精神安定剤の種類や強さの比較

精神安定剤

精神安定剤は不安を和らげる作用を持つお薬です。「安定剤」などと呼ばれることもありますが、正式な名称としては「抗不安薬」呼ばれます。

精神安定剤にはたくさんの種類があります。どれも不安を和らげる作用があるのは確かですが、その強さや作用時間、その他に得られる作用などはそれぞれの精神安定剤で違いがあります。

数多くの精神安定剤があるため、

「自分に一番合っている精神安定剤はどれなのだろう」
「今飲んでいる精神安定剤はどのような特徴を持っているのだろう」

と疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。

症状に応じて最適なお薬というのは処方医が選んでくれますが、そうは言っても自分が飲むお薬なのですから、その特徴はしっかりと理解したいですよね。

精神安定剤は不安で苦しんでいる方にとって役立つお薬であるのは間違いありません。しかし一方で乱用や過量服薬・依存なども問題となっており、正しい知識を持って適切に使用することが求められています。

自分が使っている精神安定剤の特徴やメリット・デメリットを知り、精神安定剤の正しい選び方を考えてみましょう。

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1.精神安定剤とは?

まずは精神安定剤とはどのようなお薬なのかを紹介します。

「精神安定剤」というのは医療現場でもまだ使われている用語ですが、実はこれは昔の医療用語であり、現代ではあまり使われていません。

精神安定剤(tranquilizer:トランキライザー)という名称は、精神を安定させる作用に優れるお薬に対する呼び名として昔に使われていた名称になります。

トランキライザーは更に2つに分けられ、

  • Major Tranquilizer(メジャー・トランキライザー)
  • Minor Tranquilizer(マイナー・トランキライザー)

がありました。

この違いは、マイナートランキライザーが「穏やかに心を落ち着かせる」作用を持つお薬であったのに対して、メジャートランキライザーはより強い鎮静作用を持ち、また心を落ち着かせるだけでなく、幻覚や妄想といった精神症状を改善させる作用を持つお薬を指していました。

しかしこのメジャー(主要な)・マイナー(主要でない)という分け方は、あまりお薬の正しい作用を表した言葉ではありません。マイナートランキライザーは「主要でないお薬」であるはずもなく、あまりにその作用や実態を表していない呼び方であるため、このような呼び方は次第に使われなくなってきました。

精神安定剤という用語も、当初はメジャートランキライザーとマイナートランキライザーの両方を表す用語だったのですが、次第にマイナートランキライザーを指す用語として使われるようになりました。「精神安定剤」という言葉は、「心を落ち着かせる」作用を持つマイナートランキライザーを表している用語であり、それに加えて幻覚や妄想などの精神症状を抑える作用を持つメジャートランキライザーに用いるにはあまりに作用の特徴をとらえていない用語であったからです。

現在では、

  • メジャー・トランキライザー⇒抗精神病薬(主に統合失調症の治療に用いるお薬)
  • マイナー・トランキライザー⇒抗不安薬(不安を和らげる作用を持つお薬)

と呼ばれるようになっています。

そのため、簡単にまとめると精神安定剤というのは正確には「抗不安薬」と呼ばれるお薬の事を指しているという事になります。「精神安定剤」=「抗不安薬」であり、、精神安定薬は不安を和らげる作用を持つお薬のことです。

具体的には、「精神安定剤」というのは、

  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬
  • セロトニン1A部分作動薬

の2種類のお薬のことを指しています。

このうち臨床で使われているのは圧倒的にベンゾジアゼピン系抗不安薬の方です。その理由はベンゾジアゼピン系はしっかりとした効果(不安を和らげる作用)があるためです。一方でセロトニン1A部分作動薬は副作用は少なく安全性に優れるのですが、効果が非常に弱いため今一つ普及していません。

