セルトラリンの副作用と対処法【医師が教える抗うつ剤の全て】

セルトラリンは「ジェイゾロフト」という抗うつ剤のジェネリック医薬品で、2015年から発売されています。抗うつ剤の中でもSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)という種類に属し、主にセロトニンを増やすことで気分を改善させてくれるお薬です。

セルトラリンはジェイゾロフトを同じくSSRIの中でも穏やかに効き、副作用も少ないお薬です。このような安全性の高さから、処方される頻度も多い抗うつ剤になります。

しかし副作用が生じないわけではありません。お薬である以上副作用が生じるリスクはあり、副作用に注意をしながら服薬を続けていく必要があります。

今日はセルトラリンの副作用やその対処法について、他の抗うつ剤と比較しながら見てみましょう。

1.セルトラリンの副作用の特徴

副作用の無いお薬などはありません。どんなお薬にも副作用はあります。

お薬を服薬する上で大切なことは、ただ漠然と副作用を怖がるのではなく、そのお薬のメリット(効果)とデメリット(副作用)をしっかりと理解することです。その上で自分にとってそのお薬が必要なのかをしっかりと考え、必要だと判断されたのであれば副作用に注意しながら服薬を前向きに検討する事です。

本当はお薬が必要な状態なのに副作用が怖いからとお薬を使わずに経過してしまうと、病気が慢性化したり悪化してしまうこともあります。これではお薬の副作用は避けられたかもしれませんが、病気の症状に苦しむことになってしまいます。

セルトラリンは穏やかに効くお薬で、抗うつ剤の中でも副作用が少なく安全性が高いお薬になります。しかしお薬である以上、副作用がないわけであありません。

セルトラリンで報告されている副作用を全て紹介しようとすると、かえって分かりにくくなってしまいますので、このコラムでは、

  • 比較的頻度の多い副作用
  • 特に注意していただきたい副作用

を中心に紹介させて頂きます。

まずはざっくりとセルトラリンの副作用のイメージについて紹介します。セルトラリンの副作用は、

  • 抗うつ剤の中では副作用は少なめ
  • 性機能障害(勃起障害・射精障害)が他のSSRIと比べて多め
  • 下痢を起こすことがある(他の抗うつ剤はほとんど便秘になる)

などの特徴があります。

また、セルトラリンをはじめとしたSSRIで生じることの多い副作用には、

  • 抗コリン作用(口渇、便秘、尿閉など)
  • ふらつき、めまい
  • 吐き気
  • 眠気、不眠
  • 性機能障害
  • 体重増加

などが挙げられます。セルトラリンでもこのような副作用に注意しながら服用していく必要があります。

では副作用をひとつずつ詳しく見ていきましょう。

2.セルトラリンの各副作用について

それではセルトラリンで生じうる副作用や注意すべき副作用を紹介していきます。

抗うつ剤はどれも似たような副作用が多く認められるため、他の抗うつ剤とも比較しながら紹介していきます。

ちなみに比較する抗うつ剤としては、三環系抗うつ剤、四環系抗うつ剤、SSRI、SNRI、NaSSAなどがあります。それぞれの抗うつ剤の簡単な特徴を紹介します。

【三環系抗うつ剤】
1950年頃より使われている一番古い抗うつ剤。効果は強いが副作用も強い。重篤な副作用が生じる可能性もあるため、現在ではあまり用いられない。
商品名として、トフラニール、アナフラニール、トリプタノール、ノリトレン、アモキサンなど。

【四環系抗うつ剤】
三環系抗うつ剤の副作用を減らすために開発された抗うつ剤。副作用は少なくなったが抗うつ効果も弱い。しかし眠り深くする作用に優れるものが多いため、睡眠を補助する目的で処方されることがある。
商品名としては、テトラミド、ルジオミールなど

【SSRI】
落ち込み・不安を改善させる「セロトニン」を集中的に増やす事で抗うつ効果を発揮するお薬。効果の良さと副作用の少なさのバランスが取れている。
商品名としては、パキシル、ジェイゾロフト(セルトラリン)、ルボックス・デプロメール、レクサプロなど

【SNRI】
セロトンに加え、意欲を改善させる「ノルアドレナリン」も増やすことで抗うつ効果を発揮するお薬。SSRIと同じく効果の良さと副作用の少なさのバランスが取れている。
商品名としては、トレドミン、サインバルタ、イフェクサーなど。

【NaSSA】
SSRI/SNRIとは異なる機序でセロトニン・ノルアドレナリンを増やす。四環系の改良型であり、眠りを深くする作用にも優れる。効果の良さと副作用の少なさのバランスが取れている。
商品名としては、リフレックス、レメロンなど。

Ⅰ.便秘、口渇、尿閉(抗コリン作用)

抗コリン作用とは、アセチルコリンという物質の働きを阻害してしまうことで生じる副作用で、便秘、口渇(口の渇き)、尿閉(尿が出にくくなる)などがあります。他にも、顔面紅潮、めまい、悪心、眠気などが生じることもあります。抗うつ剤に認められる代表的な副作用の1つです。

