うつ病(鬱病)かどうか自分でチェックする方法

うつ病は疾患ですので、その診断は精神科医によって行われます。そのため「今の自分の状態がうつ病なのがどうか知りたい」という場合、精神科・心療内科を受診しないと正確な結果は出すことができません。

しかし毎日が忙しく、なかなか受診する時間を確保できないという方も多いと思います。また精神科はまだまだ敷居が高い科であるため、「こんな症状で受診していいのだろうか?」と考えて受診を躊躇してしまう方もいらっしゃるでしょう。

様子を見ても良い落ち込みもありますが、一方でうつ病であった場合はなるべく早く医療機関を受診した方が、重症化せずに済みます。そのため、受診の判断はいたずらに延期することはなく、適切なタイミングで受診をしてもらいたいというのが、私たちの率直な気持ちです。

そこで今日は、うつ病かどうかを自分でチェックする方法をお話したいと思います。

ここで紹介する事に当てはまる場合は「うつ病の可能性がある」と言えますので、なるべく早めに精神科・心療内科に相談してください。

1.まずは、こころの症状があって、困っているのかをチェック

まず、うつ病に限らず精神疾患の大前提として、

・こころの症状がある
・それで自分自身が困っている

この二つを満たしていることは大前提になります。

こころの症状というのは、うつ病で言えば、落ち込んでいるとかやる気が出ないとか、自信が持てないとか、消えてしまいたいなどの症状になります(これについて詳しくは後述します)。

また、その症状によって「困っている」事、具体的に言えば精神的に大きな苦痛を受けていたり、日常生活や社会生活に支障が出ているこ事、があるのかどうかも重要な判断の指標です。

「何か最近落ち込みがちだなぁ」とこころの症状はあるけども、そんなに困っていると感じていないのであれば、それはさしあたっては様子を見ても問題はありません。しかし、それによって、仕事のミスが増えていたり、生きていることが苦しくなっていたりといった問題が出ているのであれば、精神疾患として治療が必要になる可能性があります。

「こころの症状がある」「それによって困っている・支障が出ている」

まずはこの二つの大前提を満たしているかどうかを、改めてチェックしてみましょう。

2.診断基準に当てはまっているかをチェック

私たち精神科医がどのようにうつ病を診断するのかは、「うつ病(鬱病)の診断はどのようにされるのか?臨床でのうつ病診断の方法」に詳しく書いていますが、

1.精神科医による診察
2.診断基準との照らし合わせ
3.心理検査

という3つが重要になってきます(心理検査は必須ではありません)。

「1.精神科医による診察」は自分でチェックする際は行うことができませんので、セルフチェックの場合は「2.診断基準との照らし合わせ」と「3.心理検査」から判断する事になります。

本来であれば、「2.診断基準との照らし合わせ」も、熟練した精神科医が「精神医学的に見て」診断基準に当てはまっているのかを確認しなくてはいけませんので、一般の方が診断基準に自分の症状を当てはめただけで診断にはならないのですが、セルフチェックとして「うつ病の可能性があるか」をみるのであればひとつの指標にはなるため有用です。

日本で用いられているうつ病の診断基準は、2種類あります。世界保健機構(WHO)が発行しているICD-10の診断基準と、アメリカ精神医学会(APA)が発行しているDSM-5です。

どちらの診断基準を用いても良いのですが、ここではDSM-5の診断基準を紹介します。

  1. 抑うつ気分
  2. 興味または喜びの著しい低下
  3. 食欲の増加または減少、体重の増加または減少(1か月で体重の5%以上の変化)
  4. 不眠または過眠
  5. 強い焦燥感または運動の静止
  6. 疲労感または気力が低下する
  7. 無価値感、または過剰・不適切な罪責感
  8. 思考力や集中力が低下する
  9. 死について繰り返し考える、自殺を計画するなど

これらの5つ以上が2週間のあいだほとんど毎日存在し、またそれによって社会的・職業的に障害を引き起こしている場合、うつ病と診断される

(DSM-5 うつ病の診断基準より)

診断基準には9つの症状が書いてありますが、これらのうち5つ以上を満たす場合がうつ病となります。また、

・抑うつ気分(気分の落ち込み)
・興味と喜びの低下(以前のように興味を持ったり喜んだりする事が出来ない)

の2つはうつ病の中核症状であり、診断基準上はこれらのどちらか一つは必ず認めていないといけません。

うつ病の診断基準にある症状について「どの程度であれば満たすと言っていいのか?」と疑問に感じる方もいらっしゃると思います。その判断は簡単に説明することは難しいのですが、ざっくりと言ってしまえば「自分が困るほどかどうか」が目安になります。

例えば、不眠の傾向があっても、それで対して困ってなければ当てはまりません。しかし不眠によって昼夜逆転しているとか、仕事のミスが増えているとか、本人が著しい苦痛を感じているのであれば、当てはまると考えれられます。

期間も大切で、つらい事があった後、2,3日落ち込むのは正常な反応です。これでうつ病と言ってしまっては、世の中の全ての人が患者さんになってしまいます。うつ病の診断となるためには2週間以上、これらの症状が続いている事が条件になります。

また、前項でもお話したように、これらのこころの症状によって「困っている」「生活に支障が出ている」事も重要です。

3.うつ病の心理検査でチェック

心理検査は検査者がいないと受けられないものと、セルフチェック式で一人でも行えるものの2種類があります。後者はオンライン上でも受けることが出来るため、セルフチェックにはとても向いている検査になります。

セルフチェック式のうつ病心理検査で、特に有用なものとしてよく使われているのが、

CES-D
QIDS-J

の二つです。

どちらも5~10分ほどで検査が終わるため、こころが疲れている方にとっても大きな負担とならず、何とか受けることができます。

CES-Dは多くの医療機関でも使われているうつ病心理検査で、うつ病の検出率は90%と言われている精度の高い検査です。

またQIDS-JはDSM-5の診断基準に沿って作られている検査です。つまり、この検査にひっかかる場合はDSM-5のうつ病の診断基準に当てはまる可能性が高いという事になり、これも有用な検査になります。

当院のサイト上でもCES-DQIDS-Jは行えますので、セルフチェックを希望される方は一度やってみてください。

4.まとめ

うつ病の確定診断は、精神科医の診察を受けないと出来ません。そのため、うつ病のセルフチェックはあくまでも「うつ病の可能性が高いかどうか」と判断するのに留まります。

うつ病のセルフチェックは、

1.こころの症状があって、それで困っているのかをチェック
2.うつ病の診断基準に当てはまるかをチェック
3.CES-D、QIDS-Jなどのうつ病心理検査でチェック

以上3つが判断の材料として有用です。これら全て「うつ病の可能性あり」と判定されるようであれば、早めに精神科・心療内科で相談される事をおすすめします。