日本人の約10~20%が不眠を自覚しているという報告もあり、「眠れない・・・」という悩みを持っている方はとても多くいらっしゃいます。
十分な睡眠がとれないと、様々な支障が生じます。眠気や集中力低下をよって交通事故や仕事の重大なミスを引き起こす事もあります。また不眠が続くと生活習慣病などをはじめとした身体疾患にかかるリスクも上がります。精神的にも不安定になりやすくなり、うつ病のリスクも上がる事が知られています。
一口に不眠と言っても、その症状はいくつかに分けられます。そしてどのような不眠の症状があるのかによって原因や改善策・治療法が異なります。「眠れない」という悩みを解決するには、まず自分の不眠症がどのようなものなのかを見極め、原因に応じた対策を取っていくことが大切です。
今日は不眠症の中でも「中途覚醒」という症状に焦点を当て、その原因や治療法などを紹介していきます。
1.中途覚醒とは
中途覚醒とは不眠症の症状の1つで、「一旦寝付いても夜中に何度も目が覚めてしまう事」です。
夜にベッドに入ったら一旦は眠りに入れるけど、すぐに目が覚めてしまう。これが中途覚醒です。
しかし中途覚醒のすべてが問題となるわけではありません。
「夜中に目覚めてしまうけど、またすぐに眠りに入れる」
「中途覚醒はあるけど、特に困ってないし昼間に眠くなったりもしない」
というように、中途覚醒があってもそれが生活に大きな支障を来していなければ、その中途覚醒は放置して問題ありません。
例えば高齢者の方はどうしても若い時と比べると眠りが浅くなりがちで中途覚醒が多くなります。これは加齢によって生じている生理的な変化であり、病気ではありません。このようなケースで治療を希望して病院を受診される方もいらっしゃいますが、年齢相応の睡眠の質の低下は正常内の変化ですので、中途覚醒はあっても生活への大きな支障が生じていないのであれば治療する必要はありません。
不眠症として治療すべき中途覚醒というのは、
- 眠ってもすぐに起きてしまう状態が一定期間続いている
- 夜中に目覚めてしまうと再び眠りに入る事が難しい(再入眠困難)
- これによって本人が困っている、あるいは生活に支障が生じている
この3つをすべて満たすような状態です。
ちなみに中途覚醒以外にも不眠の症状はいくつかあり、
- 入眠障害:寝付く事が出来ない
- 早朝覚醒:本来起床すべき時間より大幅に早く目覚めてしまう
- 熟眠障害:一見眠れてはいるが、浅い眠りが続いている
などがあります。
不眠症は大きくは「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟眠障害」に分ける事が多いのですが、それぞれクリアカットに分類できるものではありません。複数のタイプを合併している事も多々あります。
例えば、入眠障害もあるし中途覚醒もあるという不眠症の方もいれば、入眠障害・中途覚醒・熟眠障害・早朝覚醒の全てを認めるという不眠症の方もいます。
2.どこからが中途覚醒になるのか
「一旦寝付いても夜中に何度も目覚めてしまう」というのが中途覚醒になります。
しかしこの定義はちょっとあいまいですよね。
「何時間で目覚めたら中途覚醒なのか」
「夜中に何回目覚めたら中途覚醒なのか」
などといった基準はあるのでしょうか。
実はこれははっきりとは決まっていません。
強いて言うならば、
- 夜に目覚めてしまい、その後なかなか寝付けない
- これによって本人が苦しい思いをしている、生活に支障が出ている
- これらの状態が一定期間続いている
というのが、治療が必要な中途覚醒になります。
そのため、「夜中に〇回以上目覚めてしまったら中途覚醒」「夜中に目覚めた後に〇分以上で寝付けなければ中途覚醒」と機械的に考えるのではなく、「それによって苦しい思いをしているか」」「夜中に目覚めることで生活に支障が生じているか」といった視点で判断する事が大切です。
しかしそれだと自分の中途覚醒は治療が必要なものなのか判断できないという方もいらっしゃると思いますので、おおよその判断基準の目安を紹介します。
臨床的な感覚で言えば、
・夜中にしっかりと目が覚めてしまい、再入眠に30分以上かかる
・中途覚醒によって、日中の集中力や精神状態に悪影響が出ている
