過呼吸・過換気症候群ではどのような症状が生じるのか

過呼吸症候群(過換気症候群)は、強い不安・恐怖・緊張などの精神的ストレスをきっかけに、過呼吸が誘発されてしまう症候群です。

その名称の通り主な症状は「過呼吸」になりますが、その他も様々な症状も出現することが知られています。

過呼吸ではどのような症状が生じるのでしょうか。今日は過呼吸・過換気症候群で生じる症状について紹介します。

スポンサーリンク

1.過呼吸(呼吸困難・呼吸苦・窒息感など)

過呼吸・過換気症候群は、その名称の通り「過呼吸」が主な症状になります。

過呼吸は突然、予期せず生じますが、多くの場合は不安・緊張・恐怖などの精神的ストレスが強くかかった時に誘発されやすくなります。また少数ではありますが、精神的ストレス以外でも激しい運動、入浴、空腹感、発熱、貧血などで誘発される例も報告されています。

過呼吸が生じる機序は、精神的ストレスによって自律神経のバランスが崩れ、呼吸中枢が一時的に正常に機能しなくなるために生じていると考えられていますが、その明確な機序は分かっていません。

発作が生じると患者さんは、「息を吸えない」「息苦しい」という感覚を起こします。実際はちゃんと呼吸は出来ているし、酸素濃度も十分なのですが、このような感覚から恐怖を感じて慌ててたくさん呼吸をしようとするため、過呼吸は増悪していきます。

実際に過呼吸発作中の患者さんの酸素濃度を測定すると、正常値以上であることが確認できます。息苦しいと感じはするものの、実際は酸素は十分に取りこめているのです。この「呼吸苦」は「息が苦しい感じ」がするということで、実際に酸素が足りなくなっているわけではありません。

そのため、発作が起きても慌てる必要はありません。落ち着いてゆっくりと発作が落ち着くのを待ちましょう。

むしろパニックになって慌てた行動をする方が、二次的な被害(転倒したり、怪我をしたり)につながり、危険だと考えられます。

2.血管収縮に伴う意識低下・めまい・胸痛・腹痛

過呼吸を起こすと、それに伴って様々な症状も出現してきます。

代表的なものとして、

  • 意識が遠のいていく
  • めまい
  • 胸痛・動悸などの心臓の症状
  • 腹痛・悪心などのお腹の症状

などがあります。

これらは全て、血管が収縮することによって生じると考えられています。

ではなぜ、過呼吸になると血管が収縮するのでしょうか。

呼吸というのは酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す行為だと、小学校で習ったと思います。過呼吸になるとこの行為が増えるわけですから、血液中の酸素が増え二酸化炭素が少なくなっていきます。

二酸化炭素は身体を酸性にする物質であるため、それが少なくなると血液はアルカリ性に傾きます。これを「呼吸性アルカローシス」と言います。

そして血液がアルカリ性になると、血管が収縮することが知られています。

脳の血管が収縮すれば、めまいを生じたり意識が遠のく感覚が生じます。心臓の周囲の血管が収縮すれば動悸や胸痛を感じます。また腹部に分布する血管が収縮すれば悪心や腹痛が生じます。

過呼吸に伴って生じるこれらの症状は、このような機序で発症すると考えられています。

胸痛や意識低下などが生じると、「これは重大な病気なのでは」「後遺症が残るのでは」と心配になりますが、血管に問題があるわけではなく、あくまでも血液がアルカリ性になったことで血管が一時的に収縮しているだけです。そのため、そのまま重篤な病気に至ることもありませんし後遺症が残ることもありません。

スポンサーリンク

3.低カルシウムに伴う四肢のしびれ・硬直・けいれん

過呼吸が生じると、手足がしびれたり固まったり、けいれんのように手足が震えたりすることがあります。これらの症状も患者さんを不安にさせてしまうものですが、これらはどのような機序で生じているのでしょうか。

この四肢のしびれ・硬直・けいれんといった症状は、過呼吸に伴って血液中のカルシウムイオンの濃度が低くなるのが原因だと考えられています。

過呼吸になると二酸化炭素濃度が少なくなり、血液がアルカリ性になるということをお話しました(呼吸性アルカローシス)。正常な血液はpH7.4前後なのですが、過呼吸で呼吸性アルカローシスになるとpHは7.5以上となります。

血液がアルカリ性になったままだと、身体に様々な支障を来すため、私たちの身体は何とかしてpHを正常に戻そうとします。

正常に戻すためには、血液を酸性にしなければいけません。そのために私たちの身体は、血液中のタンパク質(主にアルブミン)から水素イオンを遊離させるという方法を取ります。水素イオン(H+)は液体を酸性にするはたらきがあるためです。

このようなはたらきで、血液を正常のpHに保つために代償しようとしますが、水素イオンが外れてしまったタンパク質は、水素イオンの代わりにカルシウムイオンと結合します。すると、血液中のカルシウムイオンが低下してしまうのです(低カルシウム血症)。そして血液中のカルシウムイオンが低値となると、手足の筋肉のしびれ・硬直・けいれんなどが生じます。

これら手足の症状も、過呼吸に伴う一時的なものだという事が分かります。過呼吸が落ち着けば、血液のpHも正常となるため、血液中のカルシウムイオンの濃度も正常に戻り、これらの症状は自然と改善します。

4.過呼吸は1時間以内に収まり、予後は良好

過呼吸・過換気症候群の発作の症状は、その特徴として、

「一時的で、後遺症は残らない」

ということが挙げられます。

発作は数分~数十分程度でピークに達し、30分~1時間ほどで消失します。

また、前項で説明したように過呼吸に伴って生じる様々な症状も、一時的なものであり過呼吸が無くなれば改善するものですので、後遺症も基本的には残りません。

唯一、気を付けないといけないのは、過呼吸でパニックになってしまい、二次的な事故が起こってしまう事です。過呼吸自体は予後良好であり、後遺症も残りませんが、過呼吸発作で慌ててパニックになって、転んだり、身体をぶつけて怪我をしたりという事は時々あります。

二次的な被害を避けるためにも、過呼吸発作が生じても慌てず、落ち着いて発作が過ぎるのを待つことが大切です。

5.過呼吸は再発が多いため正しい知識と治療が必要

過呼吸の発作自体は、一時的で後遺症なく治るものなのですが、過呼吸は繰り返されやすいという問題があります。

一度過呼吸になった人は、その後も不安・恐怖・緊張を感じるたびに過呼吸が誘発されやすいのです。

そのため、次の過呼吸発作を起こさないための予防が大切になります。予防策や治療法については別の記事で詳しく書きますが、大きな精神的ストレスによって生じるため、精神的ストレスの除去・回避・受容などを行うことになります。

自分自身の工夫で改善できればそれで良いのですが、難しい場合は精神科・心療内科を受診し、カウンセリングなどの精神療法を受けたり、場合によっては薬物療法を行う必要もあります。

スポンサーリンク


こちらの記事も是非ご覧下さい