ベタマック錠の効果・副作用【医師が教える抗うつ剤の全て】

ベタマックの効果・副作用

ベタマック錠は沢井製薬より発売されているおくすりです。

このおくすりは非常にユニークなはたらきをします。

発売当初は胃薬として発売されましたが、次第に「うつ病に効果がある」「統合失調症にも効果がある」ということが分かってきたおくすりなのです。

そのユニークな特徴から、様々な場面で使うことがありますが、1979年発売の古いおくすりであるため副作用には注意しなければいけません。

ここでは、ベタマックの効果や特徴、副作用などについて説明していきます。

なおベタマックは、アステラス社が発売している「ドグマチール」と同じ成分のおくすりです。ドグマチールの方が知名度がありますが、販売会社が違うだけでどちらも中身は同じです。薬効を詳しく知りたい方は、ドグマチールの記事もご覧ください。

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1.ベタマックには様々な作用がある

ベタマックには様々な効果がありますが、
その基本的な働きは「ドーパミンを遮断すること」です。

ベタマックは胃腸薬、統合失調症治療薬、抗うつ薬としての顔を持ちますが、
これらはすべて、抗ドーパミン作用によるものです。

では、それぞれのはたらきを詳しくみてみましょう。

胃薬としてのベタマック

ベタマックは、胃などの消化管に存在するD2受容体(Dとはドーパミンのこと)をブロックします。
これによって、消化管運動が改善すると考えられています。

しかし、その作用は強くなく、今は優れた胃薬がたくさん発売されてますから、
ベタマックを胃潰瘍に使うことは少なくなってきています。

他の胃薬との違いとしては、抗うつ効果もあるため、
心因性の要素も疑われる胃腸症状には適しています。

「胃腸症状を訴えるけど、胃カメラなどの検査をしても何の異常もない」
という場合などですね。

抗精神病薬としてのベタマック

抗精神病薬というのは「統合失調症の治療薬」のことです。

統合失調症は脳内ドーパミンが出過ぎていることが一因と考えられています。
そのため、ほとんどの抗精神病薬はドーパミンをブロックするはたらきがあります。

ベタマックも脳のD(ドーパミン)2受容体をブロックすることで統合失調症に効果を示します。

ただしベタマックの脳へのD2受容体遮断作用は弱いため、
統合失調症の治療に使う場合は高用量が必要です。
(添付文書的には300-600mg。最高1200mgまで)

しかし高用量を使うと副作用が出てしまうことも多いため、
優れた抗精神病薬が多くなってきた現在においては
統合失調症の治療にベタマックを使う機会は少ないのが現状です。

抗うつ薬としてのベタマック

ベタマックがうつ病に効くのはなぜでしょうか。
実はこれは正確には分かっていません。

そもそもうつ病に効果があるためには、ドーパミンを増やさないといけないはずです。
抗うつ剤は全て、ドーパミンなどのモノアミンを増やすことで抗うつ効果を発揮します。
モノアミンを減らす抗うつ剤などありません。

理論的には、ベタマックはドーパミン受容体を遮断するため、
脳内のドーパミンを減らす方向に働くはずです。
しかし現実として、少量のベタマックを投与すると抗うつ効果があるのです。

