スルピリドとは 【医師が教える抗うつ剤のすべて】

スルピリド

「スルピリド」という用語は、ドグマチールというおくすりの一般名を表しています(一般名:国際的に決められた薬物の名前のこと)。

また最近ではジェネリック医薬品の名前に一般名をつけることが通例となっており、「スルピリド」というとジェネリックを指していることがほとんどです。

この記事を読まれている方も「ジェネリック医薬品のスルピリド」を調べてこの記事にたどり着いた方が多いと思います。

ここではジェネリック医薬品「スルピリド」についてお話します。また、「一般名:スルピリド」についてもちょこっとお話します。

ちなみに、ドグマチールのジェネリックですから、効果や副作用などすべてドルマチールと同じです。より詳しく知りたい方は、ドグマチールの記事も合わせてご覧ください。

ドルマチールの全て【医師が教える抗うつ剤のすべて】

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1.スルピリドはどんなおくすりなの?

スルピリドは、「ドグマチール」というおくすりのジェネリック医薬品です。
最近のジェネリック薬は「一般名+会社名」という名称にすることが通例となっており、
一般名である「スルピリド」がおくすりの名前になっているのです。

これは、次々とジェネリック薬が発売されている現状で、
ジェネリック薬があまりに多くなりすぎて現場が混乱しているため、
名称を統一して混乱や投与ミスをなくすという狙いがあります。

ちなみに一般名というのは、国際的に決められたお薬の名前のことで、全世界でほぼ共通の名称です。

具体的には、

  • スルピリド「サワイ」
  • スルピリド「アメル」

などのジェネリックがあります
どれも、効果や副作用などの薬効はドグマチールと同等です。

スルピリドは面白い作用を持つおくすりです。
その作用機序は、ドーパミンをブロックすることなのですが、これにより

  1. 抗うつ剤
  2. 抗精神病薬(統合失調症の治療薬)
  3. 胃薬

の3つのはたらきを持ちます。

それぞれを詳しくみてみましょう。

Ⅰ.抗うつ薬としてのスルピリド

実は、スルピリドがうつ病に効く理由は完全には分かっていません。

そもそもうつ病に効果があるためには、ドーパミンが増えないといけないはずですが、
スルピリドはドーパミンをブロックしてしまいます。

抗うつ剤は全て、ドーパミンなどのモノアミンを増やすことで抗うつ効果を発揮します。
モノアミンを遮断する抗うつ剤などありません。

いくつかの仮説があり、それを紹介すると、

・少量のスルピリドを投与するとドーパミン自己受容体を遮断し、
それが結果的にドーパミンの分泌を増やすのではないか

・ノルアドレナリン神経にあるD2受容体を遮断することで、
ノルアドレナリンを増やすのではないか

・エビリファイなどと同じく、ドーパミンの部分作動薬としての働きがあり、
そのために少量のスルピリドを投与するとドーパミンが増えるのではないか

などと言われています。

正確には解明されていませんが、少量のスルピリドを投与すると
抗うつ効果があることは間違いなく、しばしばうつ病治療に使われています。

 

Ⅱ.抗精神病薬としてのスルピリド

抗精神病薬というのは「統合失調症の治療薬」のことです。

統合失調症は脳内ドーパミンが出過ぎていることが一因と考えられています。
そのため、ほとんどの抗精神病薬はドーパミンを遮断するはたらきがあります。

スルピリドも脳のD2受容体を遮断することで統合失調症に効果を示します。

ただしスルピリドの脳へのD2受容体遮断作用は弱いため、
統合失調症の治療に使う場合は高容量が必要です。
(添付文書的には300-600mg。最高1200mgまで)

