これって心身症?自分で出来る心身症かをチェックする6つのポイント

心身症とは、「ストレスで生じる身体の病気」のことです。

・ストレスで生じた胃潰瘍
・ストレスで生じた頭痛
・ストレスで生じた下痢・腹痛
・ストレスで生じた喘息の悪化

などで、これらは全て心身症に該当します。

心身症はしばしば診断に難渋します。それは、心身症はストレスが原因で生じる疾患を指しますが、その疾患がストレスが原因で起こったのか、ストレス以外の原因で起こったのかを正確に判断するのは難しいからです。

例えば胃潰瘍は、ストレスで生じることもありますが、それ以外の原因で生じることも多々あります。食生活の乱れでも起きるし、タバコなどの生活習慣でも原因になります。他にもピロリ菌が原因のこともあれば、おくすりの副作用で起こることもあるでしょう。

このように心身症の多くは、ストレス以外の原因でも生じうるのです。

ある症状を診た時、それが心身症かそうでないかを見極めることは非常に大切です。なぜならば、原因によって治療法が異なるからです。

食生活やタバコなどの生活習慣が原因の胃潰瘍であれば食事指導や生活指導が治療になります。ピロリ菌であれば除菌が治療になるし、おくすりの副作用ならば、原因薬の中止が治療です。しかし、ストレスが原因であれば、ストレスをうまく対処する方法を学ぶことや、自律神経をリラックスさせる方法などが治療になります。

このように同じ胃潰瘍でも、原因によってその治療は全く異なってくるのです。

ここでは、その症状が心身症によるものなのかを鑑別するチェックポイントを紹介していきます。

1.心身症の症状にはどんなものがあるのか

心身症で現れる症状は非常に多岐に渡ります。もはや「どんな症状でも起こり得る」と言ってもいいでしょう。そのため、症状のみから心身症かどうかを診断することは不可能です。

しかし、それでは心身症のイメージが沸かないので、まずは心身症で比較的よくみられる症状を紹介します。

  1. 胃腸系症状・・・腹痛、胃痛、下痢、便秘、嘔吐など
  2. 呼吸器症状・・・呼吸苦、喘鳴、過呼吸など
  3. 循環器症状・・・胸痛、動悸など
  4. 代謝・内分泌症状・・・口渇、多尿、しびれなど
  5. 皮膚症状・・・かゆみ、発疹、脱毛など
  6. 筋・骨系症状・・・腰痛、頭痛、肩こりなど
  7. 婦人科系症状・・・不正出血、月経不順など
  8. 泌尿器系症状・・・頻尿など

他にも出現する症状はまだまだありますが、代表的な症状はこのようになります。

2.心身症を疑う6つのチェックポイント

これらの症状が心身症によって起こっているのかどうかを見極めるチェックポイントにはどんなものがあるのでしょうか。

心身症かどうかの最終的な判断は医師が行ってくれますが、その根拠となるチェックポイントを紹介します。

Ⅰ.最近ストレスとなる出来事があった

最近、大きなストレスを感じたことがありましたか。
あるいは、小さなストレスであったとしても、それが長期間続いているということがありましたか。

心身症の一番の原因は「ストレス」です。

最近、何かストレスがあって、その後から上記のような身体症状が出現しはじめた場合、それは心身症である可能性が高くなります。

ただし、心身症になりやすい方は「自分の感情に気づきにくい、あるいは気づいてもうまく表現できない方」だと指摘されています(これをアレキシサイミアを呼びます)。

アレキシサイミアの場合、客観的にみればストレスがある状態でも、本人は「ストレスは何もない」と感じている場合がありますので、自分では思い当たるストレスが見当たらなかったとしても客観的な視点で判断することも大切です。

一般的に大きなストレスになりうるものを挙げます。

  1. 配偶者や親族、家族などの死
  2. 離婚
  3. 重傷あるいは重病
  4. 失業
  5. 環境変化(引っ越し、昇格、降格など)
  6. 妊娠、出産
  7. 人間関係の不和
  8. 過重な労働(オーバーワーク)

これらに思い当たる節がある方は、自分ではストレスを自覚していなかったとしても、ストレスによって心身症を発症している可能性があります。

Ⅱ.症状に波がある

心身症の原因は身体ではなく、こころにあります。そしてこころの状態は日によって変化します。そのため、心身症の症状は、増悪・改善の波があります。これは心身症による症状なのかそうでないかの鑑別ポイントになります。

例えば、喘息症状が最近悪化しているケースを考えてみましょう。この喘息は心身症によるものなのか、それ以外の原因によるものなのかを判断するためには、症状の出方を見ます。

