うつ病の治療法、行動活性化療法とは?

行動活性化療法

うつ病の治療というと、抗うつ剤などの薬物療法を思い浮かべる方は多いでしょう。

しかし、うつ病の治療法には薬物以外の方法もあります。代表的なのは、患者さんにお話してもらう中で心理的側面にアプローチしていく精神療法(カウンセリングなど)ですが、それ以外にも日常生活の中で前向きになるような生活習慣・行動に変えていくといった方法も有効です。

行動活性化療法という治療法があります。これは1970年代にうつ病に対する治療法として提唱された方法なのですが、当時はあまり流行らず最近になって見直されてきた治療法です。

行動活性化療法は、「行動」に焦点を当て、自分にとって精神が安定するような行動を探し、それを増やしていくことでうつ病の改善を目指します。

今日は、薬物以外のうつ病治療として行動活性化療法という治療法を紹介させていただきます。

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1.行動活性化療法はどんな治療法なのか

行動活性化療法(BA:Behavioral Activation)は、1970年代より提唱されているうつ病の治療法です。40年ほどの歴史を持つ治療法なのですが、提唱された当時はあまり流行しませんでした。

しかし1990年頃に行動活性化療法の効果を裏付ける研究報告が発表されたことにより徐々に再注目され始め、近年ではその有効性が改めて注目されています。

行動活性化療法は、文字通り「行動」を「活性化」させることで精神状態を改善させ、うつ病の改善をはかる治療法です。

うつ病の精神療法というと、認知行動療法が有名です。認知行動療法は、患者さんの認知のゆがみという「考え方」に焦点を当て、それを修正するために行動を変えていく、という方法です。

それに対し行動活性化療法は、「行動」に焦点を当て、行動を変えていくことでが精神の安定が得られるようにしていきます。

行動活性化療法では、うつ病は回避行動や悲観的思考の反芻(はんすう)により、快事象が減少あるいは不快事象が増加した結果増悪する、と考えます(反芻・・・繰り返し考えること)。難しい表現ですが、要するに「逃げたり、ネガティブな事ばかり考えていると、楽しいことが減って・イヤな事がどんどん増えていくからうつ病になるんだよ」ということです。

そのため、快事象をもたらす行動を促し、不快事象を適切な行動で対応することで改善をはかろうというのが行動活性化療法です。要するに、精神が前向きになる適切な行動を治療によって促すことで、楽しいことが多く・イヤなことが少なくなるようすれば、うつ病は改善していくはずだ、ということです。

行動活性化療法のポイントは、治療が「行動」にある点です。

「ネガティブなことばかり考えるとうつ病になっちゃうから、ポジティブなことを考えよう」と「考え方」に焦点を当てるのではなく、「ネガティブなことばかり考えるとうつ病になっちゃうから、ポジティブに考えるようになる行動をしよう」という治療なのです。

何やら難しい言い回しが多かったため、イメージが沸かない方もいらっしゃるかもしれません。行動活性化療法を具体的にイメージしてもらうために例を出しながら説明していきましょう。

2.行動活性化療法の具体例

行動活性化療法は大きく3ステップに分けることができます。

第1ステップでは、自分にとってうつ病を増悪させる不快事象(回避行動や悲観的思考)は何なのか、そして自分にとっての快事象をもたらす行動は何なのかを明確にします。そのためには、日常生活の記録を取ることが大切です。

第2ステップでは、回避行動や悲観的思考をどのような行動によって適正化していくかを考えます。

第3ステップでは、実際に行った行動の評価を行い、必要があれば修正をしていきます。

それぞれのステップを具体的に見てみましょう。

Ⅰ.自身の快事象・不快事象の意識化

何に対して、快・不快を感じるかというのは、人によって異なります。そのため、まず最初に、自分自身にとっての快・不快事象を明確化をする必要があります。

ここで重要なのは、人によって快事象・不快事象は異なるということです。万人にとって共通のものはありませんので、自分自身で記録を取り、自分自身で考えないといけません。

うつ病増悪の原因となっている不快事象をリストアップするには、毎日の記録を付けることが有効です。この時の記録の取り方にはポイントがあり、「うつ症状を起こす状況」と「その時にとっている行動」、そして「その結果どうなっているのか」の記録を取ります。

また同様に気分が安定した時も「どんな状況で」や「どんな行動をとって」、そして「結果どう気持ちが安定したのか」の記録もしていきます。

このように「状況」「行動」「結果」という関係性を意識して記録を取ることが重要です。これにより自分の行動パターンが見えてくるのです。

人は習慣的に同じような行動パターンを取り続けているものです。その行動がうつ病を引き起こすものになっていても、習慣化されていると無意識でその行動を続けてしまいます。

