冬季うつ病(季節性情動障害)の全て|原因・症状・治療法など

冬季うつ病

うつ病にはいくつかのサブタイプがある事が知られていますが、その中の一つに「冬季うつ病」があります。

これは主に秋~冬にかけて悪化するタイプのうつ病であり、「冬うつ」と呼ばれたり、「季節性うつ病」「季節性感情障害」と呼ばれたりもします。

毎年寒い季節になるとうつっぽくなるという方は、もしかしたら冬季うつ病なのかもしれません。

冬季うつ病は、うつ病のサプタイプではあるものの、その特徴が一般的なうつ病と異なる点も多く、そのためにうつ病だと認識されずに見逃されてしまうことがあります。

今日は冬季うつ病の特徴や症状、治療法などをみてみましょう。

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1.冬季うつ病の特徴

冬季うつ病はうつ病の一型ではありますが、その特徴として普通のうつ病とは異なる点がいくつかあります。

まず発症の特徴として、圧倒的に女性に発症しやすいことが挙げられます。うつ病は元々女性に起こりやすい疾患であり、その性差は男性:女性=1:2程度だと言われていますが、冬季うつ病ではそれが更に顕著で、男性:女性=1:4以上だと言われています。男性には比較的珍しく、女性に多いタイプのうつ病だと言えるでしょう。

また発症時期としては秋~冬にかけて、日照時間が短くなり寒くなってくる季節に生じやすく、春~夏にかけて日照時間が多くなり暖かくなると自然と改善してくるのが一般的です。症状の出現は1シーズンだけでなく、「毎年、寒くなるとうつっぽくなる」というように周期的にうつ症状がやってきます。

中には逆パターンとして「夏季うつ」と呼ばれるような夏に悪化する季節性うつ病もありますが、これは冬季うつ病に比べれば頻度は稀です。

冬季うつ病は、基本的にはうつ病の一型であるため、その症状もうつ病と基本的には同じです。しかし、一般的なうつ症状である抑うつ気分や疲労感などに加えて、非典型的な症状も目立ちます。具体的には冬季うつ病では過眠や過食が高率で認められることが知られています。

また、うつ病の治療は薬物療法、精神療法、安静が3本柱と考えられていますが、冬季うつ病の場合は治療法も多少異なってきます。

冬季うつ病では光照射療法という治療が主になります。これは患者さんに高照度の光を毎日一定時間浴びてもらう治療法です。薬物療法を光照射療法に併用することもあります。精神療法や休養といった従来のうつ病で重視される治療法は、冬季うつ病ではそこまで大きな効果は望めません。

2.冬季うつ病はなぜ生じるのか

冬季うつ病は、他のうつ病と比べて光照射療法(光を浴びさせる治療法)がよく効く疾患です。そのため、冬季うつ病が生じる原因として、日照時間の低下が原因ではないかと考えられています。

しかしこれはまだ仮説に過ぎず、冬季うつ病の明確な原因は分かっておらず、また光照射療法の作用機序も正確には分かっていません。

一つの可能性として、冬季うつ病では、概日リズム(睡眠-覚醒リズム)の位相が後退している事が指摘されています。また光照射療法は、光を照射することでこの位相を前進させ、元に戻すはたらきがあるのではないかと考えられています。

実際、光照射療法は朝に照射することがもっとも効果的だする報告もあります。朝に光を浴びることは概日リズムをリセットするはたらきがあることが知られているため、ここからも冬季うつ病が概日リズム異常で生じているのではないかと推測できます。

ただし位相の後退がない冬季うつ病の存在も指摘されているため、この仮説で全てが説明はできず、限界もあります。

その他、セロトニンの低下が原因なのではないか、メラトニンの低下が原因なのではないかなど、いくつかの仮説が提唱されていますが、どの仮説も根拠が不十分であり、明確な原因はまだ分かっていないのが現状です。

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3.冬季うつ病の診断基準と症状チェック

冬季うつ病は、どのように診断されるのでしょうか。

診断の際にはその一助として診断基準が用いられますが、冬季うつ病にも診断基準があります。

ここでは冬季うつ病(季節型のうつ病)の診断基準を紹介します。

冬季うつ病と言えどもうつ病の一種ですので、まずはうつ病の診断基準を満たしている必要があります。ここではうつ病の診断基準としてよく用いられるDSM-5のうつ病の診断基準を紹介しましょう。

  1. 抑うつ気分
  2. 興味または喜びの著しい低下
  3. 食欲の増加または減少、体重の増加または減少(1か月で体重の5%以上の変化)
  4. 不眠または過眠
  5. 強い焦燥感または運動の静止
  6. 疲労感または気力が低下する
  7. 無価値感、または過剰・不適切な罪責感
  8. 思考力や集中力が低下する
  9. 死について繰り返し考える、自殺を計画するなど

これらの5つ以上が2週間のあいだほとんど毎日存在し、またそれによって社会的・職業的に障害を引き起こしている場合、うつ病と診断される。また、1.か2.のどちらか1つは必ず存在している必要がある。

(DSM-5 うつ病の診断基準より。一部簡略化)

次に、このうつ病エピソードが反復している事、かつ下記に示す「季節型」の特徴を満たす場合、診断基準的には季節性うつ病(冬季うつ病)の診断基準を満たすことになります。

【季節型】

A.うつ病における抑うつエピソードの発症と、1年のうち特定の時期との間に規則的な時間的関係がある(例:秋か冬における抑うつエピソードの規則的な発症)。

注)季節に関連した心理社会的ストレス因の明らかな影響が存在する場合は含めないこと(例:毎冬いつも失業している)。

B.完全寛解も1年のうち特定の時期に起こる(例:抑うつは春に消失する)。

C.最近2年間に、上記に定義される時間的な季節的関係を示す抑うつエピソードが2回起こっており、同じ期間内に非季節性抑うつエピソードは起きていない。

D.季節性抑うつエピソードは、その人の生涯に生じたことのある非季節性抑うつエピソードの数を十分上回っている。

(DSM-5 うつ病 季節型の診断基準より)

2年以上続けて、特定の季節(主に冬)に抑うつエピソードが出現しており、異なる季節では自然と改善する。それが季節以外の明らかな原因でない場合は季節性うつ病(冬季うつ病)が考えられます。

ただし、診断基準を満たすからといって必ず診断となるわけではありません。診断は精神科医の診察によってなされるものですので、正確な診断を希望される方は、一度精神科で診察を受けてください。

4.冬季うつ病の治療法

冬季うつ病の治療は、光照射療法が主な治療法となります。

光照射療法とは、2500~3000ルクス程度の照度の光を、毎朝2時間ほど照射するという治療法です。しかし現実問題として、仕事をしている方が、毎朝2時間かけて光照射治療をし続けるというのは困難であるため、5000~10000ルクスなどより高い照度で短時間(30分~1時間)照射を行うこともあります。

光照射療法の効果は、研究報告によって差がありますが、冬季うつ病患者さんのだいたい50~60%ほどに効果を認めると言われています。

光照射は朝行うことが効果的だとする報告が多いため、朝行うことが一般的です。

一般的な室内照明は、高くても1000ルクス程度であるため、光照射療法には不十分です。そのため、専用の照射器を用います。これは病院で行われることもありますが、毎朝するものですので、照射器を患者さんに購入していただくこともあります。

光照射療法以外の治療としては、一般的なうつ病と同じく、薬物療法が用いられます、SSRIを中心とした抗うつ剤や抗不安薬などで治療が行われます。

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