エバミール錠の効果・作用時間【医師が教える睡眠薬の全て】

エバミールは1990年に発売された睡眠薬で、ベンゾジアゼピン系という種類に属します。

ベンゾジアゼピン系は効果も良く、重篤な副作用も少ないため、不眠治療の中心になっているおくすりです。

ここではエバミールの効果の強さや作用時間、他の睡眠薬との比較などを紹介していきます。

ちなみにエバミールはバイエル薬品という会社が販売している睡眠薬ですが、あすか製薬・武田薬品が販売している「ロラメット」と全く成分が同じおくすりです。

1.エバミールの作用時間

睡眠薬は作用時間で大きく4種類に分類されています。

  • 超短時間型・・・半減期が2-4時間
  • 短時間型 ・・・半減期が6-10時間
  • 中時間型 ・・・半減期が12-24時間
  • 長時間型 ・・・半減期が24時間以上

半減期というのは、その薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間の事で、
「おおよその薬の作用時間」の目安として使われています。

エバミールは「短時間型」の睡眠薬に分類され、
服薬してから1-2時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約10時間です。

短時間型ではありますが、短時間型の中では一番効きが長いおくすりで、
限りなく中時間型に近い、短時間型睡眠薬です。

飲んでから1-2時間で効果が最大となり、10時間も経てば半減期を迎えるため、
ある程度の即効性もあり、ある程度作用時間の長さもある、という
バランス型の睡眠薬と言えるでしょう。

 

2.睡眠薬の作用時間比較

よく使われる睡眠薬の作用時間を比較してみましょう。

睡眠薬最高濃度到達時間作用時間(半減期)
ハルシオン1.2時間2.9時間
マイスリー0.7-0.9時間1.78-2.30時間
アモバン0.75-1.17時間3.66-3.94時間
ルネスタ0.8-1.5時間4.83-5.16時間
レンドルミン約1.5時間約7時間
リスミー3時間7.9-13.1時間
デパス約3時間約6時間
サイレース/ロヒプノール1.0-1.6時間約7時間
ロラメット/エバミール1-2時間約10時間
ユーロジン約5時間約24時間
ネルボン/ベンザリン1.6±1.2時間27.1±6.1時間
ドラール3.42±1.63時間36.60±7.26時間
ダルメート/ベジノール1-8時間14.5-42.0時間

作用時間が睡眠薬によって様々であることが分かります。

最高濃度到達時間が早いお薬は、「即効性がある」と言えます。

ルネスタ、マイスリー、アモバンなどの「超短時間型」は1時間前後で血中濃度が最高値になるため、
「すぐに寝付きたい」という方にお勧めですが、3-4時間で効果が切れてしまいますから
長くぐっすり眠りたい方には不適であることが分かります。

反対に7-8時間ぐっすり眠りたい場合は、レンドルミンやリスミー、サイレース/ロヒプノールや
デパス、ロラメット/エバミール、ユーロジンなどの睡眠薬が適していることが分かります。

エバミールは超短時間型ほどの即効性はありませんが、服薬後1-2時間で効きがピークになるため
決して効きが遅いおくすりではありません。
半減期も10時間と中時間型に劣らない作用時間を持ちます。

それぞれ特徴が違いますので、主治医と相談して、自分に合いそうな睡眠薬を選びましょう。

3.エバミールの強さは?

エバミールの睡眠薬としての「強さ」はどのくらいなのでしょうか?

これは個人差もありますが、「普通」くらいでしょう。

現在の不眠治療は、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が主流となっていますが、
これらの睡眠薬はどれも強さに大きな差はないと言われています。

強さは同じくらいで、「強さがピークになる時間帯」や「効果が続く時間」が違うだけです。

sleepdrug上図のように、睡眠薬はどれもピーク時の強さは同程度です。

強さが大きく変わらず、強さがピークになる時間帯が違うのです。

そのため効果を強めたい場合は、睡眠薬の種類を変えるよりも「量を増やす」方が効果的です。
エバミールは1mgから2mgの間の量で使いますが、量を増やせばそれだけ効果は強くなります。

ただし量を増やせば効果も強くなりますが、副作用も現れやすくなります。
そのため、まずは1mgで開始し、効果が不十分な場合に限り2mgを使うようにするのがいいでしょう。

3.エバミールが向いている人は?

不眠には大きく分けると2つのタイプがあります。

一つ目が「寝付けない事」で、これは「入眠障害」とも呼ばれます。
そして二つ目は「寝てもすぐに起きてしまう事」で、これは「中途覚醒」と呼ばれます。

一般的には、

  • 入眠障害には超短時間、短時間型、
  • 中途覚醒には中、長時間型

の睡眠薬が適していると言われています。

エバミールは短時間型ですから、セオリー通りにいけば
「なかなか寝付けない」という入眠障害に向いていることになります。

しかしエバミールは短時間型の中で最も中時間型に近いおくすりであり、
即効性と作用時間の長さ、どちらも適度にあるというバランス型の睡眠薬です。
(内服後1-2時間で効果が最大となり、半減期は約10時間程度)

このため、実際は入眠障害と中途覚醒どちらもそこそこある方に向いていると言えます。

明らかに入眠障害だけ、明らかに中途覚醒だけ、という偏ったタイプの不眠ではなく、
「寝付きも悪いことがあるし、夜中に起きてしまうこともあるんだよな」というタイプですね。

 

また、エバミールは肝臓への負担が少ないという特徴があります。

これは、CYPという肝臓の代謝酵素で代謝されないためで、
ほとんど(80%程度)が、腎臓で代謝・排泄されます。

そのため、

  • おくすりの量が多い方(これ以上おくすりで肝臓に負担をかけたくない場合)
  • 肝臓が元々悪い方
  • 高齢者(高齢者は肝機能が落ちていたり、CYPのはたらきが弱りやすいため)

などに向いている睡眠薬だと言えます。