抗コリン作用がもっとも強い抗うつ剤は三環系抗うつ剤になります。また四環系抗うつ剤も三環系ほどではないにせよ、抗コリン作用を認めます。

セルトラリンをはじめとしたSSRIは、三環系抗うつ剤と比べると抗コリン作用はかなり軽減しています。更にSSRIの中でも、セルトラリンは抗コリン作用が少なめになります。反対にSSRIの中でもパキシルやルボックス・デプロメールは抗コリン作用が比較的多いと言われています。

他に抗コリン作用が弱い抗うつ剤として、NassaやSNRI、ドグマチールなどがありますので抗コリン作用がつらい場合は、これらのお薬に変更するのも手になります。

抗コリン作用がつらい場合は、

  • 抗コリン作用の少ない抗うつ剤に変更する
  • 抗うつ剤の量を減らす
  • 抗コリン作用を和らげるお薬を試す

などの方法がとられます。

抗コリン作用を和らげるお薬として、

  • 便秘がつらい場合は下剤
  • 口渇がつらい場合は漢方薬(白虎加人参湯など)、
  • 尿閉がつらい場合はベサコリン、ウブレチドなどの尿の排出を助けるお薬

などが用いられます。

ちなみに抗コリン作用は便秘を生じさせますが、一方でセルトラリンは下痢という副作用が生じる可能性もあります(これは抗コリン作用とは異なるはたらきによります)。

そのためセルトラリンは、 服用によって便秘になる人もいれば下痢になる人もいます。両方がちょうど釣り合って便通の副作用が出ない方もいます。

Ⅱ.ふらつき・めまい(α1受容体遮断作用など)

これは抗うつ剤がα(アドレナリン)1受容体という部位を遮断し、血圧を下げてしまうために起こる副作用です。またセロトニンやヒスタミンという物質をブロックすることによって眠気が生じることも一因となることもあります。

ふらつきやめまいも三環系抗うつ剤そして四環系抗うつ剤で多く、SSRIでは大分軽減されています。SSRIの中ではセルトラリンのα1受容体遮断作用はやや少なく、これもやはりパキシルで比較的多く見られます。

Nassaはα受容体遮断作用は弱いのですがヒスタミンをブロックする作用が強く、これが眠気を引き起こすためにふらつきめまいが生じることがあります。またデジレル・レスリンという抗うつ剤は5HT(セロトニン)2A受容体という神経興奮をさせる受容体を遮断するため、鎮静させ、ふらつきやめまいを生じさせます。

一方SNRIは血圧を上げる働きがあるため、めまいやふらつきが起こる頻度は少ない印象があります。

ふらつき、めまいがつらい場合も、

  • ふらつき、めまいの少ない抗うつ剤に変更する
  • 抗うつ剤の量を減らす
  • α1受容体遮断作用を和らげるお薬を試す

などの方法がとられます。

お薬としては主に昇圧剤(リズミック、アメジニンなど)が用いられることがあります。

Ⅲ.吐き気(セロトニン3刺激作用)

SSRIには吐き気や胃部不快感といった胃腸障害の副作用がつきものです。

これは、胃腸にもセロトニン受容体が存在するために起こる副作用です。胃腸にはセロトニン3受容体が分布しており、抗うつ剤の内服によってこの受容体が刺激されることで、吐き気が起きます。

SSRIはすべて、この吐き気を高頻度で起こしえます。セルトラリンもその頻度は決して低くはなく、「吐き気は起きるだろう」くらいの気持ちを持って内服を始めた方が無難です。

しかし、この副作用は長くは続かないことがほとんどです。1~2週間我慢すれば、ほとんどの場合で自然と改善します。そのため「我慢する」ことが一番の対応策になります。

どうしてもつらい場合は胃薬を併用することもあります。

ガスモチンやソロン、ムコスタなどの胃腸薬、タケプロン、ネキシウムなどの胃酸の分泌を抑えるお薬が使われることがあります。

Ⅳ.眠気(抗ヒスタミン作用)

眠気はほぼ全ての抗うつ剤に起こりうる副作用です。抗うつ剤は心身をリラックスさせるはたらきがあります。心身がリラックスすれば眠くなりますので、この副作用は当然と言えば当然の副作用になります。

坑うつ剤の中でも鎮静系抗うつ剤と呼ばれるものがあり、これらは眠気の程度が強めの抗うつ剤になります。具体的にはNassaや四環系抗うつ剤、デジレル・レスリンなどが鎮静系になります。

これらのお薬は眠気が生じて困ることもあるのですが、一方でこの副作用を逆手にとって不眠症状を改善させることもできます。そのため不眠が強いうつ病の方にはあえて眠気が出ることを狙って鎮静系抗うつ剤を処方することもあります。

