ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは

ベンゾジアゼピン系睡眠薬について

現在我が国では、約20人に1人が睡眠薬を使っていると言われています。そして睡眠薬の中で、一番多く使われているのはベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

これだけ多くの方が使っているお薬であるにも関わらず、その効果や特徴、服用の注意点などについてしっかりと理解している方はまだまだ少ないように感じます。

お薬は正しく使わないと害になる事もあります。ベンゾジアゼピン系睡眠薬も不眠症に対して有用なお薬ではありますが、使い方を間違えれば依存になってしまったり、日中にボーッとしてしまったりと害が生じる事もあります。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬について正しく知れば、このような害が生じる事を避け、有益にお薬を使う事が出来るようになります。

ここでは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬について、その作用機序や効果、副作用などについて紹介していきます。

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1.ベンゾジアゼピン系睡眠薬の薬名一覧

まず、どの睡眠薬がベンゾジアゼピン系なのかを知っていただくために、具体的なお薬の名前を紹介させて頂きます。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは、具体的にはこれらのお薬の事を指します。

睡眠薬最高濃度到達時間作用時間(半減期)
ハルシオン1.2時間2.9時間
レンドルミン約1.5時間約7時間
リスミー3時間7.9-13.1時間
デパス約3時間約6時間
サイレース/ロヒプノール1.0-1.6時間約7時間
ロラメット/エバミール1-2時間約10時間
ユーロジン約5時間約24時間
ネルボン/ベンザリン1.6±1.2時間27.1±6.1時間
エリミン2-4時間12-21時間
ドラール3.42±1.63時間36.60±7.26時間
ダルメート/ベジノール1-8時間14.5-42.0時間
ソメリン1時間24-42時間

最高濃度到達時間というのは、お薬を飲んでから効きが最高になるまでにかかる時間のことで、これが短いほど即効性があるということになります。

半減期とは、お薬を飲んでその血中濃度が最高に達してから半分に落ちるまでにかかる時間のことで、これはそのお薬の作用時間とある程度相関するため、作用時間を知る一つの目安になります。

2.ベンゾジアゼピン系睡眠薬の特徴

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、現在もっとも多く使われている睡眠薬です。その理由は、しっかりとした催眠作用(眠らせる効果)があり、その割に重篤な副作用が少ないからです。

しっかりと不眠を治してくれる力を持っていながら、バルビツール系睡眠薬(昔の睡眠薬)のように大量服薬してしまっても致命的になることもほぼありません。医師としても安心して処方しやすく、患者さんも満足してくれるバランスの良いお薬なのです。

また種類も豊富で、10種類以上が発売されています。それぞれで作用時間や強さが異なるため、患者さん個々の症状に合わせて最適な睡眠薬を選びやすいのも良い点です。

しかし、安全性は高いとは言っても副作用がないわけではありません。重篤な副作用が起きないからとついたくさん使ってしまったり、漫然と使い続けて、耐性や依存性が形成されてしまうことがあり、これは近年問題となっています。

【耐性】
その物質の摂取を続けていると、次第に身体が慣れてきてしまい、効きが悪くなってくる事。

【依存性】
その物質の摂取を続けていると、次第にその物質なしではいられなくなってしまう事。その物質がないと落ち着かなくなったりイライラしたり、発汗やふるえなどの離脱症状が出現するようになる。

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3.ベンゾジアゼピン系睡眠薬の作用機序

ベンゾジアゼピン系睡眠薬はたくさんの種類が発売されていますが、作用機序はどれも同じです。

ベンゾジアゼピン系の作用は、脳にあるGABA-A受容体に結合して、そのはたらきを増強することです。GABA-A受容体は「抑制系受容体」と呼ばれており、脳のはたらきを抑制するはたらきがあります。

具体的には、

〇 抗不安作用(不安を和らげる)
〇 催眠作用(眠らせる)
〇 筋弛緩作用(筋肉の緊張を取る)
〇 抗けいれん作用(けいれんを抑える)

この4つの作用があり、ベンゾジアゼピン系はすべて、この4つの作用をもっています。

この中で特に「催眠作用」に優れるベンゾジアゼピン系を「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と呼びます。

4.ベンゾジアゼピン系睡眠薬の歴史

ベンゾジアゼピン系は1960年ごろより使用されており、実は歴史の古いお薬です。

それ以前はバルビツール系と呼ばれる睡眠薬が主流でした。バルビツール系は強力な催眠効果があるのですが、その代わり副作用も強力でした。耐性や依存性も形成されやすいし、誤って大量に服薬すると死亡してしまうこともありました。

確かに良く効くんだけど、あまりに危険であるため、もっと安全な睡眠薬が求められてきました。それで開発されたのがベンゾジアゼピン系です。以後50年以上に渡り、ベンゾジアゼピン系は睡眠薬の主役を担ってきました。

1980年代からは、より副作用の少ない睡眠薬として非ベンゾジアゼピン系が開発され、これらもよく使用されています。

また最近では、メラトニン受容体作動薬(商品名:ロゼレム)やオレキシン受容体拮抗薬(商品名:ベルソムラ)という全く作用機序の異なる新しいタイプの睡眠薬も出てきています。

