うつ病の原因。ストレスは関係するのか?【医師が教えるうつ病のすべて】

うつ病はなぜ発症するのでしょうか。原因は何なのでしょうか。

実は、うつ病の原因はまだ完全には解明されていません。

しかし、何か特定の原因があってそれを満たすと必ず発症する、というものではなく、様々な要因が複合的に合わさって発症するというのが現時点での見解です。

うつ病の原因のひとつに「ストレス」があります。

「激務でうつ病になった」
「上司とソリが合わなくてうつ病になった」
「家庭がうまくいっておらずうつ病になった」

これらはうつ病の原因として多いものですが、全て「ストレス」が一因でしょう。

もちろん、ストレス以外にもうつ病の原因はあるのですが、このコラムでは「ストレス」に焦点を当てて、うつ病の原因をみてみましょう。

1.ストレスはうつ病の原因になる

うつ病発症の原因のすべてがストレスのせいとは言えませんが、
一因になっていることは間違いありません。

ストレス、というと抽象的すぎてイメージが沸きにくいかもしれません。
「自分にとってつらいと感じること」であれば何でもストレスになります。

具体的に、よくみられる原因を挙げると、

〇 家族など親しい人の死去
〇 病気や事故
〇 失業、異動、退職、停年、昇進
〇 激務や過労
〇 結婚、妊娠、出産、引越しなどの環境変化
〇 職場や家庭の人間関係の不和

などがあります。

気を付けないといけないのは、一般的に見れば「喜ばしい」と思える出来事でも、
本人にとってストレスであればうつ病の原因になる、という事です。

例えば、昇進などは一般的には喜ばしい出来事です。
社内での立場も偉くなるし、給料だって増えます。出来る事だって増えるでしょう。

しかし一方で、昇進すれば責任も重くなり、仕事も増えます。
上司と部下との間の板挟みになってしまう可能性だって多くなるかもしれません。

このように一般的に喜ばしいような原因でも、本人がそれを重荷に感じていた場合は
うつ病の原因となりえるのです。

また、これらの原因を見ると、「環境変化」はうつ病のリスクである事が分かります。
新しい環境というものは私たちにとってストレスであり、
生活に何か変化がある時はうつ病になりやすいため注意が必要です。

実際、

〇 引っ越しうつ病・・・転居の際にうつ病が起こってしまう
〇 荷下ろしうつ病・・・何らかの負荷がはずれて、ほっとした時にうつ病が起こってしまう
〇 空巣(からのす)症候群・・・子育てが終わって子供がいなくなった環境変化でうつ状態になる

などという言葉もあります。
いずれも環境が変わった際に発症するパターンのうつ病です。

2.ストレスは特に1回目の発症に影響すると言われている

臨床経験から、ストレスは特に初発のうつ病の方で関係している傾向が強いと言われています。

初めてうつ病にかかってしまった時は、
自分でも意識できている「発症原因となった出来事」がある事は少なくありません。

「上司からパワハラがあって、我慢しているうちに無気力になってしまったんです」
「引っ越ししてから、落ち込みが明らかにひどいんです」

など、これらはストレスが原因となっている事が分かりやすいと言えます。

しかし、2回目以降の発症(再発)は、明らかなストレスはないのに
うつ病が発症するケースが多いのです。

これは、初めてうつ病になった時、脳に何らかの変化が起きてしまい、
それは持続的な変化で完全には元に回復しないためではないか、と言われていますが、
明確な理由はまだ明らかにはなっていません。

3.ストレス以外にはどんな原因がある?

このコラムでは、うつ病の原因のひとつとして、「ストレス」に焦点を当てました。

ストレスがうつ病発症の一因であることは間違いありません。
しかし、その他にも原因はあります。

具体的には、

〇 遺伝
〇 性格(ものごとに対する考え方)
〇 脳内の変化(神経伝達物質や神経など)

なども関係すると言われています。
(これらについては、別のコラムで詳しくお話します)

また、うつ病は「原因なく起こる」事もあります。
明らかなストレスも認めず、親族にうつ病の家族歴も無く、性格もうつ病になりにくい性格なのに、
うつ病になってしまう事だってあるのです。

15人に1人が生涯に1回はうつ病を経験すると言われており、
うつ病は誰にでも起こりうる疾患なのです。

4.ストレスによるうつ病が疑われる場合は

ストレスをきっかけにうつ病を疑うような症状が出ている場合は、
まずはそのストレスをなるべく遠ざけることが重要です。

うつ病治療の鉄則は「休養」です。
ストレスが原因である場合は、ストレスを遠ざけることがこころの休養につながります。

何とか工夫して、ストレスを出来る限り遠ざけることができないか、試みてみましょう。

また、ストレスにより生活になんらか支障が出ているようであれば、
医療機関(精神科や心療内科)を受診することもおすすめします。

うつ病であった場合、放置しておけばどんどん悪化していく可能性もあり、
適切な治療が必要なことも少なくありません。

専門家である精神科医の診察を受け、様子をみていいのか
治療が必要なのかの判断をあおぐべきです。

ストレスを遠ざけることが大事、とは言っても現実的にそれが困難である事も多いでしょう。

精神科を受診し、医師と協力して治療を行えば、
経験豊富な医師からより具体的なアドバイスをもらえたり、
産業医と連携して職場のストレスが緩和するよう環境調整をしたりもできます。

必要に応じて休職などの指示を会社に出してもらったりできるなど、対策の幅が広がります。