ような時は治療の必要性がある事が多いと感じます。
例えば高齢の方が、「若い時と比べると眠りが浅くなっている。もう少しぐっすりと眠りたい」とおっしゃった場合、たとえ中途覚醒があって再入眠に時間がかかっていたとしても、別に日中の生活に支障を来たしていないようであれば、それは加齢に伴う正常な睡眠の質の低下と判断します。このような場合は無理に睡眠薬を使っても思うような効果が得られないばかりか、ふらつきや転倒といった危険性が高まってしまう事があるため、基本的には治療は行いません。
一方で、若い方が夜中に何度も中途覚醒してしまい、それで日中に眠気が出てしまって仕事のミスが増えているという事であれば、これは「生活への支障が生じている」と判断して治療を行うこともあります。
また「中途覚醒が一定期間続いている」の「一定期間」というのはどのくらいの期間なのでしょうか。これはアメリカ精神医学会が発刊しているDSM-5、米国睡眠医学会が発刊しているICSD-3という診断基準いずれも
週に3回以上が3か月以上持続する状態
と定義しています。
DSM-5は精神疾患の診断に対して世界的に用いられている診断基準です。ICSD-3も睡眠障害の診断に対して世界的に広く用いられている診断基準です。
ここから、不眠症に該当する中途覚醒というのは、
- 夜の目覚めてしまい、その後なかなか寝付けない(再入眠に30分以上かかる事が多い)
- これによって本人が苦しい思いをしている、生活に支障が出ている
- これらの状態が一定期間続いている(週に3回以上が3カ月以上続いている)
状態というのが分かりやすい基準になります。
3.中途覚醒が生じる原因とは
中途覚醒はどのような原因によって生じるのでしょうか。
原因となるものは1つではありませんが、基本的に中途覚醒というのは「眠りが浅い」と生じやすくなります。
眠りが浅いという事は、些細な刺激で目覚めてしまいやすいという事です。実は私たちは睡眠中、ずっと同じような深さの睡眠を取り続けているわけではありません。「レム睡眠」「軽睡眠」といった浅い眠りと「深睡眠」といった深い眠りを周期的に繰り返しています。
眠りが浅いと、レム睡眠や軽睡眠の時に覚醒しやすくなってしまうため、中途覚醒が生じます。
では、眠りが浅くなる原因にはどのようなものがあるでしょうか。中途覚醒が生じる代表的な原因を紹介します。
Ⅰ.精神的ストレス
眠りが浅くなる原因として、精神的ストレスが挙げられます。
精神的ストレスを抱えたまま眠りにつくと、脳が十分に休息に入れないため深睡眠を得にくくなります。すると浅い眠りの割合が増えるため、中途覚醒が多くなってしまいます。
眠りが浅くなるという事は、レム睡眠や軽睡眠の割合が増えるという事です。レム睡眠は「脳は起きているけども身体は眠っている状態」であり、脳が起きているため「夢」を見ることがあります。つまり夢を見ることが多いという方は、レム睡眠がの割合が多い(=眠りが浅い)可能性が高いという事が出来ます。
ちなみに精神的ストレスは中途覚醒だけでなく、入眠障害の原因にもなります。
実際、大きな精神的ストレスがかかっているうつ病の方では、高率に入眠障害や中途覚醒を認めます。
Ⅱ.身体的ストレス
身体的なストレスも中途覚醒の原因になります。
ストレスは「不快な刺激」の事ですので、精神だけでなく身体にかかってくる事もあります。
例えば、
- 夜中にトイレに行きたくなる(夜間頻尿)
- 夜中に身体がかゆくなる
- 夜中に足がムズムズする(むずむず脚症候群)
- 夜中に喘息発作が生じる
- 夜中に無呼吸が生じる(睡眠時無呼吸症候群)
といったものは身体に対する「不快な刺激」ですので身体的ストレスに該当します。これらが睡眠中に生じてしまうと脳が深い睡眠に入りずらくなるため、眠りが浅くなり夜中に目覚めやすくなってしまいます。
Ⅲ.睡眠時無呼吸症候群
中途覚醒の原因として、睡眠時無呼吸症候群があります。
これは前項「身体的ストレス」に該当するものなのですが、しっかりと治療する必要のある疾患であるため別項で説明させて頂きます。