まずは精神安定剤(抗不安薬)の2つのお薬を詳しく見ていきましょう。

Ⅰ.ベンゾジアゼピン系抗不安薬

代表的なベンゾジアゼピン系抗不安薬を挙げると、

  • デパス(一般名:エチゾラム)
  • ソラナックス(一般名:アルプラゾラム)
  • ワイパックス(一般名:ロラゼパム)
  • レキソタン(一般名:ブロマゼパム)

などがあります(かっこ内はお薬の一般名・ジェネリック名を書いています)。

ベンゾジアゼピン系はしっかりと不安を抑えてくれる作用があります。またお薬によっては即効性に優れるものもあり、服用後15~20分くらいで効果が出始めるものもあるため、いざという時も頼れます。また不安を抑える作用以外にも「筋弛緩作用(筋肉の緊張を和らげる)」「催眠作用(眠くする)」「抗けいれん作用(けいれんを抑える)」といった作用もあり、これらの作用も上手く使えば役立つことがあります。

ベンゾジアゼピン系の問題点としては、長期間あるいは多量の使用を続けていると耐性や依存性が生じる可能性があります。また、筋弛緩作用や催眠作用によって眠気やふらつき、物忘れが出てしまう可能性があり、特に高齢者では注意が必要です。

耐性・・・そのお薬に身体が慣れてきてしまい、お薬の効きが段々悪くなってくること。耐性が生じるとお薬の量を増やさないと効果が得られなくなり、その結果服用量がどんどん増えてしまう危険がある。

依存性・・・そのお薬がないと心身が落ち着かなくなってしまうこと。依存が生じると、お薬の効きがなくなるとイライラ・ソワソワして落ち着かなくなったり、震え・発汗・めまい・しびれ・頭痛などの身体症状が現れてしまう。依存になってしまうとお薬をやめることが難しくなってしまう。

Ⅱ.セロトニン1A部分作動薬

セロトニン1A部分作動薬は「セディール(タンドスピロン)」という1剤のみ発売されています。副作用が少なく、またベンゾジアゼピン系で問題となる耐性や依存性は生じないのですが、一方で効果が弱いところが欠点です。

臨床ではベンゾジアゼピン系が処方されることが圧倒的に多いため、ここからは主にベンゾジアゼピン系精神安定剤について説明させていただきます。

セディールについて詳しく知りたい方は、セディールの記事を書いていますのでこちらをご覧ください。

2.各精神安定剤の特徴と分類について

精神安定剤はたくさんの種類があるため、患者さんも自分が飲んでいる精神安定剤がどのような位置づけなのか分かりにくいようです。

それぞれの特徴を把握するためには、

  • 抗不安作用(不安を和らげる作用)の強さ
  • 作用時間

の2つの軸で精神安定剤を考えると理解しやすくなります。

Ⅰ.精神安定剤を強さで分類する

精神安定剤をざっくりと

「不安を和らげる作用が強い」
「不安を和らげる作用が中くらい」
「不安を和らげる作用が弱い」

という強さで分類すると次のようになります(代表的な精神安定剤のみ記載しています)。

【強い】
デパス(エチゾラム)
レキソタン/セニラン(ブロマゼパム)
ワイパックス(ロラセパム)
リボトリール/ランドセン(クロナゼパム)
レスタス(フルトプラゼパム)

【中等度】
ソラナックス/コンスタン(アルプラゾラム)
セパゾン(クロキサゾラム)
セルシン/ホリゾン(ジアゼパム)
メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)

【弱い】
グランダキシン(トフィソパム)
リーゼ(クロチアゼパム)
セレナール(オキサゾラム)
バランス/コントール(クロルジアゼポキシド)

精神安定剤は強いものほどしっかりと不安を抑えてくれますが、強ければ強いほど良いというわけではありません。一般的に作用が強ければ強いほど、副作用も多くなる傾向があります。また作用が強いほど耐性・依存性も生じやすくなります。