これらは効果は穏やかであるものの、耐性や依存性がなく安全性が高いという特徴があり、今後はベンゾジアゼピン系に代わって睡眠薬の主役を担う可能性を秘めています。

5.ベンゾジアゼピン系睡眠薬で気を付けること

ベンゾジアゼピン系は基本的には安全な睡眠薬ですが、いくつかのことに注意して服薬する必要があります。

まず睡眠薬であるため、当然眠くなります。そのため、内服後に歩き回ってしまうとふらついて転倒したりする危険はあります。他の睡眠薬でも同じですが、服薬後はすぐにベットに入り動き回らないでください。

また、ベンゾジアゼピン系はアルコールと相性が悪いため、併用してはいけません。アルコールとベンゾジアゼピン系は作用機序が似ている点があるため、お互いの作用を強めあってしまいます。

そのため併用すると、いつもよりお酒が回りやすくなったり、睡眠薬が効きすぎたりしてしまいます。お互いの作用が強まった状態になるため、依存もより急速に形成されてしまいます。

基本的にベンゾジアゼピン系睡眠薬は「一時的に使うお薬」だという認識を必ず持って服薬してください。「ずっと飲むもの」ではありません。

人間の「眠る力」というのは、病気などによって一時的に弱まることはあっても、無くなってしまうことはありません。睡眠薬は眠る力が弱まってしまった時に一時的に使う、あくまでも補助的なお薬です。

症状が改善してきたら、定期的に「やめれないか」「減薬できないか」を検討するようにし、漫然と使い続けないようにしましょう。漫然と使っていると、徐々に耐性がついてしまい、お薬が効きにくくなっていきます。そうなると服用量がどんどん増えてしまいます。

また依存性も形成されてしまいます。睡眠薬がないと居ても立っても入れらなくなり、睡眠薬に支配された生活となってしまいます。不眠の治療をしていたはずなのに、いつのまにか「依存症」という別の病気になってしまいます。

6.ベンゾジアゼピン系以外にはどんな睡眠薬があるのか?

睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系以外にも いくつかの種類があります。代表的なものを紹介します。

Ⅰ.バルビツール系

1950年代に使用されていた一番古い睡眠薬です。

商品名としては、ラボナ、イソミタール、ベゲタミンAベゲタミンBなどがあります。

強力な催眠効果があるため、現在でも重度の不眠の方に使われることが稀にありますが、副作用も強力なため、使用には注意が必要です。具体的には耐性や依存性も形成されやすく、大量服薬で致命的となることがあります。

確かに良く効くのですが危険性が高いため、極力処方すべきではないお薬です。

安全性が低いため、「処方すべきではない」「必要のないお薬」と評する専門家も多く、今後は目にする事はなくなっていくと考えられます。

実際、2016年を持って「最強の睡眠薬」との呼び名もあるベゲタミンは発売終了となる事が決まっています(「ベゲタミンが発売中止へ。ベゲタミンを服用中の方が取るべき対策とは」参照)。

Ⅱ.非ベンゾジアゼピン系

ベンゾジアゼピン系とは異なる構造を持つお薬なのですが、その作用機序はベンゾジアゼピン系と似ています。そのため「ベンゾジアゼピン系類似薬」と呼ばれることもあります。

商品名としては、マイスリーアモバンルネスタなどがあります。

ベンゾジアゼピン系よりも、催眠作用に特化した睡眠薬で、そのために副作用もベンゾジアゼピン系睡眠薬より若干少ないと言われています。

ベンゾジアゼピン系結合部位には

〇 催眠作用に関係するω1受容体
〇 筋弛緩作用、抗不安作用に関係するω2受容体

の2つがあるのですが、非ベンゾジアゼピン系はω1受容体に選択的に結合しやすいという特徴があります。

そのため催眠作用はしっかりあるけども、筋弛緩作用や抗不安作用はほとんどなく、ふらつきなどの副作用が起こりにくいのです。

また耐性や依存性もベンゾジアゼピン系睡眠薬より若干少ないのではないかという意見もあります。

Ⅲ.メラトニン受容体作動薬

メラトニンという物質に似たはたらきをすることで自然な眠りを後押しするお薬です。

商品名としてはロゼレムがあります。

夜に暗くなると、脳の松果体という部分からメラトニンというホルモンが分泌されます。分泌されたメラトニンは同じく脳の視交叉上核というところにあるメラトニン受容体にくっつきます。すると私たちは眠気を感じます。

ということは、メラトニン受容体を刺激してあげれば眠くなるのではないか、というのがこのお薬の作用です。

このお薬の特徴は、「自然な眠りを後押ししてくれる」ことです。薬で強制的に眠らせるわけではなく、あくまでも自然な機序に沿って眠気を起こしているため、安全性が非常に高いと言われています。

そのため、耐性や依存性もありません。

しかし効果は強くはなく、中には1か月ほど服薬を続けないと効果を感じられない場合もあります。

Ⅳ.オレキシン受容体拮抗薬

人を覚醒させるホルモンである「オレキシン」を阻害するお薬です。

商品名としてはベルソムラがあります。

オレキシンは覚醒状態を保つはたらきがあると言われています。

ナルコレプシーという病気があります。この病気は「眠り病」とも呼ばれており、突然意識が落ちて眠ってしまうという症状があります。そしてナルコレプシーは、オレキシンの欠乏で生じていることが分かっています。

ということは、オレキシンのはたらきをジャマすれば人は眠くなるのでは、というのがこのお薬の作用機序です。

効果は前述のメラトニン受容体作動薬よりは強いのですが、ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ほどではありません。

ただし、耐性や依存性はほとんど形成しないため安全性は高く、効果と副作用のバランスは優秀なお薬です。

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