3.集合体恐怖が生じる原因や理由は?
集合体恐怖症はどうして生じてしまうのでしょうか。
恐怖症の中でも集合体恐怖症は、その原因が分かりにくいものです。
例えば同じ恐怖症でも、
- 高所恐怖症(高いところに恐怖を感じる)
- 先端恐怖症(ナイフなど尖ったものに恐怖を感じる)
といった恐怖症は、恐怖を感じる事について理解しやすいでしょう。なぜならばこれら恐怖症の対象は確かに怖いものであり、健常な人であってもある程度の怖さは感じるものだからです。
しかし集合体恐怖症はどうでしょうか。
- いちごのブツブツを見るのが怖い
- 水玉模様を見るのが怖い
というものは、「どうしてこれが怖いの?」と周囲はあまり理解できないものです。
集合体恐怖症が生じる理由にはいくつかの仮説はありますが、確実に「これが原因だ」と言えるようなものは現時点ではまだ分かっていません。
しかし集合体恐怖症の患者さんの話を聞いたり、専門家の研究報告を調べていくと、私たちは元々集合体に対して恐怖を感じるような本能を持っているという仮説が導き出されます。
私たちは元々集合体に対して本能的に多少の恐怖を持っており、何らかのきっかけでその恐怖が更に強まってしまうと、集合体恐怖症が発症してしまうという事です。
その根拠として、確かに集合体というのは「ちょっと気持ち悪いな」「なんだか毒々しいな」と感じるものも少なくありません。
例えば、「毒キノコ」を思い出してみて下さい。毒キノコというと、カサが斑点状・水玉模様になっているキノコをイメージしたのではないでしょうか。実際、「ベニテングダケ」という赤色のカサに白色の水玉模様がついているキノコがあり、これは猛毒を持つといわれています。
またテントウムシも赤色の背中に黒色の水玉模様がありますが、なんでこんな模様をしているのかというと、これを見た外敵に恐怖を感じさせるためではないかと考えられています。
他にも、
- ハチの巣
- カエルの卵
なども集合体ですが、これらは健常な人でも「ちょっと気持ち悪い」と感じる事が多いでしょう。
こう考えてみると私たち人間は、元々このようなものを「危険」だと感じる本能があるのではないかと考えられます。
恐怖症というのは、元々本能的に「怖い」と感じやすい物や状況に対して生じるという傾向があります。
代表的な恐怖症を見てみると、
- 先端恐怖症(尖ったものや先端の鋭いものに恐怖を感じる)
- 閉所恐怖症(閉じ込められた状況に恐怖を感じる)
- 高所恐怖症(高い場所に恐怖を感じる)
これら恐怖症の対象となる「尖ったもの・鋭いもの」「閉じ込められた状況」「高い場所」というのは普通に考えて怖いものです。健常な人でもナイフを突きつけられれば恐怖を感じるでしょうし、ビルの屋上から落ちそうになったら恐怖を感じるでしょう。
このように恐怖症というのは、健常な人でも多少は「怖い」と感じるような物や状況が対象となる事が多いのです。普通であれば「ちょっと怖い」という程度ですが、何らかのきっかけによって恐怖が増幅されてしまうと恐怖症が発症してしまうのです。
集合体恐怖症も同様です。
元々集合体というものに対して私たちは本能的に「ちょっと怖い」と感じるのです。そして、そこに集合体が更に怖くなってしまうような何らかのきっかけが重なると発症してしまうのでしょう。
そして集合体恐怖症になってしまうと、本来であればほとんど恐怖を感じないような集合体、例えば、
- 水玉模様
- イチゴのブツブツ
などといったものに対してまでも恐怖を感じるようになってしまいます。
ではそのきっかけにはどのようなものがあるのでしょうか。これは本当に様々な原因が考えられます。
例えば、実際に集合体が原因で恐怖体験をした(例:ハチの巣から出てきたハチに襲われた、など)という事であればこれもきっかけになるでしょう。また強いストレスを受けていて神経が過敏になっている時に集合体をたまたま見てしまった事で強い恐怖を覚え、そこから集合体に恐怖を感じるようになってしまったという事もあり得ます。
特に元々、
- 心配性
- 不安が強い
- 完璧主義
といった性格傾向のある方は、不安や恐怖を感じやすい傾向があるため、小さいきっかけでも集合体恐怖症をはじめとした恐怖症を発症しやすいと考えられます。