非定型うつ病でみられる症状|定型うつ病との6つの相違点

非定型うつ病の症状

非定型うつ病は、うつ病の中の一型という位置づけにある疾患ですが、その症状の特徴はうつ病と大きく異なります。そのため、自分の症状が典型的なうつ病(定型うつ病)の症状に当てはまらないからと言って、「自分はうつ病ではないんだ」と断言することはできません。

非定型うつ病は定型うつ病と異なる症状を認めますが、その表面的な症状を見て「甘え」だと誤解する方は少なくありません。しかし非定型うつ病は甘えではなく疾患なのです。

非定型うつ病の症状を深く知れば、それがただの甘えではない事が分かるはずです。

今日は非定型うつ病の症状についてお話させて頂きます。

スポンサーリンク

1.定型うつ病の症状との違いも多い

非定型うつ病は、いわゆるうつ病に含まれる概念です。うつ病には様々なタイプが提唱されていますが、その中のひとつに非定型うつ病があります。

非定型うつ病はうつ病であるため、基本的にはうつ病の診断基準に書いてあるような症状が出現します。

例えば、うつ病の代表的な症状には次のようなものがあります。

・気分の落ち込み(抑うつ気分)
・何も楽しめない、興味を持てない(興味と喜びの喪失)
・食欲が増加あるいは減少する
・眠れなかったり、あるいは眠りすぎたりする
・疲れやすい
・思うように身体が動かない
・思うように頭が働かない
・焦り
・自分に価値がないと考える(無価値感)、あるいは自分に罪があると考える(罪責感)
・死にたいと考える、あるいは計画する

非定型うつ病もうつ病ですので、これらの症状は認めます。しかし定型うつ病と比べると、症状の出方に異なる特徴があります。

定型うつ病・・・メランコリー親和型うつ病や内因性うつ病と呼ばれる、典型的なうつ病。

非定型うつ病の症状の特徴を、定型うつ病と比較して簡単にまとめると、

1.抑うつ気分は認めるものの、楽しいことがあると改善する(気分反応性)
2.興味と喜びの喪失はあまり認めない
3.食欲低下、不眠はあまり認めず、食欲増加・過眠を認めやすい
4.不眠はあまり認めず、反対に過眠を認めやすい
5.疲労感・倦怠感が強い
6.無価値感や罪責感を認めにくい
7.恐怖感・不安感が強い
8.夕方に増悪しやすい(定型うつ病は朝に増悪しやすい)
9.周囲の言動に過敏に反応する

このような点が挙げられます。

 定型うつ病非定型うつ病
気分抑うつ気分気分反応性
興味と喜び喪失楽しい時は認める
食欲低下増加
睡眠不眠過眠
疲労感あり強い、鉛様と表現される
無価値感、罪責感強い乏しい
不安・恐怖認めることもある多い
日内変動朝に悪く徐々に改善夕方に悪い
対人真面目で他者配慮的拒絶に過敏で衝動的

必ずしもこれらすべてを認めるわけではありませんが、非定型うつ病にはこのような傾向があります。

一つずつ、定型うつ病と比較しながら説明させて頂きます。

2.非定型うつ病の症状1:気分反応性

非定型うつ病の最大の特徴は、気分反応性です。

定型うつ病では、基本的に気分は下がったままである事がほとんどです。これを「抑うつ気分」と言いますが、以前なら嬉しかったことやテンションが上がるようなことが起こっても、気分は上がりません。「今まで楽しいと思っていた事も楽しめない」「楽しいという感情が沸いてこない」と患者さんは表現され、これは「興味と喜びの喪失」と言います。

しかし非定型うつ病の場合、基本的には抑うつ気分が優勢なのですが、楽しい事や嬉しい事があると、とたんに気分が改善するという特徴があり、ここは定型うつ病と大きく異なります。

そして楽しい事になると気分が改善するということは、定型うつ病にみられる「興味と喜びの喪失」は、非定型うつ病ではあまり認められないという事です。

例えば、仕事のストレスが原因でうつ病を発症した場合、定型うつ病も非定型うつ病も、仕事前や仕事中は抑うつ気分が出現します。しかし仕事後に仲の良い友人と遊びに行く予定が入っていた場合、定型うつ病の方は仕事の時と同じように「行きたくない」「楽しいと思えない」と抑うつ気分が続くのに対して、非定型うつ病の方は「行きたい!」「楽しそう!」と途端に抑うつ気分が改善するのです。

この、「イヤな事や嫌いな事があると抑うつが出現するが、楽しい事や嬉しい事があると気分が改善する」というのが気分反応性です。

気分反応性はしばしば「甘え」と誤解される原因となります。確かに、楽しい時だけ元気になってイヤなことになった途端落ち込み出すというのは都合よく逃げているだけだと疑ってしまう事も理解はできます。

しかしこれは甘えではなく、「自分自身でもこの気分の波を制御できない」という非定型うつ病の症状なのです。甘えと異なり、自分自身で意識して楽しい事の時に気分を上げているわけではありません。

ちなみに、どこまで気分の反応性があれば「気分反応性あり」と評価するかですが、ADDS(非定型うつ病の診断スケールのひとつ)によれば

過去3か月間の状態(抑うつ状態)を0、抑うつ感が全くなかった時の状態を100とすると、何かよい出来事があったり、誰かが元気づけてくれた際に、一時的にせよ50%以上気分が回復する場合を気分反応性があると判定する

