ルボックスの吐き気と3つの対処法 【医師が教える抗うつ剤の全て】

ルボックスの吐き気

ルボックスを飲むと、吐き気が生じることがあります。

これはSSRIやSNRIに多い副作用で、中でもルボックスは、一番古いSSRIであるため、吐き気の副作用はとりわけ多いのです。ちなみに吐き気は、内服初期(=飲み始め)に多いことが知られています。

なぜ、ルボックスを飲むと吐き気が生じるのでしょうか。また、吐き気への良い対処法はあるのでしょうか?

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1.ルボックスで吐き気が起きる理由

ルボックスをはじめとした抗うつ剤は、しばしば吐き気を起こします。
この吐き気は、内服初期に起こりやすいことが特徴です。

ルボックスで吐き気が起こりうる、ということは事前に理解しておく必要があります。

精神科を受診し、初めて抗うつ剤を処方されると、ほとんどの方は「飲んで大丈夫かな・・・?」と
不安な気持ちを抱えながら内服します。
「精神科のお薬」は、まだ患者さんにとっては飲むことに大きな抵抗があるものなのです。

そしてSSRIは、飲んで数時間経つとなんだか気持ち悪くなってくるのです。
ただでさえ薬に対して抵抗を持っていた中、気持ち悪くなってきたらどう思うでしょうか?

「この薬、本当に大丈夫なんだろうか?」「ヤバイ薬じゃないだろうか」
吐き気に対する事前知識がないと、不安が更に煽られてしまいます。

そうならないために、ルボックスの飲み始めは吐き気が起きやすい、いうことは知っておく必要があるし、
医師もしっかりと説明する必要があります。

これは副作用であり、出現したからといって過剰に心配することはありません。
吐き気が起きたということは、ルボックスの効果が体内で出ているということの裏返しでもあります。

ルボックスをはじめ、多くの抗うつ剤は「脳のセロトニンを増やす」ことを目的に投与されます。
しかし、お薬は全身に回りますから脳以外の全身のセロトニンを増やし、様々な部位のセロトニン受容体を刺激してしまいます。

セロトニン受容体のうち、脳に存在するのは10%程未満で、残り90%以上は脳以外に存在しています。
そして、脳以外で一番多いのは胃や腸などの消化管です。

ルボックスを内服すると、消化管に存在するセロトニン3受容体が過剰に刺激されてしまい、
それによって吐き気や胃部不快感が生じると言われています。

つまり、吐き気が起こったということは、全身のセロトニンの量が増えてきているという証拠なのです。
これが分かっていれば吐き気が来ても不安になりませんし、吐き気を耐える気持ちも出てくるでしょう。

また、多くの場合1-2週間たつとルボックスを投与された状態でのセロトニン量に身体が慣れてくるため、
吐き気は消失していきます。ずっと吐き気で苦しむケースは多くありません。

2.他抗うつ剤との吐き気の比較

吐き気は、SSRI/SNRIで多く見られます。
SSRIやSNRIはセロトニンを選択的に増やすお薬だからです。

SSRI:ルボックス、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロなど
SNRI:サインバルタ、トレドミンなど

頻度としては軽いものも含めれば30-40%くらいと言われています。
少なくはない頻度ですので、「吐き気は起こるだろう」くらいに考えておいた方が無難かもしれませんね。

中でもルボックスはSSRI/SNRIの中で一番古いお薬であり、吐き気の頻度は他のSSRI/SNRIより
一段階多くなっていますので、より注意が必要です。

反対に、三環系や四環系、Nassaなどの抗うつ剤では吐き気はあまり見られません。

他抗うつ剤との比較をみてみましょう。

抗うつ剤吐き気の頻度抗うつ剤吐き気の頻度
(Nassa)リフレックス/レメロン(ー)(SSRI)パキシル(++)
(四環系)ルジオミール(-)(SSRI)ルボックス/デプロメール(+++)
(四環系)テトラミド(-)(SSRI)ジェイゾロフト(++)
デジレル(-)(SSRI)レクサプロ(++)
(三環系)トフラニール(±)(SNRI)トレドミン(+)
(三環系)トリプタノール(±)(SNRI)サインバルタ(++)
(三環系)アナフラニール(+)スルピリド(-)
(三環系)ノリトレン(±)
(三環系)アモキサン(±)

