うつ病に使われる心理検査。ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)とは?

うつ病で使われる心理検査HAM-D

うつ病の診断は、医師の診察によって行われます。診断は、症状や経過など様々な情報を元に行われますが、精神科の病気は目に見えず数値としても現れないため、しばしば診断に難渋する事があります。

そのような時、役に立つのが心理検査です。

心理検査は診断の補助的なものであり、それのみで診断を行えるものではありませんが、症状や重症度を客観的に診る事ができる有用なツールなのです。

うつ病で用いられる心理検査はいくつかありますが、その中でも世界的に広く用いられているハミルトンうつ病評価尺度(通称HAM-D)という検査について、どんな検査でどんな事が分かるのかなどをみてみましょう。

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1.HAM-Dとはどんな検査なのか?

HAM-Dの正式名称は「ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale:HDRS)」です。

その歴史は古く、1960年に英国のマックス・ハミルトン氏が考案しました。以後何回か改定されていますが、現在でも用いられる有用な心理検査のひとつです、

HAM-Dは質問紙検査であり、質問に対して答えが3~5個用意されており、その中で一番当てはまる状態を選択する形式です。患者さん本人が選ぶのではなく、検査者が患者さんの状態をみて選びます。検査には15~20分ほどの時間を要します。

HAM-Dは「うつ病の重症度」を点数化します。例えばHAM-D17はうつ病の諸症状を17項目に分け、17の質問に回答してもらいそれぞれを点数化する事で重症度を推定します。点数が高い方が重症度が高いことになります。(HAM-D17の他にもHAM-D21や24、29などがあります)

世界的に使用されている心理検査であり、特に研究や論文発表においてよく用いられます。「この抗うつ剤を〇週間投与したところ、HAM-Dにおいて〇点の改善が認められた」などと表記されているため、精神科に携わっているものであれば誰もが知っているような有名な検査です。

2.HAM-Dの点数と重症度の関係

HAM-Dの点数と重症度の関係はおおよそ以下のようになっています。

0点~7点         正常 (Normal)
8点~13点       軽症 (Mild Depression)
14点~18点     中等症(Moderate Depression)
19点~22点     重症 (Severe Depression)
23点以上         最重症(Very Severe Depression)

前述したように、これは診断ができる検査ではありません。

例えば19点だった場合、「重症のうつ病が疑われる」とは言えますが、これだけで「あなたは重症のうつ病です」と診断することはできません。

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3.実際にHAM-Dの検査内容を見てみよう

実際のHAM-Dの検査内容を見てみましょう。ここでは標準的なHAM-D17を紹介します。今の精神状態ではなく、過去1週間全体の状態を選ぶ必要があります。

なお、HAM-Dは自分で解答を選ぶのではなく、以下の質問を医師などの検査者が行い、検査者が一番患者さんに近いと思う項目を選ぶ検査です。そのため解答欄も検査者目線になっています。

1.抑うつ気分(Depressed Mood)

0:全くなし
1:質問された時のみ抑うつ気分を訴える
2:自発的に言葉で抑うつ気分を訴える
3:表情や態度など非言語的に抑うつ気分が表現される
4:自発的な言語・非言語的に抑うつ気分のみを実質的に表現される

2.罪責感(Feelings of Guilt)

0:全くなし感じる
2:過去の失敗や罪を繰り返し考え、罪業念慮を持つ
3:今のうつ症状は罰であると感じる。罪業妄想
4:非難などの幻聴・幻覚を認める。

3.自殺傾向(Suicide)

0:全くなし
1: 生きている価値はないと感じる
2:死を考えたり願ったりする
3:自殺を考えたり、そのそぶりがある
4:自殺企図(自殺しようとする)

4.入眠障害(Insomnia Early)

0:入眠困難なし
1:時々、寝付くのに30分以上かかる
2:毎晩寝つきが悪い

5.熟眠障害(Insomnia Middle)

0:熟眠に問題なし
1:夜間に落ち着かなかったり睡眠が妨げられている
2:夜間に起きている

6.早朝睡眠障害(Insomnia Late)

0:問題なし
1:早朝に覚醒するが、再入眠できる
2:起床すると再入眠することができない

7.仕事と活動(Work and Activities)

0:問題なし
1:仕事や趣味に対して疲労感、気弱さ、無力感を感じる
2:仕事や趣味に対して興味を失う
3:活動に費やす時間が実際に減ったり、生産性が低下する
4:この病気のために仕事を中断している

8.精神運動抑制(Retardation:Psychomotor)
(思考や会話が遅くなる、集中力が落ちる、自発的運動の現象)

0:正常な会話と思考
1:面接時にわずかな遅延がある
2:面接時に明らかな遅延がある
3:面接が困難
4:完全な昏迷

9.焦燥(Agitation)

0:なし
1:常に落ち着かない様子
2:手遊びや髪いじりがある
3:座っていられない
4:手を揉んだり、爪や唇を噛んだり、髪を抜いたりする

10.精神的不安(Anxiety Psychological)

0:問題なし
1:緊張と怒りっぽさ
2:些細なことでうろたえる
3:表情や会話に不安が表れている
4:質問するまでもなく、恐怖が表出されている

11.身体的不安(Anxiety Somatic)
(胃腸症状や動悸、頭痛、過呼吸など不安に伴う身体症状)

0:ない
1:軽度
2:中等度
3:重度
4:無能力化

12.消化器系身体症状((Gastrointestinal))

0:なし
1:食欲の低下。しかし促されなくても食べ、食事量は正常
2:促されないと食べるのが困難。食欲と食事量の低下がある

13.一般的な身体症状(Somatic Symptoms General)

0:なし
1:手足、背中、頭が重い。背部痛、頭痛、筋肉痛。体力の低下や疲労感
2:明瞭な症状があれば、この「2」とする

14.生殖器症状(Genital Symptoms)
(性欲の低下、生理不順など)

0:なし
1:軽度
2:重度

15.心気症(Hypochondriasis)

0:なし
1:自分の身体へのとらわれ
2:健康のことばかりにとらわれる
3:頻繁な訴えや助けを求める
4:心気的な妄想

16.体重減少(Loss of Weight)

0:体重減少なし
1:おそらく現在の病気による体重減少
2:自己申告による確実な体重減少
3:評価なし

17.病識(Insight)

0:うつ状態で病気であると認識している
1:病気であると認識しているが、食事や気候、過労、ウイルスなどのせいにする
2:病気であることを否定する

以上です。

選んだ選択肢の数値の合計点が点数になります。

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