トライポフォビアが生じる心理とは。医師が教える原因や診断法・克服法

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トライポフォビア(Trypophobia)という疾患をご存知でしょうか。「集合体恐怖症」「ぶつぶつ恐怖症」とも呼ばれています。

トライポフォビアは、小さな物体や穴が密集しているようなもの(これを集合体と言います)に著しい恐怖を感じてしまう疾患です。

例えば泡だったり、蓮(はす)の葉だったり、カエルの卵だったり・・・。トライポフォビアが発症すると、いわゆる「ブツブツしているもの」がとても怖くなってしまうのです。

これらブツブツしたものは、あなたに何か危害を加えるものではありません。にも関わらず過度に恐怖を感じてしまうのはどうしてなのでしょうか。

ここではトライポフォビアの方がブツブツに著しい恐怖を感じてしまう原因や、生じる症状、医学的な診断基準、そして治療法・克服法などについてお話させていただきます。

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1.トライポフォビアはどのような疾患なのか

トライポフォビア(Trypophobia)は「恐怖症(Phobia)」の一種になります。

恐怖症というのは、特定の対象・状況に対して著しい恐怖が生じてしまい、それによって生活に支障が生じてしまう疾患です。

よく知られている恐怖症には、

  • 対人恐怖症(Socalphobia)・・・他者に対して著しい恐怖を感じてしまう
  • 高所恐怖症(Acrophobia)・・・高い場所に対して著しい恐怖を感じてしまう
  • 閉所恐怖症(Claustrophobia)・・・密室に対して著しい恐怖を感じてしまう
  • 男性恐怖症(Androphobia)・・・男性に対して著しい恐怖を感じてしまう

などがあります。

トライポフォビアもこれらと同じ「恐怖症」に属し、小さな物体や穴が密集しているように見える対象(集合体)に対して著しい恐怖が生じてしまう疾患になります。

具体的には、

  • ハスの実
  • ビールなどを注いだ時に出来る泡
  • ハチの巣
  • 水玉模様

などが対象として挙げられます。いずれも小さな穴や点が密集しているものです。

これらブツブツしたものにさらされると強い恐怖に襲われ、

  • 震え
  • 動悸
  • 呼吸苦
  • 発汗多量
  • 嘔吐
  • 失神

などといった自律神経症状が生じる事もあります。

中には集合体を見なくても想像するだけで、症状が出てしまう方もいらっしゃいます。また、ブツブツが視界に入るのが怖いという恐怖から、外出が制限され、生活に支障が生じてしまう事もあります。

ブツブツしたものは生活の中に意外とあるものです。ビールや炭酸飲料などの泡、斑点模様の服、公園に咲いているひまわり・・・、いずれも普段の生活の中で偶然目に入ってしまう可能性は十分あります。

トライポフォビアは「恐怖症」に属する疾患ですが、「疾患」「病気」だと認識している方は多くありません。「生まれつきの性格」「体質のようなもの」だから治らないと考えてしまっている方が多く、そのため適切な治療が行われないまま何十年も経過している事もあります。

もちろんブツブツが多少苦手だけどもそこまで困っていないという方であれば、無理して治療を行う必要はありません。しかしブツブツが怖くて苦しい思いをしていたり、生活に支障が生じている場合は、適切な治療をすれば恐怖を和らげる事ができるようになります。

トライポフォビアは「疾患」ですので、適切な治療を行えば症状を改善させることができるのです。

2.トライポフォビアが生じる原因

トライポフォビアの方はなぜ、ブツブツしたものに著しい恐怖を感じてしまうのでしょうか。

例えば同じ恐怖症でも、

  • 高所恐怖症(高いところに恐怖を感じる)
  • 先端恐怖症(ナイフなど尖ったものに恐怖を感じる)

などで恐怖が生じる理由は理解しやすいでしょう。なぜならば高いところも尖ったものも確かに怖いものだからです。

しかし、

  • ブツブツした食べ物を見るのが怖い
  • 斑点柄の洋服を見るのが怖い

というのは、なぜこれが怖いのか上手く説明できません。実際、トライポフォビアの患者さん自身も「なぜブツブツが怖いのか」はよく分かっていません。「よく分からないけど怖い」のです。

