全般性不安障害は、漠然とした不安が長期間続く疾患です。
具体的に「これが不安」という対象はないものの、漠然とあらゆることに強い不安を感じ続け、これによって生活に支障を来たしたり、精神的に疲弊してしまいます。
全般性不安障害は、これといった特徴的な症状に欠けるため、「気のせい」「ただの心配性」と誤解されやすく、発見が遅れてしまいやすい疾患です。
しかし長い間強い不安に晒され続ける全般性不安障害は、発見が遅れれば遅れるほど治りにくくなってしまうため、出来るだけ早いうちに発見し、適切な治療を始めることが大切です。
ここでは全般性不安障害という疾患について、その原因や症状、診断方法、治療法などといった全ての情報をお話していきます。
1.全般性不安障害とはどのような疾患なのか
全般性不安障害(GAD:Generalized Anxiety Disorder)は、その概念が分かりにくい疾患です。
なぜならば、「漠然と強い不安を感じ続ける」というのが全般性不安障害であり、これといった特徴的な症状に欠けるためです。
「不安」という症状も目に見える症状ではなく、数値化できる症状でもないため、その不安が病気なのか正常なものなのかが本人も周囲も判断しにくいのです。
全般性不安障害を早期に発見して正しく治療するためには、まずは全般性不安障害という疾患がどのような疾患なのかを知る事から始まります。
全般性不安障害は、漠然と様々な事に対して強い不安を感じるようになってしまう疾患です。何か特別なものに不安を感じるわけではなく、学生であれば「試験に合格できるか不安だ」と感じたり、社会人であれば「急に解雇されないか不安だ」と感じたりと、感じる不安はおおむね一般的に理解できる内容となります。
全般性不安障害が一般的な「心配性」と異なるのは、心配症は不安が強いものの、生活にそこまで大きな支障を来たしたり、本人の精神にそこまで大きなダメージを与えるものではないのに対して、全般性不安障害は、強い不安によって生活に支障を来たしたり、精神的に大きなダメージを受けてしまう点です。
例えば、「試験に合格できるか不安だ」と感じていたとしても心配性の人は、そのために試験勉強を頑張ることができます。しかし全般性不安障害だと、試験の不安によって試験勉強が手につかなくなってしまったり、授業を受けるのが怖くなってしまったり、不安で食事がとれなくなったり夜眠れなくなったり、何も楽しむことができなくなったりと様々な面で支障が生じます。
ここでは、全般性不安障害という疾患は一体どのような疾患なのかという事を詳しく説明していきます。
2.全般性不安障害が生じる原因は?
全般性不安障害はどのような原因によって生じるのでしょうか。
全般性不安障害が発症する明確な原因というものは特定されていません。恐らく全般性不安障害は、何か1つの原因があって発症するようなものではなく、種々の原因が重なった結果、不安を適切に処理することができなくなってしまい生じるのではないかと考えられています。
ではその「種々の原因」にはどのようなものがあるのでしょうか。
全般性不安障害の一因としては、
- 慢性的なストレッサー(ストレス因)
- 性格傾向
- 遺伝
- 育った環境や現在の環境
- 年齢・性別
などが関係していると考えられています。
また生物学的な原因としては、脳内にある「扁桃体」におけるセロトニンやGABAといった物質の異常が指摘されています。
ここでは現時点で分かっている全般性不安障害の原因について紹介します。
3.全般性不安障害で生じる症状とは
全般性不安障害は、その名の通り「全般的な事に対して漠然と不安を感じる」という症状を認めます。
しかしこのような理解だと、ただの心配性との違いが分かりません。
全般性不安障害の主な症状が「漠然とした不安」であることに違いはありませんが、心配性と比べてどのような違いがあるのかを理解しておくことは大切です。
全般性不安障害の不安は、
- 内容は正常の人にも認められるような、理解できるようなもの
- しかし不安の強度が正常の人と比べて明らかに強い
- 不安が長期間続いており、とても苦しい思いをしている
- 不安によって生活に支障が生じている
といった特徴を持ちます。
また、ただ不安を感じているだけでなく、不安によって様々な身体・精神症状を認めていることも特徴になります。
ここでは全般性不安障害の症状について詳しく紹介します。
4.全般性不安障害の診断・チェック方法
全般性不安障害は、不安障害の中でも診断が難しい疾患です。
なぜならばこの疾患は特徴的な症状や派手な症状が欠けるからです。
例えばパニック障害であれば激しいパニック発作を起こせば、「これはパニック障害なのではないか」と自分で気付いたり周囲が気付いたりすることも珍しくないでしょうか。
人前で注目されるような場所で明らかに過剰に緊張してしまうようであれば、「自分はどうも周りと違う」「社会不安障害かもしれない」と、これも気付きやすいと思います。
しかし全般性不安障害は「漠然と不安が続く」疾患であり、これは「病気かもしれない」と気付きにくいのです。内面にある不安の強さというのは人と比較することが困難ですので、「自分が皆よりも不安が高い」「自分の不安は正常範囲を超えている」という事はなかなか気づきません。
実際に全般性不安障害は、医師の中でも精神科医以外の医師が診断することはほとんどありません。
他のパニック障害や社会不安障害、うつ病などでは、内科医など他科医が「パニック障害の可能性が極めて高い」「うつ病の疑いがある」と診断までいかなくても強く疑う事がありますが、全般性不安障害においてこれはほとんどありません。
それほど専門家でないと診断が難しい疾患だという事です。
では全般性不安障害はどのような症状が認められたら疑えば良いでしょうか。
ここでは全般性不安障害の診断基準と、精神科医以外でもある程度の精度で確認できるようなセルフチェック法についてご説明します。
5.全般性不安障害の治療法
全般性不安障害は、「ただの心配性」と誤解されてしまう事が多いのですが、これは疾患です。
疾患である以上、適切に治療をすべきになります。
全般性不安障害も適切な治療を行えば、つらい不安症状から解放されることが可能です。そのためには治療方法を間違えず、適切な時期にしっかりと治療を行うことが大切です。
全般性不安障害の治療で一番大切なのは、「これは甘えや気合の問題ではなく、病気なのだ」と自分自身でしっかりと認識することです。
「自分が弱いからなるのだ」
「気合や根性がない自分が悪いのだ」
といったあやまった考え方を持っていれば治療がうまくいくはずはありません。
この正しい認識を得るためには、まずはしっかりと精神科を受診し、専門家から「あなたの状態は甘えや性格などの問題だけでなく、病気になってしまっているのですよ」と正しい判断をしてもらう事です。
必ず、病気について正しく理解してから治療に入るようにしましょう。
全般性不安障害の治療は、
- 生活習慣の改善
- お薬
- 考え方の修正
といった方法があります。どれか好きなものを1つ得られば良いというものではなく、患者さんによって発症の大きな原因はどこにあるのかを見極め、それぞれを組み合わせていくことが大切です。
ここでは全般性不安障害の治療方法について紹介します。