パーキンソン病のお薬がうつにも効く?ドーパミン作動薬の抗うつ効果

うつ病の薬物療法というと「抗うつ剤」を用いるのが一般的です。

しかし実は抗うつ剤以外でも、 うつ病に効果のあると報告されているお薬がいくつかあります。主にパーキンソン病に使われる、「ドーパミン作動薬」もその一つです。

すでに精神科界では広く知られており、 処方されている先生も多くいらっしゃいます。

うつ病とパーキンソン病、どちらも脳の病気ではあるけど、関連性は少ないような印象がありますが、なぜ、パーキンソン病のお薬がうつ病に効果があるのでしょうか?

今日は「パーキンソン病のお薬がうつ病にも効果がある」というお話をさせて頂きます。

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1.パーキンソン病とうつ病の共通点

パーキンソン病は、脳(特に中脳の黒質-線条体系)のドーパミンの減少が原因だと考えられています。

そのためパーキンソン病の治療はドーパミンを補充する事であり、お薬によってドーパミンを補充したり(L-DOPA)、ドーパミンを出すお薬(ドーパミン作動薬)などが用いられます。

一方でうつ病は、モノアミンの減少が一因と言われています。

モノアミンとは気分に関係する神経伝達物質の総称で

  • 主に不安や落ち込みに関係している「セロトニン」
  • 主に意欲・気力に関係している「ノルアドレナリン」
  • 主に楽しみ・快楽に関係している「ドーパミン」

などが含まれます。

つまり、うつ病もパーキンソン病も「脳のドーパミンが減少して発症する」 という共通点があるのです。 

パーキンソン病は、脳の中でも中脳の黒質-線条体系のドーパミン減少が深く関わっていると考えられています。

対してうつ病は、脳全体のドーパミン減少であり、その中でも中脳ー皮質辺縁系のドーパミン減少が意欲、快楽などを低下させると言われています。

2.ドーパミン作動薬の抗うつ作用の研究

パーキンソン病のお薬であるドーパミン作動薬は、パーキンソン病においては黒質-線条体系のドーパミンを増加を狙って投与されます。しかしドーパミン作動薬はその部位のドーパミンだけをピンポイントで増やすわけではなく、 脳全体のドーパミンを増やしています。

「ならばこれは脳のドーパミンが減少しているうつ病にも効果があるのではないか」

と考えられます。

実際、そのような研究が行われており、

「うつ病患者にドーパミン作動薬を投与すると、抑うつ気分が改善する」

ということも報告されています。

実際に最近行われた研究を1つ紹介します。

ドーパミン作動薬である「ビ・シフロール(一般名:プラミペキソール)」をうつ病患者さんに8週間投与したところ、プラセボ(偽薬)を投与した群と比べて、軽度ではあるが有意に改善が得られた。

(J Clin Psychiatry. 2013 ;74 :e636-41より)

「うつ病患者さんにドーパミン作動薬が効くはず」という理論は、うつ病発症の一因が、脳内のドーパミン減少だという仮説(モノアミン仮説)に基づけば、十分に納得がいく理論です。

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3.ドーパミンってなに?

そもそもドーパミンってどんな物質なのでしょうか。

ドーパミンは気分に大きく関わる神経伝達物質(神経と神経の間で情報伝達をする物質)であり、精神科領域においては重要な物質になります。

非常にかんたんな説明になりますが、ドーパミンは快楽・楽しみに関わっている物質ですので、それが低下してしまうと「何も楽しめない」「生きている意味が感じられない」といったうつ状態になってしまいます。

一方でドーパミンは多すぎても問題です。脳のドーパミンが過剰になるとテンションが高くなりすぎてしまいます。実際、覚せい剤の多くは脳のドーパミンを増やす作用があると言われています。覚せい剤を使用するとテンションが異常に上がったり、興奮・易怒性・幻覚・妄想などが出現しますが、ドーパミンは多すぎても問題なのです。

また統合失調症でも幻覚や妄想が出現しますが、これも脳のドーパミンが過剰に出てしまっているためだと考えられています(ドーパミン仮説)。

ドーパミンは「ドーパミン受容体」という部位に結合することで、その作用を発揮します。ドーパミン受容体にはD1~D5受容体まで5つの種類があります。その中でD2受容体とD3受容体が精神症状に関係すると考えられています。