基本的に恐怖症は、本能的にある程度「怖い」と感じる物や状況が対象となる事がほとんどです。

先ほどの高い所や尖ったものも、健常者にとっても多少は怖さを感じるものです。

他にも例えば対人恐怖症の恐怖の対象である「あまりよく知らない他者」も、どんな人間か分からなければ、健常な人でも接する時に多少の不安は感じるのが普通です。

「男性恐怖症」「女性恐怖症」も同じです。これらは異性に対して発症することがほとんどですが、自分と異なる性別の人と言うのは同性と比べて、接する時にやはり多少の不安を感じるものです。

「電話恐怖症」は、電話で「顔が見えない相手」と話す事に著しい恐怖を感じますが、顔が見える場合と比べて相手の表情が読めない分不安になってしまいがちなのも十分理解できる事です。

このように恐怖症は様々な状況・対象に生じるものの、そのほとんどが健常な人でも「多少は恐怖や不安を感じるもの」なのです。

そしてこれはトライポフォビアでも同じだと考えられます。

トライポフォビアが生じる原因は明確に特定されてはいませんが、どうも私たちはブツブツしたものに対して恐怖を感じる本能を持っているようなのです。

これを裏付ける例はたくさんあります。

例えば、「毒キノコ」と思い出してみて下さい。ほとんどの方が毒キノコというと傘が斑点や水玉模様になっているキノコをイメージするのではないでしょうか。実際、「ベニテングダケ」という赤色の傘に白色の水玉模様がついているキノコがあり、これは猛毒を持つといわれています。

これ以外にも毒をもつ動物・植物には、斑点状の模様を持つものが多く存在します。

また毒がなかったとしても、外敵に恐怖を与えるために斑点状の模様を持っている生き物もいます。例えばテントウムシの背中も赤色と黒色の水玉模様ですが、このような模様になっている理由は、外敵に恐怖を感じさせて襲われにくくするためだと考えられています。

考えてみると、確かにブツブツしたものって「ちょっと気持ち悪いな」「毒々しいな」と何だか見ていて不安に感じます。カエルの卵やハスの実などのブツブツは健常な人でも何となく気持ち悪い感じを受けるのではないでしょうか。

このような例から分かるように、私たち人間を含めた生き物は、遺伝子レベルでブツブツしたものに対して恐怖を感じるようにプログラミングされている可能性が考えられます。

ここから考えられるトライポフォビアが生じる原因は、そもそもが遺伝子によってブツブツを「怖いもの」と認識する本能があり、これに恐怖が増強する何らかのきっかけが加わる事で発症するのだというものです。

ではその「きっかけ」にはどのようなものがあるのでしょうか。

例えば、実際にブツブツしたものが原因で怖い思いをしたことがある(例:ハチの巣から出てきたハチに襲われた、など)という事であれば、「ブツブツは怖い」という認識が更に強まるためトライポフォビアが発症するきっかけになりえます。

また強いストレスで神経が過敏になっている時にブツブツしたものをたまたま見てしまうといつもより恐怖を感じやすくなるため、トライポフォビアは発症しやすくなるでしょう。

