神経症は、その病気の本質について誤解される事がとても多い疾患です。
この疾患は「ストレスによって精神が疲弊した状態」のことです。非常に幅広い概念となるため、漠然としていてイメージが沸きにくいのです。「神経」という言葉が入っていますが、運動神経や感覚神経などの動物性神経に問題があるわけではありません。どちらかというと「神経」=「精神(こころ)」という意味であり、この名称も誤解を生んでいる原因の1つです。更に、目にみえない「こころ」の病気であるため、これも誤解を生みやすくなっています。
一方で非常に広い概念を持つ疾患であるため、身体的な異常を認めない患者さんに対する病名として使いやすく、そのため現在でもしばしば使われているのが現状です。先生から「検査では異常がありませんので、おそらく神経症でしょう」と言われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかしこのように誤解を生みやすかったり、漠然としており病気の本質を表していないという問題から、現在では「神経症」という病名は徐々に使われなくなっており、より具体的な病名に細分化されてきています。
神経症は今後は耳にする事が少なくなっていく疾患ですが、現状はまだまだ使われていますので、現時点では神経症について深く理解しておくことは意味があります。
今日は神経症について、どのような病気なのかをお話ししていきます。
1.神経症とは
まず神経症とは、どのような疾患の事なのかを紹介します。
神経症は、
精神(こころ)の衰弱によって種々の精神症状が出ている状態
を指します。
神経症は身体に異常があるわけではありません。異常があるのは精神(こころ)であり、精神が不安定になる事で様々な症状が出現しています。
一般的に「神経」というと、身体の中を通っている運動神経や感覚神経などの事を指しますが、神経症の「神経」というのは、「神経≒精神(こころ)」というニュアンスで使われているのです。
神経症では様々な症状が出現します。身体的な症状(動悸・息苦しさ・めまいなど)が出ることもありますが、主となるのは精神的な症状です(ちなみに精神の衰弱によって主に身体的な症状が出現する疾患は心身症や自律神経失調症と呼ばれます)。
ではなぜ、神経症の方は精神が衰弱してしまうのでしょうか。
神経症の根底にあるのは「不安」「恐怖」です。この不安や恐怖が過度に高まってしまった結果、他の精神症状が生じたり、身体症状が生じたりするのです。
例えばストレスによって不安が高まっており、それで胸がドキドキしたり、気持ちが落ち着かなくなってしまっている場合、これは神経症になります。
しかし神経症というのは昔の病名であり、今は正式な病名として使われる事はほとんどありません。
その理由として、神経症の概念は非常に幅広く、漠然なものだからです。
精神が衰弱するといっても、衰弱する原因には様々なものがあるでしょう。明らかな理由がない事もありますし、人前などに出る事で神経が衰弱する事もあります。あるいは特定の状況(高所や閉所など)で衰弱してしまう人もいるでしょう。
また精神の衰弱によって生じる症状も人によって様々です。不安や恐怖から動悸・めまいなどの自律神経症状に発展する方もいるし、強迫行為(恐怖を和らげるために特定の行為を繰り返す)に発展する方もいます。落ち込み、無気力、死にたい気持ちなどといった症状が出る方もいます。引きこもりや寝たきり、衝動的な逸脱行動などの社会的な症状が出る人もいるでしょう。
このように非常に多くの状態を「神経症」という一疾患にまとめてしまっているため、神経症の概念は非常に広く、また漠然としたものとなっているのです。
そのため現在では神経症は、より具体的な疾患に細分化されてきています。
神経症に相当する病名は「不安障害(不安症)」と呼ばれています。問題は「神経」ではなく、「不安」が過度に高まっているためだからです。
また以前は「神経症」とひとまとまりにされていた疾患は、現在では
- パニック障害
- 社交不安障害
- 全般性不安障害
- 恐怖症(対人恐怖症、高所恐怖症など)
- 心身症
などに分けられています。
一方で、神経症という診断名が臨床でまだ使われているという現状もあります。神経症は幅広く・漠然とした概念ですので原因不明の疾患の説明をする際に使い勝手がよいという側面もあるのです。そのような理由で現在でもしばしば用いられています。
2.神経症になりやすい原因は?