睡眠時無呼吸症候群は、何らかの原因によって睡眠時に呼吸が一定時間止まってしまう疾患です。呼吸は生きていくために必要な行為ですので、呼吸が止まれば当然身体は苦しくなります。苦しくなれば身体的ストレスとなり眠りが浅くなるというわけです。
夜間に呼吸が止まってしまう原因としては、
- 中枢性(脳梗塞など脳の異常によって生じる)
- 末梢性(肥満などで気道が狭くなる事で生じる)
があります。
Ⅳ.アルコール
眠るためにアルコールを飲酒する方がいます。当人はアルコールを飲むことで眠れると思っているのですが、本当に効果があるのでしょうか。
確かにアルコールには鎮静作用がありますので飲めば眠くなります。これは成人の方であれば自分自身の飲酒経験から分かるでしょう。
つまりアルコールは入眠障害だけを取れば改善が得られる物質になります。
しかしアルコールは寝付きは良くするものの、眠りの質は浅くする事が分かっています。
アルコールを飲酒する事で、深い眠りである「深睡眠」を減らす事が確認されています。またアルコールは体内から抜ける際に「離脱症状」が生じます。飲んだアルコールの量にもよりますが、だいたい3~4時間くらいでアルコールは身体から抜け始めます。という事は、一番ぐっすり眠りたい時間帯にアルコールの離脱症状が生じてしまうという事です。この離脱症状も間違いなく眠りの質を浅くさせ、中途覚醒の原因となります。
Ⅴ.必要以上にベッドに入っている
睡眠の本来の目的というのは、「心身の疲労を取る」という事です。睡眠は脳や身体を休め、また元気に活動できる状態に回復させるために行われる活動なのです。
と言う事は、心身の疲労を取る必要がない状態に寝ようとしても眠る事はできません。このような状態で無理に寝ようとすれば、全く眠れないか、浅い眠りしか取れないため、容易に中途覚醒しやすくなります。
例えば、
- 一日中、何もせずに過ごしている
- 身体を十分に動かしていない
- 長時間(30分以上)の昼寝をしている
といった状態だと寝る時に身体が十分に疲れておらず、深い眠りに入る事が難しくなります。
Ⅵ.不眠の副作用があるお薬や物質
お薬によって睡眠の質を悪くするものもあります。
例えば、
- 抗うつ剤
- 気分安定薬
- 抗パーキンソン病薬
- 抗生物質
- ステロイド
- 降圧剤
- 脂質異常治療薬
- 鎮咳薬(咳止め)
- 気管支拡張薬(喘息などに使うお薬)
- 鎮痛剤
などといった多くのお薬で不眠の副作用が生じる可能性があります。
何らかのお薬を定期的に服用されている方で不眠の症状がある方は、一度その処方医にお薬の副作用の可能性はないのかを聞いてみた方が良いでしょう。
またお薬ではありませんが、
- コーヒー、チョコレートなどに含まれるカフェイン
- タバコなどに含まれるニコチン
の摂取も覚醒レベルを上げてしまうため、特に睡眠に入る前の摂取はオススメできません。
4.中途覚醒への対策や治療法
では、中途覚醒を改善させるためにはどのような方法があるのでしょうか。
前項の中途覚醒が生じる原因ともとに、その解決策を考えてみましょう。
Ⅰ.アルコールで改善させるのは危険
眠れない事に対して、「お酒を飲んで眠ろう」と考える方は少なくないようです。
しかし先ほども書いた通り、この方法は良い方法ではありません。特にアルコールで中途覚醒を解決しようとすると、改善が得られるどころかかえって悪化します。
アルコールは飲むと眠くなりますので入眠障害(寝付けない)を改善させる作用はあります。そのため入眠障害に対してだけを見れば確かに有効でしょう。しかしアルコールは睡眠の質を低下させ、中途覚醒・早朝覚醒を増やしてしまう事が知られています。また睡眠中にアルコールの作用が切れて離脱症状が生じるため、これも中途覚醒を生じさせる原因となります。
更にアルコールには耐性(だんだんと効きが悪くなってくる)があるため、アルコールで眠るという方法を続けていると、だんだんとアルコールの摂取量を増やさないと入眠作用を得られなくなります。アルコールには依存性もあるため、大量のアルコール摂取を続けていると次第にアルコールなしでは落ち着かなくなってしまい、「アルコール依存症」になってしまう危険もあります。
アルコール依存症になれば、アルコールを手放せず、それによって仕事や対人関係などの必要な活動もできなくなります。