元々、

  • 心配性
  • 不安が強い
  • 完璧主義

といった性格傾向のある方は、不安や恐怖を感じやすい傾向があるため、小さいきっかけでもトライポフォビアをはじめとした恐怖症を発症しやすいと考えられます。

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3.トライポフォビアの症状

トライポフォビアではどのような症状が生じるのでしょうか。

トライポフォビアは恐怖症の一型になりますので、その症状は他の恐怖症で生じるものと共通しています。

トライポフォビアは他の恐怖症と恐怖を感じる対象が異なるだけで、恐怖と言う感情が生じる点は変わりません。であれば生じる症状だって同じはずです。

トライポフォビアをはじめとした恐怖症で生じる症状は次の3段階に分けられます。この症状は下に行くほど重症例で生じる症状となります。

Ⅰ.恐怖

トライポフォビアは恐怖症ですので、対象にさらされた時に恐怖が生じます。そしてこの恐怖は、特定の対象でのみ生じるのが特徴です。

トライポフォビアの場合は、小さな物体や穴が密集しているように見えるもの(いわゆる集合体)にさらされた時に恐怖が生じます。

恐怖は私たちにとって不快な感情です。そして不快な感情は私たちの心にダメージを与えます。

恐怖があまりに強かったり、恐怖が生じる頻度が多いと、心がどんどんと傷付けられていきます。

これが続くと、二次的にうつ病や不眠症といった別の精神疾患が発症してしまうこともあります。

Ⅱ.自律神経症状

強い恐怖が生じると、私たちの身体は緊張状態となります。

緊張状態では、自律神経のうち緊張の神経である「交感神経」が活性化します。著しい恐怖によってこの交感神経が活性化し過ぎてしまうと自律神経のバランスが崩れ、

  • 動悸、胸苦しさ
  • 息切れ、呼吸苦
  • 過呼吸
  • 発汗、冷や汗
  • 異常感覚(熱感や冷感)
  • しびれ
  • めまい
  • 失神・意識消失

などといった症状が生じます。

これらは後遺症の残る症状ではありませんが、このような激しい症状が突然生じると、「このまま死んでしまうのではないか」「自分の身体がおかしくなってしまったのではないか」と症状自体に恐怖を感じるため、恐怖は更に強まっていきます。

すると自律神経症状も更に悪化していくという悪循環に陥ってしまいます。

Ⅲ.生活への支障

ブツブツしたものに対して恐怖が生じ、それに伴い自律神経症状が生じてしまう事が続くと、次第に「ブツブツしたものに遭遇したくない」と日常生活の中でブツブツを回避しようとするようになります。

これによって日常生活の行動に制限が生じるようになってきます。

出かけたくてもブツブツと遭遇する可能性がある場所であれば出かけられなくなります。出かけている最中も「ブツブツしたものに遭遇しないか」と言う恐怖を常に抱えながら行動するため、患者さんに大きな苦痛を与えます。

4.トライポフォビアの診断基準

どの程度までブツブツに恐怖を感じたらトライポフォビアと診断されるのでしょうか。

もちろんブツブツしたものが苦手というだけで、すぐにトライポフォビアと診断される訳ではありません。

トライポフォビアは恐怖症の一種になるため、基本的には恐怖症の診断基準に基づいて診断が行われます。

では恐怖症の診断基準を見てみましょう。

アメリカ精神医学会(APA)が発刊している診断基準である「DSM–5」には、「限局性恐怖症(Specific Phobia)」という病名があります。

限局性恐怖症とは、ある特定の状況や対象に「限局した」恐怖という事で、トライポフォビアもこれに該当します。

では限局性恐怖症の診断基準を見てみましょう。

【限局性恐怖症(Specific Phobia)】

A.特定の対象または状況への顕著な恐怖と不安

B.その恐怖の対象または状況がほとんどいつも、即時、恐怖や不安を誘発する。

C.その恐怖の対象または状況は、積極的に避けられる、または、強い恐怖や不安を感じながら耐え忍ばれている。

D.その恐怖または不安は、特定の対象や状況によって引き起こされる実際の危険性や社会文化的状況に釣り合わない。

E.その恐怖、不安、または回避は持続的であり、典型的には6カ月以上続いている。

F.その恐怖、不安、または回避が、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

G.その障害は、パニック様症状または他の耐えがたい症状;強迫観念と関連した対象または状況;心的外傷的出来事を想起させるもの;家または愛着をもっている人物からの分離;社会的場面、などに関係している状況への恐怖、不安および回避などを含む、他の精神疾患の症状ではうまく説明されない。