どんな人が神経症になりやすいのでしょうか。
神経症は精神の衰弱が原因ですから、「どういった人の精神が衰弱しやすいのか」を考えてみると、神経症になりやすい原因が見えてきます。
Ⅰ.性格
性格的に見てみると、
- 心配性
- 完璧主義
- 神経質
- 自分に厳しい
という方が神経症になりやすいようです。
精神は主にストレスによって疲弊していきます。つまりストレスをため込みやすい性格の方は神経症になりやすいということです。
心配性の方や神経質の方は普段から何事に対しても不安や恐怖を強く感じやすいため、こころがダメージを受けやすい傾向にあります。完璧主義の方や自分に厳しいような方は妥協ができず、完璧を目指して頑張りすぎてしまうため、これも精神が疲弊しやすい性格となります。
Ⅱ.ストレスが大きい環境
職場や家庭など、普段長く過ごす場所に強いストレスを感じている場合、神経症を発症しやすくなります。
強いストレスや長期間のストレスは、こころに大きなダメージを与えるからです。
みなさんも、ストレスが高いような環境に長くいると、気持ちが落ち着かなくなったりイライラしたり、些細な事で不安になったりとしやすくなった経験はありませんか。
それは一時的に神経症のような症状が出ているという事です。
Ⅲ.過去の不安や恐怖
これは「性格」とも重複するのですが、過去に大きな不安や恐怖を感じるような出来事があった場合、そのエピソードに影響を受けて過度に不安や恐怖を感じやすい性格が形成されてしまう事があります。
例えば小さい頃に親から家庭内暴力を受けていた方は、幼少期から常に親の顔色をうかがい、親の機嫌を損ねないように精神を張りつめて生活していた方が少なくありません。このような生活が習慣になっていると普段リラックスすべき状況でも神経を研ぎ澄ましてしまうため、精神が疲弊しやすく神経症を発症しやすくなります。
Ⅳ.遺伝
神経症には遺伝の影響も多少あると考えられています。
昔は神経症は「こころの病気」と考えられており、身体や脳には全く異常はないと言われていました。しかし近年検査機器が発達してきた事により脳の異常が報告され始めています。
脳にある「扁桃体」という部位は気分や感情、不安に関係している器官ですが、神経症の方はこの扁桃体の活動性が亢進しすぎていることが分かってきています。
後天的な理由によって扁桃体に異常が生じることもありますが、遺伝などの先天的な理由によってこれらの異常が生じている事もあると考えられます。
3.神経症の各疾患の変遷と現在の病名
神経症は非常に幅広い概念です。
「神経症」と一言で言っても、その中身は人によって大きく異なるため、現在ではより細分化された病名が用いられています。
細かい病名も上げると非常に多岐にわたるのですが、ここでは代表的な神経症を紹介します。
Ⅰ.不安神経症(不安障害)
神経症のうち、特に「不安」「恐怖」が根底にある疾患を不安障害と呼びます。
不安障害も更にいくつかに分けられます
- 突然パニック発作が生じる「パニック障害」
- 他者からの注目に対して過度に恐怖を感じてしまう「社交不安障害」
- 慢性的に強い不安が続く「全般性不安障害」
などがあります。
Ⅱ.強迫神経症(強迫性障害)
強迫性障害は、
- 強迫観念
- 強迫行為
を認める疾患です。
強迫観念とは、ある考えやイメージが頭から離れず、繰り返し考えてしまう事です。考える対象は多岐にわたりますが、汚染恐怖(自分が汚れてしまったのではないかという恐怖)と加害恐怖(自分が誰かと傷つけたのではないかという恐怖)があります。
強迫行為というのは、強迫観念に基づいて何度も同じ行動をしてしまう事です。例えば、「手が汚れているのではないか」という汚染恐怖に基づいて何度も何度も手を洗い続けたりします。
Ⅲ.恐怖症(限局性恐怖症)
特定の対象・状況に対してのみ、過剰に恐怖を感じる疾患です。
恐怖症には非常に多くの種類があります。比較的良く知られているものとしては、
