抗うつ剤で性欲低下・性機能障害が生じる原因と6つの対策

抗うつ剤と性欲低下・性機能障害

何らかの効果を持つお薬は、必ず何らかの副作用が生じる可能性があります。効果と副作用は表裏一体であり、副作用のないお薬というものは存在しません。

抗うつ剤とはじめとした、精神科のお薬(向精神薬)でもそれは同じです。

抗うつ剤で生じる副作用はいくつかありますが、その中のひとつに性欲低下・性機能障害(月経異常・勃起障害)があります。これは抗うつ剤の副作用で性欲が低下したり、月経(生理)が乱れたり、勃起しなくなったり射精しなくなったりというものです。これらの副作用の問題は、診察でも話題に挙げずらいものであるため、見逃されがちだと言う事です。

お薬を服薬してから性機能障害が出現していると感じていても、なかなか主治医に相談できずに困っているという方は少なくありません。そういった事も含めて治療ですので、私たち医師としては遠慮せず相談して頂きたいと思っておりますが、なかなか言いにくいというのも患者さんの本音でしょう。

今日は、抗うつ剤と性機能障害・性欲低下について、その機序や対策・解決法などをお話させて頂きます。

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1.抗うつ剤で性欲低下はなぜ起こる?

抗うつ剤で性欲低下や性機能障害といった副作用が生じる事があります。性機能障害は、男性であれば勃起障害・射精障害、女性であれば月経(生理)の異常や不順などがあります。

抗うつ剤ではなぜ、このような副作用が起こるのでしょうか。

抗うつ剤で性欲低下・性機能障害が生じる一番の原因は、抗うつ剤がセロトニン2受容体を刺激してしまうためだと考えられています。このセロトニン2受容体刺激作用は、性欲低下、性機能障害の他、不眠の原因となる事もあります。

反対にセロトニン2受容体を遮断(ブロック)する抗うつ剤に、トラゾドン(商品名デジレル・レスリン)があります。トラゾドンは昔、勃起障害(ED)の治療薬として用いられていたことがありました。セロトニン2受容体をブロックすると性欲が改善するということであり、セロトニン2受容体の刺激が性欲を低下させる事がここからも分かると思います。

抗うつ剤は基本的にセロトニンを増やすはたらきを持ち、セロトニン2受容体を刺激する方向へはたらきます。そのため、ほとんどの抗うつ剤で性欲低下・性機能障害が認められるのです。

このように基本的には性欲低下・性機能障害はセロトニン2受容体の刺激が原因で生じるのですが、他にも原因となる作用がいくつかあります。それはアドレナリン1受容体の遮断作用と、ドーパミン2受容体の遮断作用です。

抗うつ剤にはアドレナリン受容体遮断作用を持つものが多く、これも性機能障害に多少関係します。

アドレナリンは血管を収縮させ、血圧を上げるはたらきがあります。抗うつ剤でアドレナリン1受容体が遮断されると、アドレナリンがはたらけなくなるため、血圧が下がります。陰部のアドレナリン受容体が遮断されると、陰部の血圧が下がり、血流が減ります。すると、勃起などがしにくくなってしまうのです。

また、一部の抗うつ剤、例えばスルピリド(商品名ドグマチール)・アモキサピン(商品名アモキサン)などは、ドーパミン2受容体遮断作用があります。脳の漏斗-下垂体部のドーパミン受容体が遮断されると、これがプロラクチンというホルモンを増加させてしまいます。

プロラクチンは本来であれば、授乳中の女性で増加しているホルモンです。プロラクチンが増えると生理が止まり、乳汁が出るようになります。これが授乳中でない方で起こってしまうと、月経不順や勃起障害、乳汁分泌の原因となります。

2.性欲低下・性機能障害が起こりやすい抗うつ剤は?

ほとんどの抗うつ剤は、性欲低下・性機能障害を起こす可能性がありますが、その頻度は抗うつ剤によって違いがあります。

主な抗うつ剤と性欲低下・性機能障害の頻度を表で紹介します。

抗うつ剤性機能障害
トリプタノール+
トフラニール+
アナフラニール++
テトラミド-
デジレル/レスリン++
リフレックス-
ルボックス/デプロメール+
パキシル++
ジェイゾロフト++
レクサプロ++
サインバルタ++
トレドミン++
ドグマチール+

抗うつ剤の中で性欲低下・性機能障害を起こしやすいのは、特にSSRIです。この副作用の一番の原因はセロトニンですので、セロトニンに集中的に作用するSSRIが一番起こりやすいのです。

SSRIの中では特にパロキセチン(商品名パキシル)、セルトラリン(商品名ジェイゾロフト)で多く、フルボキサミン(商品名ルボックス・デプロメール)では少なくなっています。

また、性欲低下・性機能障害がもっとも少ないのは、NaSSAであるミルタザピン(商品名リフレックス、レメロン)です。これはNaSSAがセロトニン2受容体を遮断する作用を持っているためです。

トラゾドン(商品名デジレル、レスリン)も性欲低下はほとんど起こしませんが、頻度は稀ながら「持続勃起症」という副作用が生じてしまうことがあります。これもセロトニン2受容体を協力に遮断する事が理由です。重篤な副作用になることもあるため、上の表では性機能障害の頻度はやや多めと記載していますが、性欲低下という意味ですとかなり少ないと言えます。

また、アモキサピン(商品名アモキサン)とスルピリド(商品名ドグマチール)は、セロトニンの影響ではなく、ドーパミン遮断による高プロラクチン血症にて性欲低下・性機能障害が生じます。一般的な抗うつ剤による性欲低下とは機序が異なります。