アルコールは確かに入眠障害を改善させますが、中途覚醒や早朝覚醒・熟眠障害を悪化させ、総合的に見れば睡眠や健康への悪影響が大きい物質なのです。
Ⅱ.精神的ストレスの除去
こころが大きなストレスを感じていると、睡眠の質が悪くなります。
強いストレスを受けていると、私たちの身体では「交感神経」という緊張させる神経が興奮してしまいます。この状態ではリラックスする事ができませんので、眠ろうとしても浅い睡眠しか得られなくなります。
精神的なストレスによって中途覚醒が生じているようであれば、出来る限りそのストレスを除去(あるいは軽減)できないか考えてみましょう。
例えば、
- ストレスとなる場所や人になるべく近づかないようにする
- 辛かった事を話す事でストレスを吐き出す
などの工夫は有効です。
仕事などがストレスとなっている場合、仕事は簡単に辞めるわけにもいきませんから原因を完全に除去するのは難しいかもしれません。しかし除去できなかったとしても、少しでもストレスを軽減できないかどうかを考えてみる事は大切です。
「仕事を辞める」は現実的に難しいとしても、「苦手なあの人となるべく距離を取る」「定期的に休憩する」「なるべく残業しないようにする」といった事は工夫次第で改善できることもあるでしょう。
また寝る前に副交感神経を活性化させるような行動を意識する事も効果的です。副交感神経はリラックスさせる神経であり、交感神経と正反対の神経になります。副交感神経が活性化するとスムーズに眠りに入りやすくなります。
ではどのような行動が副交感神経を活性化させるのでしょうか。
副交感神経は心身が「今はリラックスしても大丈夫なんだ」と判断した時に活性化され始めます。そのためそのような状況を作ればいいのです。
- ぬるめのお風呂にゆっくりと入る
- 落ち着く作用のあるアロマを炊く(「アロマで不眠を治す!睡眠の改善に効果的なアロマの使い方」参照)
- 寝る前にゆっくりとストレッチをする
- 寝る前に気持ちが落ち着く音楽を聴く
このような方法が有効です。
また筋弛緩法(リラクゼーション)という心身をリラックスさせる方法も有効です。
筋弛緩法は、筋肉を意識的に緩めることで身体をリラックスさせる方法です。眠る前に身体の緊張をほぐしてリラックス状態を作ることで寝つきを改善させる効果が期待できます。
筋弛緩法、正確には「漸進的筋弛緩法(Progressive Muscle Relaxation)」という名称ですが、これは特別な器具も必要なく、10~20分ほどでかんたんに行えるリラックス法です。身体を動かして緊張を取る「運動」になるため、副作用などの心配もありません。
正確なやり方は、専門家の指導を一度受けるべきですが、簡単に説明すると、
- 8割ほどの力で5-10秒ほど力を入れて、
- その後スーッと力を抜き、10秒ほど脱力する
ということ顔、手、足・・・と全身の筋肉に対して順々に行っていく方法です。
力を入れたあとストンと力を抜くことが一番のポイントで、脱力を意識することで筋肉の緊張が取れやすくなります。これを行うと、全身の筋肉の緊張が取れ、自律神経が落ち着きます。
一気に力を抜く事で、緊張が取れた状態を意識的に作り、その状態を覚えることでリラックス状態を意識的に作れるようにしていきます。
Ⅲ.身体的ストレスの除去
身体的ストレスがある場合は、その除去も重要です。
原因となる身体的ストレスに対して、それぞれ適切な治療を行っていきましょう。
例えば、夜間にトイレで何回も起きてしまうという身体的ストレスであれば、泌尿器科で夜間頻尿の原因精査を行いましょう。その結果によって、生活習慣の改善を行ったり頻尿を抑えるお薬を使ったりといった対処法を取っていきます。
夜間にかゆみで起きてしまうようであれば、寝具や寝室環境に問題がないのかをチェックしましょう。また皮膚科等を受診して自分の皮膚状態に問題がないかもみてもらいましょう。抗アレルギー薬などを使う事でかゆみが抑えられ、身体的ストレスが除去される事もあります。
夜間に無呼吸で起きてしまうようであれば、内科で睡眠時無呼吸の検査をしても良いでしょう。本格的な検査は入院した上で行いますが、簡易検査であれば機械を持ち帰って自宅で行えるものもあります。