と書かれています。

一つの目安ではありますが、楽しい事があった時に、元気だった時の半分以上まで気分が回復すれば「気分反応性あり」と考えることが出来ます。

【非定型うつ病の症状その1】
・抑うつ気分が優勢だが、気分反応性がある
・興味と喜びの喪失は認めないことが多い

スポンサーリンク

3.非定型うつ病の症状2:食欲増加、体重増加

定型うつ病の場合、精神エネルギーが枯渇していますので、全体的に「下がる」方向に症状は出現します。

気分は落ちて、食欲も落ちて、睡眠時間も落ちて、集中力も落ちて・・・・、と。

しかし非定型うつ病では食欲・体重低下はあまり認めません。特に食欲と睡眠は「上がる」方向となります。非定型うつ病では食欲低下・体重減少というのは認めない事が多く、反対に過食・体重増加が見られます。

過食症のような無茶食い行動とその後の自己嘔吐が週に何回も見られることもあったり、1日に何回も間食するようなこともあります。

【非定型うつ病の症状その2】
・食欲・体重は増えることが多い

4.非定型うつ病の症状3:過眠

定型うつ病では、高い確率で不眠を合併します。その頻度は8~9割ほどはあるのではないかと感じます。

しかし非定型うつ病はその反対で、過眠を呈することが多いのです。更に長時間寝ているにもかかわらず、起床時・日中も眠気が続きやすいと言われています。夜に長時間寝ているのに昼寝もしてしまう、という事も珍しくありません。

DSM-5によれば、非定型うつ病の過眠について

夜間の睡眠や昼寝の時間が延長して少なくとも系10時間以上(または抑うつのないときより2時間以上長い)

と記載しています。

【非定型うつ病の症状その3】
・過眠傾向となり、日中も眠い事が多い

5.非定型うつ病の症状4:拒絶過敏性、衝動性

非定型うつ病の方は、対人関係においても特徴的な症状があります。

定型うつ病の場合、真面目で責任感が強いため、対人関係としてはなるべく他者に迷惑をかけないようにするという傾向があります。なるべく衝突を避け、温和な対人関係を心がけている方がほとんどですが、非定型うつ病の場合はこれが異なってきます。

非定型うつ病は「拒絶過敏性」という対人関係上の特徴があります。

これは他者からの評価を過剰に自己解釈してしまい、特に拒絶されたと少しでも感じたらそれを過敏に感知してしまうという傾向の事です。いつも人の目を気にしてしまい、その評価を悪い方向に拡大して解釈してしまう背景には「漠然とした寂しさ」があることが多いようです。

仕事でミスを指摘されただけで、「上司に自分のすべてを侮辱された」と解釈し、大きく落ち込み、早退したり出勤不能になったりします。また、友人にちょっと注意されただけで「拒絶された!」と過敏に反応し、大きく落ち込んだり、時には暴言・暴力や自傷行為、物質乱用などの衝動的な行動に至ることもあります。

相手はそこまで大きく責める気はなくて軽く指摘しただけなのに、過大にそれを「拒絶」と解釈してしまいやすい特徴があるのです。

また、これが更に進行すると、拒絶される事を恐れて人と交流することが出来なくなったり、社会生活に参加できなくなったりすることもあります。その結果、仕事や人間関係で大きな支障を来すこともあります。

【非定型うつ病の症状その4】
・拒絶を過剰に恐れる「拒絶過敏性」

6.非定型うつ病の症状5:鉛様疲労感・麻痺感

うつ病の症状にも倦怠感やだるさがあります。非定型うつ病では倦怠感やだるさが更に顕著であり、「身体に鉛が入っているような感覚(鉛様疲労感)」「麻痺しているような感覚」と表現されます。

定型うつ病は朝に悪く、夕方にかけて徐々に改善してくるのに対して、非定型うつ病は日中はそこまでひどくなく、夕方や夜間に悪化しやすいという違いがあります。

疲労感・麻痺感に対しても同様で、非定型うつ病は夕方や夜に疲労感・麻痺間が増悪しやすい傾向があります。

【非定型うつ病の症状その5】
・疲労感が強い。鉛様、麻痺感と表現される

7.非定型うつ病の症状6:不安症状を合併しやすい

うつ病も合併症としてパニック障害や社交不安障害といった不安障害を合併することがあります。

非定型うつ病はその傾向が更に顕著で、多くの症例で不安障害を合併することが知られています。また、不安障害までには至らないとしても、強い不安感や恐怖感を感じる事が、定型うつ病よりも多いと考えられています。

そのため、不安に対する治療も必要になる事も多く、不安を増悪させやすい増悪因子(例えばアルコールやタバコなど)は意識的に避ける必要があります。

【非定型うつ病の症状その6】
・不安が強い

8.自分は非定型うつ病では?と感じたら

非定型うつ病の症状のうち、特徴的な点を定型うつ病と比較しながら紹介してきました。

ここまで読んで、「自分の症状が非定型うつ病の特徴と似ている」と感じたら、セルフチェックを行ってみてください。非定型うつ病のセルフチェックの手順は、別のコラムで詳しく解説しています。

非定型うつ病かをセルフチェックするための6つの手順

スポンサーリンク


こちらの記事も是非ご覧下さい