抗不安薬「リーゼ」(クロチアゼパム)の副作用

リーゼ錠は1979年に発売された抗不安薬です。

抗不安薬は文字通り、不安感を取るおくすりで、「安定剤」「精神安定剤」とも呼ばれます。

リーゼは穏やかに効き、作用・副作用ともに弱めであることが特徴です。安全性も高いため、副作用を心配される方にも安心して出しやすいおくすりなのです。しかし、とは言ってもおくすりである以上、副作用は0ではありません。

ここでは、リーゼに認められる副作用やその対処法について紹介していきます。

1.リーゼの副作用

リーゼは、副作用が非常に少ない部類に入ります。
内服した大半の方は「副作用のようなものは何も感じません」とおっしゃいます。

しかし、おくすりである以上、副作用の可能性がないわけではありません。

リーゼはベンゾジアゼピン系という種類に属します。
ベンゾジアゼピン系は、

  • 抗不安作用(不安を和らげる)
  • 催眠作用(眠くする)
  • 筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす)
  • 抗けいれん作用(けいれんを抑える)

という4つのはたらきがあり、リーゼにもこれらのはたらきがあります。
これらそれぞれの強さはおくすりによって異なり、リーゼはと言うと、

  • 抗不安作用は弱め
  • 催眠作用は非常に弱め
  • 筋弛緩作用は非常に弱め
  • 抗けいれん作用はほとんどない

という感じです。

そして、これらの作用に関連した副作用が時に生じます。

具体的には、

  • 催眠作用で眠気やふらつきが生じる
  • 筋弛緩作用で、ふらつき、転倒が起こりやすくなる

などです。

また、ベンゾジアゼピン系はすべて、
医師の指示を守らずに長期に大量に服薬を続けていると
「依存形成」が起きやすくなります。

依存とは、そのおくすりを手放せなくなってしまう。
飲まないと不安でいても立ってもいられなくなってしまう、という状態です。

リーゼは、よほど無茶な使い方をしなければ依存にはならないのですが、
(少なくとも私が処方している範囲では、リーゼでひどい依存状態になった患者さんはいません)
それでもベンゾジアゼピン系である以上
必ず医師の指示を守って、決められた量の内服をしてください。

と、色々怖い副作用を書きましたが、リーゼの場合、
「起こる可能性が稀にある」程度で、実際はほとんど遭遇しませんので
過剰に心配する必要はありません。

では、それぞれの副作用やその対処法を詳しくみていきましょう。

Ⅰ.眠気、倦怠感、ふらつき

ベンゾジアゼピン系は、催眠効果、筋弛緩効果があるため、
これが強く出すぎると、眠気やだるさを感じます。
ふらつきが出てしまうケースもあります。

リーゼでこの副作用が起こることはあまりありませんが、
もし起こってしまったら、どうすればいいでしょうか。

もし内服して間もないのであれば、「様子をみてみる」のも手です。
というのも、おくすりは「慣れてくる」ことが往々にしてあるからです。

様子を見れる程度の眠気やだるさなのであれば、1-2週間様子をみて下さい。
半数以上の例で、副作用の改善がみられます。

それでも眠気が改善しないという場合、次の対処法は
「服薬量を減らすこと」です。

一般的に量を減らせば作用も副作用も弱まります。
抗不安効果も弱まってしまうというデメリットはありますが、
副作用がつらすぎる場合は仕方ありません。

例えば、リーゼを1日15mg内服していて眠気がつらいのであれば、
1日量を10mgなどにしてみましょう。

また、「おくすりの種類を変える」という方法もありますが、
リーゼの場合はあまり推奨されません。
なぜならば、リーゼ自体が抗不安薬の中で眠気を起こす頻度が非常に低いおくすりだからです。

他の抗不安薬に変えると、むしろ眠気が悪化する可能性の方が多いでしょう。

 

Ⅱ.耐性・依存性形成

多くの抗不安薬に言える事ですが、長期的に見ると「耐性」「依存性」は一番の問題です。

ベンゾジアゼピン系は、無茶な使い方を続けると
耐性・依存性を起こす可能性があります。

耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまう事。
最初は1錠飲めば十分効いていたのに、だんだんと身体が慣れてしまい、
1錠飲んでも全然効かなくなってしまう、という状態です。

依存性というのは、次第にその物質なしではいられなくなる状態をいいます。

耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。

アルコールにも強い耐性と依存性があります。

アルコールを常用していると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、
次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。

また、飲酒量が多くなると、飲酒せずにはいられなくなり、常にアルコールを求めるようになります、
これは依存性が形成されているという事です。

抗不安薬には耐性と依存性がありますが、アルコールと比べて特段強くというわけではなく、医師の指示通りに内服していれば問題になる事は多くはありません。お酒だって節度を持った摂取であれば、耐性・依存性が問題となることはありませんよね。それと同じです。

耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則です。
アルコールも抗不安薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。

医師は、耐性・依存性を起こさないような量を考えながら処方しています。
それを勝手に倍の量飲んだりしてしまうと、急速に耐性・依存性が形成されてしまいます。

アルコールとの併用も危険です。
アルコールと抗不安薬を一緒に使うと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。

また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。
基本的に抗不安薬というのは、「一時的なおくすり」です。

ずっと飲み続けるものではなく、不安の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです。
(長期的に不安を取りたい場合は、抗不安薬ではなくSSRIなどが用いられます)

定期的に「量を減らせないか」と検討する必要があり、本当はもう必要ない状態なのに
漫然と長期間内服を続けてはいけません。

服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。

Ⅲ.物忘れ(健忘)

リーゼに限らず、ベンゾジアゼピン系のお薬は心身をリラックスさせるはたらきがあるため、頭がボーッとしてしまい物忘れが出現することがあります。

実際、ベンゾジアゼピン系を長く使っている高齢者は認知症を発症しやすくなる、という報告もあります(詳しくは「高齢者にベンゾジアゼピン系を長期投与すると認知症になりやすくなる【研究報告】」をご覧ください)。

適度に心身がリラックスし、緊張がほぐれるのは良いことですが、日常生活に支障が出るほどの物忘れが出現している場合は、お薬を減薬あるいは変薬する必要があるでしょう。