ちなみにD1とD5が類似しており「D1受容体サブファミリー」と呼ばれ、D2,D3,D4が類似しており「D2受容体サブファミリー」と呼ばれています。

D2受容体は幻覚妄想などの精神症状に関係します。覚せい剤や統合失調症で幻覚妄想状態となるのは、 このD2受容体にドーパミンが結合しすぎる事により生じます。

D3受容体は、まだ未解明の部分が多いのですが、抗うつ作用を初めとした気分を安定させる作用があるのではないかと考えられています。

とすれば、D3受容体への作動するドーパミン作動薬がうつ病には効果があるという事になります。

しかし現在のドーパミン作動薬は、ほとんどD2受容体に対して作られています。ここがドーパミン作動薬をうつ病に用いる際の問題点となります。

そのため、現状ではうつ病のドーパミン作動薬を用いる場合は、D2受容体への結合がメインでありながらもD3受容体へもまずまず結合するお薬を用いることが多いです。

4.うつ病に用いられるドーパミン作動薬

うつ病に対してドーパミン作動薬を用いる場合、理想的にはD3受容体を刺激してくれるドーパミン作動薬を使いたいところです。

しかし現状のドーパミン作動薬は、元々がパーキンソン病の治療薬として作られているため、主にD2受容体に作用するお薬ばかりになります。そのため、D2受容体への作用が主でありながらもD3受容体にも作用するお薬を用います。

具体的には、

  • ビ・シフロール(プラミペキソール)
  • ミラペックス(プラミペキソール)
  • レキップ(ロピニロール)

などのドーパミン作動薬が用いられます。これらはD2受容体サブファミリーに作用するため、D3受容体にも作用しやすいためでしょう。

その他、

  • パーロデル(ブロモクリプチン)
  • ペルマックス(ペルゴリド)
  • カサバール(カベルゴリン)
  • ドミン(タリペキソール)

などといったドーパミン作動薬なども時として使われますが、これらはD3受容体よりもD2受容体に強く作用し、また、D1受容体にも少なからず作用してしまうことがあるため、注意が必要です。

またドミン以外は麦角系であることも注意しなければいけません。

ドーパミン作動薬は「麦角系(パーロデル、カサバール等)」と「非麦角系(ビシフロール、レキップ等)」に分類されますが、麦角系は心臓系への副作用の報告があるため、まずは非麦角系から使用する事が多いのです。

現在、D3受容体に中心的に結合するお薬も抗うつ剤として開発段階にあり、治験が行われています。

5.既存の抗うつ剤はドーパミンを増やさないの?

現在、日本で認可されている抗うつ剤は、セロトニンやノルアドレナリンを増やすものが多くドーパミンを増やす作用に優れるものは少なめです。しかし、ドーパミンを増やす抗うつ剤がないわけではありません。

ドーパミンを増やしてくれる代表的なものには「エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)」があります。

エビリファイは元々は統合失調症に使われていたお薬ですが、脳内ドーパミンの量を調整する作用がある事が分かり、うつ病への適応も認められるようになりました。

また、リフレックスレメロン(一般名:ミルタザピン)やサインバルタ(一般名:デュロキセチン)という抗うつ剤、ジプレキサ(一般名:オランザピン)という抗精神病薬(統合失調症の治療薬)もドーパミンを多少増やす作用があると言われています。

そのため、「この患者さんは、ドーパミンを増やすお薬が良いだろう」と主治医が考えたとき、これらのお薬を処方する事がありいます。

これらのお薬があまり効かなかった時、ドーパミン作動薬も選択肢になるでしょう。

6.自己判断はしないで!

ドーパミンは意欲や快楽などに関係すると言われています。

うつ病の治療をしていて抗うつ剤も色々試したけど、

「やる気だけがどうも出ない」
「楽しむ力がなかなか戻らない」

という方は、ドーパミン作動薬の処方を考えてみてもいいのかもしれません。

しかし現時点でドーパミン作動薬はうつ病に保険適応はありません。そのため、主治医の判断によってやむを得ないケースに限って検討される処方になります。非医療者が独断で判断するのは危険ですので、 必ず主治医の先生と相談して下さいね。

<まとめ>

  • うつ病はドーパミンの減少が一因である。
  • ドーパミンを増やす作用のあるドーパミン作動薬はうつ病にも効果がある。
  • ドーパミン作動薬の効果は軽度である。
  • ドーパミン作動薬を投与する事で意欲や快楽の改善を得られる可能性がある。
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