道化恐怖症(ピエロ恐怖症)とは。原因と治療・克服法

ある特定の状況や対象に対して強い恐怖を感じてしまい、それによって生活に支障が生じてしまうような状態を「恐怖症」と呼びます。

恐怖症は様々な状況・対象に生じうるため、その種類は非常に多岐に渡ります。

例えば、比較的よく聞く恐怖症としては、

  • 対人恐怖症・・・他者に対して異常に恐怖を感じてしまう
  • 高所恐怖症・・・高い場所に対して異常に恐怖を感じてしまう

などがあります。

他にも、

  • 閉所恐怖症・・・閉ざされた空間、狭い場所に異常に恐怖を感じてしまう
  • 先端恐怖症(針恐怖症)・・・鋭いもの、尖ったものに異常に恐怖を感じてしまう
  • 男性恐怖症・・・男性に対して異常に恐怖を感じてしまう

などなど、恐怖症は様々な対象に生じます。

これらと同じ恐怖症の1つに「道化恐怖症」があります。

道化恐怖症は別名「ピエロ恐怖症」とも呼ばれます。これはピエロ(道化師)に異常な恐怖を感じてしまうという状態です。

ピエロというのは遊園地やサーカスなどで見る、あのピエロの事です。顔を白く塗り派手なメイクをし、面白おかしい言動で人々を楽しませてくれます。

ピエロは日常ではほとんど見る事がないため、ピエロ恐怖症があってもそこまで大きな支障なく生活が出来ている方もいます。

しかしピエロが居そうな場所や、ピエロの絵や置物がある場所に近づけない事で生活に支障が生じる事もあります。

遊園地やサーカスに行けなくなってしまいます。また有名なハンバーガー店である「マグドナルド」のマスコットキャラクターの「ドナルド」もピエロのような恰好をしていますので、こういったお店も避けるようになってしまい、人付き合いなどで困る事があります。

ピエロ恐怖症はなぜ生じてしまうのでしょうか。また治療法・克服方法などはあるのでしょうか。

ここではピエロ恐怖症について、その原因や治療法を紹介させていただきます。

1.ピエロ恐怖症とはどのような疾患なのか

ピエロ恐怖症というのは、どのような疾患なのでしょうか。

ピエロ恐怖症(道化恐怖症)というのは、ピエロ(道化師)に対して過剰に恐怖を感じてしまい、それにより大きな苦しみと生活への支障が生じている状態の事です。

ピエロというのは、よく遊園地やサーカスでみる、顔を白く塗って派手なメイクをしているキャラクターの事です。

面白おかしい言動で周囲を楽しませてくれますので、「怖い」とは真逆の存在にも思えますが、このピエロを「怖くて仕方がない」と感じてしまうのがピエロ恐怖症です。

ピエロ恐怖症の方は、ピエロが目に入っただけで強い恐怖に襲われます。ただ恐怖を感じるだけでなく、それによって自律神経のバランスが崩れて様々な自律神経症状が併発する事もあります。

具体的には脈が速くなったり、汗が大量に出てきたり、呼吸がうまくできなったり、ひどい場合は意識を失ってしまう事もあります。

ピエロという存在は、日常の中ではまず見る事はなく、サーカスや遊園地など特定の場所でしか遭遇しません。意識して生活すればピエロを避けて生活する事はそこまで難しい事ではなく、そのためピエロ恐怖症を持ちながらも特に克服せずにそのまま生きている方もいます。

もちろん、このままの状態で大きな不自由なく生活出来るのであれば、ピエロ恐怖があるとしても、それを無理して治療する必要はありません。実際、ピエロ恐怖はあるけども、そこまで困っていないからと放置している方も少なくないと思われます。

しかし本当はみんなと遊園地に行きたいのに、ピエロ恐怖症があるがためにそれが出来ない、という場合はピエロ恐怖症がある事で生活に支障が生じていると考える事ができます。この場合は「ピエロ恐怖症」と診断し、治療の必要性が出てきます。

