レキソタンの副作用と対処法【医師が教える抗不安薬のすべて】

レキソタンは抗不安薬と呼ばれるお薬で、主に不安を和らげる作用を持ちます。

「安定剤」「精神安定剤」とも呼ばれ、不安定な気持ちを安定させてくれるお薬です。

レキソタンをはじめとする抗不安薬は、気持ちを落ち着けるためには頼れるお薬ですが、一方で副作用にも注意が必要です。

ここでは、レキソタンで生じる副作用にはどのようなものがあるのか、またその対処法やレキソタンを服用するに当たって知っておいて欲しい事についてお話します。

1.レキソタンの副作用の特徴

まずはレキソタンでどのような副作用があるのかをざっくりと説明します。

レキソタンは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬という種類に属するお薬です。

抗不安薬のほとんどはベンゾジアゼピン系であり、ベンゾジアゼピン系には共通するいくつかの副作用があります。

ベンゾジアゼピン系は、

  • 抗不安作用(不安を和らげる)
  • 筋弛緩作用(筋肉を緩める)
  • 催眠作用(眠くさせる)
  • 抗けいれん作用(けいれんを抑える)

の4つの作用を持ちます。そしてこの作用が時に副作用となる事があります。

代表的なのは、

  • 筋弛緩作用によるふらつきや転倒
  • 催眠作用による眠気や倦怠感、物忘れ

などが挙げられます。

筋弛緩作用は筋肉をほぐしてくれるため、緊張やストレスによって生じる肩こりなどには良く効くのですが、一方で足腰の筋肉を緩める事でふらつきや転倒の原因になります。特に高齢者の方は転倒リスクは高く、注意が必要になります。

催眠作用は不眠症の人にとってはありがたい作用になりますが、日中の眠気や倦怠感、頭がボーっとする事による物忘れなどの原因になります。

またベンゾジアゼピン系は「耐性」と「依存性」がある事が分かっており、レキソタンにも耐性と依存性があります。

【耐性】
お薬の服薬を続けていくうちに、徐々に身体がお薬に慣れていき、お薬の効きが悪くなってくること。耐性が形成されてしまうと、同じ効果を得るためにはより多い量が必要となるため、大量処方につながりやすい。

【依存性】
お薬の服薬を続けていくうちに、そのお薬を手放せなくなってしまうこと。依存性が形成されてしまうと、お薬を飲まないと精神的に不安定になったり、発汗やふるえといった離脱症状が出現してしまう。

レキソタンに限らず耐性・依存性はあらゆるベンゾジアゼピン系で生じる副作用ですが、レキソタンは特に耐性・依存性に気を付けなければいけません。

なぜならば耐性・依存性は効果が強い抗不安薬ほど生じやすいからです。抗不安薬の中でも最強クラスの効果を持つレキソタンはそれだけ耐性・依存性が生じやすいともいえます。

レキソタンは効果も強力で頼れるお薬である反面、副作用にも注意が必要なお薬なのです。特に長期間漫然と使用を続けてしまうと耐性・依存性が生じやすくなりますので注意が必要です。

2.レキソタンの長期的な副作用

レキソタンの副作用は大きく分けると

  • 短期的な副作用(服用してすぐに生じる副作用)
  • 長期的な副作用(服用してしばらく経ってから生じる副作用)

があります。

どちらも注意すべき副作用ではありますが、特に注意すべきなのは後者です。

なぜならば、前者は服用した本人も副作用に気付くため対策を取りやすいのですが、後者は徐々に形成させる副作用であるため、対策が取れず、気が付いた時には手遅れになっている可能性があるからです。

ここではレキソタンの長期的な副作用とその対処法について紹介します。

Ⅰ.耐性・依存性形成

多くの抗不安薬に言える事ですが、長期的に見ると「耐性」「依存性」は一番問題となる副作用です。

すべてのベンゾジアゼピン系は、大量服用や長期服用などの無茶な使い方を続けると耐性・依存性を起こす危険性があります。

レキソタンはその抗不安作用の強さから、ベンゾジアゼピン系の中でも耐性・依存性は起こしやすい部類に入ります。そのため、耐性・依存性が形成されないように意識した服用が望まれます。

耐性というのは、お薬の服薬を続けていくうちに、徐々に身体がお薬に慣れていく事です。身体がお薬に慣れれば、お薬の効きが悪くなってきます。

そうなると同じ効果を得るためにはより多い量が必要となるため、大量服用につながりやすくなります。大量服用となれば身体に害が生じる可能性も高くなります。

依存性というのは、お薬の服薬を続けていくうちにそのお薬を手放せなくなってしまうことです。依存性が形成されてしまうと、お薬を飲まないと精神的に不安定になったり、発汗やふるえといった離脱症状が出現してしまうようになります。

こうなると離脱症状を回避するために常にお薬を手放せなくなり、お薬なしでは生きられない身体となってしまいます。

耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。アルコールにも耐性と依存性があることが知られています。

アルコールを常用していると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。

また大量の飲酒を続けていると、次第にいつも飲酒していないと落ち着かなくなり、常にアルコールを求めるようになります。これは依存性が形成されているという事です。

抗不安薬には耐性と依存性がありますが、アルコールと比べて特段強いというわけではありません。

お酒も節度を保った摂取であれば、耐性・依存性が生じる事はまずありません。ほとんどの方は飲み会などでお酒を飲みますが、その中でアルコール依存症になる人はごくわずかです。抗不安薬もそれと同じで、医師の指示通りに適切に内服していれば問題になる事は多くはありません。