セルトラリンの眠気は比較的弱いと言えますが、それでも出る人には出ます。

対処法としては、

  • 眠気の少ない抗うつ剤(SNRIなど)に変更する
  • 抗うつ剤の量を減らす
  • 睡眠環境を見直す

などがあります。

Ⅴ.不眠(セロトニ2刺激作用)

SSRIやSNRIは深部睡眠(深い眠り)を障害するため、不眠を起こす事があります。セルトラリンも例外ではなく、深部睡眠が障害される可能性があります。

「眠気」と「不眠」両方の副作用があるので、「意味が分からない」と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。これは、「眠くはなるけど、浅い眠りになってしまう」ということです。

この副作用はセロトニンに選択的に作用するSSRI、SNRIでより多く認められ、次いで三環系に認められます。

反対に、四環系やデジレル、Nassaなどの鎮静系坑うつ剤は、深部睡眠を促進することが分かっています。眠くはなるけど、深い眠りを導いてくれますので、不眠の副作用はあまり認めません。

不眠で困る場合は、服薬時間を朝食後などにすると改善することがあります。

あるいはセルトラリンの量を減らせそうであれば、減らすのも手です。

それでも改善が得られない場合は鎮静系抗うつ剤に変えたり、少量の鎮静系抗うつ剤を上乗せすると改善することもあります。鎮静系抗うつ剤は深部睡眠を促進するため、セルトラリンの不眠の副作用を打ち消してくれる可能性があるからです。

Ⅵ.性機能障害(セロトニン2A刺激作用)

勃起障害や射精障害と言った性機能障害もSSRI、SNRIに多い副作用です。この原因は詳しくは分かっていませんが、セロトニンが関与していると言われています。

性機能障害はデジレル・レスリンでも多く認められますがこれらでは「持続勃起症」という副作用になり、他の抗うつ剤で認められる性機能障害とはやや異なります。また三環系抗うつ剤も性機能障害は起こしますが、SSRI、SNRIよりは頻度は少なくなります。

反対に、四環系抗うつ剤やNassaは、性機能障害をほとんど起こしません。

SSRIの中でも、セルトラリンの性機能障害は頻度が多いとする報告もあります。

性機能障害は、相談しずらい症状であるため見逃されがちですが、この副作用で非常に困っている方もいらっしゃいます。

例えば、性機能障害で夫婦生活に溝ができてしまい、家庭の雰囲気がなんかギスギスしてしまうようになった。と相談されたこともあります。これは重大な問題です。家庭がリラックスできる状況でなくなれば、うつ病の治りが遅くなってしまうのは明らかです。

相談しずらいことかもしれませんが、困っていることは主治医に相談しましょう。

具体的な対処法としては、抗うつ剤の減量あるいは変薬になります。

Ⅶ.体重増加(抗ヒスタミン作用)

体重増加は眠気と同じく主に抗ヒスタミン作用で生じるため、眠気の多いお薬は体重も増えやすいと言えます。

具体的にはNassaで多く認められ、三環系抗うつ剤やパキシルもそれに続きます。

セルトラリンは体重増加の副作用はあまり強くはありません。むしろ初期には下痢などの副作用も重なり体重が少し減ることもあります。しかし、長期間内服を続けると、セルトラリンでも太ってしまうことは少なくありません。

抗うつ剤は長期間飲むことが多いお薬ですので、そう考えると出現する頻度は決して少なくないと言えます。

運動や規則正しい食事などの生活習慣の改善で予防するのが一番ですが、それでも十分な改善が得られない場合は、他剤に変更するもの手になります。

体重を上げにくいという面でいえば、サインバルタなどのSNRIが候補に挙がります。

3.セルトラリンの副作用 他剤との比較

一通りの説明が終わったところで、もう一度他抗うつ剤との比較をみてみましょう。

抗うつ剤口渇,便秘等フラツキ吐気眠気不眠性機能障害体重増加
トリプタノール++++++±+++-++++
トフラニール+++++±++++++
アナフラニール++++++++++++
テトラミド++-++--+
デジレル/レスリン++-++-+++
リフレックス-++-+++--+++
ルボックス/デプロメール++++++++++
パキシル+++++++++++++
ジェイゾロフト±+++±+++++
レクサプロ++++±+++++
サインバルタ+±++±++++±
トレドミン+±++±+++±
ドグマチール±±-±±++

セルトラリンはジェイゾロフトという抗うつ剤のジェネリック医薬品ですので、この表では「ジェイゾロフト」の欄をご覧ください。

全体的に副作用は少ないことが分かります。SSRIの中でも副作用は少なめです。ただし性機能障害は多剤と比較して生じやすい傾向があります。

4.未成年への投与は?

セルトラリンの未成年への投与は効果が確立していないため、「安易に使用しないように」「できる限り使用しないように」という位置づけになります。これはほかの抗うつ剤も同じです

やむを得ない際には使うこともありますが、なるべく環境調整やカウンセリングなど、抗うつ剤以外の方法で改善を図りたいところです。

ただしマイルドに作用するセルトラリンは、抗うつ剤の中では未成年に比較的使いやすい抗うつ剤ではあります。