集合体恐怖症|ブツブツが怖いのはどうして?医師直伝の原因と克服法

「ブツブツしたものが怖くて、見ただけで気持ち悪くなる」
「イチゴやマカロニが怖くて直視できない」
「蜂の巣、蓮(ハス)のぶつぶつが怖くて視野に入ってこないか心配」

このように小さなブツブツが密集しているもの(集合体)に対して著しい恐怖を感じてしまう状態を「集合体恐怖症」と呼びます。

集合体恐怖症があっても、集合体を避けるよう気を付ける事で、何とか普通に生活できている方もいます。しかし、日常生活の中で不意に集合体が目に入ってしまう事もありますし、またそのような状況にならないか常に不安を感じながら生活していれば、生活に支障をきたしてしまうでしょう。

集合体恐怖症は、これが「疾患」だという認識を持っている方が少なく、「これは生まれつきの性格なのだ」と克服をあきらめてしまっている方が少なくありません。

しかしそれは誤解です。

集合体恐怖症は「恐怖症」という疾患の一型であり、恐怖症の治療に基づいて克服していけば、必ず日常生活に支障をきたさない程度まで恐怖を軽減させる事ができます。

ここではなぜ、集合体に強い恐怖を感じるのか、そしてその恐怖を和らげるためにはどのような方法があるのかを紹介させていただきます。

1.集合体恐怖症とはどのような疾患なのか

集合体恐怖症というのは、どのような疾患なのでしょうか。

集合体恐怖症とは、集合体に対して著しい恐怖を感じてしまい、それにより大きな苦しみと生活への支障が生じてしまう状態の事です。

「集合体」はあまり聞き慣れない言葉ですから、どういったものかイメージが沸かないかもしれません。集合体というのはその名の通り、たくさんの物体が密集している物、あるいは密集しているように見える物の事です。

集合体の具体的な例を挙げると、

  • カエルの卵
  • ハチの巣
  • 水玉模様
  • ハスの実

などがあります。これら集合体は「ブツブツ」「斑点状」と表現される事も多いため、集合体恐怖症は「ぶつぶつ恐怖症」「斑点恐怖症」と呼ばれる事もあります。

集合体恐怖症の方がこれらのものを見てしまうと、非常に強い恐怖に襲われます。またそれだけでなく震えや動悸、呼吸苦、発汗、失神などといった自律神経症状も出現する事もあります。

中には集合体を実際に見なくても、それを想像してしまうだけで症状が出てしまう人もいます。また「集合体が視野に入るのが怖い」という理由で引きこもりがちになったり、外出が出来なくなってしまう方もいます。

集合体は意外と日常生活で目にします。水玉模様の傘をさしている人、斑点模様の服を着ている人・・・、不意に視界に入ってくる可能性は十分にありますよね。

集合体恐怖症について深く理解していない方は「ならば集合体を見なければいいじゃないか」と考えるかもしれません。しかしそんなに簡単な話ではないのです。

目の前に集合体が現れた場合、集合体恐怖症の方はそれを見てしまう事で非常に強い恐怖を感じます。しかし、では「見ないようにしよう」と目を逸らせばそれで解決するわけではありません。

「見ないようにしよう」と考えた時点で、集合体を強く意識してしまうため、かえって目の前にあるであろう集合体が気になってしまうのです。「目の前に恐ろしい物体がある・・・」という恐怖から、つい集合体を視野に入れてしまい恐怖が生じてしまうのです。

2.どこからが集合体恐怖症なの?

ではどの程度まで集合体に対して恐怖を感じるようになったら集合体恐怖症になるのでしょうか。

もちろん集合体が苦手というだけで、集合体恐怖症になるわけではありません。

集合体恐怖症はDSM-5という診断基準で考えると、「限局性恐怖症(Specific Phobia)」の一型になります。

【DSM-5】

アメリカ精神医学会(APA)が発刊している、精神疾患の診断基準の手引き。アメリカに限らず、世界的に精神疾患の診断に広く使われている。

限局性恐怖症とは、ある特定の状況や対象に対して強い恐怖を感じてしまい、それによって生活に支障が生じてしまうような状態です。略して「恐怖症」と呼ばれるのが一般的です。

恐怖は様々な状況・対象に生じうるため、恐怖症の種類は非常に多岐に渡ります。

一例を挙げると、

  • 対人恐怖症・・・他者に対して著しい恐怖を感じてしまう
  • 高所恐怖症・・・高い場所に対して著しい恐怖を感じてしまう
  • 閉所恐怖症・・・閉鎖空間(密室)に対して著しい恐怖を感じてしまう
  • 先端恐怖症・・・先が鋭いものに対して著しい恐怖を感じてしまう
  • 男性恐怖症・・・男性に対して著しい恐怖を感じてしまう

などがあります。

これらの恐怖症と同じ分類の中に、集合体に対して著しい恐怖を感じてしまう「集合体恐怖症」があります。

恐怖症は、

  • 特定の状態や対象に対して、一般的な常識から考えて過剰な恐怖を感じていて
  • それによって生活に支障が生じている

の2つを満たす事で診断されます。そしてこれは、集合体恐怖症についても同様です。

つまり、集合体が苦手であってもそれが一般的な基準から考えて過剰というほどではなかったり、集合体恐怖によって生活への大きな支障が生じていない場合などは、集合体恐怖症にはならないという事です。

この場合は例え集合体は苦手であっても、治療の必要はありません。そのまま様子を見ていて大丈夫でしょう。

しかし集合体に対して著しい恐怖を感じていて、それによって日常生活に支障が出ている(例えば仕事や外出などの必要な活動が出来ない、など)場合は「恐怖症」の診断基準を満たすと考えます。

そして過剰な恐怖を感じていて、なおかつ生活への支障が生じている場合というのは、その恐怖に対して治療を行った方がメリットが高いと考えられるため、適切な治療を行う必要があります。