うつ病を予防・改善させるために良い食事とは?

うつ病と食事

うつ病は、セロトニンやノルアドレナリンなどのモノアミンが不足が一つの原因だと考えられています。そのため、抗うつ剤のほとんどはセロトニンやノルアドレナリンを増やす作用を持っています。

「セロトニンが少ないとうつ病になる」と聞くと、「じゃあ、セロトニンがたくさん入っているものを食べれば良いのでは!?」考える方もいらっしゃるでしょう。

実際にセロトニンが多く含まれている食べ物を食べればうつ病は改善するのでしょうか。また、うつ病の予防や改善に良い食べ物などはあるのでしょうか。

今日は、うつ病に良い食事について考えてみたいと思います。

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1.規則正しく、バランスの良い食事が一番

うつ病に良い食事について、結論から言ってしまうと、

「規則正しく、バランスの良い食事が一番」

というのが答えになると思います。ありきたりな回答で恐縮ですが、うつ病の予防や改善を考えた時、これに勝る食生活はありません。

確かに「〇〇という成分がうつ病には良いらしい」とか「××はうつ病を悪化させるようだ」とか指摘されているものはあります。しかし現時点では、どれも明確に確立されたものではなく、根拠不十分な報告に過ぎません。

しかし、

「規則正しく・バランス良く食べればOK。以上!」

で終わってしまっては、このコラムの意味がなくなってしまうので、今日は現時点でうつ病の予防や改善に良い食べ物について紹介していきます。しかし、まだ「そういう報告もあるよ」というレベルに過ぎず、「明らかにうつ病が改善する!」というものではないことを念頭に置きながら読んで下さい。

食べるものを細かくあれこれと気にするよりも、1日3食規則正しく、バランス良く取ることが一番。

これは実際に臨床で患者さんを診ていても感じることです。

バランス良く食べると言うのは、脳にも栄養が十分届くということです。脳はエネルギーを非常に多く使う臓器であり、エネルギーが足りなくなれば意欲低下・集中力低下、倦怠感などが出現します。これがうつ病の経過に良くないことは明らかでしょう。

また規則正しく食事を取るというのは、栄養が1日を通して十分に摂取できるというメリットの他に、規則正しい生活を作りやすくなるというメリットもあります。食事というのは、生活の中でも比較的決まっているイベントであるため、食事を中心に生活リズムは形成されやすいのです。

朝食・昼食・夕食を規則正しく食べることは、生活リズムの安定化にもつながります。実際、生活リズムが崩れている方は高い確率で、朝食を食べる時間が極端に遅いかあるいは食べていません。これは逆に考えれば朝食を食べるようにするという事は朝起きることにつながり、朝食を食べればその後も行動がしやすくなるという事です。

また、家族で生活している場合は、皆と同じ時間に規則正しく食事を取れば、会話をする良い機会にもなり、これもうつ病の経過に良い影響を与えます。

2.健康的な食事はうつ病にも良い

基本的には、「規則正しく、バランス良く」食べていればそれで十分なのですが、ここからは更に掘り下げて、うつ病と食事に関するいくつかの報告をみてみましょう。

最近は、身体に良い食事を心がける健康志向の方が増えてきました。身体の健康のためジャンクフードや極端な偏食は避け、魚や野菜などを中心とした食事を心がける方も多くなってきた印象があります。

実はこのような健康食と呼ばれるものは精神面にも良いことが報告されています。

肉やジャンクフードが多い西洋型の食生活は、うつ病のリスクを高くするという報告があります。また、反対に野菜や魚、キノコ類や豆類を中心にした食生活はうつ病のリスクを下げるという報告もあります。

更に、野菜、魚、果物、キノコ、豆などを中心に摂取する食生活の方は、そうでない方に比べて自殺リスクが半減する、という報告もあります。

これらはまだ根拠としては不十分なレベルですが、少なくとも野菜や魚、果物、キノコ類、豆類などを中心とした食生活が、精神面に良い影響を与える可能性は高いと考えて良いでしょう。

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3.セロトニンをそのまま摂っても意味はない

野菜や果物の中には、セロトニンそのものを含んでいる食物もあります。

セロトニン不足がうつ病の原因なのであれば、セロトニンを含む食べ物を食べればうつ病に良さそうな印象があります。前項で紹介したことを踏まえても、野菜や果物はうつ病にも良い影響を与えそうですから、やはりセロトニンが含まれている食べ物は良いという事なのでしょうか。

これらセロトニンが含まれている食品を取れば、セロトニンがそのまま体内に入ってうつ病を改善させてくれると考えて良いのでしょうか。

実は、セロトニンをそのまま摂取しても、ほとんど意味はありません。

摂取されたセロトニンは、胃や腸などの消化管で消化されて血管内に入ります。しかし、セロトニンは脳血管関門(BBB)と呼ばれる、脳に入るために必要な入口を通れないことが分かっています。口から摂取したセロトニンは効いて欲しい脳に届かないため、ほとんど意味がないのです。

