うつ病における寛解・回復、再燃・再発って何が違うの?

うつ病における寛解

うつ病をはじめとした精神疾患の治療にはある程度の時間がかかります。

このように経過の長い疾患をしっかりと治すためには、今は疾患の経過中のどのあたりにいるのかを治療者と患者さんがそれぞれ正しく把握しておく事が欠かせません。

そのため、疾患の経過や治り具合を表す医療用語がいくつかあります。しかしこれはとても分かりにくく、私も学生時代は今一つ理解できませんでした。

例えば、うつ病の経過を表わす代表的な医療用語としては、

  • 反応
  • 寛解
  • 回復
  • 治癒

などがあります。

うつ病の経過や抗うつ剤の効果などを表す際、

「抗うつ剤によって反応が得られた率は〇〇%でした」
「〇〇名中〇〇名が寛解状態になりました」

と表現されます。

でも、「反応ってどういう意味?」「寛解って何?治ったってこと?」と今一つ分かりにくいですよね。

ここでは、これらの用語の臨床におけるおおよその意味についてうつ病を例にとって説明させていただきます。

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1.うつ病の典型的な経過

ここではうつ病を例にとって経過を表す用語の意味を説明していきます。

典型的なうつ病の経過というのは次のようになります。

うつ病の経過

うつ病が発症すると、抑うつ症状がどんどんと悪化していきます。

その後、精神療法や薬物療法、環境調整や休息などといった適切な治療が導入されると抑うつ症状は少しずつ改善していきます。

治療によってある程度うつ症状が改善してきた状態は「反応(Response)」と表されます。治療を施している状態で、症状がほぼ消失すると「寛解(Remission)」と呼ばれます。

一定期間寛解状態が維持され、治療を終了しても症状が生じない状態だと判断されると「回復(Recovery)」と呼ばれます。回復は「治癒」と表現される事もあります。

再燃(Relapse)は、回復に至る前に症状がぶり返してしまう事です。また再発(Reccurrence)は一旦回復した後に再びうつ病が発症してしまう事です。

これらは経過に使われる一般的な用語です。

では次にそれぞれの詳しい意味と、その意義について紹介させていただきます。

2.反応の意義

うつ症状を認める方に何らかの治療を施し、ある程度症状が改善してくると「反応(Response)」と表現されます。「ある程度」というのは厳密に決まっているわけではありませんが、おおむね50%以上が多いです。

経過中に「反応」を評価する意義は、導入した治療が有効かどうかを判定するためです。

ある抗うつ剤を使用して、その効果をうつ症状の重症度を評価するスケールなどを使って定期的に評価する事は、患者さんがつらい精神状態にいる期間を出来る限り短くするために大切な事です。

ある治療によって「反応」が得られた場合は、その治療をそのまま継続しても良いと考えられます。その治療を続ける事で、その後も少しずつ改善して寛解に近づいていく可能性があるからです。

一方で反応が得られなかった場合、お薬の増量や治療法の変更などを検討する必要があります。

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3.寛解と回復の意義

治療がうまくいくと、「寛解(Remission)」と呼ばれる状態になります。

寛解というのは「治療を施した上で、症状がほぼ消失し、正常な精神状態を維持できている状態」の事です。

一方で回復(Recovery)というのは、一定期間寛解状態が維持されたことで、治療を終了しても症状が再発せず、正常のままを保てると考えられる状態の事です。いわゆる「治癒」や「完治」と呼ばれる事もあります。

寛解と回復(治癒)の違いがよく分からないという声は多いのですが、

  • 寛解:抗うつ剤などを服用した上で、症状が治まっている状態
  • 回復:抗うつ剤などをやめても、症状が治まっている状態

になります。

一見するとどちらも精神状態は正常化していますが、寛解状態の方はまだ治療の継続が必要です。一見すると症状は治まっているのですが、これは「お薬の力を借りて正常化している状態」に過ぎません。逆に言えばお薬を中止すれば再度悪化する可能性があるという事です。

一方で回復は、治療を終了しても精神状態は悪化しないと判断される状態です。抗うつ剤を服用している方であれば、抗うつ剤の減量・中止に入っても良い状態だという事が出来ます。

寛解を評価する意義としては、寛解はお薬などの力を借りている上でとは言え、精神状態は正常化しているわけですので、少しずつ日常生活に負荷をかける事が可能になります。

うつ症状の真っただ中にいる方や、まだ寛解にまで至っていない方というのは精神状態が不安定ですので、強いストレス状況にさらす事は控えないといけません。なるべく不快な刺激の少ない生活をし、精神を休息させる必要があります。

しかしいつまでも休んでいると、社会生活にいつまでも復帰できません。社会復帰のためのリハビリを開始する一つの目安が「寛解」になります。

寛解になったら少しずつ活動負荷を上げていきます。仕事や学校を休職・休学していた方であれば午前だけ出勤してみたり、主婦の方であれば簡単な家事から再開してみたりします。

再燃が起きないように注意しながら、無理なく少しずつ負荷を上げていきます。

次に「回復」についてですが、回復を評価する意義は、「治療の終了」に入るためです。寛解状態を一定期間維持する事ができ、また日常生活で想定される負荷がかかっても精神状態が悪化しない事が確認できれば治療の終了が検討できます。

回復と評価されたら、少しずつお薬を減量していき、最終的にはお薬を中止とします。それで再発が認められなければ治療終了となります。

4.再燃と再発はどう違うのか

再燃(Relapse)と再発(Reccurrence)も、違いが分かりにくい医療用語の1つです。

定義的に言えば、再燃は寛解後に回復に至る前に症状が悪化する事、そして再発は回復後に症状が悪化する事になります。

より分かりやすくいうと、

  • うつ病が治りきる前に、再度悪化してしまうのが「再燃」
  • うつ病が治った後に、再び発症してしまうのが「再発」

になります。

再燃は今回のうつ病の経過の1つとして考えられます。治療が途中まではうまくいってたけど、治療の途中でまた悪化してしまったというのが再燃です。

一方で再発は、うつ病の治療が一旦終わったあとに、2回目のうつ病が発症したという位置づけです。1回目のうつ病の治療は成功してちゃんと治ったんだけど、また別のうつ病が発症してしまったというのが再発です。

再燃は寛解状態での悪化ですので、治療に問題がある可能性が高いと考えられます。寛解状態というのは一見うつ病が治っているように見えますが、お薬の力を借りた上で正常化しているだけであり、自分の力はまだ完全には治っていない状態です。

このような時に症状が再度悪化した場合、

  • お薬の飲み忘れが多くなったのではないか
  • 急に負荷を高め過ぎたのではないか

といった可能性を考えなくてはいけません。

一方で再発は、一旦は治療は成功しているので、治療の方法には問題がなかったと考えられます。しかしまたうつ病が発症してしまうという事であれば、

  • 環境に問題があるのではないか
  • ストレスを感じやすい考え方になっていないだろうか

などの原因も疑う必要があります。また再発を繰り返す方は、回復後も長期間抗うつ剤の服用の継続が必要になる事もあります。

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