パキシルの眠気と7つの対処法【医師が教える抗うつ剤の全て】

パキシル眠気イメージ

抗うつ剤は眠気を起こしやすいお薬です。

気持ちをリラックスさせるお薬なので、当然と言えば当然ですが、眠気によって仕事や勉強に支障をきたすようになると問題です。パキシルもしばしば眠気の副作用が生じ、それで困っている患者さんもいます。

「先生、この眠気何とかなりませんかね?」 と相談されることは少なくありません。

パキシルでなぜ眠気が起こるのか。有効な対処法はあるのか。ここで考えてみたいと思います。

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1.パキシルで眠気が生じる理由

抗うつ剤の基本的な働きは、脳内のモノアミンと呼ばれる物質を増やすことです。
(モノアミンとは、セロトニンやノルアドレナリン、ドパミンなどの物質の総称です)

現在最も支持されている、モノアミン仮説によると、
モノアミンが増えるとによって、抗うつ効果が表れると考えられています。

しかし、抗うつ剤は「モノアミンを増やすこと」だけにとどまらず、
その他の様々な働きもしてしまいます。

これらの多くは、私たちが望んでいない働きで、「副作用」と呼ばれます。

パキシルで眠気が生じるのは、抗うつ剤が「ヒスタミン受容体」と呼ばれる部位を
ブロックしてしまう働きがあるためです。
これを「抗ヒスタミン作用」と言います。

ヒスタミンは中枢神経系に作用すると、覚醒・興奮をもたらすと考えられており、
抗うつ剤ではそれがブロックされるので、鎮静・眠気が生じるのです。

みなさんになじみのあるところで言うと、
花粉症やアレルギー疾患では「抗ヒスタミン薬」と呼ばれるお薬が使われます。
(アレグラ、アレロック、タリオン、アレジオン、ザイザルなど)

花粉症やアレルギーのお薬も飲むと眠くなりますよね?
これも抗ヒスタミン作用によるもので、抗うつ剤で眠くなるとの同じ働きです。

更に抗うつ剤の場合、抗ヒスタミン作用の他にも眠気の原因になるものもあります。

α1受容体遮断作用、5HT2受容体遮断作用と呼ばれるもので、
これらも眠気の一因となっています。

αとはアドレナリンのことで、アドレナリン1受容体が遮断されると
血圧が低下し、ふらついたり、ボーッとしたりします。

ちなみにα1受容体遮断薬は降圧剤として使われています。
(エブランチル、カルデナリンなど。)

5HTとはセロトニンのことで、セロトニン受容体のうち、セロトニン2受容体を遮断すると
神経興奮が抑制されます。

これは気持ちが落ち着くという良い面もありますが、興奮が抑制されれば眠くなりますので、
眠気の原因となります。

これらが、パキシルで眠気が生じる理由です。

他の抗うつ剤で眠気が生じるのもほとんど同じ理由ですが抗うつ剤の種類によって
それぞれの遮断作用の強さが異なり、眠気の起こりやすさも異なってきます。

2.他の抗うつ剤との比較

パキシルの眠気の程度は、他の抗うつ剤と比べてどうなんでしょうか。
一覧でみてみましょう。

抗うつ剤眠気抗うつ剤眠気
(Nassa)リフレックス/レメロン(+++)(SSRI)パキシル(+)
(四環系)ルジオミール(++)(SSRI)ルボックス/デプロメール(+)
(四環系)テトラミド(++)(SSRI)ジェイゾロフト(±)
デジレル(++)(SSRI)レクサプロ(±)
(三環系)トフラニール(+)(SNRI)トレドミン(±)
(三環系)トリプタノール(++)(SNRI)サインバルタ(±)
(三環系)アナフラニール(+)スルピリド(±)
(三環系)ノリトレン(+)
(三環系)アモキサン(+)

抗うつ剤の中で、眠気が強力なのものを「鎮静系抗うつ剤」と呼びます。

リフレックス/レメロンといったNassa(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)、
テトラミドやルジオミールといった四環系抗うつ剤、デジレルなどが入ります。

これらは眠気が強く、睡眠剤として使うこともあるほどです。

鎮静系抗うつ剤の眠気は多くの場合、パキシルよりも強力です。

三環系抗うつ剤はどうでしょうか。
トフラニール、トリプタノール、ノリトレン、アナフラニール、アモキサンなどです。

三環系は昔の抗うつ剤で、「効果も強いけど、副作用も強い」という、
最近の抗うつ剤と比べると作りが荒いお薬です。

そのため眠気も多めです。
鎮静系ほどではないものの、パキシルよりも強いことがほとんどです。

三環系の中でもトリプタノールは鎮静作用が強いと言われており、眠気の頻度も
頭一つ飛び抜けています。

では、ジェイゾロフト、ルボックス/デプロメール、レクサプロといった
他のSSRIと比べるとどうでしょうか。

ジェイゾロフトは副作用が全体的に軽く、眠気の頻度もやや少ないと言われています。
レクサプロもジェイゾロフトについで、眠気は少なめです。

反面、パキシルとルボックス/デプロメールはSSRIの中では、眠気がやや多い方になります。

サインバルタやトレドミンといったSNRIと比較するとどうでしょうか。
SNRIはセロトニンだけでなくノルアドレナリンにも作用するのが特徴です。

ノルアドレナリンは意欲や活気を上げる「覚醒系」の物質であるため、
眠気は起こしにくいと言われてます。

そのためパキシルのようなSSRIより、眠気の頻度は少ないようです。

ドグマチールも眠気の頻度は少ない抗うつ剤です。
ドグマチールには抗ヒスタミン作用やα1受容体遮断作用がほとんどありません。
つまり、眠気をほとんど起こさないということです。