このように「ピエロが怖い」と感じていても、すべての人が「ピエロ恐怖症」と診断されるわけではありません。

ピエロ恐怖症はDSM-5という診断基準的には「限局性恐怖症(Specific Phobia)」の一型になります。

【DSM-5】

アメリカ精神医学会(APA)が発刊している、精神疾患の診断基準の手引き。アメリカに限らず、世界的に精神疾患の診断に広く使われている。

DSM-5を元に考えると恐怖症の診断のためには、

  • 特定の状態や対象に対して、一般的な常識から考えて過剰な恐怖を感じていて
  • それによって生活に支障が生じている

という事が重要になります。

つまりピエロが苦手であっても、それが一般的な基準から考えて過剰というほどではなかったり、ピエロ恐怖によって生活への大きな支障が生じていない場合などは、ピエロ恐怖症にはならないという事です。

この場合は例えピエロは苦手であっても、治療の必要はありません。そのまま様子を見ていて大丈夫でしょう。

しかしピエロに対して過剰な恐怖を感じていて、それによって生活に支障が出ている場合は、「恐怖症」の診断基準を満たす事になります。

そして過剰な恐怖を感じていて、なおかつ生活への支障が生じている場合というのは、その恐怖に対して治療を行った方がメリットが高いと考えられるため、適切な治療を行う必要があるのです。

2.ピエロ恐怖症が生じる原因・理由は?

ピエロ恐怖症は何故生じるのでしょうか。

ピエロ恐怖症をはじめとした恐怖症は、何らかのエピソードによってその対象に対する強い恐怖が脳に植え付けられてしまう事で発症する事が多く見られます。ただ、明らかな原因もないのに発症してしまう事もあります。

まず、よくよく考えてみればピエロって「怖いもの」です。

実は恐怖症のほとんどは、その対象や状況が「健常な人であってもある程度は怖さを感じるもの」です。

例えば、

  • 高所恐怖症(高いところに恐怖を感じる)
  • 先端恐怖症(ナイフなど尖ったものに恐怖を感じる)

といった恐怖症は分かりやすいと思います。これらの恐怖症の対象(高いところや尖ったもの)は確かに怖いものであり、健康な人であってもある程度の怖さは感じるのが普通です。

他にも、

  • 電話恐怖症
  • 対人恐怖症

なども一見すると分かりにくいですが、本来「顔が見えない相手と話す」「知らない相手に近づく」という事は多少の不安・恐怖を感じてもおかしい事ではありません。

このように恐怖症の対象というのは、そのほとんどがよくよく考えれば健常の人にとっても怖いものなのです。

ピエロ恐怖症も同じです。

私たちはピエロといえばサーカスや遊園地で見るような、愉快なキャラクターと認識していますが、これはあくまでも「ピエロはサーカスにいるもの」「ピエロは遊園地にいるもの」という社会によって作り上げられた常識を植え付けられただけに過ぎません。

でもそれは後天的に社会から得た認識であって、よく考えてみればピエロって怖いです。

顔を真っ白に塗りたくって、明らかに人間ばなれした容姿をしている。派手にメイクしていてどんな表情をしていてどんな事を考えているのか全く分からない。全く予測できないような奇怪な行動を取る。

こんなキャラクターがこちらに近づいてくれば、それを「怖い」と感じる事は何らおかしい事ではありませんよね。

つまり、私たちがピエロのような不気味なキャラクターに対しては本能的に恐怖を感じるものなのです。それが、何らかのきっかけにより更に強い恐怖になってしまうと、ピエロ恐怖症と呼ばれる状態になってしまうのです。

ピエロ恐怖症に限らず、ほとんどの恐怖症は、このように「元々本能的に多少の怖さを感じるもの」に対して、何らかの恐怖を増強するような体験が加わってしまう事で発症する傾向があります。

例えば小さい頃、まだ「ピエロは楽しくて面白おかしい存在」という社会的な常識を認識する前に、たまたま遊園地でピエロにだっこされ、その時に非常に強い恐怖を覚えてピエロ恐怖症になってしまったという人もいます。

