メンタルが弱いという方にお勧めしたいストレス耐性を高める4つの方法

こころの病気の多くはストレスが一因となるため、

「メンタルが弱い自分を変えたい」
「ストレス耐性を高めたい」

診察時にこのような相談を頂く事があります。

メンタルは弱いよりも強いに越したことはありません。ストレス耐性が低いよりも高いに越したことはありません。メンタルを強くする工夫やストレス耐性を高める工夫はぜひ多くの方に実践して頂きたい事なのですが、どうすればそれが達成できるのかが分からない方は多いようです。

中にはメンタルの強さやストレス耐性は生まれつきのものだと諦めてしまっている方もいらっしゃいます。

しかし「メンタル」や「ストレス耐性」の意味を正しく理解し、それを高めるにはどうすればいいのかを考えていく事で、これらの能力は誰でも高める事が出来ます。

今日はメンタルを強くする方法・ストレス耐性を高める方法について考えてみたいと思います。

1.メンタルが弱いというのはどういう事なのか

「あいつはメンタルが弱い」
「メンタルが強くないとこの仕事は務まらないよ」

このように日常生活で「メンタル」という用語は、普通に用いられています。

しかしこの「メンタルが強い」「メンタルが弱い」というのは、具体的にどのような状態を指しているのでしょうか。

漠然と「自分のメンタルは弱い」と悩んでいる方は多いですが、具体的に目指すべき「メンタルが強い」というのはどういう状態なのかをはっきりと理解しているでしょうか。それを理解せずに悩んでいるのであれば、向かうゴールが不明確でありメンタルを強くする事は困難でしょう。

「メンタル(Mental)」は「こころ、精神」と訳され、気持ちや意欲・考え方などといった精神的な活動を表します。正常であれば、人は誰もがより良く生きていくために前向きな気持ちや意欲・考え方を持っています。

このメンタルは、「ストレス」というものによってダメージを受けます。ストレスというのは「その人が不快と感じる刺激」の事で、どんなものであってもその人が不快だと感じればストレスになります。

ストレスは、

  • 過剰な活動(深夜までの残業、休日出勤など)
  • 少ない睡眠時間
  • ひどい騒音やひどい異臭
  • 他者からの否定的な言動(叱責や悪口など)

といった万人にとって共通する不快な刺激もあれば、

  • ある食べ物の匂い
  • ある性格傾向を持つ人との付き合い
  • 特定の状況

といったある人は不快と感じなくても、別の人は不快と感じるような個人差のある刺激もあります。

ストレスが何もない状態では、メンタルが強い人も弱い人も精神的活動に大きな違いはありません。しかしストレスを受けた時に、メンタルの強い人は精神的活動が障害を受けにくいのに対して、メンタルの弱い人は精神的活動に障害を受けやすいという差が出てきます。

つまり「メンタルが弱い」というのは、ストレスによってこころがダメージを受けた時に、深く・長くダメージを受けてしまう事になります。

メンタルの弱い方というのは、ストレスにとって精神がダメージを受けやすいため、メンタルが強い方と比べると精神的活動の低下(気持ちが落ち込む、意欲が低下する、マイナスな考え方になってしまうなど)が出現しやすく、生活への支障も生じやすい傾向があります・

このようにメンタルが弱いというのは、ストレスを受けた時にそれに抵抗する力が低いという事であり、これは「ストレス耐性が低い」という言い方もできます。

2.メンタルが強いというのはどういう事なのか

前項では「メンタルが弱い(=ストレス耐性が低い)」というのはどのような状態を指すのかという事を考えてみました。

では次に、みなさんが目指す「メンタルが強い」というのはどのような状態なのかも考えてみましょう。

メンタルが強いというのは、ストレスを受けた時に精神的活動が障害を受けにくい事です。

つまり、ストレスでこころがダメージを受けそうになっても、そのストレスを上手に処理することで、ダメージを軽減させ、精神的活動の低下を生じさせにくいような人の事です。

