サイレース錠(フルニトラゼパム)の効果・強さ【医師が教える睡眠薬の全て】

サイレースは1984年に発売された睡眠薬で、ベンゾジアゼピン系という種類に属します。

ベンゾジアゼピン系は効果も良く、重篤な副作用も少ないため、不眠治療でよく使われるおくすりです。

ここではサイレースの効果の強さや作用時間、他の睡眠薬との比較などを紹介していきます。

ちなみにサイレースはエーザイが販売している睡眠薬ですが、中外製薬が販売している「ロヒプノール」と全く成分は同じです。

1.サイレースの作用時間

睡眠薬は作用時間で大きく4種類に分類されています。

  • 超短時間型・・・半減期が2-4時間
  • 短時間型 ・・・半減期が6-10時間
  • 中時間型 ・・・半減期が12-24時間
  • 長時間型 ・・・半減期が24時間以上

半減期というのは、その薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間の事で、
「おおよその薬の作用時間」の目安として使われています。

サイレースは「中時間型」の睡眠薬に分類され、
服薬してから1-1.6時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約7時間です。

中時間型ではありますが、飲んでから1時間ほどで効果が最大になるため即効性も期待できます。
半減期も7時間あるため、持続力もあります。

即効性もあり作用時間の長さもある、という万能型睡眠薬なのです。

寝付きにも効き、中途覚醒にも効くため、患者さんからの評判も良く、処方される事も多いおくすりですが、
反面で、依存しやすいおくすりでもあり注意は必要です。

必要な時に必要な範囲で内服することは全然問題はありませんが、
安易な処方・内服は避けるべきでしょう。

2.睡眠薬の作用時間比較

よく使われる睡眠薬の作用時間を比較してみましょう。

睡眠薬最高濃度到達時間作用時間(半減期)
ハルシオン1.2時間2.9時間
マイスリー0.7-0.9時間1.78-2.30時間
アモバン0.75-1.17時間3.66-3.94時間
ルネスタ0.8-1.5時間4.83-5.16時間
レンドルミン約1.5時間約7時間
リスミー3時間7.9-13.1時間
デパス約3時間約6時間
サイレース/ロヒプノール1.0-1.6時間約7時間
ロラメット/エバミール1-2時間約10時間
ユーロジン約5時間約24時間
ネルボン/ベンザリン1.6±1.2時間27.1±6.1時間
ドラール3.42±1.63時間36.60±7.26時間
ダルメート/ベジノール1-8時間14.5-42.0時間

作用時間が睡眠薬によって様々であることが分かります。

最高濃度到達時間が早いお薬は、「即効性がある」と言えます。

ルネスタ、マイスリー、アモバンなどの「超短時間型」は1時間前後で血中濃度が最高値になるため、
「すぐに寝付きたい」という方にお勧めですが、3-4時間で効果が切れてしまいますから
長くぐっすり眠りたい方には不適であることが分かります。

反対に7-8時間ぐっすり眠りたい場合は、レンドルミンやリスミー、サイレース/ロヒプノールや
デパス、ロラメット/エバミール、ユーロジンなどの睡眠薬が適していることが分かります。

サイレースは超短時間型ほどの即効性はありませんが、服薬後1-1.6時間で効きがピークになり、
半減期も7時間と丁度いい長さです。
(人の平均睡眠時間は6-7時間と言われています)

それぞれ特徴が違いますので、主治医と相談して、自分に合いそうな睡眠薬を選びましょう。

3.サイレースの強さは?

サイレースの睡眠薬としての強さはどのくらいなのでしょうか?

これは個人差もありますが、一般的にサイレースは「強い」部類に入ります。

とは言っても、現在の不眠治療はベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が主流ですが、
これらの睡眠薬はどれも強さに大きな差はないと言われています。

多少の強さの差はありますが、劇的な差ではありません。
強さは同じくらいで、「強さがピークになる時間帯」や「効果が続く時間」が違うだけです。

sleepdrug上図のように、睡眠薬はどれもピーク時の強さは同程度です。

強さが大きく変わらず、強さがピークになる時間帯が違うのです。

そのため効果を強めたい場合は、睡眠薬の種類を変えるよりも「量を増やす」方が効果的です。
サイレースは0.5mgから2mgの間の量で使いますが、量を増やせばそれだけ効果は強くなります。

ただし量を増やせば効果も強くなりますが、副作用も現れやすくなります。
そのため、まずは0.5mgや1mgで開始し、効果が不十分な場合に限り2mgを使うようにするのがいいでしょう。

3.サイレースが向いている人は?

不眠には大きく分けると2つのタイプがあります。

一つ目が「寝付けない事」で、これは「入眠障害」とも呼ばれます。
そして二つ目は「寝てもすぐに起きてしまう事」で、これは「中途覚醒」と呼ばれます。

一般的には、

  • 入眠障害には超短時間、短時間型、
  • 中途覚醒には中、長時間型

の睡眠薬が適していると言われています。

サイレースは中時間型ですから、セオリー通りにいけば
「夜中に何度も起きてしまう」という中途覚醒に向いていることになります。

しかしサイレースは上で説明した通り、バランスの良い薬物動態を持つ睡眠薬であるため、
入眠障害と中途覚醒、どちらにも効果が期待できます。
(内服後1-1.6時間で効果が最大となり、半減期は約7時間程度)

加えて効果も強いため、サイレースは評判も良く、気に入る患者さんは多いように感じます。

期待した効果が得られやすいのは良い事なのですが、しかしこれは注意も必要です。
キレが良く、効きも良いという事は、
「依存しやすい」「睡眠がサイレース頼りになりやすい」という事でもあります。

実際、米国ではサイレースの依存や乱用が問題となり、
現在、米国ではサイレースは合法的に入手することができなくなっています

これはやはり、サイレースは他の睡眠薬より依存形成を起こしやすい、という事を
表していると思われます。

 

これらの事を考えると、

  • 他の睡眠薬(例えばレンドルミンなど)で十分な効果が得られなかった方の第2選択薬として

良いのではないでしょうか。

他の睡眠薬よりも特に耐性・依存形成には注意を払い、漫然と内服を続けないようにしましょう。

また、効果が強いため、高齢者では上限が1mgまでとなっていますので注意してください。