この全てを満たすと「恐怖症」と診断され、また「特定の対象」がブツブツしたものであった場合、トライポフォビアとなります。

では、それぞれの項目を詳しく説明していきます。

Ⅰ.ブツブツに著しい恐怖を感じる

A.特定の対象または状況(ブツブツしたもの)への顕著な恐怖と不安

ブツブツしたもの(集合体)に対して、著しい恐怖が生じます。

Ⅱ.ブツブツはすぐに・常に恐怖を生じさせる

B.その恐怖の対象または状況がほとんどいつも、即時、恐怖や不安を誘発する。

たまたま体調が悪い時だけブツブツに恐怖を感じる、という事ではなく、いつでもブツブツに対して恐怖を感じ、またブツブツにさらされるとすぐに恐怖が生じます。

Ⅲ.ブツブツを避けてしまう、あるいは避けられない場合その苦痛に耐えている

C.その恐怖の対象または状況は、積極的に避けられる、または、強い恐怖や不安を感じながら耐え忍ばれている。

ブツブツに著しい恐怖を感じるため、それを避けて生活するようになります。またどうしても避けられない場合は、恐怖による苦痛に耐え忍んでいます。

Ⅳ.一般的に考えて明らかに過剰な恐怖である

D.その恐怖または不安は、特定の対象や状況によって引き起こされる実際の危険性や社会文化的状況に釣り合わない。

ブツブツしたものを「ちょっと気味が悪いな」「何だか毒々しいな」と感じるのは異常ではありません。しかし、トライポフォビアでは一般的な恐怖と程度と比べて明らかに過剰になります。

Ⅴ.症状が6カ月以上続いている

E.その恐怖、不安、または回避は持続的であり、典型的には6カ月以上続いている。

ブツブツに対する恐怖は一時的に生じるものでなく、持続しています。原則としては6カ月以上持続している事が一つの目安になります。

Ⅵ.ブツブツによる恐怖が生活に支障を来たしている

F.その恐怖、不安、または回避が、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

ブツブツに恐怖を感じていても、それが生活に何の支障もきたしていないのであれば、その恐怖は大きな問題とはなりません。

トライポフォビアと診断するには、ブツブツへの恐怖によって生活に支障が生じている必要があります。

Ⅶ.他の疾患による症状ではない

G.その障害は、パニック様症状または他の耐えがたい症状;強迫観念と関連した対象または状況;心的外傷的出来事を想起させるもの;家または愛着をもっている人物からの分離;社会的場面、などに関係している状況への恐怖、不安および回避などを含む、他の精神疾患の症状ではうまく説明されない。

これは医師でないと確認できない項目ですが、ブツブツへの恐怖が他の疾患で生じているものではない必要があります。もし他の疾患で生じている症状であればトライポフォビアではなく、その疾患の診断となるためです。

5.トライポフォビアの治療法・克服法

トライポフォビアは、どのような治療が行われるのでしょうか。

治療の説明に入る前に、トライポフォビアをはじめとした恐怖症の治療中に忘れてはいけない事をお話しさせてください。

トライポフォビアを治療する際に覚えておいて頂きたい事は、「ブツブツを怖いと感じるのは異常」だと考えてはいけないという事です。

前に説明したように、私たちはブツブツしたものに対して恐怖を感じるような本能を持っています。そのためブツブツに「怖いな」と感じるのは異常ではありません。

トライポフォビアの治療を行う際、「ブツブツに恐怖を感じるのはおかしい。恐怖をゼロにしないと」と考えてはいけません。本来多少の恐怖を感じるものに対して全く恐怖を感じないようにするのは困難ですし、このような本能に反した治療目標ではまず失敗します。

ブツブツを怖いと感じるのは正常な事なのです。ただ、トライポフォビアの方は「怖い」の程度が強まりすぎてしまっているだけです。そのため、その程度を正常範囲に弱めてあげればいいんだ、という考えを持って治療に望むようにしましょう。

そしてもう1つ、治療前に確認すべき事があります。

診断基準でも紹介したように、トライポフォビアは、

  • ブツブツに対して著しく強い恐怖を感じていて
  • それによって日常生活に大きな支障が生じている

場合に診断されるものです。

ブツブツに多少の恐怖を感じていても、日常生活にそこまで大きな支障が生じていないのであれば、それはトライポフォビアとは言えず、正常内の恐怖だと考えます。そしてこのような場合は無理に治療を行う必要はありません。