ここから、耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則だという事が分かります。
アルコールも抗不安薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。医師は、耐性・依存性をなるべく起こさないように量を考えて処方しています。それを勝手に量を調節してしまうと、耐性・依存性が形成されやすくなる可能性があります。

またアルコールと抗不安薬の併用も危険です。アルコールと抗不安薬を一緒に飲むと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。

また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。基本的に抗不安薬というのは「一時的なお薬」です。

ずっと飲み続けるものではなく、不安の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです(長期的に不安を取りたい場合は、抗不安薬ではなくSSRIなどが用いられます)。

定期的に「量を減らせないか」と検討する必要があり、必要ない状態なのに漫然と内服を続けてはいけません。

服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。

3.レキソタンの短期的な副作用

次にレキソタンの短期的な副作用を紹介します。

Ⅰ.眠気、倦怠感、ふらつき

ベンゾジアゼピン系には「催眠作用」「筋弛緩作用」があるため、これらが強く出すぎると、眠気やだるさを感じるようになります。ふらつきが出てしまうケースもあります。

レキソタンにも筋弛緩作用や催眠作用がありますので、これらの副作用が生じる可能性があります。
もし症状が起こってしまったら、どうすればいいでしょうか。

もし内服してまだ間もないのであれば、「様子をみてみる」のも手です。服薬を続けることで「慣れてくる」ことがあるからです。

様子を見れる程度の眠気やだるさであれば、1~2週間様子をみて下さい。自然と改善していくことは少なくありません。

それでも改善しないという場合、次の対処法は「服薬量を減らすこと」になります。

量を減らせば作用も副作用も弱まります。抗不安作用が弱まってしまうというデメリットはありますが、副作用がつらすぎる場合は仕方ありません。

例えば、レキソタンを1日10mg内服すると眠気が強く出てしまうのであれば、1日量を6mgなどに減薬すれば副作用は軽減するでしょう。

また、「お薬の種類を変える」という方法もあります。より筋弛緩作用や催眠作用が少ない抗不安薬に変更すると、改善を得られる可能性があります。

Ⅱ.物忘れ(健忘)

レキソタンに限らず、ベンゾジアゼピン系のお薬は心身をリラックスさせるはたらきがあるため、頭がボーッとしてしまい物忘れが出現することがあります。

実際、ベンゾジアゼピン系を長く使っている高齢者は認知症を発症しやすくなる、という報告もあります(詳しくは「高齢者にベンゾジアゼピン系を長期投与すると認知症になりやすくなる【研究報告】」をご覧ください)。

適度に心身がリラックスし、緊張がほぐれるのは良いことですが、日常生活に支障が出るほどの物忘れが出現している場合は、お薬を減薬あるいは変薬する必要があるでしょう。

4.副作用を怖がりすぎるのも問題

抗不安薬の副作用(特に依存)はしばしば問題となっており、新聞やニュースなどのメディアでも取り上げられています。そのため、副作用だけに目が行ってしまい「こんな怖いもの、絶対に飲みたくない!」と過剰な拒否反応を示される方も時々いらっしゃいます。

もちろん、お薬を飲まなくても様子を見れる状態であったり、他の治療法で代替できる状態なのであれば、無理にお薬を使わなくても構いません。しかし、専門家である医師が「今は抗不安薬を使った方が良い」と判断するのであれば、過剰に怖がるのではなく使用をぜひ前向きに検討してみてください。

私たち医師は、抗不安薬のメリットもデメリットもしっかりと把握しています。それを天秤にかけた上で「今のこの患者さんにはメリットの方が大きいだろう」と判断したからこそ、提案しているのです。

抗不安薬には確かに副作用のリスクはありますが、医師のしっかりとした管理のもと、一定期間のみ内服するのであれば、大きな副作用は起こさないことの方が圧倒的に多いです。

抗不安薬が依存性の原因となったり、せん妄の原因になり得るのは事実です。しかし患者さんを不安から救ってくれるのもまた事実なのです。デメリットだけ見るのではなく、メリットとデメリットをそれぞれ冷静に見て、使用するかどうかを判断するようにしましょう。

抗不安薬と似た物質としてアルコールがあります。アルコールにも抗不安薬と同程度の耐性・依存性があると考えられています。でも、「アルコール依存になるのが怖いんでお酒は一切飲みません」「アルコール依存が怖いから忘年会は欠席します!」なんて人はあまりいないですよね。

それはなぜかというと、確かにアルコールは依存になる可能性がある物質だけども、節度を持った飲酒をしていれば依存になることなどほとんどないからです。そしてほとんどの人は節度を持った飲酒ができており、アルコール依存に至る人はごく一部です。

アルコール依存になるのは、明らかに大量の飲酒を高頻度で続けており、周囲や医師の助言も聞かずに飲み続ける人だけです。

抗不安薬だってそれは同じなのです。主治医が指示した量以上に勝手に飲んでしまったり、主治医が減薬を指示しているのに心配だからと飲み続けたり、依存になるのはそのような方が多いようです。節度を持った服薬をしていれば、アルコールと同じでむしろ依存になることは少ないのです。

アルコールは節度を持って楽しく飲んでいるのに、抗不安薬になるととたんに過剰に拒否反応を示すのは、私たち医療者からするとちょっと不思議に感じます。

もちろん、抗不安薬を飲まないに越したことがないのは事実です。しかし診察した医師が必要だと判断したのであれば、過剰に怖がらずに冷静に医師の話を聞き、服薬を検討してみてください。上手く使えば症状を早く取ることができるし、病気を早く治すことだって出来ます。