ピエロ側としては子供に楽しんでもらおうとして取った行動なのでしょうが、子供としてはいきなり顔が真っ白な不気味なキャラクターに持ち上げられれば、強い恐怖を感じてしまうのは当然でしょう。

あるいは同じくまだ「ピエロ=愉快な存在」という認識が作られる前に、テレビでピエロが出てくる映画を見てしまい、それを見てからピエロが怖くて仕方なくなってしまったという方もいますし、一人で留守番中にたまたまピエロの置物があるのを見つけてしまい、それを見たときに強い恐怖を覚え、それからピエロ恐怖症になってしまったという方もいます。

このように元々多少の恐怖を感じる対象に対して、その対象に対する「恐怖」が増強するようなエピソードが加わって、恐怖症は発症する傾向があります。

特に幼少期に体験したエピソードはその後の人格形成に影響しやすいため、幼少期に体験すると発症のリスクは高くなります。

明らかな原因なく発症してしまう方もいますが、そのような方は、

  • 心配性
  • 不安が強い
  • 完璧主義

といった性格傾向のある場合が多いです。このような性格傾向の方は不安や恐怖を感じやすい傾向があるため、小さいきっかけでもピエロ恐怖症をはじめとした恐怖症に罹患しやすいと考えられます。

3.ピエロ恐怖症はどのように克服すればいいのか?

ピエロ恐怖症は、どのように克服すればいいのでしょうか。

ピエロ恐怖症を克服する場合、まず覚えておいて欲しいのが、「ピエロを怖いと感じる自分は異常」だという考え方をしてはいけないという事です。

前項で説明したように、よくよく考えればピエロの外見や行動は「怖い」と感じるに値するものです。「ピエロ」=「愉快」という常識は社会が勝手に作った常識に過ぎません。

そのためピエロ恐怖症の治療を行う際は、「ピエロに恐怖を全く感じないようにしなければいけない」と考えてはいけません。本来多少の恐怖を感じるものに対して全く恐怖を感じないようになるのは困難ですし、このような無理な目標では治療はまず失敗します。

ピエロを怖いと思うのは普通の事なのです。ただ、今は「怖い」の程度が強まりすぎてしまっているため、その程度を正常範囲に弱めてあげるのが正しい治療の目標になります。

そしてもう一つ、確認してほしい事があります。

ピエロという存在は日常ではほとんど遭遇する事はないため、ピエロが怖くても大して困る事なく生きていく事は十分に可能です。そして、この場合は必ずしも治療する必要はありません。

ピエロが怖いと感じる事であなた自身に何か「困る事態が生じているのか」を十分に見極めてください。

先ほども説明したように、ピエロ恐怖症というのは、

  • ピエロに対して過剰な恐怖を感じていて
  • 更にそれによって日常生活に大きな支障が生じている

場合に診断されるものです。

ピエロに多少の恐怖を感じていても、日常生活にそこまで大きな支障が生じていないのであれば、それはピエロ恐怖症とは言えず、正常内の恐怖だと言ってよいでしょう。このような場合は治療を無理して行う必要はありません。

またピエロに過剰な恐怖を感じていても、同じように生活に特に支障がないのであれば、これも無理に治療する必要はありません。

ピエロに恐怖を感じるのは異常な事なのだと考えてしまうと、「治さなければ」と考えてしまいがちです。しかし本来、ピエロは怖いものなのです。生活に大きな支障が生じていなければ、それは正常内の反応と考えるべきで、やみくもに治療を始めるべきではないでしょう。

ではピエロに過剰な恐怖を感じていて、更にそれによって日常生活に大きな支障が生じている場合は、どのように治療をしていけばいいのでしょうか。

恐怖症を治すためには2つのアプローチが必要です。

重要なことは、この2つのアプローチというのはどちらか好きな方を選べば良いというわけではなく、どちらも並行して行っていく必要があります。多くの方が恐怖症の治療を失敗してしまうのはこの事を理解していないからです。片方の治療法だけで完結しようとしてしまうため、うまく行かなくなってしまうのです。

