パキシル錠5mg、10mg、20mgの薬価 【医師が教えるパキシルの全て】

パキシルは「パキシル錠」としてGSK社より販売されています。

剤型は錠剤のみです。

2000年に発売されたお薬ですので、現在は多くのジェネリック(後発品)もあります。

ここでは、パキシル錠の薬価、他抗うつ剤との薬価の比較などをみていきましょう。パキシルのジェネリックの薬価についても紹介していきます。

1.パキシル錠5mg,10mg,20mgの薬価

パキシル錠の薬価は次のようになっています。

パキシル錠5mg   60.50円
パキシル錠10mg 105.60円
パキシル錠20mg 184.70円

パキシルの最大投与量うつ病であれば40mg(強迫性障害のみ50mg)なので、
最大量を服用する場合、 1日369.4円、1か月11,082円かかる計算になります。

3割負担だと 1日110.8円、1か月3324.6円になります。

安くはない値段ですね。

2.パキシル錠ジェネリックの薬価

安価にしたいのであれば、ジェネリック(後発品)に切り替えるという手があります。

パキシルは2000年に発売されたお薬ですから、多くの会社からジェネリックが出ています。
(先発品発売後10年経つと、ジェネリックを販売できるようになります)

パキシルのジェネリックの薬名は、パキシルの一般名「パロキセチン」をそのまま使って、
後ろに発売会社名をつける、というネーミングがほとんどです。

パロキセチン「明治」、パロキセチン「サワイ」などですね。

有名なお薬だけあって、現在でも30社以上がパキシルのジェネリックを販売しています。

ジェネリックの薬価は、先発品の6-7割程度になることが多く、パキシルの場合も同じです。

パロキセチン5mg  36.2円 (先発品60.50円)
パロキセチン10mg  63.4円   (先発品105.60円)
パロキセチン20mg  110.9円 (先発品184.70円)

30社以上が出しているパロキセチンですが、どの会社のパロキセチンも同じ価格です。

ちなみに東和薬品はパロキセチンのOD錠を販売しています。
ODとは口腔内崩壊錠のことで、口の中で溶けるから水がなくても飲める、というものです。

10mgと20mgが出ていますが、これもそれぞれ63.4円、110.9円と他のジェネリックと
値段は変わりません。

3.パキシルCRとの薬価の比較

パキシルの改良版として、2012年にパキシルCRが発売されました。

これは、薬がゆっくりと体内に吸収されるように設計されたもので、
理論上はパキシルの効果はそのままで、副作用が少なくなるというものです。

パキシルとパキシルCRの薬価はどのくらい違うのでしょうか?

実は、パキシルもパキシルCRも薬価は全く同じです。

パキシル10mgとパキシルCR12.5mgが同等量と言われていますが、どちらも105.6円です。

パキシル10mg        105.6円  パキシル20mg   184.7円
パキシルCR12.5mg 105.6円  パキシルCR25mg 184.7円

なので、もしパキシルからパキシルCRへ切り替えてみたいと考えているのであれば、
薬価的には損失なく切り替えることができます。

4.他抗うつ剤との薬価の比較

次に、他の抗うつ剤との薬価の比較をしてみましょう。

抗うつ剤(最大量)薬価   
パキシル(40-50mg)(5mg) 60.50円(10mg) 105.60円(20mg) 184.70円
パキシルCR(50mg)(12.5mg) 105.60円(25mg) 184.70円
ジェイゾロフト(100mg)(25mg) 106.00円(50mg) 184.70円
レクサプロ(20mg)(10mg) 212.00円
ルボックス(150-300mg)(25mg) 37.80円(50mg) 65.40円(75mg) 90.60円
サインバルタ(60mg)(20mg) 168.70円(30mg) 228.80円
トレドミン(100mg)(12.5mg) 21.00円(15mg) 24.40円(25mg) 35.70円(50mg) 60.50円
リフレックス(45mg)(15mg) 171.20円
トフラニール(200-300mg)(10mg) 9.60円(25mg) 10.00円
テトラミド(60mg)(10mg) 16.40円(30mg) 46.00円
デジレル(200mg)(25mg) 18.90円(50mg) 33.30円