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3.パキシルの眠気の対処法

パキシルで眠気が出てしまったときの対処法について考えてみましょう。

Ⅰ.様子を見てみる

まだ内服を始めたばかりという場合は、少し様子をみてみましょう。

抗うつ剤の副作用は「慣れてくる」ことがよくあります。

1ー2週間ほど様子を見たら軽くなってきた、ということは臨床でよく経験することです。
何とか耐えられる眠気であれば、少し様子をみてみましょう。

ひとの身体の適応力というものは、なかなかすごいのです。

Ⅱ.増薬スピードを緩めてみる

パキシルは10mgから開始し、1週間以上あけて10mgずつ増量していきます。

いきなり20mgや40mgから開始することはありません。
急にモノアミンの量を増やしてしまうと身体がびっくりしてしまい、副作用が起きやすくなるからです。

眠気に関しても同じで、いきなり高容量のパキシルを入れると強く出やすくなります。

薬の効きやすさには個人差がありますので、薬が効きやすい体質の方は、
用法通り10mgから開始しても身体が対応しきれない人もいます。

こういった場合は、増薬のペースを緩めることが効果的です。

抗うつ効果が出てくるのも遅くなってしまうのが欠点ですが、
副作用の程度が軽くなるというメリットがあります。

例えば、パキシル10mgを投与したら眠気が強く出てしまった、ということであれば、
5mgから初めてみましょう。

5mgで1-2週間様子をみて、慣らしてから10mgに再チャレンジすれば、
5mgに身体が適応している分だけ、眠気の程度も軽くなります。

10mgから始めたところ、非常に強い眠気に襲われてしまったため、
2.5mgから始めて少しずつ増やしていった、という方もいました。

最終的には20mgまで増やしましたが、徐々に増やしたため、眠気にはそれほど困りませんでした。
ゆっくりと増やすという方法は、とても有効な副作用対策なのです。

Ⅲ.睡眠を見直す

基本的なことですが、そもそもの睡眠に問題がないかを見直すことを忘れてはいけません。

そもそもが不規則な睡眠リズムだったり、極端に短い睡眠時間なのであれば、
ちょっとしたことで眠気が出てしまって当然でしょう。

その眠気は副作用ではなく、パキシルを飲み始めたことで
単に睡眠の問題が表面化したに過ぎないのかもしれません。

睡眠環境や睡眠時間に問題がないかを見直しましょう。
もし問題があるのであれば、その問題を解決することが先決です。

Ⅳ.併用薬に問題はないか?

併用薬によっては、パキシルの副作用を強くしてしまうことがあります。

薬ではありませんが、よく経験するのがアルコールとの併用です。
酒は抗うつ剤の血中濃度を不安定にします。

飲酒をしながらパキシルを飲んでいたら、 血中濃度が不安定になるため
眠気が強く出る可能性があります。この場合、断酒しない限りは改善は図れません。

他にもパキシルの作用・副作用を増強してしまう可能性のあるものとして、

炭酸リチウム(気分安定薬)、タガメット(胃薬)、フェンタニル(麻酔用鎮痛剤)、
キニジン(抗不整脈薬)、トリプタン系(片頭痛薬)、トラムセット(鎮痛薬)、ザイボックス(抗生剤)

などが報告されています。

Ⅴ.肝機能・腎機能に問題はないか?

肝機能や腎機能が悪い方は、お薬を分解したり排出する機能が落ちているため、
通常量を投与してしまうと効きすぎてしまうことがあります。

血液検査や健康診断で肝機能障害、腎機能障害を指摘されている場合、
必ず主治医に伝え、投与量を少なくするなどの適切な対処をしてもらいましょう。

Ⅵ.服用時間を変えてみる

飲む時間を変えてみる、という方法もあります。

パキシルは添付文書的には「1日1回夕食後の服用」と記載されていますが、
毎日1回、同じ時間に飲めば必ずしも夕食後でなくても構いません。

眠気で困っているのであれば、眠前に飲むように変更するのも手です。
そうすれば、眠気が出ても眠る時間なので、問題がなくなります。

飲む時間を眠前にすることで、眠気の問題が改善したケースは少なくありませんので、
一度試してみる価値はあります。

ただし、パキシルは睡眠を浅くする可能性があるので注意が必要です。

パキシルに限らず、SSRIやSNRIは深部睡眠(深い眠り)を障害すると言われています。
寝苦しい、悪夢を見るなど出現する場合は、この方法はやめた方がいいかもしれません

Ⅶ.減薬・変薬をする

上記の方法をとっても眠気が軽減しない場合、眠気が生活に支障を来たしているのであれば、
減薬や変薬も考える必要があります。

パキシルの抗うつ効果が出ているのであれば、薬を変えるのはもったいないので、
まずは量を少し減らしてみてもいいかもしれません。

量を少し減らしてみて、うつ病の悪化も認めず、眠気も軽くなるようであれば成功です。
その量で維持していきましょう。
(必ず医師の判断のもとで行ってください)

パキシルの抗うつ効果が不十分なのであれば、別の抗うつ剤に切り替えるのも手です。

どのお薬に切り替えるかは、主治医とよく相談して決めるべきですが、「眠気が少ないもの」でいうと、パキシル以外のSSRI、SNRIは候補に挙がるでしょう。また、ドグマチールも眠気という点では頻度の少ないお薬になります。

ただし、どの抗うつ剤も一長一短ありますので、眠気の副作用だけで考えるのではなく、
主治医とよく相談して決めてください。

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