いくつかの仮説があり、それを紹介すると、

・少量のベタマックを投与するとドーパミン自己受容体を遮断し、
それが結果的にドーパミンの分泌を増やすのではないか

・ノルアドレナリン神経にあるD2受容体を遮断することで、
ノルアドレナリンを増やすのではないか

・エビリファイなどと同じく、ドーパミンの部分作動薬としての働きがあり、
そのために少量のベタマックを投与するとドーパミンが増えるのではないか

などと言われています。

正確には解明されていませんが、少量のベタマックを投与すると
抗うつ効果があることは間違いなく、しばしばうつ病治療に使われています。

以上からベタマックは、

  • 少量(150-300mg)投与すると、うつ病に効果がある
  • 大量(300-600mg)投与すると、統合失調症に効果がある

という、ちょっと不思議な使い方をするおくすりになっています。

2.ベタマックの特徴

このようにベタマックは、

  • 胃薬
  • 統合失調症治療薬
  • 抗うつ剤

という3つの働きをする、ユニークなおくすりです。

しかし、上に書いたように現在は徐々に処方頻度が減ってきています。
「色々な疾患に使える」ということは、裏を返せば「どれにも中途半端」ともいえるからです。

現在は統合失調症、うつ病、胃腸疾患それぞれに対して、
優れて安全なおくすりが次々と発売されています。

ベタマックより安全性に優れるものも多いため
ベタマックの出番が徐々に減ってきているというのが現状です。

現在、統合失調症の治療薬として使うことはあまりありません。
胃薬としても使うことも多くはなく、抗うつ剤として使われることが多いようです。
(抗うつ剤としても、最近は使われる頻度は減っていますが・・・)

ベタマックの抗うつ剤としての特徴は、ざっくり言うと次のようなものです。

  • 即効性がある。
  • 他の抗うつ剤に見られる副作用が少ない
  • しかし時に重篤な副作用が出る

抗うつ効果としては強くなく、軽症から中等症のうつ病が適応になります。

ベタマックは、他の抗うつ剤で見られる副作用が少ないのが大きなメリットです。
具体的には、吐き気、眠気、離脱症状、口渇、便秘などです。
現在主流のSSRIやSNRIはこれらの副作用が問題となることがよくあります。

ベタマックは胃薬でもあるくらいですから、吐き気はまず生じません。
また離脱症状もほとんど起こさず、眠くなることもほとんどありません。

このようにベタマックは非常に使い勝手のよい抗うつ剤であり、
実際SSRIやSNRIが発売される以前はうつ病の主力選手でした。

しかし、他の抗うつ剤に認めないような副作用があるため(錐体外路症状など)、
安全な抗うつ剤が増えた現代においては、うつ病治療の第一選択ではなくなっています。

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3.ベタマックの副作用

具体的なベタマックの副作用としては、

  • 錐体外路症状
  • 乳汁分泌(プロラクチン上昇)、性機能障害
  • 食欲亢進、体重増加

などがあります。

「錐体外路症状が起こり得る」
「ホルモンバランスを崩して、乳汁分泌が起こり得る」

この2点が、他の抗うつ剤には無い副作用です。

反面で、他の抗うつ剤に多く認められる、口渇・便秘、ふらつき・めまい、吐き気、眠気などは
少なめです(起こさないわけではありません)。

では、それぞれを詳しくみてみましょう。

Ⅰ.錐体外路症状(EPS)

脳のドーパミンが過度にブロックされることで起こる身体の不随意運動です。
(不随意運動:自分の意志によらず、勝手に身体が動いてしまうこと)

指先がふるえたり、腕をクネクネと動かしたり、唇や舌をモゴモゴ動かしたり、などと
様々な症状があります。

有名な症状として、

  • ジスキネジア:口や舌などをモゴモゴと動かす
  • アカシジア:ソワソワ、ムズムズと落ち着かず、じっとしていられなくなる

などがあります。

これらの錐体外路症状が出現してしまったら、
ベタマックを減量あるいは中止することが無難でしょう。

引き続き抗うつ剤加療が必要なのであれば、別の抗うつ剤を検討してください。

抗コリン薬(アキネトン、アーテンなど)という、錐体外路症状を和らげるおくすりもありますが、
抗コリン薬は抗コリン薬で副作用があり、漫然と続けない方がいいおくすりです。

おくすりの副作用をおくすりで抑えるのも不自然ですし、
よほどベタマックを使わないといけない状況でない限りはお勧めできません。

Ⅱ.乳汁分泌

ベタマックが、プロラクチンという乳汁を出すホルモンを増やしてしまうために
起こる副作用です。
これのベタマックが脳の下垂体という部位のドーパミンを遮断してしまうために起こります。