それを改善するために日常を記録するのです。記録することで意味を考えることをやめてしまった行動について改めて意識し、「これは回避行動で不快事象を増加させているのではないか」「この悲観的思考の反芻が不快事象を増加させているのではないか」と気付けます。

例えば、不快事象について

「起床時はいつも強い落ち込みを感じる」(状況)
「だからなかなか起きれずに二度寝してしまう」(行動)
「遅刻や欠勤が多くなり、自己嫌悪に陥る」(結果)

「職場で同僚達が話しているのを見ると、自分の悪口を言われているような気になる」(状況)
「意識が同僚の会話に集中してしまう」(行動)
「集中力が落ち、ミスが増えてしまい、自分は会社に不要なのではないかという考えが消えなくなる」(結果)

このように記録します。

また快事象についても同様です。

「仕事に疲れてくると、落ち込みも強くなってくる」(状況)
「その時は、少し身体を動かすと気持ちが晴れる」(行動)
「その後は仕事にまた集中できるようになる」(結果)

「帰宅時に電車に乗り遅れてしまい、自分はダメだと落ち込みそうになった」(状況)
「しかしせっかくだから健康のため、駅から歩くことにした」(行動)
「歩くと、気持ちが穏やかになり、なんだかやる気も出てきた」(結果)

おおまかには、このような感じです。

記録は可能であれば1週間ほど付け続けると、自分自身の快・不快事象が明確化されます。

そうすると、今まで自分ではあまり意識してこなかったけども、 「こういう時にこういう行動を取って落ち込むパターンが多い」「こういう時にこういう行動を取ると持ち直せることが多い」と様々な気付きが得られます。

ある程度、明確化できたら、次のステップに進みます。

Ⅱ.不快事象の改善

うつ病患者さんは、不快事象に対して回避行動をとる傾向があります。

嫌な事に対して回避しようとするのは、理解できる反応です。しかしこれは自責感や自己評価の低下などをもたらし、うつ病悪化の原因となります。

回避ではなく、適切な行動をとることで自信がついたり意欲改善につながるため、行動を活性化させていくよう考えていきます。

例えば先ほどの例で言うと、

【不快事象】 起床時はいつも強い落ち込みを感じる
【現状】 落ち込みからベッドに潜り込んでしまう(回避行動)。その結果、遅刻・欠勤につながり更に落ち込みが強くなる。
【行動活性化】 帰宅時の歩行が快事象であったことから、歩くことは本人にとって快事象と考えられる。そのため、朝落ち込みがあっても起床し、散歩をするようにする。

【不快事象】 職場で同僚達が話しているのを見ると、自分の悪口を言われているような気になる
【現状】 悪口を言われているかも、という考えが頭から離れなくなる(反芻)。その結果、仕事の能率が落ち、ミスが増えて更に落ち込みが強くなる。
【行動活性化】コーヒーを一杯飲むか、軽く身体を動かしてから、仕事に再度集中するようにする。

と取るべき行動を治療者と相談しながら決めていきます。

Ⅲ.行動活性化の評価・修正

治療者と一緒に決めた行動活性化を、日常生活に取り入れてみます。

予定ではうまく行くはずの行動活性化も、実際にやってみるとうまくいかないということもありますので、実際に取り入れてみた結果をまた治療者と話し合います。

例えば、

「朝、散歩をすると気分の落ち込みが和らぐことに気付いたので、これは続けていきたい」
「被害的になった時に身体を少し動かすことはとても良かった。けど、コーヒーを飲むとかえって興奮してイライラしてしまうことがある。」

など、気付いたことを話していきながら、行動活性化の評価・修正を行います。

一つ一つの気づきは小さなものですし、治療は地道な作業です。しかしこれらを積み重ねていくことによって、精神状態を悪くする行動パターン、反対に精神状態を安定させる行動パターンが見えてくるのです。

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3.行動活性化療法の特徴

行動活性化療法は、「行動」という目に見えやすいものに焦点を当てているため、「かんたんで分かりやすい」ことが利点です。

認知行動療法は「認知のゆがみ」という直接目で見えないものを扱うため、核心に入るまでに時間がかかることがありますが、行動活性化療法は比較的短い時間で治療効果を得ることも可能です。

また、治療時期を選ばずに行えることも利点です。うつ病の急性期・慢性期を問わず、いつでも行えます。

回避行動によって、快事象の減少・不快事象の増加を引き起こしているような患者さんでは有効な治療法になります。

うつ病で治療中の方はぜひ取り入れてみてくださいね。

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