本当に結婚にはメリットがないのか。結婚とメンタルヘルスの関係

日本の未婚率は近年上昇を続けています。

原因としては経済的な理由や価値観の変化など、多くの要素が指摘されています。

私は経済の専門家ではないので、その面については偉そうな事は言えません。しかし精神科医として「価値観の変化」が結婚率の低下に関係しているとは感じます。

昔と比べて価値観が変わるというのは何も悪いことではありませんし、「結婚しない」という選択肢が人生において必ずしも間違っているわけでもありません。

しかし最近、主に若い男性から「結婚にはメリットがないからしたくない」という声を聞くようになりました。

「結婚したら使えるお金が減るだけ」
「責任が増えるだけでいいことはない」
「仕事でも大変なのに家族サービスまでしないといけないなんて…」

これらの意見は確かに事実ではあります。結婚したら自分だけでなく家族をも養う責任が生じます。独身のときのように自分で稼いだお金を全て自分に使うということもできないでしょう。

「結婚って何のメリットがあるの?」

最近はこのような疑問を持つ若者も少なくないようです。結婚は「メリット」「デメリット」でするものではありませんが、メリットがないからという理由だけで結婚しない人がいるのであればそれは残念に思います。果たして結婚にメリットはないのでしょうか。

今日は精神科医からてみた、結婚のメリットについて話してみたいと思います。

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1.日本の未婚率の推移

内閣府の発表によると、日本の未婚率は男女ともに上昇を続けています。

特に20代後半の未婚率の上昇は著しく、1960年には男性46.1%、女性21.6%であったのが、2010年には男性71.8%、女性60.3%にまで上昇していると報告されています。

(参考:内閣府「未婚率」より)

このまま未婚率が増え続ければ日本の人口は減少に向かう可能性が高く、近年では国も少子化に歯止めをかける対策を進めています。

国勢・国力という意味では、国民人口が少なくなりすぎるのは確かに大きな問題です。しかし個々人で考えた場合、結婚しないことが一概に悪いという事はありません。人それぞれの生き方・価値観があるわけですから、自分で考えて選択すれば良いと思います。

しかしメンタルヘルス的な立場からみると、結婚というのはメリットも大きいものなのです。結婚のメリットとして挙げられることは少ないのですが、統計的に見れば明らかに結婚はメンタルヘルス向上に役立つのです。あくまでも統計上の事であり、個々人にそのまま当てはまるわけではありませんが、少なくともそういった傾向はあるという事です。

結婚は「メリットがあるからする」「メリットがないからしない」というものではありません。そのため「結婚にはこんなメリットがあるよ」という言い方は本来の結婚の意味と外れてしまうところもあります。しかし近年「結婚って何もメリットがないよね」という声を聞く事が少なくない事から、あえて「メリット」という言い方でお話させて頂ければと思います。

「結婚って何のメリットもないよね」と思ってしまう方は、メンタルヘルス的な結婚のメリットをぜひ理解していただき、その上で結婚するかしないかと考えて頂ければを思います。

2.未婚の方が精神疾患にかかりやすいという事実

実は精神科的な立場から結婚を見ると、結婚にはメリットがあります。

私たちは患者さんの情報を聞く時、「結婚しているかどうか」をできる限り確認するようにしています。これは結婚しているかどうかが精神科的リスクに関わっているからです。

例えばうつ病を見てみると、うつ病は既婚者と比べて独身者・離婚者において発症率が高いことが分かっています。

つまり精神科的に見れば、「結婚はうつ病リスクを下げる」ということになります。

また、独身は既婚者に比べて自殺率が2倍高いと報告されており、更にパートナーとに離婚、別居、死別となると自殺率は4〜5倍高くなると報告されています。

これも、独身である事が直接の理由ではなく、副次的な様々な要因が重なった結果だとは考えられますが、少なくとも統計的に見れば、「結婚は自殺リスクを下げる」という事になります。

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3.未婚者の平均寿命は10年も低い

メンタルヘルスとちょっと外れますが、独身の方と既婚の方の平均寿命と比べてみると、驚く事に未婚者の方が平均寿命が10年程も下がることが報告されています。

これは上記の自殺率の影響もありますが、独身だと生活の乱れが多くなることが大きな原因ではないかと思われます。独身の方は周囲に生活リズムを合わせる必要がないため、つい食生活がかたよりがちになったり、夜更かしをしてしまったり、運動不足になってしまったりという可能性が高いのでしょう。