男女ともに起こりえます。
突然胸から乳汁が出るため、驚く方も多いようです。

ただ、胸から乳汁が出るだけならまだいいのですが、これはホルモンバランスの崩れが原因ですから、
無月経や性機能障害の原因にもなり得ます。

乳汁分泌が起きた場合は、まずはプロラクチンの上昇が原因なのかを採血で確認します。
採血でプロラクチン値を測定し、高ければベタマックによる高プロラクチン血症が疑われます。

対応策は、やはりまずはベタマックを減薬あるいは中止し、
別の抗うつ剤に切り替えることです。

ドーパミンアゴニスト(ドーパミン受容体刺激薬)と呼ばれるおくすりを使うと、
プロラクチンの値を下げることは可能ですが、これも滅多に併用することはありません。

別のおくすりを併用してまで、ベタマックを継続する価値があるのか、
主治医とよく相談して下さい。

Ⅲ.食欲亢進、体重増加

重篤な副作用ではないものの、ベタマックで一番頻度の多い副作用です。

ベタマックは当初は「胃薬」として発売されたおくすりです。
最初は胃薬として使われていましたが、次第に精神にも作用があることが分かったおくすりなのです。

胃腸のドーパミン受容体をブロックすることで消化管の動きをよくするのが
胃薬としての作用機序だと考えられています。

胃腸の動きを良くするため、食欲が上がります。
そして食べる量が増えれば、体重も増えてしまいます。

食欲亢進に対する対処法としては、まずは「食べるのを我慢する」意識が大切です。

これはおくすりの副作用で食欲が人工的に上がっているんだ。
だから、ここで欲求のままに食べてしまうことは非生理的であまりよくないことなんだ、
と考え、なるべく我慢するようにしてください。

また当たり前の対策なんですが、適度な運動も体重増加を抑えるには有効です。

それでも抑えられない時は、他の抗うつ剤への変薬になります。
ほとんどの抗うつ剤で体重増加の可能性はあるのですが、ベタマックの体重増加と
その他の抗うつ剤の体重増加はその機序が違います。

ベタマックは主に消化管運動が良くなって食欲が上がります。
それに対して他の抗うつ剤は、主に抗ヒスタミン作用というもので食欲が上がります。

機序が違うため、抗うつ剤を別のものに変えれば、食欲亢進の程度が
改善する可能性はあります。

ただし、もちろん悪化してしまう可能性もありえますので、
抗ヒスタミン作用が弱いものを選択するとよいでしょう。

具体的に言うと、ジェイゾロフトやサインバルタあたりでしょうか。

Ⅳ.その他の副作用

その他の副作用も報告はたくさんありますが、頻度はそこまで多くはありません。

特に、

  • 眠気
  • 口渇、便秘
  • ふらつき、めまい
  • 吐き気

などは、SSRIやSNRI、三環系などの他の抗うつ剤に見られる副作用ですが、
ベタマックではあまり認めません。

4.ベタマックが向いている人は?

ベタマックは良い抗うつ剤ですが、上記のような副作用の問題があるため、
現在では第一選択で使うことは少なくなっています。

現在は、安全性の高い抗うつ剤が多くなってきたため、
「ベタマックは極力うつ病には使わないように」と言う先生もいるくらいです。

副作用を考えれば、確かにその先生の意見ももっともだと思います。

患者さんの状況にもよりますが、薬物治療は効果よりも安全性を優先すべきですので、
安全性の高い新規抗うつ剤(SSRI、SNRIやNassaなど)などを最初は試すべきでしょう。

他の抗うつ剤と比べたベタマックの利点は

  • 作用機序が違うこと
  • 他の抗うつ剤に多い副作用(吐き気、便秘、眠気、離脱症状など)が少ないこと
  • 薬価が安いこと

です。

そのため、

  • SSRIやSNRIでは効果が得られなかった方
  • SSRIやSNRIの副作用がつらい方

という場合、第二選択として使う抗うつ剤として検討するおくすりとして
いいのではないでしょうか。

(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際のベタマック錠とは異なることをご了承下さい)

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