病気を治すだけでなく、治ったらどんな事がしたいのかまで考えてみよう

こころの病気は治療に時間がかかります。

例えばうつ病や不安障害をみても、数日や数週間で治療が終了するということはほとんどありません。短くても数カ月程度の治療期間は必要であり、長い場合だと数年にわたることもあります。

こころの傷は少しずつ癒えていくものですから、治療にある程度の時間がかかるのは仕方がありません。

しかし、こころの病気の治療の際には気を付けないといけないことがあります。それは、この治療期間の長さがストレスになってしまい、それが病気を悪化させてしまう事があるという事です。苦しい日々が続くと「もうイヤだ」「もうどうでもいいや」と悲観的に考えてしまいがちです。これによって治療のモチベーションが保てなくなってしまうと、こころの傷が更に増悪したり、治療期間が更に長引いてしまうことになるのです。

治療が長期にわたればわたるほど闘病生活のストレスは高くなり、この悪循環が生じやすくなります。特に難治性になっている場合、このような悪循環に陥っている方は非常に多いと感じます。

こころの病気で治療中の方は、闘病生活のストレスが病気の経過に悪影響を与えないように気を付ける必要があります。そのために患者さんにぜひ持って頂きたい考え方を今日は1つお話させて下さい。

スポンサーリンク

1.辛い精神状態が続くと、前向きな目標がみえなくなってしまう

こころの病気は治るまでに時間がかかります。

数週間で治るようなケースは稀で、多くの場合で完治までには1~2年ほどはかかります。難治性や治療抵抗性であれば、更に長期にわたることもあります。風邪や胃腸炎といった疾患と比べると、こころの病気の治療期間は長期に渡るのです。

このような特徴から、こころの病気の治療中には陥りやすいワナがあります。

患者さんをみていると、このワナにはまってしまい、それによってますます治りが悪くなってしまっている方が少なからずいらっしゃいます。

それはどのようなものかというと、辛い闘病生活を続けている中で次第に自分が元々持っていた夢や目標を忘れてしまうという事です。そして夢や目標を見失うことにによって、生きるエネルギーが低下してしまい、これが病気の治りを更に悪くしてしまうのです。

こころの病気にかかってしまうと、精神的なエネルギーが低下するため、考え方も否定的・悲観的になりがちです。すると、前向きな夢や目標といったものが見えにくくなってしまうのです。

健常な人間にとっても、夢や目標というのは生きていくための大きなモチベーションになっています。私たちはそれぞれ夢や希望を持ち、そこから生きる意味を見出しています。こころの病気では、生きていくためのエネルギーが通常よりも低下していますから、健常な人と比べても更に生きるためのモチベーションが低くなりがちです。そんな中、元々持っていた夢や目標を見失ってしまうと、「病気を治そう!」というモチベーションも見出せなくなってしまいます。

毎日毎日精神的に辛い日々が続くと、「もうイヤだ」「自分の人生はもうおしまいなんだ」などと考えてしまいがちです。本来、もし病気にかかっていなければやりたかった事、頑張りたかった事があったはずなのに、それが見えなくなってしまいます。

こうなってしまうと、人生の目標を見失ってしまうため、こころの病気を治すモチベーションも保てなくなってしまいます。すると、本来であれば治るようなこころの病気もいつまでも長引いてしまう事になるのです。

今、こころの治療中で、思うように治療が進まないという方は、自分はこのワナに陥っていないかを今一度確かめてみる必要があるでしょう。自分の人生における本来の夢や目標といったものを見失っていないか、見直してみてください。

2.前向きな目標がないと、頑張る事が出来ない

精神科の治療では、受動的な治療と能動的な治療があります。

受動的な治療というのは、「受け身」の治療です。これは先生の指示された通りに休んだり、あるいはお薬を飲んだりといった治療になります。

能動的な治療というのは、「自分自身で行動する」治療です。例えばうつ病では、回復期に入ってきたら少しずつ軽い作業をしたり、身体を動かしたりといった「こころのリハビリ活動」などがあります。パニック障害でも、ある程度落ち着いてきたら、パニック発作を起こしやすい状況に挑戦する(例えば、苦手な電車に敢えて乗ってみる、など)段階が必ず必要で、これも患者さん自身の行動が必要になります。

受動的な治療も能動的な治療もどちらも大切です。しかしこのうち受動的な治療は、患者さんの治療モチベーション低くてもある程度出来るのですが、能動的な治療は、患者さんが「治そう!」という強いモチベーションを保っていないと、なかなか続けることが出来ません。

うつ病患者さんは、こころのリハビリのために、軽い作業を始めるのは、ある程度のしんどさがあります。パニック障害の方がパニック発作を起こしやすい状況に敢えて挑戦するというリハビリも、ある程度の不安を感じることであり、簡単に出来ることではありません。

いずれも進んでやりたいようなものではなく、「出来ればやりたくないもの」になるでしょう。しかし治療のためには、これらの能動的な治療は避けて通ることは出来ません。

このように負荷の高い能動的な治療をしっかりと実行するためには、ある程度の治療に対するモチベーションが必要になります。「そのうちやってみよう」ではなく、「どうしても治したいから挑戦してみよう」という気持ちが必要なのです。

この気持ちを高めてくれる大きな助けとなるのが、あなたが本来持っていた夢や目標なのです。

「病気を克服して、また夢に挑戦したい」
「パニック障害を治して、ずっと楽しみにしていた海外旅行に行きたい」

このような動機があれば、治療は積極的に行いやすくなるでしょう。

しかし、辛い精神状態によって夢や目標を見失ってしまい、ただ

「毎日がつらい」
「こんな毎日、もうイヤだ・・・」

という気持ちばかりで過ごしていると、ここから能動的な治療を始めるエネルギーはなかなか生まれてきません。むしろ自分のこころを自分で更に傷付けてしまい、より病気を悪化させてしまうリスクすらあります。

闘病中の辛い精神状態の中で、前向きなことを生き生きと考える事はなかなか出来ないかもしれません。しかし、頭の片隅に持っておくだけでもいいのです。自分が本来持っていた前向きな夢や目標を治療中にも決して忘れずにいる事はとても大切な事なのです。

スポンサーリンク

3.病気を治すことだけではなく、治った後に何がしたいかまで考えよう

闘病中は、病気を治すことを第一に考える方が多いと思います。もちろん、これは間違っていることではありません。

しかし、こころの病気の治療を悪くさせないためには、病気をただ治そうとするのではなく、「治った後に自分は何をしたいか」まで考えることが非常に有効です。治った後の、夢や目標に向かっている自分が想像できると、それは生きるためのエネルギーにつながり、病気を治すためのモチベーションにもつながります。

辛い闘病中であっても、夢や目標を見失わなければ、「治さないと!」という気持ちを持ち続けやすくなります。この気持ちはこころの治療をするにあたって、大きな力となります。

ただ辛い精神症状に振り回されるだけの生活と、辛い精神症状がありながらも夢や目標を忘れない生活では、圧倒的に後者の方が早く治ります。

こころの病気がなかなか治らず長期化してしまっている方は、この事をぜひ見直してみてください。

闘病生活が長くなってくると、目の前に立ちはだかる症状を対処するので精一杯になってしまい、自分の人生における本来の目的を忘れてしまいがちです。あなたはそのような状態になっていないでしょうか。

ただ辛い症状しか見えなくなっている状態だと、そこから「治療に向かうエネルギー」を生み出すのは困難です。しかし、例え闘病生活中であっても、夢や目標を忘れなければ、そこから治療のためのエネルギーを生み出すことが出来るのです。

スポンサーリンク

こちらの記事も是非ご覧下さい