そうなると副作用が出てしまうことも多いため、優れた抗精神病薬が多くなってきた現在においては
統合失調症の治療にスルピリドを使う機会は少ないのが現状です。

Ⅲ.胃薬としてのドグマチール

胃などの消化管にあるD2受容体(Dとはドーパミンのこと)をブロックすることで、
消化管運動が改善すると考えられています。

その作用は強くはないため、本格的な胃潰瘍に使うことはあまりありません。
抗うつ効果もあることから、心因性も関係してそうな胃腸症状に使うことがあります。

2.スルピリドの副作用

スルピリドは抗うつ剤として使われる頻度が一番多いため、
他の抗うつ剤との比較という視点で説明させていただきます。

全てのくすりに言えることですが、どんなくすりでも副作用があります。
一般的に安全と思われている漢方薬にだって、副作用の報告はいくつもあるのです。

スルピリドの副作用は、決して多くはありませんが、
作用機序が独特であるため、他の抗うつ剤には無い副作用が時に起こり得ます。

ここでは、スルピリドの副作用のうち、特に注意すべきものや
臨床で特に見ることの多い副作用を紹介します。

前述の通り、スルピリドは抗うつ剤と抗精神病薬両方のはたらきを持つため、
両方の副作用が出てしまいます。

そのため、時としてスルピリドは統合失調症のくすりと同じ副作用が起き得るのです。
これが他の抗うつ剤の副作用との最大の違いです。

具体的なものとしては、

  • 錐体外路症状
  • 乳汁分泌(プロラクチン上昇)、性機能障害
  • 食欲亢進、体重増加

などがあります。

反面で、他の抗うつ剤に多く認められる、口渇・便秘、ふらつき・めまい、吐き気、眠気などは
少なめです(起こさないわけではありません)。

 

では、それぞれを詳しくみてみましょう。

1.錐体外路症状(EPS)

脳のドーパミンが過度にブロックされることで起こる身体の不随意運動です。
(不随意運動:自分の意志によらず、勝手に身体が動いてしまうこと)

指先がふるえたり、腕をクネクネと動かしたり、唇や舌をモゴモゴ動かしたり、などと
様々な症状があります。

有名な症状として、

  • ジスキネジア:口や舌などをモゴモゴと動かす
  • アカシジア:ソワソワ、ムズムズと落ち着かず、じっとしていられなくなる

などがあります。

これらの錐体外路症状が出現してしまったら、
スルピリドを減量あるいは中止することが無難でしょう。

引き続き抗うつ剤加療が必要なのであれば、別の抗うつ剤を検討してください。

抗コリン薬(アキネトン、アーテンなど)という、錐体外路症状を和らげるおくすりもありますが、
抗コリン薬は抗コリン薬で副作用があり、漫然と続けない方がいいおくすりです。

おくすりの副作用をおくすりで抑えるのも不自然ですし、
よほどスルピリドを使わないといけない状況でない限りはお勧めできません。

2.乳汁分泌

スルピリドが、プロラクチンという乳汁を出すホルモンを増やしてしまうために
起こる副作用です。

男女ともに起こりえます。
突然胸から乳汁が出るため、驚く方も多いようです。

ただ、胸から乳汁が出るだけならまだいいのですが、これはホルモンバランスの崩れが原因ですから、
これは無月経や性機能障害の原因にもなり得ます。

乳汁分泌が起きた場合は、まずはプロラクチンの上昇が原因なのかを採血で確認します。
採血でプロラクチン値を測定し、高ければスルピリドによる高プロラクチン血症が疑われます。

対応策は、やはりまずはスルピリドを減薬あるいは中止し、
別の抗うつ剤に切り替えることです。

ドーパミンアゴニスト(ドーパミン受容体刺激薬)と呼ばれるおくすりを使うと、
プロラクチンの値を下げることは可能ですが、これも滅多に併用することはありません。

3.食欲亢進、体重増加

重篤な副作用ではないものの、スルピリドで一番頻度の多い副作用です。

スルピリドは最初は「胃薬」として発売されたおくすりです。
胃薬として使われているうちに、精神にも作用があることが分かったおくすりなのです。

胃腸の動きを良くするため、食欲が上がります。
そして食べる量が増えれば、体重も増えてしまいます。

食欲亢進に対する対処法としては、まずは「食べるのを我慢する」意識が大切です。

これはおくすりの副作用で食欲が人工的に上がっているんだ。
だから、ここで欲求のままに食べてしまうことは非生理的であまりよくないことなんだ、
と考え、なるべく我慢するようにしてください。