ストレスを上手に対処できるため、ストレスがこころを襲ったとしても、気持ちが落ち込んだり、意欲が低下したり、考え方がネガティブになったりということが生じにくく、これはストレスに抵抗する力が強いという事から「ストレス耐性が高い」という言い方もできます。

ここで間違ってはいけないのは、「メンタルが強い(=ストレス耐性が高い)」というのは、「ストレスを感じない」事ではありません。

例えば、

  • 人から悪口を言われても全く不快に思わない
  • 自分にとって大切な人が亡くなっても全く動じない
  • 明らかに身体を壊すくらいの仕事量を振り分けられても全く問題と感じない

という状態であれば、確かにストレスは感じていないのかもしれませんが、これは正常な感情を持つ人間が出来るわけがありません。万が一、このように「ストレスを感じない」という事が可能であったとしても、これはこれで別の問題が生じてしまいます。

ストレスというのは、そもそも私達の心身に害を与えるだけのものではありません。不快な刺激を「このままだとまずい事になるよ」と感知し心身にストレスを生じさせることよって、危険信号を送ってくれているのです。

例えば今の仕事に対して非常にストレスを感じているのであれば、「この仕事をこのまま続けていると心身が壊れてしまうよ」と危険信号を送ってくれているのです。その危険信号を全く感知しないようであれば、確かにストレスは感じないかもしれませんが、別の問題が生じてしまう事は明らかです。

「メンタルを強くしたい」と考えた場合、目指すべきゴールは「ストレスを感じなくなる」事ではありません。ストレスを受けた時、それをストレスだとしっかり認識したうえで、上手に対処できるようになる事です。

ここを間違えずに「メンタルを強くする」「ストレス耐性を高める」事を目指していかないといけません。

3.ストレスを上手に対処する4つの方法

ストレス耐性を高めるためには、ストレスを受けた時にそれを上手に対処できるようになる事が必要です。

ではそれは一体どうすれば可能になるのでしょうか。具体的な方法を考えてみましょう。

生きていればストレスは必ず受けるものです。そのため、「ストレスをゼロにする」事はできません。「ストレスを減らす事」は工夫しても良いですが、「ストレスをゼロにする事」は不可能ですので、そのような工夫はすべきではありません。

「生きていればストレスはあるものなのだ」と考え、上手に対処していくという視点でストレスと向き合っていきましょう。

ストレスが私達のこころを襲ってきた時、それを対処するためには実は2つの方法しかありません。

それは、

  • 耐える(防御する)
  • 受け流す(よける)

の2つで、私達はストレスを感じた時、このとちらかの方法を使って対処していく事になります。

ではストレスを上手に対処する方法を1つずつみていきましょう。

Ⅰ.耐える

ストレスを耐える(防御する)方法は、特に大きな工夫もなく出来る方法であるため、多くの人が実践している方法です。しかしこの方法はあまりお勧めできません。

なぜならば、私達は無限にストレスをため込むことができないからです。ため込める事の出来るストレス量には必ず上限があります。ため込めるストレスの量には個人差はあるものの、そう大きくは変わりません。誰でもストレスをため続けていると、いずれこころが壊れてしまいます。

また、ため込んだストレスは自然と消えていく事はありません。適切に発散・解消をしないと自分のこころの中にどんどん蓄積されていき、総量が上限を超えてしまうとうつ病や心身症などのこころの病気を発症してしまいます。

そのため、この「耐える」という方法は、どうしても他の方法が使えない時のみ使うべき方法となります。

そして忘れてはいけないのが、耐える事でストレスを自分の中にため込んだら、必ずため込んだストレスを発散・解消する場を持つようにしましょう。

Ⅱ.受け流す:その①見方を変えてみる

ストレスは無限にため込む事はできません。また、ため込めるストレスの量は多少の個人差はあるものの、そう大きくは変わりません。ストレスを「耐える」という方法だけで対処しようとすると、すぐに破綻してしまいます。