寒さが原因なのであれば、喘息は冬の間ずっと悪化傾向であるはずです。しかし、仕事のストレスが原因なのであれば(心身症)、仕事の日は喘息が悪化するけど、休日は比較的調子が良い、という波が出る傾向になります。

このような症状の出方も一つのチェックポイントなのです。

Ⅲ.内科的治療だけではすぐに再発する

心身症の原因はこころにあるので、こころにまで治療が介入しない限り根本的な治癒にはならず、すぐに再発してしまいます。

例えば、ストレスが原因で胃潰瘍になってしまった場合、とりあえず胃薬による内科的治療をすれば一旦は良くなります。しかし、胃薬の服薬を中止すると元に戻ってしまいます。これは原因となるストレスが解決されていないためです。

一時的に内科的治療を行うことは意味のあることですが、この場合は並行して職場の環境調整してストレスを減らしたり、ストレスに対する向き合い方を学んでいかないといけません。

Ⅳ.アレキシサイミアの傾向がある

心身症を発症しやすい性格傾向として「アレキシサイミア(失感情症)」が指摘されています。

アレキシサイミアとは、自分の感情に気づくのが苦手だったり、なんらかの感情に気づいたとしてもそれをうまく表現できないような性格傾向を持つ方です。

アレキシサイミア傾向のある方は、ストレスがかかっていたとしてもそれに気づきにくいため、自分では自分の精神状態は問題ないと考えています。そのため、表面上はこころは平常を保っています。でも、実際はストレスを受けているため、行き場のないストレスが身体に症状を発することでサインを出しているではないかと考えられています。

アレキシサイミアを疑うポイントとしては、

・自分の感情を人にうまく伝えられない
・他人の気持ちが良く分からない
・想像力がないとよく言われる

などがあります。

このような傾向のある方は、心身症を発症しやすいと言えます。

Ⅴ.好発年齢に該当する

心身症は男女問わず、どの年代でも発症する疾患ですが、特に発症しやすい年齢層というものがあります。これを好発年齢と言いますが、成人の心身症の好発年齢は、

男性であれば、30~40代

女性であれば、20~30代

と言われています。

これは、これらの年代が一番ストレスがかかりやすいからです。男性は仕事で一番忙しい立場になるのは、多くが30~40代です。上司と部下に挟まれ、受けるストレスもこの期間が一番多いようです。また女性は結婚・出産などを20~30代で経験する方が多いでしょう。これらはおめでたい出来事ですが、非常に大きなライフスタイルの変化のため、時として大きなストレスになります。

また、成人よりも小児の方が心身症を起こしやすいと言われています。

先ほどのアレキシサイミアでも説明したように、「自分の感情に気づかない」「自分の感情をうまく表現できない」方が心身症を発症しやすい傾向があります。まだ成長が未熟な小児は自分の感情をうまく認識・表現できないため、大人より心身症を発症しやすいのです。

Ⅵ.ストレス発散の手段を持っていない

心身症の原因はストレスですが、ストレスは普通に生きていても受けるものです。そのため、ストレスは適宜発散したり解消したりしないといけません。

運動や没頭できる趣味、友人との会話など発散する方法は何でも構いませんが、自分にとってストレス発散できる方法をいくつか持っておくことは重要です。

ストレス発散の手段が乏しい方の場合、ストレスはどんどん溜まっていくため、心身症を発症してしまう可能性は高くなります。

3.心身症の可能性が高い場合/低い場合

上記のセルフチェックを行い、心身症の可能性が高い場合はどうしたらいいでしょうか。

心身症とは、精神的ストレスによって身体に症状が出ているわけですから、根本の原因は「こころ」にあります。

そのため、「こころ」を休めてストレスを軽減させるような対処法が必要になるでしょう。

例えば、

  • 仕事のオンとオフをしっかりと作る
  • 定期的に休むようにする
  • 定期的にストレス発散できる環境を整える
  • 大きなストレス源がある場合は、それを回避できないか工夫してみる

などの方法が挙げられます。

自分の努力・工夫で改善できればそれでいいですが、難しいようであれば心療内科・精神科を受診し、専門家に相談するようにしましょう。

反対に、上記のセルフチェックから心身症の可能性が低そうであれば、それは身体的疾患の可能性があります。症状に応じた科を受診するようにしましょう。

例えば胃痛がするのであれば胃に何か異常があるかもしれませんので消化器科を受診しましょう。動悸や胸痛がするのであれば、心臓に何か異常があるのかもしれませんので、循環器科を受診しましょう。

ただし多くの場合は、症状から心身症かどうかを100%見極める事は難しいものです。その場合はまずは身体科を受診するのが一般的です。身体科を受診し、それで異常がなければ「こころの問題だ」という事ができ、鑑別がしやすくなるからです。