強迫性障害の検査「Y-BOCS」を利用してセルフチェックをしてみよう

強迫性障害(OCD)は、ある考えやイメージに強くとらわれてしまい、その考えを打ち消すために何度も繰り返し行動を起こしてしまう疾患です。

「ガスの元栓を閉め忘れているのではないか」という不安にとらわれてしまい、何度も自宅に帰るという行動を繰り返したり、「身体が汚染されてしまったのではないか」という不安に捉われ、何度も何度も身体を洗うという行動を繰り返したりする、といった症状が認められます。

強迫性障害は、症状としては比較的分かりやすいため、患者さん自身が「私は強迫性障害だろう」と気付いて自ら病院を受診されることもあります。

診断は医師の診察によってのみ行われるため、病院で診察を受けるまでは病気なのかどうかは分かりません。

自分が正常範囲内の完璧主義・潔癖症なのか、それとも強迫性障害なのかはどのようにして判断すればいいでしょうか。確実な方法はもちろん病院を受診することなのですが、その前に自分でチェックをしたいという方も多いと思います。

今日は強迫性障害の検査である「Y-BOCS」をセルフチェック用に改訂したものをご紹介したいと思います。

1.Y-BOCSとは

Y-BOCSは「Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale」の略で、強迫性障害の重症度を点数としてみることができる検査です。

診断の補助として用いられる他、経過中に「どのくらい良くなっているのか」の判定として用いることも出来ます。

Y-BOCSは患者さんが1人で行える検査ではなく、検査者が患者さんの面接をして、質問しながら点数をつけていくような検査方法になります。そのためセルフチェックには用いにくいのですが、最近ではY-BOCSを改定してセルフチェック用に使えるようにしたものもあります。

Y-BOCSではまずは検査や強迫性障害に対する説明が行われた後、「症状評価リスト」という一般的に認められる強迫症状の一覧リストに沿って、患者にどのような症状があるのかを確認していきます。

この時、ただ確認するだけではなく、

  • 今、認める強迫症状は何か
  • 今はないけど過去には認めた強迫症状は何か
  • もっとも障害となっている強迫観念は何か(3個選ぶ)
  • もっとも障害となっている強迫行為は何か(3個選ぶ)

といったことをチェックしていきます。

次は主に問題となっている強迫症状に対しての「重症度」を判定します。主に問題となっている標的症状に対して、

  • その症状でどのくらいの時間が奪われてるのか
  • その症状で生活にどのくらいの障害が出ているのか
  • その症状にどのくらいの苦痛を感じているのか
  • その症状にどのくらいの抵抗をしているのか
  • その症状をどのくらい制御できているのか

の5項目を強迫観念、強迫観念それぞれで点数化していきます。点数は0〜4点の5段階で、計40点満点となり、点数が高いほど重症度は高くなります。

おおよそ、

0~7点 正常
8~15点 軽度
16~23点 中等度
24~31点 重度
32~40点 最重度

と判定されます。

2.強迫性障害をセルフチェックする

ここでは強迫性障害を自分でセルフチェック検査を紹介します。

Y-BOCSは強迫性障害の検査として用いられている代表的な検査ですが、基本的には検査者が患者さんに質問していきながら行う検査であるため、患者さんがセルフチェックとして用いることはできません。

そのため、ここではY-BOCSの主な項目を抜き出し、セルフチェックで使えるようにして紹介させて頂きます(この検査はY-BOCSと全く同じものではありません)。

セルフチェックは医師の診断とは異なり、この検査の基準を満たしたからといって「強迫性障害」の診断にならないことはご注意下さい。

しかしこの検査を満たす場合は強迫性障害の可能性がありますおで、精神科に相談に行くことをおすすめします。

Ⅰ.強迫性障害について知る

検査の精度を上げるためには、強迫性障害について正しく知らなくてはいけません。

特に強迫性障害の主症状である、

  • 強迫観念
  • 強迫行為

について正しく理解し、その上で検査を進めるようにしましょう。

強迫観念・強迫行為については「強迫性障害の症状、強迫観念と強迫行為について」をご覧下さい。

Ⅱ.自分が困っている強迫症状は何なのか?