自分の不安の強さに応じて、適切な強さの精神安定剤を選ぶことが大切です。

Ⅱ.精神安定剤を作用時間で分類する

精神安定剤を、

「作用時間が短い(6時間前後)」
「作用時間が中くらい(12時間前後)」
「作用時間が長い(24時間以上)」

で分類すると次のようになります。

【短い】
グランダキシン(トフィソパム)
リーゼ(クロチアゼパム)
デパス(エチゾラム)

【中等度】
レキソタン/セニラン(ブロマゼパム)
ワイパックス(ロラセパム)
ソラナックス/コンスタン(アルプラゾラム)
セパゾン(クロキサゾラム)

【長い】
セレナール(オキサゾラム)
バランス/コントール(クロルジアゼポキシド)
セルシン/ホリゾン(ジアゼパム)
リボトリール/ランドセン(クロナゼパム)
メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)
レスタス(フルトプラゼパム)

Ⅲ.精神安定剤の強さ・作用時間の比較

  • 抗不安作用の強さ
  • お薬の作用時間

の2つを軸に考えて精神安定剤を比較すると次のようになります。

抗不安薬作用時間(半減期)抗不安作用
グランダキシン短い(1時間未満)
リーゼ短い(約6時間)
デパス短い(約6時間)+++
ソラナックス/コンスタン普通(約14時間)++
ワイパックス普通(約12時間)+++
レキソタン/セニラン普通(約20時間)+++
セパゾン普通(11-21時間)++
セレナール長い(約56時間)
バランス/コントール長い(10-24時間)
セルシン/ホリゾン長い(約50時間)++
リボトリール/ランドセン長い(約27時間)+++
メイラックス非常に長い(60-200時間)++
レスタス非常に長い(約190時間)+++

「半減期」という言葉がありますが、半減期というのはそのお薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、作用時間を知る1つの目安になる値です。実際は半減期だけで作用時間を特定することはできませんが、目安の1つとしては有用です。

精神安定剤を選択するとき、基本的な考えとしては

  • どれくらいの強さのものを選ぶべきか
  • どのくらいの作用時間のものを選ぶべきか

という2つの観点から考えます。

強さは、強ければ強いほど良いというものではなく、自分の不安の強さに応じて選ぶべきです。仮に不安を数値化できるとして、あなたの不安が「5」だったら、「5」に近い強さを持つ精神安定剤を選択することが大切です。

不安が「5」なのに「10」の強さを持つ精神安定剤を選んでしまうと、不安は確かに抑えられるかもしれませんが、長期的には副作用で困ることになります。眠気やふらつき、物忘れなどの副作用が出現しやすくなったり、耐性や依存が生じやすくなってしまい将来的にお薬をなかなかやめられなくなってしまう危険が高くなるでしょう。

反対に不安が「5」なのに「2」の強さしかない精神安定剤を選んでしまうと、不安が十分に抑えられないため、症状がいつまでも改善せず病気も長引いてしまいます。

このように考えると、自分の不安を抑えるのにちょうど良い強さの精神安定剤を選択することが大切だという事が分かるでしょう。

また作用時間は、手間や微調整の必要性、安全性などを考えて選びます。

作用時間の短いものはすぐに効果がなくなってしまうため、1日に何回も服薬しなければいけず手間になりますが効きの微調整をしやすいという利点もあります。作用時間の短いものの方がサッと効いてサッと消えるため、効果を実感しやすいという面もあります。しかし作用時間の短いものは耐性・依存性が生じやすい傾向があります。

作用時間の長いものは、ゆっくり効果が出てくるため、効果を実感しにくいのが欠点です。また微調整が出来ないため、副作用が出てしまったらお薬が抜けるまで長時間我慢しないといけません。しかし1日1回などの少ない回数の服用などで良いため、手間的には楽になります。また作用時間の長いものの方が耐性・依存性は生じにくいというメリットもあります。

