ミラドール錠の効果・副作用【医師が教える抗うつ剤の全て】

ミラドール

ミラドールはバイエル薬品より発売されているおくすりです。このおくすりはユニークなはたらきをします。

発売当初は胃薬として発売されました。しかし、次第に「うつ病に効果がある」「統合失調症にも効果がある」ということが分かり、今では様々な用途で使われているおくすりなのです。

そのユニークな特徴から、古いおくすりでありながらも未だ使われることがあります。

しかし、その副作用には気を付けるべきで、「色々効くから」という安易な理由で使うべきではありません。

ここでは、ミラドールの効果や特徴、副作用などについて説明していきます。

なおミラドールは、アステラス社が発売している「ドグマチール」と同じ成分のおくすりです。一般的にはドグマチールの方が有名ですが、販売会社が違うだけでどちらも中身は同じです。薬効を詳しく知りたい方は、ドグマチールの記事もご覧ください。

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1.ミラドールは色々な働きをする

ミラドールには様々な効果がありますが、その基本的な働きは「ドーパミンを遮断すること」です。
この抗ドーパミン作用によって、胃腸薬、統合失調症薬、抗うつ薬としての効果を発揮します。

それぞれを詳しくみてみましょう。

胃薬としてのミラドール

胃などの消化管にあるD2受容体(Dとはドーパミンのこと)をブロックすることで、
消化管運動が改善すると考えられています。

その作用は強くはなく、現在では優れた胃薬がたくさん発売されているため
ミラドールを本格的な胃潰瘍に使うことはあまりありません。

気分安定作用もあるため、心因性の要素も疑われる胃腸症状には向いています。

「胃腸症状を訴えるけど、胃カメラなどの検査をしても何の異常もない」
という場合などですね。

抗精神病薬としてのミラドール

抗精神病薬というのは「統合失調症の治療薬」のことです。

統合失調症は脳のドーパミンが出過ぎていることが一因と考えられています。
そのため、ほとんどの抗精神病薬はドーパミンをブロックするはたらきがあります。

ミラドールも脳のD(ドーパミン)2受容体をブロックすることで統合失調症に効果を示します。

ただしミラドールの脳へのD2受容体遮断作用は弱いため、
統合失調症の治療に使う場合は高用量が必要です。
(添付文書的には300-600mg。最高1200mgまで)

しかし高用量のミラドールは副作用が出てしまうことも多く、
優れた抗精神病薬が多くなってきた現在においては
統合失調症の治療にミラドールを使う機会は少ないのが現状です。

抗うつ薬としてのミラドール

ミラドールがうつ病に効くのはなぜでしょうか。
実はこれは正確には分かっていません。

そもそもうつ病に効果があるためには、ドーパミンを増やさないといけないはずです。
抗うつ剤は全て、ドーパミンなどのモノアミンを増やすことで抗うつ効果を発揮します。
モノアミンを減らす抗うつ剤などありません。

理論的には、ミラドールはドーパミン受容体を遮断するため、
脳内のドーパミンを減らす方向に働くはずです。
しかし現実として、少量のミラドールを投与すると抗うつ効果があるのです。

いくつかの仮説があり、それを紹介すると、

・少量のミラドールを投与するとドーパミン自己受容体を遮断し、
それが結果的にドーパミンの分泌を増やすのではないか

・ノルアドレナリン神経にあるD2受容体を遮断することで、
結果的にノルアドレナリンを増やすのではないか

・エビリファイなどと同じく、ドーパミンの部分作動薬としての働きがあり、
そのために少量のミラドールを投与するとドーパミンが増えるのではないか

などと言われています。

正確には解明されていませんが、少量のミラドールを投与すると
抗うつ効果があることは間違いなく、しばしばうつ病治療に使われています。

以上からミラドールは、

  • 少量(150-300mg)投与すると、うつ病に効果がある
  • 大量(300-600mg)投与すると、統合失調症に効果がある

という、不思議な作用をもつおくすりということになっています。

2.ミラドールの特徴

このようにミラドールは、

  • 胃薬
  • 統合失調症治療薬
  • 抗うつ剤

という3つの働きをする、ユニークなおくすりです。

しかし、上に書いたように現在は統合失調症の治療薬として使うことはほとんどありません。
胃薬としても使うことも多くはなく、抗うつ剤として使われることが一番多いと思われます。

しかし抗うつ剤ですらも、最近は優れた安全性の高い抗うつ剤が次々と発売されているため、
全体的にミラドールの出番は少なくなっています。

「色々効く、マルチなおくすり」と言えば聞こえは良いですが、
これは裏を返せば「どれにも中途半端」という一面もあるからです。

ミラドールの抗うつ剤としての特徴は、ざっくり言うと次のようなものです。

  • 即効性がある。
  • 他の抗うつ剤に見られる副作用が少ない
  • しかし時に重篤な副作用が出る

抗うつ効果としては強くはなく、軽症から中等症のうつ病が適応になります。

しかし、他の抗うつ剤で見られる副作用が少ないのは、大きなメリットです。
これは具体的には、吐き気、眠気、離脱症状、口渇、便秘などです。

現在主流のSSRIやSNRIはこれらの副作用が問題となることがよくありますが、
ミラドールは胃薬でもあるくらいですから、吐き気はまず生じません。
また離脱症状もほとんど起こさず、眠くなることもほとんどありません。