ではブツブツに過剰な恐怖を感じていて、それによって日常生活に大きな支障が生じている場合は、どのように治療していくのでしょうか。

トライポフォビアに限らず、恐怖症を治すためには2つの方向からのアプローチが重要です。

重要なことは、この2つのアプローチというのはどちらか好きな方を選べば良いというわけではなく、どちらも並行して行っていく必要があるという事です。多くの方が恐怖症の治療を失敗してしまうのはこの事を理解していないからです。片方の治療法だけで完結しようとしてしまうため、うまく行かなくなってしまうのです。

トライポフォビアは、何らかの原因によりブツブツに対しての過剰な恐怖が植え付けられてしまい、それが持続していることで生活に支障を来たしています。

これは、

  • ブツブツを「怖い」と過剰に感じてしまう認知を修正する(考え方を治す)
  • 実際に集合体に慣れていく(行動で治す)

の2つのアプローチで克服しなければいけません。

考え方と行動、2つの面から治療を行わなければ恐怖症の克服は出来ません。これはよく考えれば当たり前のことです。

いくら「別にブツブツってそこまで怖いものではないよね」と考えだけを変えようとしても、それが机上の空論でしかなければ、その考えは深くは理解されません。考え方だけを変えても実体験が伴わなければ、私たちの脳は深いレベルでの理解はしてくれないのです。

そのため考え方を変えた上で、実際にそれを「体験する」という行動は必ず必要になります。

また反対に、行動だけを頑張るというのも危険です。「あえてブツブツをたくさん見て、我慢する事でひたすら慣れていく」という方法だけでは、一時的にはトライポフォビアの症状は治るかもしれませんが、根本の「ブツブツは非常に怖いものなのだ」という認知の歪みが治されていないため、すぐに再発してしまいます。

そのため、ブツブツに対する正しい考え方を修正しながら、同時に行動でも慣れていく。この2つを必ず併用する事が理想的な克服法になります。

それでは1つずつ詳しく見ていきましょう。

Ⅰ.考え方を治す

トライポフォビアが生じている原因の1つはブツブツに対して必要以上に「怖い」と考えてしまっていることです。これを正常範囲内の「怖い」に下げることが出来ればいいのです。

先ほどから何度もお話しているように、誰だってブツブツにはある程度の恐怖を感じるものなのです。そのためブツブツに対しての恐怖をゼロにする必要はありません。「生活に支障がない程度の恐怖」にまで下げる事を目標にしましょう。

トライポフォビアの方は、ブツブツに対しての認知(ものごとのとらえ方)が歪んでしまっています。

ブツブツしたものは確かに「怖い」「気持ち悪い」と感じるようなものもありますが、本来は自分に害を与えたり、過度な恐怖を感じるものではありません。

このブツブツに対する「認知のゆがみ」を修正していきましょう。

これは基本的には「認知行動療法」とう治療法の考え方になり、カウンセリングの形式で認知の修正を図っていくことが理想です。独学で行うのは難しく、出来れば精神科医や経験豊富な臨床心理士(カウンセラー)とともに行っていくのが良いでしょう。

ただし認知の修正だけを行ってもまずうまく行きません。学習という形式で認知の修正だけをしようとしても、実体験が伴わなければ、深いレベルでの理解は出来ないからです。

そのため、次項の「慣れていく」という治療法も並行していく必要があります。

Ⅱ.ブツブツに慣れていく

実際にブツブツに少しずつ慣れてみるという作業も、トライポフォビアを克服するためには必要です。

恐怖を感じるものに敢えて挑戦するのを「暴露療法」と呼びますが、トライポフォビアの治療に対しても暴露療法は有用になります。

ただし、暴露療法は「どの程度の恐怖に暴露させるか」という判断が非常に難しいため、これもできれば独自に行うのではなく精神科医などの専門家とともに行うことが理想です。

ポイントは「自分がギリギリ耐えられる程度の恐怖に暴露していく」というのが理想で、今の自分がギリギリ耐えられる程度がどれくらいかを見極めることが非常に重要です。

暴露療法は、恐怖に少しずつ触れて慣れていくという治療法になり、最初は弱い恐怖から慣れていき、成功したらより強い恐怖に挑戦するという流れになり、必ず段階的にやっていく必要があります。いきなり自分の限界以上の恐怖に暴露させてしまうと、恐怖がかえって強まってしまう可能性があるためです。