どちらも一長一短あるため、自分の不安症状の性質に応じて選択することが大切です。

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3.頓服薬としての精神安定剤の選び方

精神安定剤は、すぐに効果が得られるというのが利点の1つです。そのため、精神安定剤の中でも特に即効性に優れるものは「頓服」として使われることもあります。

頓服というのは、不安が急に強まってきた時に、「その不安をとりあえず抑えるために服用する」という飲み方です。普通、お薬というのは毎日決まった時間に飲みますが、そのような飲み方ではなく「症状が辛い時に飲む」というのが頓服になります。

頓服は、大きな不安を感じる出来事が生じる直前、あるいは生じてすぐに服用します。例えば、人前で発表する前に頓服として服用したり、電車の中で急にパニック発作が生じそうになったため服用したり、という飲み方にになります。

ここから頓服薬に求められる要素としては、

  • すぐに効く
  • しっかり効く

の2つが挙げられます。実際頓服薬として用いられる精神安定剤の多くはこの2つの条件を満たしているものが選ばれています。

頓服はいざという時にすぐ効いてくれないといけません。効くまでに長時間かかるものや、効いているんだかよく分からない弱い効果のものは頓服としての役割を果たしません。つまり即効性があり、効果も強いお薬が頓服として適しています。

各精神安定剤の即効性と作用時間は次のようになります。

抗不安薬作用時間(半減期)最高血中濃度到達時間
グランダキシン短い(1時間未満)約1時間
リーゼ短い(約6時間)約1時間
デパス短い(約6時間)約3時間
ソラナックス/コンスタン普通(約14時間)約2時間
ワイパックス普通(約12時間)約2時間
レキソタン/セニラン普通(約20時間)約1時間
セパゾン普通(11-21時間)2~4時間
セレナール長い(約56時間)約8時間
バランス/コントール長い(10-24時間)約3時間
セルシン/ホリゾン長い(約50時間)約1時間
リボトリール/ランドセン長い(約27時間)約2時間
メイラックス非常に長い(60-200時間)約1時間
レスタス非常に長い(約190時間)4~8時間

最高血中濃度到達時間というのは、そのお薬の血中濃度が最大となるのにどれくらい時間がかかるのかという値で、短いほど即効性があると考えられます。これに先ほど紹介した抗不安作用の強さも加味して考えると、

  • レキソタン(ブロマゼパム)
  • ソラナックス/コンスタン(アルプラゾラム)
  • ワイパックス(ロラゼパム)
  • デパス(エチゾラム)

などが頓服として向いていることが分かります。実際このようなお薬を頓服として使用している方も多いのではないでしょうか。

デパスは頓服としてよく用いられていますが、実は即効性にはそこまで優れるお薬ではありません。しかし効果が強いため頓服としても使用が出来るのです。

また、いくら即効性に優れるからといっても、

  • メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)

などあまりに作用時間の長いものを使ってしまうと、抑えたい一時的な不安は確かに抑えられますが、その後も効果が長く続いてしまうため注意が必要です。通常、頓服は一時的に効いてくれれば十分ですので、あまり作用時間が長いものは向いていません。

4.精神安定剤を強めたい時に知っておいて欲しい事

不安の強い患者さんの診察をしていると、

「もらった精神安定剤が全然効かない。もっと強めてほしい」

とお願いされることがあります。

お薬を増やすのはかんたんです。しかし安易に増やしてしまうと後々面倒なことになることも多いため、増薬は慎重に考えるようにしましょう。

印象としては、ある1つの精神安定剤を上限量まで増やしても不安の改善が不十分な場合、2剤目の精神安定剤を追加したとしても劇的に症状が改善することはまずありません。

というのも、ベンゾジアゼピン系抗精神安定剤はどれも「ベンゾジアゼピン系」という共通の種類であるため、作用点はどれも同じだからです。セロトニン1A受容体作動薬(セディール)を除けば精神安定剤はすべてがベンゾジアゼピン系です。そしてベンゾジアゼピン系はどれも、脳にあるGABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合することで不安を和らげるという共通した作用機序になります。