「10年の寿命」というのはかなり大きい差ではないでしょうか。

統計的にみれば、結婚することは「約10年の寿命の延長が得られる」と言う事もできます。これは非常に大きなメリットでしょう。

4.結婚にはメリットがないのか

精神科を訪れる患者さんには様々な方がいらっしゃいます。現場の感覚としてもやはり独身の方は、うつ病になりやすいと感じます。また精神不安定な状況で、独身者はゲートキーパー(いざという時に本人の不調に気付き、サポートしてあげられる人)が少ないことが多い、自殺リスクが高くなることも感じます。

結婚することで精神的な安心感を得やすくなるというのは、精神科医としても日々の診療から感じることです。

仕事から帰ってきた時、家が明るくて家族が待ってくれているというのはやはりホッとするものです。また、何か悩み事があっても身近に相談できるパートナーがいることも大きいでしょう。実際、独身の方は「身近に相談できる人がいない」ということでうつ病になってしまうこともあるのではないでしょうか。

結婚していれば、悩み事があってもパートナーに相談しやすい環境があります。しかし独身だとそのような環境がないため、悩みを自分一人で抱え込んでしまう可能性が高くなります。

もちろん結婚をすれば大変なこともたくさんあります。しかし統計的に見れば、結婚はメンタルヘルスを向上させるというメリットがあるのです。

特に年齢を10年も伸ばしてくれるというのは、非常に大きなメリットなのではないでしょうか。

5.絶対に結婚すべきということではない

では絶対に結婚した方が良いのかと言えば、そうとも言えません。

確かに統計的に見れば、結婚は心身の健康に良い影響をもたらすといえるでしょう。しかしこれは全体の統計を取った結果であって、個々人に全て当てはまるものではないという事は注意が必要です。

結婚自体が大きなストレスになってしまうこともあるし、結婚しない方が楽しく過ごせるという人も中にはいるでしょう。

実際、

  • 夫との関係
  • 妻との関係
  • 姑との関係

など、結婚による人間関係が原因で心が疲弊してしまい、精神科に訪れる方も少なくないのです。

先ほど結婚によって得られるメリットとして

  • メンタルヘルス(こころの健康)が向上する
  • 平均寿命が伸びる

ことを挙げました。

なぜこのようなメリットが生じるかというと、近くに信頼できる人がいる安心感や相談しやすい環境があることが挙げられます。また規則正しい生活やバランスの良い食生活をするようになることもあるでしょう。

これらは結婚することで得られる効果ですが、結婚しないと絶対に得られないものではありません。

独身の方でも、親や親友などに囲まれて十分な安心感を持って過ごしている方もいるでしょう。独身でも既婚者と同じレベルの健康に良い生活をしている方もたくさんいらっしゃいます。

このような独身の方のメンタルヘルスは、恐らく既婚者とあまり変わらず、低くはないのではないかと思われます。

「結婚」という行為自体がメンタルヘルスや平均寿命を上げているわけではありません。結婚によって

  • 安心感
  • 信頼感
  • 健康的な生活

などが向上する結果として、メンタルヘルスや平均寿命が上がっているのです。

そのため、独身でも十分な人間関係が築けていて、健康的な生活が出来、あまり結婚願望もないのであれば、独身のままでいる事も1つの選択肢です。しかし独身だと「孤独感を感じる」「やっぱり寂しい」「どうしても不規則な生活になってしまう」という方にとっては、結婚というのはこのようなメリットもあるのです。

最後に、今回は記事の都合上、「結婚のメリット」などといった書き方をしてしまいましたが、本来結婚はメリット・デメリットといった考え方ですべきものではありません。このような書き方をしてしまった事で気分を害された方がいらっしゃれば非常に申し訳なく思います。

「結婚がメリットがない」という理由で結婚しない方が少なくない事を感じ、また精神科医として患者さんの診察をしている中で、結婚にはこのような良い面があるという事を知って頂けたら、これはみなさんのメンタルヘルス向上につながると感じたため、あえてこのような書き方で書かせて頂きました。

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