ピエロ恐怖症の方は、何らかの原因によりピエロに対しての過剰な恐怖が植え付けられてしまい、それが持続していることで生活に支障を来たしています。

これには、

  • ピエロを「怖い」と過剰に感じている認知を修正する(考え方を治す)
  • 実際にピエロに慣れていく(行動で治す)

の2つの治療アプローチを並行していくことが大切です。

考え方と行動、2つの面から治療を行わなければ恐怖症の克服は出来ません。これはよく考えれば当たり前のことです。

いくら「別にピエロってそこまで怖いものではないよね」と考えだけを変えようとしても、それが机上の空論でしかなければ、その考えは深くは理解されません。考え方だけを変えても実体験が伴わなければ、私たちの脳は深いレベルでの理解はしてくれないのです。

そのため考え方を変えた上で、実際にそれを「体験する」という行動は必ず必要になります。

また反対に、行動だけを頑張るというのも危険です。「あえてピエロがいる場所に出向いて、ひたすら慣れていく」という方法は、一時的にはピエロ恐怖は治るかもしれませんが、根本の「ピエロは非常に怖いものなのだ」という認知の歪みが治されていないため、すぐに再発してしまいます。

そのため、ピエロに対する正しい考え方を修正しながら、同時に行動でも慣れていく。この2つの治療法を必ず併用する事が理想的な治療・克服法になります。

それでは治療・克服法を1つずつ見ていきましょう。

Ⅰ.考え方を治す

ピエロ恐怖症では、「ピエロ」に対して必要以上に「怖い」と考えてしまっています。これを正常範囲内の「怖い」に下げることが出来ればいいのです。

先ほどからお話しているように、ピエロに対してある程度の恐怖を感じるのは普通ですので、その恐怖をゼロにする必要はありません。「生活に支障がない程度の恐怖」にまで下げれれば十分なのです。

ピエロ恐怖症の方は、現実の「ピエロ」に対しての認知(ものごとのとらえ方)が歪んでしまっています。

ピエロは確かに「怖い」「何をされるか分からない」と感じるような外見ですが、本来は自分に害を与える対象ではなく、過剰に恐怖を感じる必要のあるものではありません。特にサーカスや遊園地のピエロはお客様に「楽しんでもらえるように」あのような恰好をしているわけで、怖い事をしてくるはずはないのです。

このピエロに対する「認知のゆがみ」を修正する治療がピエロ恐怖症においては有効です。

これは基本的には「認知行動療法」の考え方になり、カウンセリングの形式で認知の修正を図っていくことが理想です。独学で行うのは難しく、出来れば精神科医や経験豊富なカウンセラーとともに行っていくようにしましょう。

ただし認知の修正だけを行ってもまずうまく行きません。学習という形式で認知の修正だけをしようとしても、実体験が伴わなければ、深いレベルでの理解は出来ないからです。

そのため、次項の「慣れていく」という治療法も並行していく必要があります。

Ⅱ.ピエロに慣れていく

実際にピエロに少しずつ慣れてみるという作業も、ピエロ恐怖症を克服するためには必要です。

恐怖を感じるものに敢えて挑戦するのを「暴露療法」と呼びますが、ピエロ恐怖症の治療に対しても暴露療法は有用になります。

ただし、暴露療法は「どの程度の恐怖に暴露させるか」という判断が非常に難しいため、これもできれば独自に行うのではなく精神科医などの専門家とともに行うことが理想です。ポイントは「自分がギリギリ耐えられる程度の恐怖に暴露していく」というのが理想で、今の自分がギリギリ耐えられる程度がどれくらいかを見極めることが非常に重要です。

暴露療法は、恐怖に少しずつ触れて慣れていくという治療法になり、最初は弱い恐怖から慣れていき、成功したらより強い恐怖に挑戦するという流れになり、必ず段階的にやっていく必要があります。いきなり自分の限界以上の恐怖に暴露させてしまうと、恐怖がかえって強まってしまう可能性もあります。

