ミルタザピン

リフレックスやレメロンといった抗うつ剤は「ミルタザピン」という名前も付いています。インターネットで調べても「リフレックス(ミルタザピン)は○○です」と同じ意味のように書かれています。

一体「ミルタザピン」とは何のことでしょうか。リフレックス、レメロンと何が違うのでしょう。

実は、お薬には「一般名」と「商品名」とがあります。ミルタザピンは「一般名」でリフレックスやレメロンは「商品名」です。

呼び方が違うだけで「ミルタザピン」は「リフレックス」「レメロン」と同じことを指しているのです。

なので、ミルタザピンの効果や副作用などを知りたい方は、リフレックスのそれと同じですので、こちらをご覧ください。

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なぜこのように「一般名」「商品名」を使い分けしているのか、せっかくなので、ここではそんなお話をしてみましょう。

1.一般名と商品名

医薬品には、それぞれ「一般名」と「商品名」があります。

一般名というのは、国際的に決められたお薬の名前です。

なので、全世界でほぼ共通です。
海外の学会で「ミルタザピン」と言えば、どの国の医師にも通じます。

対して商品名というのは、医薬品を販売している会社が独自につけた名前です。
「リフレックス」はMeiji Seikaファルマ社がつけたミルタザピンの名前、
「レメロン」はMSD社がつけたミルタザピンの名前なのです。

商品名は、「会社が独自につけた名前」ですから、海外では通じないこともあります。
例えばミルタザピンは、

アメリカでは「Remeron(レメロン)」という商品名しかありません。
アメリカにはMSD社はあるけど、Meiji Seikaファルマ社がないからです。

イギリスでは「Zispin」と、全く違う商品名になってます。
イギリスではミルタザピンを販売している会社が違うからです。

一般名は、主に研究などの学術分野で使われます。
論文や学会発表などでは、お薬の名称は全て一般名で書かれます。

商品名で書いてしまうと、ある会社から出たお薬だけに限定してしまいますし
それは誤解や癒着につながります。

「ミルタザピンは○○である」と書けば、リフレックスもレメロンもZipsinも
その他のミルタザピンも全てを含みますが、
「リフレックスは○○である」と書いてしまうと、Meiji Seikaファルマ社が販売している
ミルタザピンだけを指してしまいます。

対して、臨床現場ではほとんど商品名が使われます。

実際の医療現場で患者さんに手渡されるのは、
ある会社から販売されている「商品」としての医薬品だからです。

製薬会社さんは、患者さんに覚えてもらえるように、使ってもらえるように
と考えて商品名を決めています。

例えば、リフレックスは

  • RE(Remission:寛解 Recovery:回復)
  • FLEX(Flexibility:しなやかさ)

を合わせて「リフレックス」と言う名前にしたそうです。
「この薬で病気を治して、しなやかさを取り戻してほしい」という意味なんでしょう。

レメロンは

ラテン語の諺である「Luctor et Emergo」をもじったとのことでした。
これは「苦労するが、やがて苦境から抜け出す」という意味のようですね。

それぞれの会社が、薬への想いを込めてつけたのが商品名でなのです。

なので、患者さんにとっては「商品名」の方がなじみが深く、
「一般名」はなじみが薄いのです。

2.一般名処方の意図

最近は「商品名ではなく一般名で処方しましょう」という
「一般名処方」を国が推奨しています。

実際、平成24年4月から、商品名ではなく一般名で処方すると
「一般名処方加算」が付き、処方箋一つにつき、
2点(20円)が病院はもらえるようになりました。

ちょうどそのくらいの時期から処方箋に書かれている薬の名前が変わった、
という方は多いのではないでしょうか。

これは「一般名処方加算」が導入されたためです。

一般名処方が推奨されているのはなぜでしょうか?

一つは、「患者さんが自由にお薬を選べるようにするため」 です。

例えば、リフレックスもレメロンも同じミルタザピンです。
効果も成分もお薬の値段も全て一緒です。

なので、どちらを処方しても医学的には問題ないわけです。

「レメロンは絶対だめ!リフレックスじゃなきゃ治らん!!」
なんてことはほとんどありえません。

ならば、リフレックスにするかレメロンにするかは
患者さんが好きに選んでもいいですよね。

また、後発品(ジェネリック)があるお薬の場合、
一般名にすることで、患者さんが「ジェネリックにするかどうか」も自由に選べるようになります。
(ミルタザピンにはまだジェネリックがありませんが・・・)

例えば、「パキシル(一般名パロキセチン)」にはジェネリックがありますが、
処方箋に「パキシル」と書くと、GSK社が販売している先発品のパキシルを処方するという意味になります。

でも「パロキセチン」と書けば、GSK社のパキシルでもいいし、
ジェネリックの安いパキシルでもいいし、好きな方を患者さんが選べます。

同じ効果なんだから安い方がいい、というのであればジェネリックにしてもいいし、
ちょっと高くても飲み慣れてるパキシルがいい、ということであればパキシルでもいいのです。

薬効は同じですから、患者さんがどちらを選んでも医学的には問題ありません。

このように、一般名処方は「患者さんに薬を選ぶ選択権を与える」という意図があります。

また、こうすると値段が安いジェネリックを選ぶ患者さんが増えるでしょうから、
結果として医療費の削減につながる、という国の狙いもあります。

また、一般名処方は医師と製薬会社の癒着防止にもつながります。

リフレックスもレメロンも同じ薬です。
成分も効果もお薬の値段も一緒。

じゃあ、どっちを処方するの?というと、どっちでもいいわけで、
「個々の医師の好み」で処方することになります。

この状況だと製薬会社はどうするか?

自社の薬を出してほしいですから、「ぜひうちの薬を出してください!」とお願いしに行きます。
接待や賄賂などにも発展しかねません。

これはダメですよね。

一般名処方にすれば、医師の判断ではなく患者さんの判断で
「リフレックス」にするか「レメロン」にするか選べるので、
医師が決めることができなくなります。

すると、製薬会社と医師の癒着の恐れも少なくなり、健全な処方になります。

患者さんの選択権が増えるのはいいことです。

もちろん、「よく分からない」「自分では決められない」という時は
医師に一任してもいいのですから。