GABA-A受容体にはベンゾジアゼピン系結合部位が無数にあるわけではなく、その数は決まっています。つまり、ある一定量以上のベンゾジアゼピン系を投与しても、結合部位の数が決まっている以上、それ以上強くは効かないのです。

体感的な印象になりますが、1剤目の精神安定剤を上限量まで使ったときの効果が10だったとすると、そこに2剤目を上限量まで上乗せした場合、2剤目の効果は4程度まで下がります。3剤目にいたっては1~2、場合によってはほぼ効かないような事も珍しくありません。

このようにベンゾジアゼピン系をたくさん使ってもあまり効果はなく、むしろ効きがどんどん感じられなくなっていきます。一方でベンゾジアゼピン系は大量に使えば使うほど耐性・依存性などの副作用のリスクが上がっていきます。

ここから考えるとベンゾジアゼピン系をどんどん増量するという行為は、増量すればするほどメリットが小さくなっていき、デメリットが大きくなるということになります。

精神安定剤は正しく使えば非常に有用なお薬であるのは間違いありません。しかし個人的な見解としては、1剤の精神安定剤を上限量まで使っても効果が不十分であった場合は、「もっと精神安定剤を増やそう」と考えるのではなく、「精神安定剤で不安を取るのはここまでが限界」だと考えた方が良いと感じます。

それ以上不安を取りたい場合は、お薬以外の方法を検討すべきでしょう。どうしてもお薬を使うという場合も、抗うつ剤や不安に効く漢方薬など、精神安定剤以外の選択肢を選ぶことをお勧めいたします。

5.精神安定剤を使っても不安が十分にとれない時は?

精神安定剤を処方してもらい、上限量まで試したけど不安が治まらない、という時はどうしたらいいでしょうか?

先ほどもお話したように、安易に「もう1剤、精神安定剤を追加しましょう」 を考えてはいけません。

精神安定剤の安易な増薬は、リスク・ベネフィット比が不良であると強く指摘されています。

リスク(=副作用などの危険)が増える割に、ベネフィット(=「不安が改善した」などの効果)が得られにくいのです。

リスクで代表的なものは「耐性」「依存性」です。

耐性というのは、摂取を続けるとだんだん効かなくなってくる、という現象です。依存性とは、次第にその物質がないと落ち着かなくなり手放せなくなってしまうことです。依存になってしまってから無理に断薬すると精神的に不安定になったり、ふるえや発汗などの離脱症状が起きてしまうことがあります。

精神安定剤の量が多いほど耐性・依存性は早く形成されますので、どんどん増薬することはオススメしません。

精神安定剤を1剤、上限量まで飲んでも効かない場合は、他の治療法も併用して不安を改善させることを考えてください。精神安定剤以外に不安を改善させる方法をいくつか紹介します。

Ⅰ.異なる作用機序のお薬を試す

精神安定剤以外に不安改善に効果があるお薬としては、

  • 抗うつ剤
  • 漢方薬

などが挙げられます。

抗うつ剤は特にセロトニンを増やす作用が優れるものが良いでしょう。その理由は、不安はセロトニンの影響が大きいと考えられているからです。具体的にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が良く用いられます。抗うつ剤は精神安定剤のような即効性はないものの、ゆっくり少しずつ不安を改善させてくれるお薬になります。また精神安定剤と異なり耐性・依存性も生じません。

漢方薬は種類によっては不安を和らげる作用があるものがあり、患者さんによっては使用することもあります。全体的な印象としてはとゆっくり穏やかに効くような感じで、不安を強力に改善させてくれるものではありません。

Ⅱ.生活習慣の改善

不安改善のために忘れてはいけないのが生活習慣の改善です。気付かずに不安が高まってしまうような生活習慣を送っている方は少なくありません。

多くの方が日常的に行っている行動の中には、実は不安を増悪させる行動も多くあります。

一例を挙げれば

  • 夜更かし、睡眠不足
  • 喫煙
  • 過剰なアルコール
  • 過剰なカフェイン
  • 食生活の乱れ
  • 運動不足
  • ストレスを発散させる行動がない