次に自分が困っている強迫症状(強迫観念・強迫行為)は何なのかを再確認しましょう。

自分の症状を客観的に再確認することは、自分の状態を正しく知るためには欠かせません。

以下に主な強迫観念、強迫行為について記載しますので、当てはまるものにチェックしてみてください。
なお、

主症状は、強迫症状の中でも特に困っている症状で、強迫観念・強迫行為それぞれ3つまでチェックしましょう。
現在有は現在ある症状をチェックし、過去有は現在は無くなったけども過去にはあった症状をチェックしてください。

ここでは自分の症状はどんなものがあるのか、そしてどんな症状で大きく困っているのかを再確認することが目的です。

【強迫観念】

主症状 現在有 過去有 症状
【攻撃性】
他人を傷付けてしまうのではないか
自分を傷付けてしまうのではないか
暴力的な場面・恐ろしい場面が頭に浮かんでしまうのではないか
卑猥な言葉、侮辱する言葉を発してしまうのではないか
自分の意志とは反対の行動をしてしまうのではないか
ものを盗んでしまうのではないか
不注意から他人に危害を加えるのではないか
恐ろしいことが起こったのは自分のせいではないか
他人を傷付けてしまうのではないか
【汚染】
身体から出る老廃物や排泄物(便、尿など)への心配や嫌悪
汚れ・ばい菌に対する過剰な心配
環境汚染に対する過剰な心配(アスベストや産業廃棄物など)
日用品に対する過剰な心配(洗剤の有毒性など)
動物に対する過剰な心配・嫌悪(虫や犬・猫など)
ネバネバするもの、それのこびりつきを過剰に気にする(テープ・のりなど)
汚染されて病気になってしまうのではないか
汚染されたものを自分がまき散らしてしまうのではないか
汚染されたものを自分がまき散らしてしまうのではないか
【性的】
道徳に反した性的な考えが浮かんでしまう
子供や家族に対して性的な考えが浮かんでしまう
同性に対して性的な考えが浮かんでしまう
自分が性的虐待をするといった考えが浮かんでしまう
【保存と節約】
将来必要になるのではという不安から物を捨てられない
将来必要になるのではという不安から物を拾い集めてしまう
【宗教】
神を冒涜してしまうのではないか
自分が道徳を守れているかに対して過剰な心配
【対称性・正確性】
ものを正確に左右対称にぴったり整頓していない事への過剰な嫌悪
ものを正確に左右対称にぴったり整頓していないと悪いことが起こるのではないか
【その他】
何でも知っておかなければ、覚えておかなければという心配
秘密である事を話してしまうのではないか、適切な事を言えないのではないか
ある考え・イメージが頭に浮かびジャマしてくる
言葉・音楽が頭に浮かびジャマしてくる
ある言葉や音が過剰に気になる
ある色や数字が過剰に気になる
根拠のない迷信的な事を過剰に恐れる
【身体】
自分が病気なのではないか過剰に気にする
自分の身体の一部(顔など)が醜い・おかしいのではと過剰に気にする

【強迫行為】

主症状 現在有 過去有 症状
【掃除と洗浄】
過剰な手洗い行為
過剰な入浴・歯磨き・トイレ・化粧などの日常行為
家具や家に対する過剰な掃除・手入れ
汚染を避けるための過剰な行為(手袋を何重にもして洗い物をするなど)
【確認】
戸締り・元栓・スイッチなどを過剰に確認する
人に危害を加えてないか、過剰に確認する
自分を傷付けていないか、過剰に確認する(ハサミを使った後に、血が出ていないかなど)
恐ろしい事が起こっていないか、過剰に確認する
間違えていないか、過剰に確認する
自分の身体の状態を過剰に確認する(病気がないか、体臭がひどくないかなど)
【繰り返し】
読んだり書いたりを過剰に繰り返す
日常的な行動を何度も繰り返したいという欲求(何度も立ったり座ったりなど)
あまり意味のないものを数えてしまう(階段の段数など)
整理整頓を過剰に行わないと気が済まない
物を過剰に溜め込んだり、集めたりしないと気が済まない
【その他】
儀式化された行為をしないと気が済まない
過剰にリストを作ってしまう
過剰な話したい・聞きたい・告白したい・触りたい・叩きたいといった欲求がある

Ⅲ.主な強迫症状の程度はどのくらいか

自分が困っている強迫症状について確認したら、次はその程度(重症度)を見ていきます。

前項Ⅱ.で「主症状」としてチェックした強迫観念3つ、強迫行為3つに対して、それぞれどのくらいの程度なのかを確認しましょう。

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【Y-BOCSの点数】
0~7点 正常
8~15点 軽度
16~23点 中等度
24~31点 重度
32~40点 最重度