- 高所恐怖症(高い状況に過剰な恐怖を感じる)
- 閉所恐怖症(閉所に過剰な恐怖を感じる)
- 嘔吐恐怖症(自分や他者が吐く事に過剰な恐怖を感じる)
- 先端恐怖症(鋭いもの・尖ったものに過剰な恐怖を感じる)
- 対人恐怖症(人に対して過剰に恐怖を感じる)
- 男性恐怖症・女性恐怖症(男性・女性に対して過剰に恐怖を感じる)
- 動物恐怖症(特定の動物に対して過剰に恐怖を感じる)
- 集合体恐怖症(ブツブツしたものに対して過剰に恐怖を感じる)
などがあります。
4.神経症の治療法・克服法
神経症はどのように治していけばいいのでしょうか。
神経症は非常に広い概念であるため、それらをまとめて「こう治療します」と単純化する事は出来ません。
個々の疾患によって治療法は異なるため、詳細は各疾患の治療法を読んでいただいたり、主治医の指示に従っていただきたいのですが、ここでは全体に共通するおおまかな治療法・克服法について紹介させていただきます。
Ⅰ.薬物療法
神経症において薬物療法は重要な治療法の1つです。
使われるお薬としては、
- 抗うつ剤
- 抗不安薬
- 漢方薬
などがあります。
抗うつ剤は特にセロトニンを増やす作用が優れるものを選びます。その理由は不安や恐怖はセロトニンの影響を受けていると考えられているからです。具体的にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が良く用いられます。抗うつ剤は即効性はないものの、ゆっくり少しずつ不安や恐怖を改善させてくれるお薬になります。
また抗不安薬も有用です。抗不安薬の中でもベンゾジアゼピン系抗不安薬がよく用いられます。抗不安薬は即効性があるものも多く、早いものだと服薬後15~20分くらいで効いてくるものもあります。不安が強まってしまった時にすぐに服用して効果が得られるのも抗不安薬の利点です。しかし抗不安薬は長期間・大量に使っていると、耐性や依存性が生じてしまうことがあるため、安易に服用を続けないように注意が必要です。
耐性・・・そのお薬に身体が慣れてきてしまい、お薬の効きが段々悪くなってくること。耐性が生じるとお薬の量を増やさないと効果が得られなくなり、その結果服用量がどんどん増えてしまう危険がある。
依存性・・・そのお薬がないと心身が落ち着かなくなってしまうこと。依存が生じると、お薬の効きがなくなるとイライラ・ソワソワして落ち着かなくなったり、震え・発汗・めまい・しびれ・頭痛などの身体症状が現れてしまう。依存になってしまうとお薬をやめることが難しくなってしまう。
漢方薬は種類によっては不安を和らげる作用があるものがあり、患者さんによっては使用することもあります。全体的な印象としては、抗うつ剤や抗不安薬と比べるとゆっくり穏やかに効くような感じです。
神経症の各疾患によりお薬の有効性は異なります。
パニック障害や社交不安障害は抗うつ剤や抗不安薬が比較的有効で、多くの症例で用いられます。全般性不安障害や恐怖症に対しては、お薬はある程度有効ではあるものの、それだけでは不十分なことも少なくありません。
Ⅱ.生活習慣の改善
神経症の治療に当たって意外と重要な事に生活習慣の改善が挙げられます。不安が高まってもおかしくないような生活習慣を送っている方はまずはそれを改善すべきでしょう。
多くの方が日常的に行っている行動の中には、実は不安を増悪させる行動も多くあります。
一例を挙げれば
- 夜更かし、睡眠不足
- 喫煙
- 過剰なアルコール
- 食生活の乱れ
- 運動不足
- ストレスを発散させる行動がない
などがあります。
睡眠が不足すれば、いつもよりイライラしたり落ち着かなくなったりと不安が高まりやすくなります。また喫煙・アルコールも短期的には気持ちを落ち着かせる作用がありますが、長期的にみればメンタルヘルス上は良い影響はなく、イライラしやすくなったり、気分の波が高まってしまいます。