しかしセロトニンの原料であるトリプトファンは脳血管関門を通過できるため、セロトニンを取ることを意識するよりはトリプトファンの摂取を意識した方がよいでしょう。

4.うつ病に良いと考えられている食べ物

セロトニンをそのまま食べても脳には届かないため、意味がありません。

ではどうすれば私たちの脳のセロトニンは増やすことができるのでしょうか。

それを知るためには、セロトニンが体内でどのように作られるのかを知らないといけません。セロトニンは体内で合成されますが、その材料は、

・トリプトファン(アミノ酸のひとつ)
・ビタミンB群

などがあります。またω3脂肪酸と呼ばれる栄養素もセロトニンの量を増やしてくれると言われています。

そのため、これらの栄養素を摂取すれば、私たちの脳のセロトニンが増えることが予想されます。

では、それぞれの詳しい説明と抗うつ効果について見ていきましょう。

Ⅰ.トリプトファン

トリプトファンは、アミノ酸のひとつで、セロトニンの原料となるものです。

最近はトリプトファンを含有していることを謳ったサプリメントも多く発売されており、うつ病の予防・改善のたえに摂取している方もいらっしゃるようです。それが悪いとは言いませんが、トリプトファンは何も特別な物質ではなく、日常私たちが食べるものにも十分に含まれているものです。

そのため、まずは普段の食事から摂取するようにした方がいいでしょう。

トリプトファンというのは、アミノ酸のひとつですが、アミノ酸というのはタンパク質が分解されたものになります。

つまりトリプトファンはタンパク質を多く含む食べ物に含まれます。具体的には肉類や魚類などの動物性タンパク質に多く含まれており、また豆類などの植物性タンパク質にもある程度含まれています。

肉類を中心とした食生活はうつ病リスクを上げるという報告も考えれば、トリプトファンの摂取を考えるのであれば魚類や豆類を中心にするのが良いかもしれませんね。

ただし、トリプトファンの摂取には一つ注意点があります。

トリプトファンは、LNAAs(large neutral amino acids)というアミノ酸(具体的にはバリン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニン・チロシン・メチオニン)と一緒に摂取すると脳へ到達しにくくなることが分かっています。トリプトファンもLNAAsもどちらもアミノ酸でありタンパク質に含まれる物質です。そのため、タンパク質も過剰に摂取しすぎると良くない事がここから考えられます。

タンパク質は摂取は意識しつつ、過剰な摂取にならないようにしましょう。やはり何事も適度が良いということです。

しかしトリプトファンを取ると、実際に抗うつ効果があるのかどうかというのは、はっきりした根拠はありません。あくまでも参考程度に考えて下さい。

Ⅱ.ビタミンB群

ビタミンB群は、セロトニンの合成を促進する物質だと考えられています。直接セロトニンを作る材料ではないものの、これがあるとセロトニンが作られやすくなります。特にビタミンB6、B9(葉酸)、B12がセロトニンの合成に関わっています。

ビタミンは、体内で十分に作ることが出来ないものであるため、ビタミンB群を食事から摂取することは重要です。

ビタミンB群も肉類や魚類、豆類に多く含まれていますので、これらの摂取を心がけるとセロトニンが作られやすくなります。

ビタミンB群も、実際に抗うつ効果があるのかどうかというのは、明確な根拠に乏しく、現時点では効果があるという報告もあれば、効果がないという報告もあります。あくまでも参考程度に考えて下さい。

うつ病の治療に効果があるというよりは、うつ病の予防や再発予防に効果があるという結果が多く見られます。安価で日常的な食事から摂取できるため、適度な摂取を心がけることは良いことだと言えます。

Ⅲ.ω3脂肪酸

n-3脂肪酸とも呼ばれます。難しい用語ですがDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、ALA(αリノレン酸)などの総称です。

DHAは「頭が良くなる成分」として有名ですね。魚類に多く含まれることが広く知られています。

ω3脂肪酸は、脳のセロトニン量を増やすためうつ病に効果があるのではないかと考えられています。

しかしこの真偽については、現在でも議論が続いており、明確な回答は出ていません。

ω3脂肪酸を摂取するとうつ病が改善するという報告もあれば、全く効果はないという報告もあります。

そのため、ω3脂肪酸についても他の栄養素と同じく、あくまでも参考程度に考えましょう。

5.まとめ

トリプトファン、ビタミンB群、ω3脂肪酸などうつ病を予防・改善する可能性のある栄養素がいくつか注目されていますが、いずれも現時点では明確な根拠は乏しいものです。これらはうつ病に悪い影響はなさそうですが、必死になってこれらの摂取を心がけるという必要はなく、頭の片隅に置いておいて、取れる範囲で摂取を意識するという程度で良いでしょう。

全体的に見ると、

・魚類
・豆類
・野菜
・キノコ類
・果物

を中心とした食生活がうつ病の方の精神状態の改善には良いようです。

しかし一番大切なのは、「規則正しく・バランス良く摂取すること」で、これに勝るものはありません。朝はしっかり起きて朝食を食べましょう。昼食、夕食もなるべく規則正しく、また偏りなく食べることを心がけてください。また、可能であれば一人で食べるよりも家族や友人などと適度な会話をしながら食事をした方が良いでしょう。

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