このようにミラドールは非常に使い勝手のよい抗うつ剤であり、
実際SSRIやSNRIが発売される以前はうつ病の主力選手でした。

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3.ミラドールの副作用

具体的なミラドールの副作用としては、

  • 錐体外路症状
  • 乳汁分泌(プロラクチン上昇)、性機能障害
  • 食欲亢進、体重増加

などがあります。

「錐体外路症状が起こり得る」
「ホルモンバランスを崩して、乳汁分泌が起こり得る」

この2点が、他の抗うつ剤には無い副作用です。

反面で、他の抗うつ剤に多く認められる、口渇・便秘、ふらつき・めまい、吐き気、眠気などは
少なめです(起こさないわけではありません)。

では、それぞれを詳しくみてみましょう。

Ⅰ.錐体外路症状(EPS)

脳のドーパミンが過度にブロックされることで起こる身体の不随意運動です。
(不随意運動:自分の意志によらず、勝手に身体が動いてしまうこと)

指先がふるえたり、腕をクネクネと動かしたり、唇や舌をモゴモゴ動かしたり、などと
様々な症状があります。

有名な症状として、

  • ジスキネジア:口や舌などをモゴモゴと動かす
  • アカシジア:ソワソワ、ムズムズと落ち着かず、じっとしていられなくなる

などがあります。

これらの錐体外路症状が出現してしまったら、
ミラドールを減量あるいは中止することが無難でしょう。

引き続き抗うつ剤加療が必要なのであれば、別の抗うつ剤を検討してください。

抗コリン薬(アキネトン、アーテンなど)という、錐体外路症状を和らげるおくすりもありますが、
抗コリン薬は抗コリン薬で副作用があり、漫然と続けない方がいいおくすりです。

おくすりの副作用をおくすりで抑えるのも不自然ですし、
よほどミラドールを使わないといけない状況でない限りはお勧めできません。

Ⅱ.乳汁分泌

ミラドールが、プロラクチンという乳汁を出すホルモンを増やしてしまうために
起こる副作用です。

男女ともに起こりえます。
突然胸から乳汁が出るため、驚く方も多いようです。

ただ、胸から乳汁が出るだけならまだいいのですが、これはホルモンバランスの崩れが原因ですから、
無月経や性機能障害の原因にもなり得ます。

乳汁分泌が起きた場合は、まずはプロラクチンの上昇が原因なのかを採血で確認します。
採血でプロラクチン値を測定し、高ければミラドールによる高プロラクチン血症が疑われます。

対応策は、やはりまずはミラドールを減薬あるいは中止し、
別の抗うつ剤に切り替えることです。

ドーパミンアゴニスト(ドーパミン受容体刺激薬)と呼ばれるおくすりを使うと、
プロラクチンの値を下げることは可能ですが、これも滅多に併用することはありません。

別のおくすりを併用してまで、ミラドールを継続する価値があるのか、
主治医とよく相談して下さい。

Ⅲ.食欲亢進、体重増加

重篤な副作用ではないものの、ミラドールで一番頻度の多い副作用です。

ミラドールは当初は「胃薬」として発売されたおくすりです。
最初は胃薬として使われていましたが、次第に精神にも作用があることが分かったおくすりなのです。

胃腸のドーパミン受容体をブロックすることで消化管の動きをよくするのが
胃薬としての作用機序だと考えられています。

胃腸の動きを良くするため、食欲が上がります。
そして食べる量が増えれば、体重も増えてしまいます。

食欲亢進に対する対処法としては、まずは「食べるのを我慢する」意識が大切です。

これはおくすりの副作用で食欲が人工的に上がっているんだ。
だから、ここで欲求のままに食べてしまうことは非生理的であまりよくないことなんだ、
と考え、なるべく我慢するようにしてください。

また当たり前の対策なんですが、適度な運動も体重増加を抑えるには有効です。

それでも抑えられない時は、他の抗うつ剤への変薬になります。
ほとんどの抗うつ剤で体重増加の可能性はあるのですが、ミラドールの体重増加と
その他の抗うつ剤の体重増加はその機序が違います。

ミラドールは消化管運動が良くなって食欲が上がります。
他の抗うつ剤は、抗ヒスタミン作用というもので食欲が上がります。

機序が違うため、抗うつ剤を別のものに変えれば、食欲亢進の程度が
改善する可能性はあります。

ただし、もちろん悪化してしまう可能性もありえますので、
比較的抗ヒスタミン作用が弱いものを選択するとよいでしょう。

具体的に言うと、ジェイゾロフトやサインバルタあたりでしょうか。

Ⅳ.その他の副作用

その他の副作用も報告はたくさんありますが、頻度はそこまで多くはありません。

特に、

  • 眠気
  • 口渇、便秘
  • ふらつき、めまい
  • 吐き気

などは、SSRIやSNRI、三環系などの他の抗うつ剤に見られる副作用ですが、
ミラドールではあまり認めません。

4.ミラドールが向いている人は?

ミラドールは良い抗うつ剤ですが、上記のような副作用の問題があるため、
現在では第一選択で使うことは少なくなっています。

患者さんの状況にもよりますが、薬物治療は効果よりも安全性を優先すべきですので、
安全性の高い新規抗うつ剤(SSRI、SNRIやNassaなど)などを最初は試すべきでしょう。

他の抗うつ剤と比べたミラドールの利点は

  • 作用機序が違うこと
  • 他の抗うつ剤に多い副作用(吐き気、便秘、眠気、離脱症状など)が少ないこと
  • 薬価が安いこと

です。

そのため、

  • SSRIやSNRIでは効果が得られなかった方
  • SSRIやSNRIの副作用がつらい方

という場合、第二選択として使う抗うつ剤として検討するおくすりとして
いいのではないでしょうか。

(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際のミラドール錠とは異なることをご了承下さい)

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