メイラックスは1989年に発売された比較的新しい抗不安薬です。抗不安薬は不安感を和らげる作用を持ち、「安定剤」「精神安定剤」とも呼ばれます。
メイラックスは副作用の頻度は少なめですが、作用時間が長いという特性上、副作用も長く出続けてしまう可能性があるため注意が必要なお薬です。
ここでは、メイラックスの副作用やその対処法について紹介します。
1.メイラックスの副作用の特徴
メイラックスは「ベンゾジアゼピン系」に分類される抗不安薬です。
メイラックスの最大の特徴は「作用時間の長さ」で、約122時間前後という長い半減期を持ちます。半減期とは、お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、作用時間を知る1つの目安になる値です。
長くゆっくりと効くため、副作用もゆるやかである事が多く、一般的にメイラックスの副作用は多くはありません。
むしろベンゾジアゼピン系抗不安薬の中では、副作用が少なく安全性が高いと考えてよいでしょう。ベンゾジアゼピン系を長期間服薬する必要がある患者さんは、副作用を少なくする目的で安全性の高いメイラックスへ切り替えることもあるほどです。
しかし、副作用がないわけではありません。ゆっくり弱く出る事が多いですが、副作用は起こり得ます。
どのベンゾジアゼピン系でも同じなのですが、副作用の中で一番注意すべきものは「依存」です。
メイラックスに限らずすべてのベンゾジアゼピン系は長期・大量服薬を続けていると「耐性形成」「依存形成」を生じる可能性があります。
耐性とは、身体がお薬に慣れてきてしまい、徐々にお薬の効きが悪くなってきてしまう事です。
依存とは、そのお薬を手放せなくなってしまい、飲まないといても立ってもいられなくなってしまう、という状態です。
メイラックスの依存形成は、ベンゾジアゼピン系の中では少ない部類に入りますが、生じる可能性はあるため必ず医師の指示を守り、決められた量の内服にとどめることが非常に大切です。
また、ベンゾジアゼピン系は、
- 抗不安作用(不安を和らげる)
- 催眠作用(眠くする)
- 筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす)
- 抗けいれん作用(けいれんを抑える)
という4つのはたらきを持ちます。
それぞれの強さはおくすりによって異なり、メイラックスはと言うと、
- 抗不安作用はやや強い
- 催眠作用は中くらい
- 筋弛緩作用は弱い
- 抗けいれん作用は中くらい
となります(個人差も大きいため、上記はあくまでも目安になります)。
そして、これらに関連した副作用が生じることがあります。
具体的には、
- 催眠作用で眠気やふらつきが生じる
- 筋弛緩作用で、ふらつき、転倒が起こりやすくなる
などです。
これらがメイラックスにみられる主な副作用です。
2.メイラックスの副作用と対処法
では、それぞれの副作用を詳しくみていき、その対処法も考えてみましょう。
なおここで紹介する対処法は独断では行わず、必ず主治医の指示のもとで行うようにして下さい。
Ⅰ.耐性・依存性形成
全てのベンゾジアゼピン系に言える事ですが、長期的に見ると「耐性」「依存性」は一番の問題となります。
メイラックスはベンゾジアゼピン系抗不安薬の中では依存形成が少ない方にはなりますが、絶対に起きないというわけではありません。すべてのベンゾジアゼピン系は、無茶な使い方を続けると耐性・依存性を起こす危険性があるのです。
耐性というのは、身体がお薬に慣れてきてしまう事です。
最初は1錠飲めば十分効いていたのに、だんだんと身体が慣れてしまい、2錠、3錠・・・と量を増やさないと効かなくなってしまう状態です。
依存性というのは、その物質なしではいられなくなる状態をいいます。
耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。アルコールにも耐性と依存性があることが知られています。
アルコールを常用していると、最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなってきて、次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。
また大量の飲酒を続けていると、次第にいつも飲酒していないと落ち着かなくなり、常にアルコールを求めるようになります。これは依存性が形成されているという事です。
ベンゾジアゼピン系には耐性と依存性がありますが、アルコールと比べて特段強くというわけではなく、医師の指示通りに内服していれば問題になる事は多くはありません。お酒だって節度を持った摂取であれば、耐性・依存性が問題となることはありませんよね。それと同じです。
耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則です。アルコールもベンゾジアゼピン系も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。
医師は、耐性・依存性をなるべく起こさないように考えて処方しています。それを自分の勝手な判断で飲んでしまうと、耐性・依存性が形成されやすくなる可能性があります。
アルコールとの併用も危険です。アルコールとベンゾジアゼピン系を一緒に飲むと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。
また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。基本的にベンゾジアゼピン系抗不安薬というのは、「一時的に用いるお薬」という位置づけです。
ずっと飲み続けるものではなく、不安の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです(長期的に不安を取りたい場合は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬ではなくSSRIなどが用いられます)。
定期的に「量を減らせないか」と検討する必要があり、必要ない状態なのに漫然と内服を続けてはいけません。
服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。
Ⅱ.眠気、倦怠感、ふらつき
ベンゾジアゼピン系は、催眠効果、筋弛緩効果があるため、これが強く出すぎると、眠気やだるさを感じます。ふらつきが出てしまうケースもあります。
メイラックスは筋弛緩作用は弱めであるものの催眠作用がそれなりにあり、眠気が出てしまうことは少なくはありません。
更にメイラックスの場合は半減期が長く、1日中眠気が続いてしまうことも多いため、他の抗不安薬の眠気よりも問題になりやすいという事があります。
「長く効く」というのはメイラックスの長所ですが、これは裏を返せば「なかなか身体から抜けない」ということでもあるのです。
そのためメイラックスを服薬する場合は、まず最初は少量からはじめて大きな副作用が出ないか確認することが大切です。
もし眠気・ふらつきなどの副作用が出てしまったらどうすればいいでしょうか。
まだ内服して間もないのであれば、「様子をみてみる」のも手です。服薬を続けることで「慣れてくる」ことがあるからです。
様子を見れる程度の眠気やだるさであれば、1~2週間様子をみて下さい。自然と改善していくことは少なくありません。
それでも改善しないという場合、次の対処法は「服薬量を減らすこと」になります。
量を減らせば作用も副作用も弱まります。抗不安効果が弱まってしまうというデメリットはありますが、副作用がつらすぎる場合は仕方ありません。例えば、メイラックスを1mg内服すると眠気が強く出てしまうのであれば、0.5mgなどに減薬すれば副作用は軽減するでしょう。
また、「お薬の種類を変える」という方法もあります。より筋弛緩作用や催眠作用が少ない抗不安薬に変更すると、改善を得られる可能性があります。
Ⅲ.物忘れ(健忘)
メイラックスに限らず、ベンゾジアゼピン系のお薬は心身をリラックスさせるはたらきがあるため、頭がボーッとしてしまい物忘れが出現することがあります。
実際、ベンゾジアゼピン系を長く使っている高齢者は認知症を発症しやすくなる、という報告もあります(詳しくは「高齢者にベンゾジアゼピン系を長期投与すると認知症になりやすくなる【研究報告】」をご覧ください)。
適度に心身がリラックスし、緊張がほぐれるのは良いことですが、日常生活に支障が出るほどの物忘れが出現している場合は、お薬を減薬あるいは変薬する必要があるでしょう。
これらが臨床でよく取られる副作用の対処法です。
なおこれらの方法は独断で行うと、症状を悪化させてしまう可能性がありますので、必ず主治医と相談しながら行ってください。