食事が不規則だったり栄養バランスが悪かったりすると、脳に十分な栄養が届かなくなるため、イライラしやすくなったり不安を感じやすくなってしまいます。また適度な運動はストレス発散のためにも重要です。
みなさんも思い当たる節があるのではないでしょうか。
生活習慣に問題がないかを見直し、修正するだけでも不安は和らぎ、神経症も治りやすくなります。
Ⅲ.精神療法(カウンセリング)
神経症の治療は、お薬だけではなく精神療法も併用することが理想です。
精神療法はお薬と同等の効果があり、また再発予防効果でいえばお薬よりも優れていると報告されています。
一般的にお薬は効果がすぐに出ます。抗不安薬であれば服薬後数十分で効果が出てくるものもあります。また抗うつ剤も2週間~1カ月ほどで効果は表れ始めます。そのため「とりあえず症状を落ち着かせたい」という急性期(治療初期)においてはお薬を利用するのは意味のあることです。しかしお薬は中止してしまうと再発しやすいという欠点もあります。
精神療法はお薬と違って、効果が出るまでに時間がかかります。早くても数カ月はかかるでしょう。しかし精神療法の利点は、しっかりとその考え方を身につければ再発予防効果に優れているという点です。
この両者の特徴を考えると、最初はお薬で治療をはじめて精神状態が落ち着いて来たら精神療法も併用していく、という治療法が理想的でしょう。もちろん実際の治療法は患者さんの症状・状態によって異なりますが、精神療法は多くの患者さんにとって有効な治療法の1つになります。
精神療法もいくつかの方法がありますが、ここでは代表的なものを3つ紹介させて頂きます。
認知行動療法(CBT)
神経症の方は、ある事象に対して「過度に不安に考えてしまう」という思考回路になっています。これは一般的な思考と比べると、「物事のとらえ方が歪んでしまっている」とも言えます。
認知行動療法は、歪んでしまった認知(物事のとらえ方)を修正していくことを目的とします。
まずは不安や心配が生じるメカニズムを学び、これらが生じやすい状況を客観的に見ていきます。その中で自分の不安・心配に対するクセ(自動思考)を把握し、不安・心配を過剰に生じさせなくするにはどうしたらいいのか、あるいは不安・心配が起こりそうな時・起こった時にはどのように考えればいいのかを見直していきます。
認知行動療法については、詳しくは「認知行動療法はどのような特徴を持つ治療法なのか」をご覧ください。
暴露療法
暴露療法とは、不安を感じるような状況にあえて挑戦し、少しずつ慣れていく治療法です。
例えば社交不安障害の方が「人前で緊張して頭が真っ白になってしまう」のであれば、あえて人前で発表することを続けることによって、徐々に慣らしていき自信をつけていきます。
暴露療法のポイントは、最初は簡単なものから暴露させていき、徐々に負荷を上げていくことです。成功体験を積み重ねることにより「大丈夫!」という自信をつけていくことが大切です。
そのため、「辛いけど、何とかギリギリ耐えられる」程度のものに暴露させることが重要です。「耐えられない」ほどのものに暴露させてしまうとかえって恐怖が強まってしまうこともあり、暴露療法はこのさじ加減が非常に重要で、ここを間違えると危険です。
また段階を細かく分けて、時間をかけて少しずつ少しずつ慣らしていくようにしましょう。
例えば、
- 最初は気の許せる家族の前で発表してみる
- それに成功したら次は気の許せる親友1人の前で発表してみる
- それに成功したら次は気の許せる親友2人の前で発表してみる
- それに成功したら次は友人の前で発表してみる
- それに成功したら次は職場の同僚の前で発表してみる
というように、少しずつ少しずつ負荷を上げていってください。
暴露療法は神経症において有用な治療法ですが、「どのくらいのものに暴露させるのか」の判断が非常に難しいため、必ず専門家と相談しながら行うようにしましょう。
森田療法
神経症では、森田療法も有用な精神療法になります。
