うつ病の原因。うつ病は遺伝するのか?【医師が教えるうつ病のすべて】

うつ病は原因にはどんなものがあるのでしょうか。

様々な要因が合わさって発症すると考えられていますが、その明確な原因はまだ完全には解明されていません。うつ病は、何かひとつの特定の原因があるというものではなく、いくつのもの要因が合わさって発症するというのが今の医学の見解です。

うつ病の原因のひとつに「遺伝」があります。

うつ病を発症した人の子供は必ずうつ病になる、という事はありませんが、うつ病になりやすい傾向があることは指摘されています。

ここではうつ病と遺伝の関係を紹介したいと思います。

1.うつ病は遺伝的要因も関わっている

うつ病の原因として、遺伝的な要因がある程度関わっているのは
ほぼ間違いないと言われています。

ただ、その影響は「非常に大きい」というほどではなく、
遺伝も「ある程度」関係している、という程度のものです。

なので、親がうつ病だと自分も必ずうつ病になってしまう、といったことはありません。

ちなみにうつ病と同じ気分障害に属する疾患に双極性障害(躁うつ病)がありますが、
今回のお話は双極性障害は除いた、純粋なうつ病(大うつ病性障害)に関してのものです。

双極性障害と遺伝の影響もまた別の記事に書きたいと思いますが、
双極性障害は大うつ病性障害よりも遺伝の影響が大きい疾患だと考えられています。

健常人が一生のうちにうつ病を発症する確率(生涯有病率)は、
厚労省の発表によると6.5~7.5%程度だと言われています。

対して、片親がうつ病の場合に子供にうつ病が発症する確率は10~15%ほどと言われており、
一般の発症率よりも2~3倍多くなります。

また、うつ病の発症に遺伝が関係している事を裏付けるものとして、
双子の片方がうつ病であった場合、

〇 一卵性双生児であれば50%の確率でもう片方もうつ病になる
〇 二卵性双生児であれば10~25%の確率でもう片方もうつ病になる

とも言われています。

双子ではあるけどもDNAが異なる二卵性よりも、DNAが同じである一卵性の方が発症確率が高く、
うつ病の原因として遺伝が関係している事を表しています。

このような研究結果をみると、一つの疑問が浮かぶ方もいるでしょう。
「親子や双子は似たような環境で生活してるから、遺伝じゃなくて環境が原因なんじゃないの?」と。

確かに一理ある疑問です。

実は、それに対しても調査されています。

親がうつ病である家庭において、その親と一緒に暮らした子供と、
養子などに出され別々に暮らした子供の経過をそれぞれ追うというものです。

別々に暮らした場合、うつ病の親とは異なる環境での生活になるわけですから、
もし環境が原因なのであれば、うつ病の発症率は下がるはずです。

しかし、これらの研究でも結果の多くが、遺伝の関与を支持する結果となっています。

つまり、親がうつ病であった場合、例えその後うつ病などの精神疾患のない別の親に育てられたとしても
子供がうつ病になってしまう確率は依然として高い、というものです。

ちなみに具体的にどの遺伝子や染色体がうつ病の発症に関わっているのかは
今のところ「これだ!」というものは明確には特定されていません。

2.遺伝でも予防はできる!

遺伝というのは自分の努力では変えられないものですから、
「遺伝も関係してるんですよ」と言われると絶望的になってしまうかもしれません。

うつ病の発症原因のひとつとして遺伝が関わっているのは残念ながら事実です。
これは申し訳ないことだけど、事実なので変えることはできません。

そのため、「うつ病が多い家系」などの場合、本人もうつ病になってしまう確率は
そうでない家系に比べると高くなってしまいます。

しかし、絶対にうつ病になってしまうわけではありません。

うつ病の原因は明確には特定されてはいませんが、遺伝の他にも
性格であったり、ストレスなどの外的要因も関わって発症すると考えられています。

そしてこれはあくまでも私の個人的な印象ですが、
遺伝の影響よりも、性格やストレスなどの影響の方がうつ病の発症には
大きく関与している印象があります。

遺伝は自分の努力では変えられませんが、
頑張って性格を少し変えてみたり、ストレスを減らすように環境を変える事は自分の努力で出来ます。

自分の家系にはうつ病が多い、という方は、それ自体は変える事ができませんが、
性格(ものごとのとらえ方)をうつ病になりにくいように変えていったり、
ストレスを溜め込まない生活を心がける事によって、十分に発症を予防する事ができます。