吐き気はSSRI/SNRIに多いのが分かると思います。

その中でもルボックスは多く、 トレドミンはやや少なめとなっています。

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3.ルボックスの吐き気の対処法

ルボックスを処方され、恐る恐る飲んでみたら強い吐き気に襲われた。
吐き気の副作用を知らないと「この薬、大丈夫なのか」と不安になってしまうでしょう。

しかし、過剰に心配する必要はありません。

この吐き気はあくまでも副作用として生じているだけで、ほとんどの場合
適切に対応することで改善させることが可能です。

それでは、具体的な対処法をみてみましょう。

1.様子をみる

ほとんど(90%以上)の患者さんで、この「吐き気」は自然と改善してきます。

ルボックスによって、体内のセロトニンが急に増えるわけですから、
最初は身体もびっくりしてしまい、対応しきれずに副作用が強く出ます。

しかし、人間の身体というのは良く出来たもので、環境が変わると少しずつ順応しはじめます。
1-2週間もすれば、増えたセロトニン量に身体が対応できるようになります。
そうなると、吐き気も感じにくくなります。

最初の1-2週間が一番つらいので、何とかここを乗り切りましょう。
吐き気が出ているということは、体のセロトニンが増えているという証拠なんだ、
と前向きに考えてみてください。

自然と改善することが分かっているので、
軽い吐き気であれば、そのまま様子を見ても問題はありません。

2.胃薬を併用する

現状で一番取られている方法です。
胃薬を使えばほとんどの場合で吐き気を軽減することができます。

副作用止めとして特別な胃薬があるわけではありません。
胃腸炎や胃潰瘍の時に内科で処方される整腸剤や胃粘膜保護剤です。
よく使われる胃薬としては、

  • ガスモチン・・・消化管運動改善薬。胃腸の蠕動運動を促進するセロトニン4受容体を刺激するお薬です
  • ソロン・・・胃粘膜保護・防御因子増強薬。 胃のプロスタグランジンを増加させることで胃粘膜を保護します。
  • ナウゼリン・・・制吐薬。ドパミン受容体を遮断することで吐き気を抑えます。

などがあります。

また、それでも吐き気がつらい場合は短期的に胃酸の分泌を抑えるお薬(H2ブロッカーやPPIと呼ばれるもの)を
使用する事もあります。

  • ガスター・・・H(ヒスタミン)2受容体阻害薬。胃壁のヒスタミン受容体を阻害し、胃酸の過分泌を抑えます。
  • タケプロン・・・PPI(プロトンポンプ阻害薬)。胃壁のプロトンポンプの働きを抑えることで、胃酸のか分泌を抑えます。

しかし特にPPIなどは、本来胃潰瘍などに使うお薬なので、薬の副作用止めのために使う事には
反対される先生もいます。反対する理由ももっともで、確かに安易に使うべきではありません。
ただ、現実としては確かに吐き気に効果はありますので、本当にやむを得ない場合は検討することがあります。

吐き気が生じる頻度は30-40%と少なくありません。

そのため、吐き気が出てから投与するのではなく、最初から予防的に胃薬を出しておく先生も多いです。

「胃腸がもともと弱い」「吐き気が心配」という方は、主治医と相談し、胃薬もあらかじめもらっておきましょう。

3.抗うつ剤の種類を変える

上記の方法でも改善が得られず、吐き気が続く場合は、
抗うつ剤の種類を変えることも方法です。

吐き気が少ないものという面だけで考えると、
リフレックス/レメロンやドグマチールが候補として挙がります。

ただし、体重増加や眠気など別の副作用が起こるかもしれません。
どの抗うつ剤も一長一短で、良いところもあれば悪いところもあります。

どの抗うつ剤に変えるかは、主治医とよく相談して決めましょう。

ドグマチールは抗うつ剤ですが、もともとは胃薬として開発され、
途中で抗うつ効果が発見されたというユニークなお薬です。

元々が胃薬ですから、胃腸の副作用が起きる可能性はほとんどなく、
かえって胃腸に良いくらいですので、これも候補に挙がります。

まとめ

  • ルボックスの吐き気は、胃腸に存在するセロトニン3受容体が刺激されることによって生じる
  • 吐き気はSSRI/SNRIの30-40%程度に認められる副作用である
  • ほとんどは1-2週間で改善するため、様子をみるのも手である
  • 胃薬は副作用の吐き気予防に効果があるため、併用してもよい
  • どうしても吐き気の改善が得られない場合は、別の抗うつ剤に変更する

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