また当たり前の対策なんですが、適度な運動も体重増加を抑えるには有効です。

それでも抑えられない時は、他の抗うつ剤への変薬になります。
ほとんどの抗うつ剤で体重増加の可能性はあるのですが、スルピリドの体重増加と
その他の抗うつ剤の体重増加はその機序が違います。

スルピリドは消化管運動が良くなって食欲が上がります。
他の抗うつ剤は、抗ヒスタミン作用というもので食欲が上がります。

機序が違うため、抗うつ剤を別のものに変えれば、食欲亢進の程度が
改善する可能性はあります。

ただし、もちろん悪化してしまう可能性もありえますので、
比較的抗ヒスタミン作用が弱いものを選択するとよいでしょう。

具体的に言うと、ジェイゾロフトやサインバルタあたりでしょうか。

 4.その他の副作用

その他の副作用も報告はたくさんありますが、頻度はそこまで多くはありません。

特に、

  • 眠気
  • 口渇、便秘
  • ふらつき、めまい
  • 吐き気

などは、SSRIやSNRI、三環系などの他の抗うつ剤に見られる副作用ですが、
スルピリドではあまり認めません。

副作用の総評

一通りの説明が終わったところで、もう一度他抗うつ剤との比較をみてみましょう。
なおスルピリドはドグマチールのジェネリックですので「ドグマチール=スルピリド」と考えてご覧ください。

抗うつ剤口渇,便秘等フラツキ吐気眠気不眠性機能障害体重増加
トリプタノール++++++±+++-++++
トフラニール+++++±++++++
アナフラニール++++++++++++
テトラミド++-++--+
デジレル/レスリン++-++-+++
リフレックス-++-+++--+++
ルボックス/デプロメール++++++++++
パキシル+++++++++++++
ジェイゾロフト±+++±+++++
レクサプロ++++±+++++
サインバルタ+±++±++++±
トレドミン+±++±+++±
ドグマチール±±-±±++

スルピリドの副作用は全体的に軽度であることが分かるでしょう。

しかし説明したように、「錐体外路症状」「乳汁分泌」などの抗精神病薬で起こり得る副作用が
出る可能性があります。

  

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4.スルピリドの薬価

ドグマチール錠(正規品)        100mg    19.00円
ドグマチール錠(正規品)          200mg    26.80円

スルピリド錠(ジェネリック)   100mg   6.3~6.5円
スルピリド錠(ジェネリック)   200mg   6.5~7.9円

ドグマチールは元々が非常に安いおくすりです。

うつ病では150-300mg(最大600mgまで可)
統合失調症では300-600mg(最大1200mgまで可)
胃潰瘍では150mg
が一日量です。

SSRIやSNRIなどの抗うつ剤と比べるとかなり安価です。
SSRIは最大量で使うと一日400円近くですが、ドグマチールは300mgで50-60円です。

ジェネリックのスルピリドになると、これがさらに安くなります。

ちなみにジェネリックの薬価は各製薬会社によってバラツキがありますが、効果はどれも変わりません。

5.一般名:スルピリドとは?

ジェネリック薬が「一般名+会社名」という名称になったため、
一般名を目にする機会が増えてきました。

ちなみに一般名というのは、その薬物の国際的な名称のことです。

優れたお薬は、日本だけでなく全世界で使われています。
となると全世界で共通の薬物の名称が必要になります。
それが一般名なのです。

つまり、スルピリド(Sulpiride)と言えば海外の医師にも通じますし、
論文や専門誌など多くの国の医師が見る可能性のあるものにはすべて「Sulpiride」と書かれています。

対して「ドグマチール」というのは商品名で、発売しているアステラス社が
販売する際に独自につけたスルピリドの名称です。

なぜ「ドグマチール」という名前をつけたのかは分かりません。
「ドグマ」が「教義・教理」という意味ですが、これは関係しているのかもしれません。

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