そのため、まずは自分が怖いと思う状況を思いつく限りすべてリストアップし、それぞれどのくらい恐怖を感じるのかを10段階で表してみることから始めます。例えば、

・イチゴのブツブツ 恐怖の強さ2
・カエルの卵  恐怖の強さ6
・水玉模様の服 恐怖の強さ3

などといった感じです。このような表は「不安階層表」と呼びます。

不安階層表を作ったら、恐怖の低いものから1つずつ克服していきます。小さな成功を積み重ね、成功体験を積んでいくことが大切です。かんたんなものから少しずつ克服していくことで自信がつき、恐怖が和らいでいくからです。今の例でいえば、「じゃあまずはイチゴのブツブツを見る事から挑戦していこう」とチャレンジすればいいのです。

時間も最初は短い時間でも構いません。イチゴの画像を数秒見るだけでも十分でしょう。

またそれでもつらいようであれば、「恐怖を和らげる要素」を加えたうえで挑戦するという方法もあります。例えば、抗不安薬などのお薬を飲んで恐怖を和らげてから参加しても良いでしょう。親や親友・恋人など自分にとって安心できるような人に傍にいてもらって挑戦しても良いでしょう。

それで慣れていけば、「次は抗不安薬なしで挑戦してみよう」「次は一人で挑戦してみよう」とまた一段階負荷を上げていけばいいのです。

暴露療法の成功の鍵は、段階を多く作り、少しずつ少しずつ達成して自信をつけていくことです。協力者やお薬の力を上手に使い、段階を細分化することが出来ると、暴露療法の成功率は高まります。

協力者というのは「一緒に居て安心できる人」であることが絶対条件です。これは通常家族や恋人、親友などになります。また抗不安薬の処方は医師しかできないため、やはり暴露療法は精神科医と連携しながら行うことをお勧めいたします。

Ⅲ.失敗することもある

治療を行う際、直線状にきれいに治っていくことはまずありません。

良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に徐々に底上げされて治っていくような経過が普通です。

恐怖症の方は、非常に長い期間苦しんできた事がほとんどです。短くても数年、長い場合は数十年以上、トライポフォビアを抱えながら生きてきた方もいらっしゃいます。このように長い期間苦しんできたのですから、いくら最適な治療をはじめたといっても短期間でキレイに治るものではありません。

治療の経過中には悪化してしまったり、失敗してしまうこともあります。しかしそれであきらめないでください。

失敗や悪化を経て、その中で少しずつ少しずつ治っていくというのが恐怖症の治り方です。

失敗してしまったり悪化を経験すると、「これはきっと治らないのだ・・・」と絶望的になってしまう方が多いのですが、そうではなく、「経過中に失敗することもある。みんなそうやって少しずつ治っていくのだ」と考えるようにしてください。

Ⅳ.補助的にお薬を使うことも

恐怖の程度が強い場合は、補助的に不安や恐怖を和らげるお薬を併用することもあります。

良く用いられるのが先ほども紹介した「抗不安薬」です。抗不安薬は、即効性もあるため暴露療法で暴露する前に服薬することでも効果が得られ、使い勝手の良い治療薬になります。しかし一方で慢性的に使用を続けると依存が生じることもあります。

長期的に不安・恐怖を抑えたい場合は「抗うつ剤」が用いられることもあります。不安や恐怖はセロトニンと深く関係していると考えられているため、抗うつ剤の中でもセロトニンを増やす作用に優れるものが使われます。

抗うつ剤は飲んですぐに効果が出るものではありません。服薬して早くても1週間、通常は2~4週間ほどかかります。しかし依存性はありませんので、長期的に不安を抑えたい場合に適しています。

お薬はトライポフォビアの治療を助けてくれる有効な方法の1つです。しかしあくまでもお薬で症状を抑えているだけであるため、お薬だけで治療がうまくいくことはありません。お薬の力を借りながらも「考え方を修正する」「暴露して慣れていく」という克服法を行っていく事が大切です。

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