Ⅳ.iCBT(睡眠への認知行動療法)
不眠に対する精神療法として、iCBTというものがあります。
iCBTは睡眠への正しい知識を学び、睡眠へのあやまった考え方やとらわれを修正する事で睡眠を改善させる方法です。しっかりと専門家の指導の元でiCBTを行えば、お薬と同等の効果が得られる事も報告されています。
iCBTについては「薬を使わずに不眠症を改善する!不眠に効く4つの非薬物治療」で詳しく説明していますのでご覧ください。
特に「刺激制御法」と「睡眠制限法」は、不眠で悩んでいる方にはぜひ試して頂きたい治療法です。
【刺激制御法】
不眠が続くことで、脳が「寝室は眠れない場所」と意識づけている事があり、これを修正する方法。
・眠る時にだけ寝室を使う
・寝室で睡眠以外の行動はしない(寝室で本を読んだりしない)
・眠れなければ寝床から離れる
などを続け、脳に「寝室は眠る場所」という意識づけを促す。
【睡眠制限法(睡眠時間制限法)】
あえて寝床にいる時間を制限することで、「寝床は眠るところ」という意識づけを行う方法。
不眠症の方は「少しでも長く横になっていよう」長時間寝床にいる傾向があるが、例え眠れていないと感じていても時間が来たら起きるようにする。
これによって生活リズムを正し、また脳に「寝室は眠るところ」という正しい意識づけを促す。
Ⅴ.生活習慣の改善
寝つきが悪くなるような生活習慣があれば改善する必要があります。
- 寝る前にカフェインやニコチンを摂取している
- 寝る前にスマホやゲームをしている
- 日中に十分身体を動かしていない
- 朝日を浴びていない
などといった不眠の原因となる生活習慣がある場合は、これらの改善を行います。
特に朝日をしっかりと浴びることは大切です。朝日は体内時計を整えるはたらきがあり、朝日を浴びることによって朝にしっかり目覚めるだけでなく、夜に自然と眠くなります。眠気を促す物質としてメラトニンがありますが、メラトニンは朝日を浴びた約16時間後に分泌が増えることが分かっています。
Ⅵ.睡眠薬
上記の方法を行ってもなかなか入眠障害が改善しない場合は、睡眠薬という方法もあります。
睡眠薬というと怖がってしまう方もいますが、近年の睡眠薬には安全性が高く、医師の指導の元で適切に使っていれば特に危険なお薬だという事はありません。少なくともアルコールで眠るよりは確実に安全な治療法です。
睡眠薬にもいくつかの種類がありますが、中途覚醒の治療に求められる睡眠薬は作用時間がある程度長いものになります。健常な人はだいたい6~8時間くらい眠りますから、作用時間もそれくらいの睡眠薬が中途覚醒の治療には適しているでしょう。
お薬の効きは個人差もあるため、万人にとって最適となる睡眠薬はありませんが、一般的に中途覚醒の治療薬として使われる睡眠薬には、
- サイレース・ロヒプノール(一般名フルニトラゼパム)
- ベンザリン・ネルボン(一般名ニトラゼパム)
- リスミー(一般名リルマザホン)
- ユーロジン(一般名エスタゾラム)
- エバミール・ロラメット(一般名ロラメタゼパム)
などがあります。
睡眠薬 | 最高濃度到達時間 | 作用時間(半減期) |
---|---|---|
ハルシオン | 1.2時間 | 2.9時間 |
レンドルミン | 約1.5時間 | 約7時間 |
リスミー | 3時間 | 7.9-13.1時間 |
デパス | 約3時間 | 約6時間 |
サイレース/ロヒプノール | 1.0-1.6時間 | 約7時間 |
ロラメット/エバミール | 1-2時間 | 約10時間 |
ユーロジン | 約5時間 | 約24時間 |
ネルボン/ベンザリン | 1.6±1.2時間 | 27.1±6.1時間 |
エリミン | 2-4時間 | 12-21時間 |
ドラール | 3.42±1.63時間 | 36.60±7.26時間 |
ダルメート/ベジノール | 1-8時間 | 14.5-42.0時間 |
ソメリン | 1時間 | 24-42時間 |
また近年では
- ベルソムラ(一般名スボレキサント)
といった耐性・依存性のない睡眠薬もあり、これらも中途覚醒に効果があると考えられています。