3.ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の強さの比較
ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は現在もっとも処方されている睡眠薬で、種類も数多くあります。たくさんの種類がありますが、強さに違いはあるのでしょうか。
ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は約20種類ほどが発売されていますが、実はその強さはどれも大差ありません。
強いて言えば強いもの、弱いものはあります。例えば、
- ハルシオン(一般名:トリアゾラム)
- ロヒプノール・サイレース(一般名:フルニトラゼパム)
などはベンゾジアゼピン系の中でも効果が強いと考えられています。
しかしこれらは著しく強いわけではなく、「強いて言えば」程度のものです。
ではベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の強さに大きな違いがないのであれば、効果が不十分な時はどうすればいいのでしょうか。また、それぞれをどのように使い分ければいいのでしょうか。
ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はその強さは大差ないものの、それぞれ、
- 効果発現時間(お薬を服用してから効き始めるまでの時間)
- 作用時間(お薬の効果が持続する時間)
などが異なるため、この値が自分にもっとも合うものを選びます。
効果発現時間や作用時間によって、これらの睡眠薬は次の4種類に分ける事が出来ます。
〇 超短時間型:飲んで1時間未満で最も効き、2~4時間で効果がなくなる
(ハルシオン、マイスリー、アモバン、ルネスタ)
〇短時間型:服用して1~3時間で最も効き、6~10時間で効果がなくなる
(レンドルミン、ロラメット、エバミール、リスミー)
〇中時間型:服用して1~3時間で最も効き、24時間前後で効果がなくなる
(サイレース、ロヒプノール、ベンザリン、ネルボン、ユーロジン)
〇長時間型:服用して3~5時間で最も効き、24時間以上効果が持続する
(ドラール、ベノジール、ダルメート、ソメリン)
ここから、「一番強く効かせたい時間はいつなのか?」を考えて選びます。すごく大雑把にはなりますが、 図解するとこのようになります。
どれもピーク時の強さは同じですが、効く時間帯の違いがあります。
寝付けなくて困っている人は、飲んですぐに強く効いて欲しいわけですから超短時間型や短時間型が用いられます。
寝つきは問題ないけど夜中に起きてしまい、そこから再度眠りに入る事ができないのであれば、飲んでから数時間してピークがくる中時間型や長時間型がいいでしょう。
4.睡眠薬を強めたい、弱めたい時はどうすればいいか?
診察で患者さんと睡眠薬のお話をしていると、
「なるべく薬に頼りたくないので一番弱いやつをください」
「とりあえず眠りたいので一番強いやつが欲しいんです」
と希望されることがあります。
前述したように、ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の強さはどれも大きな違いはありませんから、「強い薬を出す」という事には限界があります。
バルビツール酸系を出すという選択肢もありますが、安全性という観点からみれば極力処方すべきではありません。
では睡眠薬の作用を「強めたい」あるいは「弱めたい」という時はどうすればいいのでしょうか?
前述の通り強さはどれも大きな差がないわけですから、自分に合った作用時間の睡眠薬を選び、強さは「量」で決めます。
例えば寝つきが悪い方にマイスリー5mgを処方したとします。もっと弱いものでも大丈夫という事になれば別の睡眠薬に変えるのではなく、マイスリーを2.5mgに減らせば良いのです。それでも効きすぎるようでしたら1.25mgにしてもいいでしょう。
反対に5mgでは効きが不十分で、もう少し強めたいのであれば 10mgにしてみるわけです。
時々、「長時間型の方が強そうだ」と勘違いしている方がいますが、「長く効く=強い」ではありません。
寝付けない人が、「もっと強いものが欲しい」と長時間型に変えてしまうと、薬の効きのピークが遅くなるわけですから、余計寝付けなくなります。その上、朝になっても薬が残って眠気がひどくなり、悪い事だらけです。