現実的にはストレスを「耐える」という方法で乗り切らざるを得ない状況もあるとは思いますが、「耐える」という方法は極力使わず止むを得ない状況に限るべきです。

ストレスを上手に対処する方法は、ストレスを「耐える」のではなく、「受け流す」事になります。

基本的には、ストレスを「受け流す」力を高める事が、メンタルを強くする事・ストレス耐性を高める事につながります。

事実、「メンタルが強い」「ストレス耐性が高い」と考えられている人のほとんどは、ストレスに耐える力が強いというよりもストレスの受け流し方が優れています。

ではストレスを受け流す方法にはどのようなものがあるでしょうか。

比較的簡単に出来る方法としてまずおすすめしたいのが、「物事の見方を変えてみる」という方法です。

ストレスを感じるような出来事に遭遇したとき、そのストレス因を「不快な刺激」として認識するか「不快ではない刺激」として認識するのかは、実はその人の感じ方次第です。という事は、自分の感じ方を変える事が出来れば、今まではストレスであった刺激もストレスでなくなるという事なのです。

例えば、職場の同僚があなたに仕事を押し付けて先に帰ってしまったという状況を考えてみて下さい。

この時、「同僚が私に仕事を押し付けて先に帰った」という見方をすると、これは不快な刺激(=ストレス)です。

しかし、実はその同僚の家族が交通事故に遭って病院に運ばれたという事実があったらどうでしょうか。同僚は慌てて病院に向かったため、あなたに事情の説明できなかったのかもしれません。このような事実を知った上で「同僚が先に帰った」という出来事を見れば、「それは仕方ないよね」という見方に変わるのではないでしょうか。見方が変わるだけで、不快だった刺激(ストレス)は、不快ではない刺激に変わります。

このように同じような刺激を受けたとしても、その刺激のとらえ方によって受けるストレスは大きく異なってくるのです。

これと同じような考えで、ストレスに感じるような不快な刺激を受けた時、それをあまりストレスと感じないような刺激に変える事が出来ないかと考えてみる事は非常に有用です。

仕事で上司に怒られてストレスを感じた時、「上司は自分の事が嫌いで腹いせに怒っているのだ」と見てしまえば、これは大きなストレスになります。しかし「怒るのもエネルギーがいる事だけど、上司は私にわざわざ時間を割いて叱ってくれている、ありがたいことだ」と考えたり、「上司も上層部からプレッシャーをかけられていて大変なのだろう」と相手の立場になって考えてみれば、同じ「上司に怒られた」という出来事でもストレスに感じるかどうかはだいぶ異なってきます。

このように、ある出来事を「不快ではない刺激」に変えるための考え方が出来ないかを考えてみる事はメンタルを強くするためにとても重要です。

Ⅲ.受け流す:その②一人で抱え込まない

ストレスを受け流すためにもう1つ覚えて欲しいのが、「ストレスを吐き出してしまう」という方法です。

これは具体的には、誰かに話を聞いてもらったり、相談に乗ってもらったりするという事です。

私達人間にとって、最大のストレスは「孤独」だとも言われています。辛い状況にある時、全てを一人で抱え込み、誰にも助けを求めない事はそれ自体が更なるストレスとなります。

他者に相談しても解決しないような事もありますが、そんな中でも「誰かに話を聞いてもらう事」「自分は一人ではないと感じること」は非常に大切で、これにより安心感を得る事が出来ます。

ストレスとなるようなつらい事があった場合は、自分ひとりで抱え込まずに周囲に相談し、ストレスを吐き出すことが大切です。

Ⅳ.受け流す:③完璧を目指さない

ストレスをため込みやすい性格傾向として、

  • 神経質
  • 完璧主義

が挙げられます。

このような性格傾向の方は、良い面もたくさんあるのですが、ストレスはため込みやすい傾向があり、こころの病気にもかかりやすい傾向があります。

何事も完璧にやろうとすればストレスがかかります。なぜならば、私達人間は完璧ではないからです。完璧ではない者が完璧を目指すという事はそもそもが矛盾している行動であるため、大きなストレスとなります。

反対に、

  • マイペース
  • 要領が良い

といった性格傾向の方は、ストレスをため込みにくい傾向があります。

「まぁ、いっか」とある程度の気楽さを持っていた方が、ストレスも受け流しやすいのです。