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3.性欲低下・性機能障害が生じた時の解決法

性欲低下・性機能障害が生じた時、どのように対処すればよいでしょうか。臨床でよく取られる方法を紹介します。

なおここで紹介する対処法は、必ず主治医と相談の上で行ってください。独断で行うことは大変に危険です。

Ⅰ.主治医に報告する

やはり主治医に報告する事が一番大切です。性機能や性欲の話は、話題に挙げずらい内容だとは思います。しかし性欲低下・性機能障害が出現している場合、それは主治医に報告してください。

診察時に性機能障害を私たちに伝えてくれる患者さんは非常に少ないという事が調査からは示されています。

しかし、性機能障害が生じているかどうかというのは、私たちも知りたいところですし、それは治療方法を決定するためのひとつの重要な情報になります。

私たち医師は、診察で得た情報は絶対に第三者では口外することはありません。また、当然ですが私たち医師はこのような話題に対して真剣に対応させて頂いておりますので、安心してご相談下さい。

話して頂けず、自分の判断でお薬を辞めてしまったり、一人で悩まれて、それで精神状態が悪化してしまうとより危険です。副作用で困っている事を主治医にしっかりとお話しするという事は、治療経過にも影響を与える大切な事なのです。

Ⅱ.そのまま経過をみる事も

性機能障害の副作用はあくまでもお薬の作用として生じているだけで、お薬が中止されれば改善します。後遺症の残るものではありません。そのため、ある程度病気の治療が落ち着くまでは申し訳ないけど、そのまま様子をみてもらい、調子が改善してきたら減薬に入るという事もあります。

性機能障害に対する困り具合は、個々人によって大きく異なります。性機能障害は感じているけど大して困っていないよという方もいれば、これが原因で夫婦仲に大きな問題が生じていて深刻な状態だという場合もあります。そのため、その対処法は均一に決まったものではなく、個々人の状況によって変えていくべきものです。

現在使っている抗うつ剤が、うつ症状に対してとても良く効いていて、これを減薬するのは不安が強い、という場合は患者さんと相談して同意を頂いた上でそのまま様子を見ることもあります。

また、様子観察を続けることで身体が抗うつ剤に慣れてきて、性機能障害が自然と改善してくる例も少なからずあります。

Ⅲ.減薬できるのであれば減薬する

性欲低下、性機能障害の副作用は、セロトニンに対する影響が小さくなればなるほど軽減します。そのため、抗うつ剤の量を減らせるのであれば、これらの副作用も軽減できる可能性があります。

独断で勝手に減らしたり止めたりすることは良くありませんが、主治医と現状について相談の上、原因となっているお薬が減らせそうなのであれば減薬を行う事もあります。

Ⅳ.性欲低下・性機能障害の少ないお薬に変更してみる

性欲低下や性機能障害が比較的少ないと言われている抗うつ剤に変更するという方法もあります。

上にも書いた通り、比較的これらの副作用が少ないと言われているのが、ミルタザピン(商品名リフレックス・レメロン)です。また、SSRIの中ではフルボキサミン(商品名ルボックス・デプロメール)が比較的少ないと言われています。

これらのお薬に変更すれば、統計的には性欲低下・性機能障害の副作用は少なくなりますが、また別の副作用が生じる可能性もあります。例えばミルタザピンは、眠気や体重増加の副作用は起こりやすいと言われています。

どのお薬にも一長一短あるため、変薬は主治医としっかり相談し、そのメリット・メデリットを理解した上で行う事が理想です。

Ⅴ.服薬時間を変えてみる

お薬の効きは、理論上は服薬してから数時間でピークに達して、そこから徐々に低下していきます。

そのため1日1回服薬の抗うつ剤であれば、朝に服薬すれば、夜には性機能障害は若干改善している可能性があります。劇的な改善が得られるという方法ではありませんが、服薬時間を出来る範囲で調整してみることは有効な方法です。

ただし、服薬時間を日によって変えるのは、良くありません。お薬の血中濃度が不安定になってしまいます。服薬時間を決めたら、その日以降は原則その時間に服薬するようにしましょう。

Ⅵ.薬剤を追加する

性機能を改善させるお薬を併用するという方法もあります。お薬の副作用を別のお薬で対処するという方法になるため、あまり推奨される方法ではありません。

シルデナフィル(商品名バイアグラ)、タダラフィル(商品名シアリス)などを投与すると改善が得られるという報告もあります。

実際の臨床ではここまで行うことはほとんどありません。抗うつ剤をどうしても減らせないが、性機能障害による重篤な問題が生じている場合は、患者さんと主治医がよく相談した上でこの方法を取ることもあります。

4.お薬の副作用ではなく、病気の症状の事も

うつ病にかかって性欲が低下した、というとお薬の副作用のように考えてしまいがちですが、実はうつ病という病気の症状としても性欲低下が生じます。

見分けるポイントとしては、お薬の開始時期と性機能障害の出現時期との関係になります。うつ病の症状としての性欲低下であれば抗うつ剤投与前から認められることが多く、反対に抗うつ剤による性欲低下であれば服薬開始後に認められます。

また、アルコールなどの物質が性機能障害を起こしている可能性もあります。高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病によって陰部の血流障害が生じており、それで勃起障害が生じている事もあります。

安易にお薬のせいと判断せず、他に原因がないかを疑ってみる事も大切です。

(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際の抗うつ剤とは異なります)

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