昼食うつ病とは|夫の定年を機に妻に発症するうつ病

昼食うつ病とは

うつ病は20代~40代に発症しやすいと報告されていますが、それ以外の年代にも発症することはあります。

好発年齢からはずれて発症するうつ病に多い傾向として「発症に誘因を伴っている」ことが挙げられます。例えば、失業や離婚のストレスなどでうつ病になってしまう、子供が家から巣立った寂しさでうつ病になってしまう、などです。

これらは誘因として分かりやすいものですが、中には一見誘因とはなりそうにないものが原因で、うつ病が発症してしまうケースもあります。

今日はそのうちの1つである、「夫の定年を機に妻がうつ病になってしまう」というケースについて紹介します。

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1.夫の定年で生じるうつ病とは?

うつ病が生じる原因には様々なものがあります。

その原因の多くは、誰から見ても明らかに「それはストレスだ」「そんなことがあったならつらいだろう」と感じるようなものです。例えば、親しい人の死や、失業などで大きな精神的ダメージを受けてしまってうつ病を発症してしまう、というのは一般の方も理解しやすいと思います。

しかしうつ病の原因の中には、一見すると「なぜこのような原因で?」と思われるようなものもあります。

その1つに、夫の定年を機に妻がうつ病を発症してしまうケースがあります。

夫が定年になると、夫婦で一緒に過ごす時間が増えます。夫との時間が今までと比べて急に増えることとなり、これが原因でうつ病になってしまうのです。

これだけを聞くと、妻が夫を嫌っていることが原因のように感じるかもしれません。しかし、妻と夫の仲が悪いとか、元々妻が夫を嫌っていたとか、そういう理由があるわけではないのに妻にうつ病が発症してしまうのです。

仲が悪いどころか、むしろ妻も「夫が定年になって一緒に過ごせるのが楽しみ」「二人で色々と出かけたい」などと定年を喜んでいたのにも関わらず、実際に夫が定年になるとうつ病になってしまうことすらもあります。

2.夫の定年で妻がうつ病になるのはなぜ?

夫が定年になれば、夫が自宅にいる時間が増えます。それが原因で妻がうつ病になってしまうことがあります。しかも妻と夫の仲が別に悪かったわけではないのに、です。

なぜこんなことが生じるのでしょうか。

この原因は、「妻と夫の不仲」「実は妻が夫を嫌っている」というようなものではありません。よくこのように誤解されてしまうのですがそうではなく、真の理由は「急な環境変化」にあります。

夫が定年になると、急に夫と妻が一緒に過ごす時間が増えます。今まで夫は日中仕事で不在だったのが、途端に一日中一緒にいるようになると、この急激な環境変化は精神的なストレスを与えます。

繰り返しますが、これは「夫の存在がストレス」だという事ではありません。急な環境変化がストレスになっているということを誤解しないようにして下さい。

徐々に夫が自宅にいる時間が増えていく、というのであれば妻も適応しやすく、うつ病にはならないでしょう。しかし実際は、ある日から突然一日中夫が家にいるようになり、環境が激変します。また、それに伴って妻の生活も大きな変更を余儀なくされます。

一番大きいのが昼食だと言われています。今までは夫は職場で食べ、妻は自宅で食べたり友人と食べに行ったりしていました。そのような生活が何十年も続いていたのに、突然夫と昼食を一緒に食べるようになります。

数十年ぶりに毎日夫の昼食の支度をしなければいけなくなります。これが大きな負担となります。これも昼食を作るという作業的な負担ではなく、「環境変化」に対する適応という意味での負担です。

夫の定年を機に妻がうつ病を発症してしまう場合、このようなことが原因となっているため、このタイプのうつ病を「昼食うつ病」と呼ぶ専門家もいます。

今まで日中に自分ひとりだったため、自分の食事を用意するだけで良いという生活が何十年も続いていました。ありあわせのもので簡単に作ったり、あるいは仲の良い友人と一緒にランチに行ったりと、自分の自由にある程度決めていたのです。

しかし夫がいるのであれば、ありあわせのもので済ますわけにはいかず、しっかりとしたもの作る必要があるでしょう。また、自分の都合だけで友人とランチをしに行くわけにはいかなくなります。