パキシル、ジェイゾロフト、ルボックス/デプロメールあたりのSSRIは
どれも横並びで、最大量を使うと1日370円程度かかります。

比較的新しい薬は若干高くなっています。

SSRIのレクサプロが最大量で1日414円、
SNRIのサインバルタも最大量60mgであれば1日450円超です。

Nassaのリフレックス/レメロンに至っては最大量45mgで1日502.5円です。

トレドミンは比較的安いですが、効果が弱いためでしょう。

安さで考えると、三環系や四環系は圧倒的に安価なことが分かります。
副作用が多いと言われる三環系ですが、未だに処方される頻度が少なくないのは、

抗うつ効果が強いことと、実はこの「薬価の安さ」に理由があります。

SSRIなどと比べると5-10倍ほども薬価が違うわけですから、
「多少副作用は目をつぶるから、安いやつでお願いします」
と希望される方は現実的にはいらっしゃるのです。

新規抗うつ剤を2剤以上使っている患者さんだと、
一日1,000円近くかかってしまいます。

3割負担だとしても約350円/日、約10,000円/月です。

新規抗うつ剤ももう少し薬価が下がるといいんですけどね。

3.薬の金額を下げるためには

病気の治療をする際は、薬価にとらわれずに
主治医に提案されたお薬を指示通りに飲むことが理想です。

しかし、無い袖は振れないわけで「金銭的に苦しい」とそうも言ってられません。
その場合、次のような方法で薬価を下げることが可能です。

1.自立支援医療制度(精神通院医療)を利用する

精神科治療が明らかに必要だけど、お金がなくて治療が受けれない。
そんな方にまず考えてもらいたいのが自立支援医療です。

自立支援医療制度は、精神的な疾患で苦しい思いをしている患者さんのために、
医療費の自己負担額を軽減する制度です。

この制度が適応されると、入院外の医療行為(診察やデイケア、訪問看護やお薬の代金など)が
「1割負担」に減額されます。

3割負担の方がほとんどでしょうから、3割から1割に軽減されることになり、
これは金銭的には非常に大きいです。

また、支払が過大にならないように所得に応じて毎月の上限額が設定され、
その上限額以上の金額の支払いを免除されます。

この制度を受けれるかは主治医の判断になります。
「通院をしばらく続ける病状にあると医師が判断する方」が該当します。

適応になる代表的な疾患としては、

  • 統合失調症
  • 気分障害(うつ病、躁うつ病)
  • 不安障害
  • 精神遅滞
  • アルコールや薬物の中毒、依存症

の方などが適応になります。

ただし、この制度はあくまでも「精神疾患」に対してですので、

「精神科受診の時に、ついでに風邪薬や花粉症の薬をもらった」

など、精神科医療と関係のない医療行為は適応になりまりません。
この場合は、風邪薬や花粉症のお薬だけ、通常と同じ3割負担になります。

2.ジェネリックがある抗うつ剤に変えてみる

ジェネリックが発売されている抗うつ剤もあります。

  • ルボックス/デプロメール
  • パキシル
  • トレドミン

などです。

抗うつ剤はそれぞれ作用機序は全く同じではありませんので、
全く同じように作用してくれることは期待できませんが、
ジェネリックを使えば薬価という面では安くなります。

3.三環系など安価なお薬に変えてみる

三環系抗うつ剤に変えることで薬価は劇的に安くなります。
しかし、副作用が強くなりうることは覚悟しておかなければいけません。

三環系への切り替えは「どうしても薬価を安くしたい」というのであれば
候補に挙がる方法ですが、 「治療」という意味ではあまりお勧めはできません。

三環系は副作用が多いのです。