そのため、自分をピエロに暴露するための段階を作ってみましょう。

例えば、

1.抗不安薬を1錠服用し、信頼できる人と一緒に遊園地にいく
2.抗不安薬を半錠服用し、信頼できる人と一緒に遊園地にいく
3.抗不安薬を服用しないで、信頼できる人と一緒に遊園地にいく
4.抗不安薬を服用しないで、信頼できる人と遊園地にいくが、その人には少し離れた位置にいてもらう
5.抗不安薬を服用しないで、信頼できる人と遊園地にいくが、その人には遊園地の入口で待っていてもらう
6.抗不安薬を服用しないで、一人で遊園地に行ってみる

などといった感じです。このような表は「不安階層表」と呼びます。

不安階層表を作ったら、恐怖の低いものから1つずつ克服していきます。小さな成功を積み重ね、成功体験を積んでいくことが大切です。かんたんなものから少しずつ克服していくことで自信がつき、恐怖が和らいでいくからです。今回の例でいえば、「じゃあまずは抗不安薬を1錠服用し、信頼できる人と一緒に遊園地にいってみよう」とチャレンジすればいいのです。

時間も最初は短い時間でも構いません。ピエロを数秒見るだけでも十分でしょう。

暴露療法の成功の鍵は、段階を多く作り、少しずつ少しずつ達成していって自信をつけていくことです。協力者やお薬を利用して、段階を細分化することが出来ると、暴露療法の成功率は高まります。

協力者は「一緒に居て安心できる人」であることが絶対条件です。これは通常家族や恋人、親友などになります。また暴露療法は補助的に抗不安薬などの不安・恐怖を和らげるお薬を使う事がありますが、これらのお薬の処方は医師しかできないため、やはり暴露療法は精神科医と連携しながら行うことをお勧めいたします。

Ⅲ.失敗することもある

治療を行う際、直線状にきれいに治っていくことはまずありません。

良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に徐々に底上げされて治っていくような経過が普通です。

恐怖症の方は、非常に長い期間苦しんできた事がほとんどです。短くても数年、長い場合は数十年以上、ピエロ恐怖症を抱えながら生きてきた方もいらっしゃいます。このように長い期間苦しんできたのですから、いくら最適な治療をはじめたといってもいきなりキレイに治るものではありません。

治療の経過中には悪化してしまったり、失敗してしまうこともあります。しかしそれであきらめないでください。

失敗や悪化を経て、その中で少しずつ少しずつ治っていくというのが恐怖症の治り方です。

失敗してしまったり悪化を経験すると、「これはきっと治らないのだ・・・」と絶望的になってしまう方が多いのですが、そうではなく、「経過中に失敗することもある。みんなそうやって少しずつ治っていくのだ」と考えるようにしてください。

Ⅳ.補助的にお薬を使うことも

恐怖の程度が強い場合は、補助的に不安や恐怖を和らげるお薬を併用することもあります。

良く用いられるのが先ほども紹介した「抗不安薬」です。抗不安薬は、即効性もあるため暴露療法で暴露する前に服薬することでも効果が得られ、使い勝手の良い治療薬になります。しかし一方で慢性的に使用を続けると依存が生じることもありますので注意が必要です。

長期的に不安・恐怖を抑えたい場合は「抗うつ剤」が用いられることもあります。不安や恐怖はセロトニンと深く関係していると考えられているため、抗うつ剤の中でもセロトニンを増やす作用に優れるものが使われます。抗うつ剤は飲んですぐに効果が出るものではありません。服薬して早くても1週間、通常は2~4週間ほどかかります。しかし依存性はありませんので、長期的に不安を抑えたい場合に適しています。

ただしピエロは日常ではほとんど遭遇しないため、日頃から不安・恐怖を抑えておく必要はあまりありませんので、ピエロ恐怖症の治療の場合は抗うつ剤はあまり使わず、抗不安薬を必要な時のみ使うという方法で治療が行われる事が多いです。

お薬はピエロ恐怖症の治療を助けてくれる有効な方法の1つです。しかしあくまでもお薬で症状を抑えているだけであるため、お薬だけで治療がうまくいくことはありません。お薬の力を借りながらも「考え方を修正する」「暴露して慣れていく」という克服法を行っていく必要があります。