などがあります。

睡眠が不足すれば、いつもよりイライラしたり落ち着かなくなったりと不安が高まりやすくなります。また喫煙・アルコールも短期的には気持ちを落ち着かせる作用がありますが、長期的にみればメンタルヘルス上は良い影響はなく、イライラしやすくなったり、気分の波が高まってしまいます。

食事が不規則だったり栄養バランスが悪かったりすると、脳に十分な栄養が届かなくなるため、イライラしやすくなったり不安を感じやすくなってしまいます。また適度な運動はストレス発散のためにも重要です。

生活習慣に問題がないかと見直し、問題のある行動を修正するだけでも不安は和らぎます。

Ⅲ.精神療法(カウンセリング)

長期的に見ると不安の改善には、お薬だけではなく精神療法も併用することが理想的です。

一般的にお薬は効果がすぐに出ます。精神安定剤であれば服薬後数十分で効果が出てくるものもあります。また抗うつ剤も2週間~1カ月ほどで効果は表れ始めます。そのため「とりあえず症状を落ち着かせたい」という急性期(治療初期)においてはお薬を利用するのは意味のあることです。しかしお薬は中止してしまうと再発しやすいという欠点もあります。

精神療法はお薬と違って、効果が出るまでに時間がかかります。早くても数カ月はかかるでしょう。しかし精神療法の利点は、しっかりとその考え方を身につければ再発予防効果に優れているという点です。

この両者の特徴を考えると、最初はお薬で治療をはじめて精神状態が落ち着いて来たら精神療法も併用していく、という治療法が理想的でしょう。もちろん実際の治療法は患者さんの症状・状態によって異なりますが、精神療法は多くの患者さんにとって有効な治療法の1つになります。

精神療法もいくつかの方法がありますが、ここでは認知行動療法と森田療法を紹介させていただきます。

認知行動療法(CBT)

不安が強い方は、ある事象に対して「過剰に不安にとらえてしまう」という思考になっています。これは一般的な思考と比べると、「物事を独自の歪んだ視点でとらえてしまっている」とも言えます。

認知行動療法は、歪んでしまった認知(物事のとらえ方)を修正していくことを目的とします。

まずは不安や心配が生じるメカニズムを学び、これらが生じやすい状況を客観的に見ていきます。その中で自分の不安・心配に対するクセ(自動思考)を把握し、不安・心配を過剰に生じさせなくするにはどうしたらいいのか、あるいは不安・心配が起こりそうな時・起こった時にはどのように考えればいいのかを見直していきます。

認知行動療法については、詳しくは「認知行動療法はどのような特徴を持つ治療法なのか」をご覧ください。

森田療法

森田療法は不安が強い方にはぜひ取り入れて頂きたい精神療法になります。

森田療法では、不安を無理に抑えようとはしません。不安というのは、そもそも生理的で自然な反応だからです。そのため「不安が生じる」ことは問題とせず、「不安症状にとらわれてしまうこと」を問題と考えます。

森田療法では「不安にならないようにしなければ」と考えるのではなく、「これは正常な反応なのだから仕方がないんだ」と考えるように訓練していきます。というのも、「不安を抑えたい」と意識すればするほど、不安は強くなってしまうからです。

また森田療法では不安を過剰に感じてしまうのは、「人から良く思われたい」「より良く生きたい」という欲望があるからだと考えます。不安が強い方というのは、その思いが強くなりすぎてしまい「人から悪く思われはしないか」という恐怖になってしまっています。そうではなく、これは「よりよく生きたい」からきているものなのだということに気付くことが大切になります。

まとめると、

・不安は生理反応なのだから、無理して抑えようとしない
・不安は本来、「より良く生きたい」という前向きな気持ちからきていることに気付こう

ということです。

森田療法は、神経質、心配性、完璧主義などの神経質的な性格傾向を持つ方に、特に有効であると考えられています。

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