夫としては「昼食を作るくらい、主婦として当然じゃないか!」と言いたくなるでしょう。確かにそれは正論なのですが、突然このように生活スタイルが変化してしまうと、急にストレスがかかるため、時にうつ病を発症してしまうことがあるのです。

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3.夫の定年で生じるうつ病の問題点

本来、夫が定年を迎えて仕事から解放されたことは、喜ばしいことでもあります。夫の自由な時間が増えた分、今まで一緒に出来なかったことをこれからはやりたい、と楽しみにしている奥様も少なくありません。

しかし、夫の存在によってうつ病になってしまうと、これは夫を誤解させ、夫婦関係を悪化させる原因となってしまいます。

熟年離婚という言葉を良く聞くようになってきましたが、このひとつの原因として夫の定年で妻がうつ病を発症してしまった事による夫婦関係の悪化もあるのではないかと考えます。

というのも、夫が定年で家にいる時間が増えたから妻がうつ病になった、というのは夫側から見れば当然面白くないからです。

「俺が家にいるからうつ病になるって、なんだそれは!?」
「俺の存在がストレスだってことか?」

こう怒りたくもなるでしょう。また、「自分は妻に嫌われている」とう誤解から、夫婦仲はどんどんと険悪になってしまいます。誤解が解けないままだと、夫婦関係が更に悪化していき、離婚など最悪のケースに至ってしまう可能性もあります。

このうつ病に妻がかかってしまった時、夫様に誤解しないようにして頂きたいのですが、これは夫という存在がストレスだからうつ病になったのではありません。

「あなたが嫌いだから一緒にいるとうつ病になった」とか「あなたなんかに昼食を作りたくないからうつ病になった」とか、そういうものではなく、そのように理解してはいけません。

うつ病になった原因は、今までの生活パターンが急激に変化したため、その急な変化に対応出来なかったからです。

夫様の存在が悪いのではなく、急な生活パターンの変化が問題なのです。ここは絶対に誤解してはいけません。

このうつ病の一番の問題点は、夫が原因を誤解しやすいところです。そして、その誤解のために夫婦関係が不必要に悪化してしまうことがあるのです。しかし、そもそもが誤解なのにそれで夫婦関係が悪化してしまうのはとてももったいないことです。

誰だって急激に環境が変化すればストレスを感じます。

「今までは日中全く顔をあわせなかったのに、それが急に毎日一緒にいるようになったのだから、慣れるまで時間がかかるよな」

夫様がこのように考えてくれると、私たちとしてはとてもありがたく思います。

4.夫の定年で妻がうつ病になった時の治療法

夫の定年という「環境変化」を機に妻にうつ病が発症してしまう、というタイプのうつ病について紹介してきました。

では、このうつ病の治療はどのように行われるのでしょうか。

基本的にはうつ病ですので、治療もうつ病の治療に準じるのが原則です。医師の判断のもと、必要があれば安静・休養を指示したり、抗うつ剤などのお薬を使ったり、あるいはカウンセリングなどの精神療法を導入することもあります。

また、このうつ病の治療で特に重要なのは、原因が「急な環境変化にある」という点になります。そのため、環境変化を緩やかにする工夫が出来ればそれは治療経過をとても良くします。

具体的には、夫様に病気の発症の原因を正しく理解していただき、適切に協力していただくことです。

例えば、いきなり一日中一緒にいるようになれば、お互いストレスになってしまうでしょうから、日中はお互い適度に用事を入れて、良い距離感を保つようにしてみることは非常に有効でしょう。変化が緩やかになる分だけ奥様は適応しやすくなり、症状も和らぐでしょう。

また、ご主人様も自由な時間が増えた分、「じゃあ俺が昼飯を作ろうか」「お前が慣れるまで、自分の昼飯は自分で作ってみるよ」と環境変化の緩和に協力してくれると、経過は非常に良好になります。

これは環境変化が緩やかになるというメリットのほか、夫様が「病気の原因を正しく理解してくれて、協力してくれている」という事に対して、奥様は安心を感じられるのも利点になります。

このうつ病は、「妻が夫を嫌っているからうつ病になった」などと誤解されることが多いのですが、しっかりと原因を理解し、正しく対応していただきたいと願っております。

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