森田療法では、神経症の症状を無理に治すことはしません。不安や恐怖を感じてしまったり、それに対して動悸や震えが生じたりというのは、生理的な反応であるためです。
そこに焦点を当てるのではなく、「そのような反応にとらわれてしまうこと」が問題だと考えます。
人前で過剰に不安を感じてしまう方は、「人前で不安にならないようにしたい」「人前で動悸が出ないようにしたい」と考えるのではなく、「これは正常な反応なのだから仕方がないんだ」と考えるようにします。というのも、「不安を抑えたい」と意識すればするほど、不安は強くなってしまうからです。
また森田療法では恐怖や不安を過剰に感じてしまうのは、「人から良く思われたい」「より良く生きたい」という欲望があるからだと考えます。神経症の方は、その思いが強くなりすぎてしまい「人から悪く思われはしないか」という恐怖になってしまっています。そうではなく、これは「よりよく生きたい」からきているものなのだということに気付くことが大切になります。
まとめると、
・不安や恐怖、それに伴う症状は生理反応なのだから、無理して抑えようとしない。
・不安・恐怖は本来、「より良く生きたい」という前向きな気持ちからきていることに気付こう
ということです。
森田療法は、神経質、心配性、完璧主義などの神経質的な性格傾向を持つ方に、特に有効であると考えられています。森田療法は、外来では患者さんは日記を書いていただき、それを治療者と確認していきながら進められていきます。
5.神経症とノイローゼ、心身症は何が違うのか?
神経症は時代の流れとともに名称が変わっているため、似たような病名がいくつかあります。
「神経症」
「ノイローゼ」
「不安障害」
「心身症」
「自律神経失調症」
これらの疾患の違いというのは、医師でも誤解されている先生もいらっしゃるほどです。
それぞれの疾患はある程度オーバーラップしているところもあるのですが、おおまかに各特徴を説明していきます。
神経症というのは、このコラムでも詳しく説明した通り、「精神(こころ)の衰弱によって種々の精神症状が出ている状態」です。
神経症は「ノイローゼ」とも言います。神経症はドイツ語で「Neurose(ノイローゼ)」になります。ノイローゼという言葉は聞いた事がある方も多いのではないでしょうか。こころが衰弱してしまっているような状態をノイローゼと言いますよね。神経症もそれと同じです。また他にも「神経衰弱症」などと呼ばれる事もあります。
不安障害というのは、神経症の概念のうち、特に不安や恐怖が根底にある事で種々の精神症状が出ている状態です。神経症とほぼ同じような意味合いになります。
心身症というのは「精神(こころ)の衰弱によって種々の身体症状が出ている状態」を指します。例えば、ストレスによってイライラしたり不安になったといった精神症状が出現するのは神経症(不安障害)になりますが、ストレスによって頭痛が出現したり、胃潰瘍になってしまったりというのは心身症になります。
ただしストレスによって生じる症状は身体症状か精神症状のどちらかにキレイに分かれるものではありません。頭痛や胃痛も出るけど、落ち込みや不安も出る、と混在している事も多いものです。この場合は病名はどうなるのでしょうか。これははっきりと決まっているわけではありませんが、主な症状は身体症状なのか精神症状なのかで判断される事が多いようです。
自律神経失調症は、心身症に含まれる概念です。「精神(こころ)の衰弱によって種々の身体症状が出ている状態」のうち、心身症は器質的異常・機能的異常の両方を含みますが、自律神経失調症は機能的異常しか含みません。
器質的異常というのは、検査で異常が確認できて身体の異常が生じている状態です。例えば、胃痛がある方に胃カメラをしたら胃に潰瘍があった、頭痛の方の血圧を測ったら数値が高血圧の基準を超えていた、などです。対して機能的異常というのは検査では異常が確認できないけども身体に異常が生じている状態です。胃カメラでは異常がないけども胃が痛い、検査では異常がないけども頭が痛い、などの症状が該当します。