルビツール酸系は「極力使うべきではない」「現在の医療には必要のないお薬」とする専門家も多く、実際にベゲタミンは2016年に発売終了となりました。恐らくラボナもいずれ発売終了となるでしょう。
私たち精神科医は患者さんからバルビツール酸系を出して欲しいと言われてもよほどの事がないと処方しません。
「眠れなくて苦しい」「どうしても眠りたいんです」と切望する患者さんにバルビツール酸系を処方するのは簡単です。短期的には患者さんにも感謝されるでしょう。
本当に患者さんの事を考えるのであれば、ここまでリスクの高い睡眠薬は安易に処方すべきではないのです。
またバルビツール酸系以外にもいくつか注意すべきお薬がある事が分かります。
これらの睡眠薬はバルビツール酸系と比較すればはるかに安全ではあるものの、他の睡眠薬と比べると一段階リスクは高いと言えます。
上記に挙げた睡眠薬は、睡眠薬の中でも効果が強めだと評価される事が多いお薬です。効果の強いお薬はただ効果が強いだけでなく、身体に害をもたらすリスク(副作用)も高くなるという事を知っておかなければいけません。
これらの睡眠薬の中でもひと際オッズ比が高いのがサイレース・ロヒプノールです。実際、アメリカにおいてはサイレース・ロヒプノールはこれらの危険性や依存・乱用が問題視され、規制薬物の扱いになっています。
規制薬物であるため、アメリカではサイレース・ロヒプノールを医薬品として処方する事はもちろん出来ません。また日本からアメリカに持ち込む事も原則として出来ず、どうしても持ち込む場合は証明書が必要になります。
これらの強めの睡眠薬は、必要な期間のみ医師の指示を守って正しく使うのであれば、過剰に怖がる必要はありませんが、安易に服用してよいものではなく、また漫然と服用を続けてよいものでもない事が分かります。
また睡眠薬以外では、
のリスクが比較的高くなっています。レボトミン・ヒルナミンは第1世代抗精神病薬と呼ばれ、古いタイプの抗精神病薬(主に統合失調症の治療に使われるお薬)です。
抗精神病薬の中でも眠りに導く作用が強いため、不眠傾向のある統合失調症患者さんに以前はよく用いられていました。
現在では第2世代抗精神病薬という、より安全性の高い抗精神病薬が使われるようになったため、レボトミン・ヒルナミンのような第1世代はあまり使われなくなりました。
とはいっても「レボトミンの方が良く眠れるからレボトミンにしてほしい」などと訴える患者さんもいらっしゃいます。もちろん、総合的にみてレボトミンの方がいいと判断できるのであれば、レボトミンに変えるのがすべて悪いという事にはなりませんが、古いお薬にはこのようなリスクがある事は知っておかないといけないでしょう。
以上から
- バルビツール酸系は使うべきではない
- サイレース・ロヒプノールも極力使わずやむを得ない場合に限る
- ハルシオン、ベンザリン、ネルボン、アモバンなどの強めの睡眠薬はその他の睡眠薬が効果不十分な場合に限る
といった事を気を付ける必要があるでしょう。
【参考文献】
過量服薬による致死性の高い精神科治療薬の同定ー東京都監察医務院事例と処方データを用いた症例対照研究ー.精神神経雑誌118:3-13,2016,引地和歌子他
4.薬は正しく使えば毒ではない
ここまで睡眠薬の「怖さ」について書いてきましたが、睡眠薬が全く不要なお薬だという事ではありません。
冒頭にも書いた通り、どんなお薬も使い方次第で有用なものにもなるし、毒にもなります。
このコラムでお伝えしたい事は「睡眠薬はこんなに怖いから使うな」という事ではありません。睡眠薬の服用を有益なものとするためには、睡眠薬のリスクも正しく知っておく必要があるという事がこのコラムでお伝えしたい事です。
私自身、必要な方には睡眠薬を処方していますし、正しく使えば患者さんのためになるお薬であるとも感じています。
しかし一方で安易な継続や、患者さんの希望通りに強い睡眠薬を簡単に出してしまうのは問題です。
1950年代、睡眠薬にはバルビツール酸系しかありませんでした。このような時代ではどうしても眠れなくて苦しんでいる人に対して慎重にバルビツール酸系を使う事は仕方がなかったのかもしれません。
しかし現在では優れた睡眠薬もたくさんありますし、睡眠薬以外の治療法も開発されています。
そんな中でバルビツール酸系を使う総合的なメリットはないと言っても良いでしょう。バルビツール酸系は強力に眠らせる作用がありますので、確かに短期的には満足感を得られます。しかしそれは短期的なものに過ぎず、長期的には大きなリスクを抱えてしまっている事をしっかりと理解しましょう。
またベンゾジアゼピン系睡眠薬の中にも効果が穏やかなものもあれば強いものもあります。短期的にみれば効果の強いものの方がスッキリ眠れて良いお薬に感じるかもしれません。しかし長期的にはやはり穏やかなお薬の方が身体への負担は少ないのです。
強いお薬を使う事が間違っていると一概に言えるものではありませんが、メリットとデメリットをしっかりと理解し、自分の状況に最適な強さの睡眠薬を選ぶようにしましょう。
もし可能であれば、効きの穏やかなものから試していく方が、身体に対する負担は少ないでしょう。